常盤ホテル 離れ【山梨県 湯村温泉】~大型旅館を忘れさせる源泉かけ流し露天風呂の離れがある湯宿、昨今では珍しい格式ある和の御もてなしと定番ながらも何度も味わいたい精錬された料理~ (original) (raw)

開湯1200年、信玄公縁の湯村温泉にある創業100年近くになる常盤ホテルさん。かつては皇族ご用達のお宿でもあったようで、公式HPを見ているとその宿泊歴に驚かされます。さらには将棋囲碁の対局にも用いられるという威厳のあるホテルです。それ故にか、昨今では珍しくなった、きめ細かな「おもてなし」が現代にも活きており、まさに人を活かすステイが約束されたお宿です。

※記事の内容は宿泊した当時の内容となっていますのでご参考程度に。最新の情報は各々ご確認下さい。

旅情

湯村温泉にはかつて賑わいのある温泉街だったようですが、現代では甲府の市街地の中にお宿が数件ほどしかない温泉地です。老舗の老舗である1軒が常盤ホテルさんです。

到着するとダンディなドアマンの方が出迎えてくれました。車のナンバーを見て判断されたのか、お客さんのデータが共有されているのか、「関西の方から今日直接こられたのですか?」とお尋ねがありました。チェックイン時に聞かれることはあっても到着時に聞かれることのは最近では珍しい。名前を伝えると察したかのように駐車スペースへ誘導してくださいました。一個人のお客さんの把握ができているチェクインは久しぶりです・・・。

エントランスは大型ホテルでありながらも、都心部のような高級感があります。スタンダードなプランでもそれなりのお値段なので外車が沢山停まっておりました。

玄関から入ると正面には中庭が見えるとんでもなく大きな窓ガラスのロビー。

ロビーはバブリーな平成感がありますが、これまで訪れた大型旅禍の中では古いながらも、最も格式を忘れず綺麗な状態を維持されています。

館内散策は青矢印から。

ロビー脇にはラウンジあります。明るい時間帯ではケーキやお茶を楽しんでいるお客さんで賑わっていました。高級ホテルなのにお値段はとても良心的でした。

宿泊プランの中にワインの試飲ができるチケットが付いていました。18時までだったので風呂上りにすぐにラウンジへ。グラスをセットしてボタンをONEプッシュで注がれます。

山梨に来たのだから、やはり甲州ワインを吞まねばなるまい。

甲州にくると1本買って帰るのですが、長野のワインとは違い、美味いのですが渋みが強めだと思うのは自分だけでしょうか。昨今、日本産ワインはウィスキーと同じく海外でもかなり人気です。ワインに精通しているわけではないですが、Japan wineは海外のワインにはない雑味がなく葡萄の透明感が醍醐味かなと思っています。渋みがあるのに、とにかく後口がスッキリとキレがあるのは、淡麗辛口の日本種のようです。

一杯いただいてラウンジ前の廊下を矢印の1階奥へ進んでみます。

矢印を進むと柏という、中広間のお食事処があります。披露宴会場とかに本来であれば使われているのかもしれません。訪れた時は本館に宿泊したお客さんのお食事会場だったのかな。

奥は離れ家の出入口があります。

離れというぐらいなので一度表へ出る事になります。

廊下からは本館を見返ることができます。

建物は全て中庭を見るように建っています。

やがて八雲と九重という離れ客間が見えてきます。

こちらは朝に撮った風景です。夜景と比べても情景が全くことなるのも楽しみの1つ。

部屋前の池は循環されていて川の畔にあるようなイメージです。

中庭の夜景もなかなかの物でライトアップされており、刈り込まれた芝生と松の木は自慢のお庭なのがよく分かります。

朝の風景もすばらしく温かい季節であれば地面には青々とした芝生でしょう。専業の庭師さんを雇っているのかと思うほどに綺麗に整った庭園です。

一度館内に戻り、離れに行く外廊下をスルーして進むと、なにやら宴会場的な雰囲気になってきました。

右手には原石やら何やらと説明のあるステンドガラス。左手には喫茶があります。

軽食レストランでは往訪時は概ねランチタイムの営業のようです。朝には光が灯されていたので、ランチやモーニングもいただけたのかもしれません。

喫茶の前にはブライダルサロンがありました。

流行り病により

ロビーまで戻ってロビー上の2階へ。

ロビー上のこのエリアはとにかく将棋がぎっしりと詰まっています。

棋士さん達の色紙がたくさん飾ってあります。

これまで行われてきた対局の写真がずらり。将棋のタイトル戦の常連宿のなんですね。

訪れた時には棋聖戦の案内も。これを見ると、訪れた時にはまだ8冠Fさんが躍進する前だったようです。アップした時点では7冠。

何と今回お世話になった九重の間は歴代のタイトル戦で使用されたお部屋だそうです。

常盤ホテルさんもバブリーな平成時代に建てられたのだと思います。当時は吹き抜けが流行っていたのか、現代ではこのような贅沢な空間はランニングコストが嵩むのである意味で遺産的存在です。同じような造りを湯田中温泉よろづやさん、昼神温泉石苔亭いしださんにもありました。

赤丸の棋士さんエリアの散策を終えて青矢印へ向かいます。

階段の所まで戻ってきました。青矢印の向こうには本館客室と大浴場があります。

本館の2階は部屋数6部屋と贅沢な造り。廊下はリフォームを重ねてあるように見受けられますが、古さはなく高級旅館といった雰囲気は失わず。

階段下のスペースには生花の活け。少々早い梅花の香りをゆったりと漂わせていました。

本館の大型旅館とは思えない、これもある意味、おもてなしの1つです。生け花を楽しんだりという感性も恥ずかしながら30を超えてから。今の現代人に生け花や儚さなどを楽しんだりできるのだろうか・・・こういう文化も自分のようなおっさん世代で終わっていくのか・・・。

3階は改修中とありました。記事をしたためた現在では全てのお部屋に対応した個室スペースのお食事処にリニューアルされているそうです。感染症以来何処のお宿も形態の変化はプライベートに以降しています。

客室廊下左には「広間」とありますが、個室に改修された「曙」というお食事頃があります。

客室廊下を奥まで進むと大浴場に行きつきます。

大浴場前には麦茶と冷水の用意がありました。

本館の客間廊下は、ロビーからエレベーターがついていて全て同じような構造です。

館内はとても落ち着いた雰囲気で、時期もあるのかファミリー層がほとんどいませんでした。

本館には、どこに置いてあったのか忘れてしまったセルフで選べる色浴衣もありました。

大浴場と本館客室を後にしてロビーまで戻り反対側の離れ家の散策です。

大浴場がある棟の反対側にはお土産処があります。

このお土産処はいわゆる郷土菓子等の販売ではなく、高級旅館らしく郷土の調度品の販売が多い。何となく手に取って吟味したくなるお品が並びます。いわゆる身に着ける調度品のような物が販売されています。

売店奥にある階段下の自販機は少々お高めの値段設定。

売店の反対側にはBARがありました。中庭を臨む席もあり雰囲気が良さげです。ただ、往訪時は感染症のこともありCLOSE。

売店とBARの間には、離れ客間への道筋があります。

離れは回廊となっており、浴場があった棟と繋がっており、館内案内冒頭の箇所と繋がっています。

先ほどの離れの反対側になります。プライベート感の離れへの移動は冬季は寒く夏季は暑い、本館では寒さ暑さのない館内移動、いずれが良いのか。とはいえ、離れは温泉風呂があり部屋食なので、部屋から出る必要がないというのもグレードの高いお部屋の特徴でもあります。

物凄く綺麗にされた外廊下を行きます。

最初に見えてくるのは欅(けやき)という一軒家の家屋です。当日は人の気配はなく予約は無かったようです。

さらに外回廊に面する「若松」「若竹」というお部屋を通りすぎます。

本館からすると同じお宿とは思えない様相を呈しています。

若松と若竹を通り過ぎると、常盤ホテルさんでは最もお高い部屋と思われる貴松亭。昭和天皇さんも宿泊されたのだとか。

貴松亭の外観は2階建てになっています。

完全に一軒家で大きな「家」です。

貴松亭の前には「PENTHOUSE kosyu」があります。貸し別荘かと思ったのですが、調べてみると甲州牛を提供するステーキハウスのようです。訪れた時は流行り病の感染対策もあったので稼働はしておらず。2024年7月時点では、こちらでいただくプランもあるようです。

ステーキレストランを通り過ぎ、奥まで行くと「八雲」「九重」の離れ家に続く廊下です。

公式HPでは画像手前の「松風」というお部屋は昭和天皇さんも滞在されたそうです。

松風のお部屋では恐らく、当日or翌日に顔合わせの結納が行われていたのかと思われる案内が部屋前にありました。格式ですな・・・。

翌朝には写真撮りの準備もされていたので、結納の準備だったのかと思われます。

以降は反対側の離れ家に戻り館内散策は終了です。

お部屋

案内して頂いたのは離れの「九重」というお部屋です。

将棋や囲碁のタイトル戦で使用される定番のお部屋のようです。

間取りは本間12.5畳+次の間8畳+踏み込み2畳程+廊下3畳程+広縁+濡縁温泉露天風呂+トイレ+洗面+内湯です。

玄関は平屋一軒家のような佇まいです。

靴脱ぎ石がある2畳程の大きな玄関に上がり間も2畳程の余裕のある別荘のようです。

天井を見え上げると変わった造りで、天井板はプリントされたものではなく生木。

本間に向かう途中にある3つの水屋。

手前には洗面があります。冷水とドリップコーヒーメーカーと冷蔵庫。

コーヒーメーカーは4種から。ストックも沢山あるのでコーヒー好きの方にはうれしいところ。シャンパングラスも用意されているのは理由があります。

インクルーシブ宿では品数が少ない事が多いのに対して、常盤ホテルさんの冷蔵庫インクルーシブは遠慮がない程に充実しています。ソフトドリンクやミネラルウォーターはさることながら、炭酸水から瓶ビールやシャンパンも全てインクルーシブです。

水屋の隣は大きなスペースのトイレ。

トイレの隣は脱衣スペースとなっています。

アメニティ類の備えも高級旅館使用です。

内湯は新調されたかのようなヒノキ?の浴槽です。こちらは白湯で温泉ではありません。

本間と次の間を合わせると20畳の大きさがあります。

この広さだと2人で滞在すると次の間はまず使用しない贅沢な空間です。

部屋の装飾も凝っているものがあります。電飾には組子細工のようなあしらい。

床の間の網代・・・ではない何という装飾なのか。

本間からの広縁に抜ける茶室の潜り戸のようなイメージの窓を抜けると昭和のノスタルジーを感じる斜め屋根天井。

広縁はとても広く3畳ぐらいありあそうです。露天風呂へはこの広縁を通して出ます。なので、ここには脱衣籠が用意されていました。

次の間の園に露天風呂があります。よくある部屋付きの露天風呂からすると小庭が付き開放感があります。とても静かで空を見上げてのんびりと入るにはちょうどいい。

源泉かけ流しの露天風呂は敢えてお風呂の項に譲ります。

本間の広縁は2畳程で外には川があり水上に建っているようにも感じます。

広縁からは中庭を通して本館の建物を臨みます。贅沢な造りと間取りとロケーションですが、こちらから見えるということは向こうからも見えるので、目線には気をつけてください。対局の間に選ばれるのはこのお部屋が最も景色が良いからでしょうか。

部屋のアメニティは上ランクの物ではないですが、人気の物を揃えているといったところです。髭剃りなどはビジネスホテルにある物でした。グラスワインやウェルカムドリンクをいただけるドリンクチケット。作務衣に浴衣、バスタオル2枚、フェイス2枚、鍵2本と過不足はないですが、オーダーすると新しい物もいただけそうではありました。

夕食後にはグラスとコーヒーカップの入れ替えもあり、朝食後はお布団引きっぱなしでゆっくりと過ごせました。

お風呂

大浴場は本館の建物にあります。男女別に1ヵ所ずつあり露天風呂が併設された男女入れ換え制となっています。泉質はナトリウム・カルシウム-塩化物・硫酸塩泉となっており、黒い湯の花に少し石灰のような匂いにツルりとした肌触りがある優しい湯感です。公式HPには加水はなしの冬季は加温対応もしているとありました。消毒もあるとのことでしたが顕著な消毒臭は感じられませんでした。どうやら塩素と紫外線でのダブル殺菌だそうです。オーバーフローがあり、湯口が源泉であれば湯量は多くはないものの循環放流式なのかと思われます。ヒノキと岩風呂の露天風呂がありますが、この度はヒノキだけのレポートです。

大浴場

内湯は10人ぐらいは余裕で入れる大きさで、画像では溢れ出しは見えないのですが、時間帯により所々からお湯がゆるゆると溢れ出ています。

この湯量をさすがに循環しているとは思えないので恐らくは源泉だと思われます。源泉温度が45度なので湯口では丁度良い湯温で注がれていました。

岩風呂の露天風呂は開放感のある造りとなっていましたが、ヒノキの露天風呂は目隠しが多く設けてあります。岩風呂の方は白い析出物がしっかりとついた湯口がありました。

露天風呂の湯口もトロトロとかなり少ない湯量です。捨て湯の切り口からはこれと同じぐらいの湯量の溢れ出しがありました。公式HPを見ると溢れ出しがない画像となっているので往訪時と現在では仕様が異なる?のかもしれません。

脱衣所にはFreeのアイスが置かれています。高級旅館では多くなったアイスのサーヒス。

浴場へ手ぶらで行けるタオルセットの用意もありました。

離れの部屋露天風呂

改めて部屋の露天風呂を。決して大きくはない1人用ですが100%生源泉かけ流しの湯舟となっています。常盤ホテルさんの源泉かけ流しを堪能するには離れに泊まる必要があります。

上の湯口はチョロチョロと少なく、これで源泉かけ流し?という湯量しかありません。冬季だと冷めてしまったり、湯舟の上の方だけが熱くて下冷めてしまうんじゃないの?と思ってしまいます。

オーバーフローは注ぎ口よりも明らかに多い湯量を呈しています。入浴して溢れでた大人1人分のフローはすぐに回復するぐらいの投入量がありました。

実は湯口は1つではなく、かなり熱めの湯が足元湧出されていました。ありがたくもこの足元湧出のおかげで、冷めることがなく入れるがチェックイン直後はかなり熱かったので、入れない場合は水で薄めて下さいとの説明。

明らかに大浴場よりも湯力を感じるツルツル感に加え石灰臭も豊潤です。しかも、ちょっとオイリー?な香りも感じられ黒い湯の花も明らかに多く見受けられます。

源泉レバーがあると説明頂いたのでダバダバ源泉でご馳走だ!!と思い、湯もみをしまくって入浴しました。が、高温生源泉の温度のままなのでしょう、足元湧出が熱すぎて長くは入っていられないので、もったいながらも加水が必要でした。足元湧出なので加水しても底から源泉が加水湯をどんどん捨ててくれるので、常に新しい源泉が楽しめるのはうれしいところ。

食後は露天風呂で一日の最後に最高のビールを。

お料理

夕はお部屋食、朝は本館の御食事処での案内となっていました。手の込んだ季節の前菜

から地物と方々のお取り寄せ豪華商材を使った、いずれも献立もメインディッシュと言っていいような会席料理となっています。と言っても、素材の風味だけではなく調理は丁寧に仕上げてあり、ベストタイミングで熱い物は絶対に熱々で配膳されます。当たり前かと思いますが、調理場が近くない離れでは冬場などは冷めてしまうこともしばしば。配膳係さんが配膳前調理をしているような感じでもあり、かなり気を配った配膳をしてくれます。お部屋のフリー冷蔵庫の飲料も食事の時にどうぞと案内がありました。

最初の配膳は食前酒。前菜、アミューズです。献立には料理長とシェフと連名があり洋食の要素も加えているような内容です。

献立は頂いたお品書きをもとに書いてあります。内容に関しては説明して頂いたものと、実際口にした感想を交えて記してあります。個人的な感想なのでご参考程度に見ていただければ幸いです。

夕食

【食前酒】:~本日の食前酒~ 山梨県名産のすもものお酒「貴陽」

「世界で一番大きなスモモ種を使った甘くて口当たりの優しいお酒です。」と献立にあります。日本一の収穫量と大きさにギネス記録があるという、すももを使ったお酒は喉が少し熱くなるほどのアルコールがありそうです。甘味が強いがスモモの特製上酸味も強いが上品な味わいは流石ワイン王国の山梨県。

【アミューズ】:~御食事のはじめに~

・勝沼産のピオーネ干しぶどう 地元人参 リンゴサワークリーム添え

・地元産南瓜の柚子味噌炙り

献立には「山梨のブドウは生だけでなく干しぶどうもおすすめです」とありました。早速洋テイストの盛り込みです。よくある甘味の強い干しぶどうではなく、単体では甘味も強いが渋みも強く少し癖があります。しかし、細かく刻んだリンゴを混ぜ込んだサワークリームは、リンゴのシャクっとした食感の変化に加え、クリームの酸味が干しぶどうの渋みを包み込んでクリーミーなまろやかななブドウ味に変化させています。台座には塩リンゴを配し、盃の傍らの素揚げ南京には旬の柚子を使った味噌は緩やかに、あられで彩りよく。

【前菜】:

①富士の介の昆布〆 ヨーグルト巻 ②ミニトマトの和風スープ煮 木の芽

③春菊の胡麻和え ④鰻の棒寿司 太葱 柚子胡椒

⑥浅漬けミニ大根 枯露柿抹茶揚げ からすみ添え

②ミニトマトはとても甘くフルーツトマトの類でしょうか。綺麗に湯剥きをしてカツオがたっぷりと薫るスープに浸してあり、「トマトを口に含んでスープを後から飲んで味わって下さい」というご説明。口腔内調理ですね。確かにカツオが混ざるとトマトの青甘さが引き立ち、かなり若い葉山椒が全体をパッキングして締めているようです。どこかで同じような味わいをいただいたような・・・思い出せず。 ③春菊はまさに冬の青菜の代名詞ですが、とても香り豊かな菊だが苦味を除した若菜で、胡麻がしっとりと漂い胡桃をちらしたナッツでさらに香ばしく。器が月だらかか星を模った人参の飾り切りを添え付けてあります。 ④とてもたくましいネギはかなりの大人味は自然の味をそのままに、焼きを入れて辛味の柚子胡椒を添えてあります。地物のブランドネギとかなのかな?ウナギの棒寿司は普通においしく、肉厚ウナギにもっちり酢飯が実によく合います。耳は胡瓜と目は黒ゴマの雪ウサギは献立には乗っておらず「ウサギはポテトサラダです」と配膳係の方より。むっちゃ白いポテトサラダでジャガイモの土臭さがありません。北信でよく見るイモなますのように水にさらしてから纏めてあるのか。

①雪囲いを被せた器には「富士の介」と呼ばれるサーモン。♂キングサーモンと♀ニジマスを掛け合わせた山梨県のブランド鱒の一品です。トロッとているが身振りは意外にもしっかりとして紅身味は昆布で〆られてしっかりとしています。献立にある発酵のヨーグルトの滑らかな乳化味を楽しんでいると、トッピングの山葵ビーズが弾けると一気に引き締めてまとめあげる味変はとても新鮮。完全に和と洋が融合しています。

我が家は写真撮りと味を吟味するので、毎度1時間半を要する食事時間です。なのに・・・前菜を食べ終わったのをカメラでも仕込んでいたの如く配された凌ぎと造りは、2段の弁当箱と四角の大きな緑のお皿にはお造り。本ワサビは頭から水平にゆっくり擦って酸化を抑えて甘みを持たせてあるのか造りには好みの味わい。ちなみに説明内にある再仕込み醤油、配膳係の方から「濃厚でコク深い」と説明はあったものの、醤油器の中ではトロトロなので溜りなのでしょう。しかし、想像していたよりもとんでもなく醤油味と醤油薫りは密しているのに飲み干せてしまうほどに塩は薄い。素材の味だけを引き出すために仕込まれた醤油のようです。

【凌ぎ】:~常盤の冬の三種盛り~ 甲州牛 本鮪 蕪羅包み寿司

弁当箱を開けると握りが4貫。献立には「常盤名物の甲州牛と本鮪、冬の味覚の蕪を共に握りでどうぞ」とあります。

下段は甲州牛の肩ロースかミスジかというサシ具合でした。照りっと輝く赤身と脂身のコントラストに軽くローストにしてあるようにも見えます。加味は塩にごま油を沁み込ませた物で「添えてある白葱の刷毛で塗ってお食べ下さい」とのこと。天然素材を刷毛に味付けをする・・・新し発想です。何度も噛み進めると上質な牛脂の匂いはしっかりと味わえるのに、ほんのり酢飯とごま油塩が不思議と牛脂のこってり感を程よく抑えているようです。甲州牛を口にしたのは2度目ですが、他のブランド牛に比べると脂の尖った感じがなく純粋な牛旨味が素晴らしい。本わさびだけでも十分に旨味を楽しめます。

上段の本マグロはとてもシルキーかつ滑らかに溶解し、赤身と中トロの間程だが鮮やかな赤身の旨味があるにも関わらず脂加減もマイルドです。口に残る物はなくマグロのシャトーブリアンみたいな感じでしょうか。しかも、牛握りよりもシャリは酢と甘味は強く感じらます。もしかして酢飯自体が魚と肉で使い分けている!?素材の味が酢飯に映っただけ説もあるかな・・・。

カブラは柔く甘酢に仕立てて酢飯を巻き上げ赤いワンポイントは酸味を抑えた梅肉に三つ葉軸の帯で締めカブラ着物を着せています。この握りだけ酢飯にとんでも香ばしい胡麻を混ぜ込んであり、絶妙な酢の酸味、胡麻の風味はマグロや牛よりも美味く、まさにお口直しの超絶な逸品でした。付け合わせのミョウガも爽やかさを殺さない酢加減が素晴らしい。

【まぐろ】:~常盤名物~ 本鮪平造り 炙り

「山梨は鮪消費量日本一の土地柄です、長崎五島列島で水揚げしてすぐに空輸した鮪です。再仕込み醤油でお楽しみください」と献立に追記されています。いや~献立内での説明本当にありがたく助かります。マグロ尽くしのお造りとは実に珍しい。

世では中トロと呼ばれる部位ですが、握りの物より脂加減が強く常盤ホテルさんでは赤身に近いの分類です。1㎝ぐらいの厚みを3貫・・・普通は7㎜ぐらいを2貫ぐらいじゃないかという贅沢な本マグロの造りです。脂がうるうると涙ぐんでいるよういも見えます。握りの赤身よりも僅かに前進した脂加減は口に引っ掛かる部位がない究極の中トロ前。

炙りは中トロと大トロの間ぐらい綺麗な透明感のあるピンク色です。表面はしっかり熱を入れ、中は味を引き締めたタタキの様。見た目からすると中心部はとろけそうな見た目ではありますが、ジャキジャキというかザクザクというか何とも表現しがたい、しっかりとした筋繊維の歯触り。一口そのままで口にすると頼りない?旨さもなければコクも少なく感じる。しかし、再仕込み醤油に深めに浸すと、手を顎に当ててしまうぐらいに熟トロマグロを感じるのは何故か。歯に掛かるものはなく歯応えはシルキーで旨味もシルキー。厚みが1.5㎝ぐらいを2貫と量はやはりおかしいです。まさに食感は肉。

白色の白身のような一貫は大トロです。本マグロ・黒マグロの味わいは肉です。和牛肉は美しい霜降りをつくるのに難儀するのに、本マグロは自然にこの色合いになるとは神秘としかいいようがありません。ストレートなマグロの脂は融点が低く、口に入れて軽く3回4回咀嚼すると飲み込まざるを得ない食塊になる刹那。私的には造りよりも、むしろ握りで酢飯の炭水化物で口内調理の欲求にかられました。

【椀物】:地元冬大根の風呂吹き 特製甘味噌

造りを食べ終わったのを見計らったように、菊?を模したかのようなお椀にもられた「ふろふき大根」がやってきました。

蓋を開けると大根の甘くもほろ苦いような香りと共に、ねっとりと絡みつくような味噌の湯気が立ち上がります。献立には「箸でほろりと切れるやわらかな味覚」とあり、配膳係さんのお言葉も「一日半ほどかけて作った物で、大変柔らかくなっております」とのこと。木の芽や柚子を添えるでもなく、凄くシンプルで素朴な造形だが見た目からして上品さを感じずにはいられません。

柔く炊き上げてあるということでしたが、繊維質はガッツリとしていて力加減は、ケーキのスポンジを裂く2倍以上に力がいるぐらいです。しかし、相方のは箸で持ち上げるのも難しいぐらいに柔かったようで、大根といっても先は瑞々しく、頭は線維が硬く、当たる部位によって食感は異なります。

最初の一口では大根は主張せずとても丸い味わい。炊いた出汁は、やはり昆布か。さらに透明感を出すためには、雑味をとる米の研ぎ煮立てなんでしょうか。実際、大根は独特のほろ苦さや辛味の要素はなく石英のようです。

特製甘味噌は焦げ茶色を呈した赤味噌の色合いですが、砂糖、酒、味醂のような甘味成分が強くまったりとした尖りの無い熟成の味わいは白味噌風です。大根からは常にお出汁が染み出て器に満たされていきます。これに呼応して大根を食した後の残り汁は、甘味噌と交わった味噌汁となっており2度美味く楽しめる椀となっていました。

【煮物】:富士桜ポークの角煮 地元彩り野菜

火傷するほどに熱せられた玉蓋は風呂吹き大根との温物2品配膳です。

蓋を開けると蒸気が沸き立ち、石灰と水の化学反応による蒸気熱で冷めないようにしてある心遣い。「冬の人気のお品です、地元特産富士桜ポークを使った一品」と献立の記されています。配膳係さんの説明から、常盤ホテルさんの定番料理のようです。

とにかく蒸気が強く蒸し物のように感じますが本質は蒸しではなく献立通り煮です。バラ肉の脂を活かした煮凝りのような薄醤油と酒のまったり出汁衣を纏っているが、いわゆる居酒屋のこってり角煮ではありません。ほろほろの肉質は圧力鍋を使い、敢えて濃い味にせず出汁と豚バラ脂の美味しい所だけを凝縮させて、出汁衣を纏わせて上品に仕上げた物かなと想像してみます。彩の野菜も一手間があり、インゲンをグラッセの様に仕立ててありました。

【洋皿】:アワビのクリーム煮 ポンデケージョ添え

こちらも椀物と煮物と同時に配膳されて五徳の上へ移動です。ここでも洋の中継ぎです。手際よく燃料に火がはいり、「ちょうど温まったころにパンをお持ちします」と一言添えて退出されました。

椀と煮をちょうど食べ終わった頃合いを見てか、びっくりタイミングでぷくりぷくりと煮立ってきました。

火が消える頃を見計らって配膳係の方がチーズパンであるポンデケージョに、「お好みと味変にオニオンをどうぞ」とサーブしてくれました。「パンにつけて食べるとよりおいしくいただけます」と献立にあります。

チーズパンは焼き立てのようにホックリと熱くパンを開くと、表皮はさくっと焼き上げて中身はチーズも相まってか、もっちもっちで発酵チーズの薫りはチェダーチーズでしょうか。薫りは豊潤だが意外にもたつかない。

薄切りのアワビは4切れ程入っていますが、クリームスープにはアワビ味はほとんどしない。どちらかというと生クリームとバターが豊潤なこってりスープで、アワビは食感とコクを楽しむアクセントとしての役割のようです。アワビよりも具材のマッシュルームとほうれん草の方が香りは強く、火が入って余計な水分が飛び濃熟されており、ドライオニオンの薬味と共にパンに乗せるとチーズとの乳の深みが堪りません。

【強肴】:甲州牛溶岩石焼 酢辛子 黒塩胡椒 和風おろし

最後に用意されたのはメインの甲州牛です。献立の一言には「甲州の溶岩石をつかうことでA4牛が遠赤外線効果で美味しく焼き上がります」と付記されています。「熱が行き渡ると溶岩石の表面が濡れたようになってきた頃が焼き時です」とのご説明。

パッと見た感じは握りと同じミスジのようにも見えますが脂のサシ具合は肩ロースのようで200gぐらいありそうです。

順次焼きを進めていると脂加減の風味がやけにまろやかで飛騨牛や近江牛のような和牛独特の「俺は和牛だぜ!旨みが分かるだろ!」といった強脂ではない。いや脂は焼くと滲み出ているのですが、独特の和牛脂の風味がとにかく主張せず中性的にまろいです。外国産の臭みはすぐに分かりますが、国産牛の臭みは旨味です。私的にはそれすらも感じない甲州牛。添え付けのナスに焼き出た牛脂を吸わせると至福の揚げ茄子になりました

味付けは右から黒コショウ塩、強酸味のからし、岩塩を使った梅塩かと思ったのですが、梅塩ではないと配膳係の方からのお返し。妙に酸味があったので梅塩かと思ったのですが正体は分からず。回答がないのは秘密なのか配膳係さんが知らないのか・・・。

岩塩、酢からし、黒コショウにしても、そっと少しだけ付けると甲州牛に合うように調整されてどれもおいしい!和牛のバロメーターがあるとしたら、すべての項目において秀でた部分がなく中性的だが、それがいい。酢からしは和牛脂に混ざると酸味と辛味はびっくりするほどに中和されて、混ざり気のない和牛味だけが味わえました。よく考えられています。

最もおいしく口にしたのは和風おろしの漬けダレです。タマネギをローストしたような風味があり、醤油は緩くタマネギ本来の甘味が優しさがある漬けダレは塩加減は弱く肉の旨味を楽しめるように仕立ててあります。上品に仕上げた漬けダレに、造りにあった甘く擦った清い本ワサビと一緒に食すると、どこにも尖らない甲州牛がバロメーターのど真ん中の絶品の味を演出しています。

「無料で追加ができますが、如何致しますか?」通常特典なのか離れ客室の特典なのかは分かりませんが、もちろん「お願いします」と、お頼みすると全く同0じ肉質量の100g程配膳されたました。この量はすでに1食分のステーキです。このお替りはもしかしたら特別室だけのサービスかもしれません。

【御飯】:牛ごぼうご飯 山梨名産梨北米

【香の物】:野沢菜

【留椀】:あおさ汁

目の前に配膳されると清いショウガとゴマの香りが襲い掛かってきます。口に含むと和牛脂と土濃いゴボウが舌をノックします。ゴボウの土臭さはショウガと共にいなくなりゴマの香ばしさと牛の味わいだけが残ります。喉が渇かないほどの醤油と和牛脂の甘さが絶妙でお茶碗がすぐに空っぽになります。

ここで追撃があり「よろしければ、御櫃でおかわりをおもちします」との提案がありました。これまでのお品ですでに満腹。食べたいけど絶対食べ切れないのは明白で、やんわりとお断りしました。今思えばたらふく食っとけば!と思いもあり勿体ないが残すのも勿体ない。香の物はシンプルに野沢菜。止椀は赤出汁に海苔を浮かべた物ですが、仕立ては白味噌のような優しさもある深みのある赤味噌。自家製味噌でしょうか・・・。

【水菓子】:苺のケーキと彩フルーツ

料理長さんと連名にあった洋食シェフさんの監修ケーキかな。甘さを抑えたキメがとにかく細かい生クリームに、サンドしてあるスライス苺との相性がよく甘味と酸味のバランスがとてもマイルド。 苺は紅ほっぺ?柑橘は普通のオレンジですか?と尋ねると「オレンジです」との返答。食べてみると最初はオレンジ風味だが和みかんの甘さがある。何より見た目に種は全くないし、皮は薄いしスジがなく、身は瑞々しく果汁は高級和柑橘のそれです。オレンジと和柑橘の掛け合わせた品種のように感じました。美味しいが、フルーツ王国の山梨は品種が多くてよく分かりませぬ。

ギヤマンのおちょこには一口のデラウェアのワインが添えてあました。山梨のワインは香りはいいが酸味辛味が強い印象があります。煮切っているような感じはなく大人味で、辛味により水菓子の甘さを引き立ているようです。

夕食後はインクルーシブのシャンパンをお口直しにいただきました。

朝食

朝食は本館にある「曙」という個室の御食事処でいただきました。

時間に合わせて御飯と汁物以外は出揃っていました。席に着くと目の前で作る温豆腐に火が入ります。

・中落ち本鮪?

・サラダ(グリーンリーフ、トマト、トレビス、胡桃、クコのみ、フレンチドレッシング)

・牛時雨煮

【お重上段】

・大根しらす

・アサリの佃煮

・黒豆煮

・香の物、ほうれん草のお浸し

【お重下段】
・銀鮭の塩焼き

・かまぼこ、らっきょ紫蘇巻き

・きんぴらごぼう

・煮物椀(椎茸、蓮根、飛龍頭、絹さや)

・自家製豆腐(わけぎ、佃煮昆布、擦り生姜)

・ヨーグルト(みかん、ブルーベリー、チャービル)

・玉子焼、大根おろし

・ぶどう酢

・白米

・味噌汁(なめこ、わかめ)

とにかく品数が多く朝食和食膳の全てを盛り込んだ内容となっています。全体的に甘味の濃いお品が多い印象でした。夕食でもいただいたマグロは中トロで細かく刻んだ山芋を掛けてあり、これがとにかく量が多く朝から豪華でマグロ丼で一食いけます。牛しぐれ煮は甲州牛を使ってある和牛味です。香の物と一緒に添えてあるのは、ほうれん草のお浸し?炒め?ゴマ油がゆるりと香る変わった物。らっきょと紫蘇をやさしい甘酢風に漬け込んで、らっきょを紫蘇でくるりと巻き上げた面白くも美味しい一品もあり、煮物椀は温かくこれはかなりの甘出汁で椎茸の香りが濃厚な「どんこ」でした。玉子焼は90年以上変わらない少し甘めの味だそうで、かなりしっかりと焼き上げた弾力が凄かったです。クリームチーズのような匂いがある濃厚なヨーグルトもうまく、爽やかな強酸味のぶどう酢はロゼワインのようで上品。どれも手作りで全て食べると動けなくなるほどにお腹一杯になりました。

本来であればウェルカムドリンクであった、ぶどうジュースをチェックアウト前にいただきました。お茶とお茶請けのサクランボゼリーも用意していただきました。

まとめ

とにかく夕食は高級食材をふんだんに使ってあり、その良い所をどのように配膳するかを熟考した内容となっています。ただ、当時は離れ専用の料理だったと記憶しているのですが、本館でも同じ内容の料理がいただけるプランがあるようです。もしかしたらお替りステーキがなかったり、画像をみていると量と多少の質が異なる印象を受けます。離れのお客さんはリピーターの方が多いのか慣れた印象で、源泉かけ流しとプライベートステイを満喫したいお客さん向けなのかと思います。

温泉にこだわるなら離れ一択で、激熱の源泉なので冷ます必要がありますが、冬季であれば加水する必要はなく溜め湯をしていれば自然に冷めていきます。源泉量は豊富で蛇口で調整できるので新鮮湯が楽しめるのは最高至極です。調整が面倒な方は本館での宿泊で大浴場でも十分満足できそうです。

お茶やコーヒーの備品もさることながら、冷蔵庫がフリーで高級離れ宿としてのサービスもきめ細やか。離れのお客さんだけかもですが、お客さんの顔を憶えているスタッフの多い事・・・社員教育がとても行き届いていて悪い事ができません。ハイクラスのお宿に行くと従業員の方の気遣いは素晴らしいものですが、常盤ホテルさんの従業員さんは全員が全員、とにかく丁寧な対応をして下さいます。パッと頭に連想されたのは八ツ三館さん、笹屋ホテルさん、おちあいろうさん。

離れのお部屋は広々として、気が向けば風呂に入り、コーヒーやお茶の用意もたっぷりとあるのでダラダラと過ごせます。さらに気が向けば冷蔵庫からビールを取り出して飲んで寝てw 肉とマグロは美味い宿はたくさんありますが、癖のない和牛とマグロを堪能したくなったら常盤ホテルさんに再訪したいと思いました。

宿泊料金

山梨県の高額クーポンがあったのでこれ以上の割引はないだろうと宿泊に至りました。記事を書いた2024年7月時点では、お値段変わらずのようで頑張っておられます。時折、セール商品で見かけることはありますが、通常予約であれば「じゃらん」からの高額クーポン利用が最もお得に泊まれるかと思います。

宿泊日:2022/冬

旅行サイト:楽天トラベル

プラン:『源泉かけ流し』をひとり占め。贅を極めた『特別会席』を部屋食で。露天風呂付客室~ロイヤルSTAY~

部屋のタイプ:離れ露天風呂付客室 部屋指定不可

合計料金:88000円(2人)

山梨県ご当地クーポン:25500円

支払い料金:62500円

加算ポイント:625p