取り調べ立ち会った捜査員「取調官は欺いていない」 大川原化工機国賠証人尋問詳報(中) (original) (raw)

控訴審口頭弁論後に記者会見する大川原正明社長(中央)ら=9日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

控訴審口頭弁論後に記者会見する大川原正明社長(中央)ら=9日午後、東京・霞が関の司法記者クラブ

外為法違反(無許可輸出)罪などに問われ後に起訴が取り消された「大川原化工機」(横浜市)の大川原正明社長らが、東京都と国に損害賠償を求めた訴訟。東京高裁で開かれている控訴審(太田晃詳裁判長)では、警視庁公安部の取り調べが適正に行われていたかどうかが争点の一つとなっている。9日に開かれた第2回口頭弁論では、都側の2人目の証人として大川原化工機の元役員、島田順司さんの取り調べに立ち会った当時の警視庁公安部の捜査員Bの証人尋問が行われた。

《まず、都側の弁護士による質問が始まった。1審東京地裁判決では、島田さんの取り調べを行った取調官は、「殺菌」の解釈を島田さんにあえて誤解させ、認める趣旨の供述調書に署名指印するよう求めたとし、「偽計を用いたり、欺罔(ぎもう)した取り調べで違法」と認定した》

都側の弁護士「取調官は島田さんに一部でも菌が死ねば「殺菌」だと誤解させていたと判断されたが、事実か」

B「違います」

《取調官は島田さんに経産省の輸出に関する通達を示していたとし、そのことから島田さんが「殺菌」とはすべての菌を殺すことと理解しており、解釈を誤解していた認識はなかったと語った》

都側の弁護士「(一部でも菌が死ねば「殺菌」だと)誤解していた様子はあったか」

員B「ありません。(菌が)一匹でも生きていれば生きているので感染する。島田さんだけが誤解しているとは思いませんでした」

都側の弁護士「取調官は島田さんが一人で輸出を決めたのかと聞いていたのか」

B「社長らの指示があったからと」

都側の弁護士「弁解録取(弁録)を島田さんはしっかり読んでいたか」

B「読んでいました」

都側の弁護士「(島田さんが)弁録を読み飛ばす可能性はないか」

B「ないと思います」

× × ×

《取調官は、島田さんに修正を指摘された1通目の弁録をシュレッダーで裁断。取調官は「誤って破棄した」という内容の報告書を作成している。今回証人尋問に立ったBは、この報告書にコメントをつけており、原告はそれを証拠として提出している》

《コメントには「完全なる虚偽報告」「よくこんな報告書が作成できるよな。どっちが犯罪者か分からん」などと記載。原告は報告書の内容が虚偽と主張し、都側は「取り調べは適正だった」と主張している》

都側の弁護士「(取調官は)隠蔽する必要がある事実があったのか」

B「ありません。不都合な記載はなく、あえて廃棄はしません」

都側の弁護士「取調官は意図的な廃棄をしたという言動はあったか」

B「ありません」

都側の弁護士「なぜコメントを付けたのか」

B「より詳細な報告書を作る必要があると思ったが取調官から相談がなかったため、不満があったからです。だが、違法性を指摘する趣旨ではありません。取調官が欺いて弁録を作成したという認識はありません」

都側の弁護士「誰に見せるために作ったのか」

B「同僚の捜査員」

都側の弁護士「同僚に見せるため、くだけた内容になったのか」

B「そうです」

都側の弁護士「過激な表現になったのはなぜか」

B「同僚に見せるためだけでした」

都側の弁護士「取調官から島田さんの取り調べで欺罔を用いたことはあったか」

B「違います。当時もいまもそういう認識はありません」

都側の弁護士「当時の捜査の何が問題と考えているか」

B「係内の人間関係の不和。幹部が(捜査員の話に)耳を傾けず、捜査員も組織の方針に理解を示さなかった。不安要素について議論していれば、臆測がひとり歩きすることもなかったと思います」

× × ×

《続いて原告側の弁護士がBに質問する。原告側の弁護士はBが取り調べ状況を記したというノートを示しながら尋問を行った》

原告側の弁護士「島田さんと取調官は聴取の時向かい合って座っていたか」

B「はい。机にはパソコンが置かれていました」

原告の弁護士「島田さんと取調官のやりとりの間、あなたは何をしていたのか」

B「取調官の後ろに座っていました」

原告側の弁護士「2人の様子は見えたか」

B「のぞきこまないと見えません。声は聞こえました」

原告側の弁護士「メモは取っていたか」

B「記録を取っていました」

原告側の弁護士「取調官は弁録を島田さんに見せたのか」

B「紙に出力したものを見せました」

原告側の弁護士「島田さんは弁録を修正してほしいと言ったか」

B「言っていました」

原告側の弁護士「(弁録を)直さなかったのか」

B「島田さんもその後納得したと思うので直しませんでした」

原告側の弁護士「納得したなら、なぜ弁録の作り直しになったのか」

B「島田さんは興奮していたので」

《再び都側が尋問し、ノートはBが作ったものか確認。ノートはデスクの引き出しにしまっており、Bは原告側の証拠としてなぜ現れたのか「わからない」と証言した》

《続いて裁判官らが質問。Bはノートと記憶は合っていると証言し、Bの尋問は終了した》

(下に続く)

公安部捜査員「捜査は適切だった」 国賠証人尋問詳報(上)

原告側証人元捜査員「捜査に問題あった」 国賠証人尋問詳報(下)