香港映画レビュー&解説「闔家辣 Chili laugh story」 (original) (raw)

闔家辣 Chili laugh story - 維基百科,自由的百科全書

【本記事は極力ネタバレせず記述していますが、心配な方は映画鑑賞後にご覧くださ い。】

92分と短い事もありテンポよく見れる、まさに賀歲片(春節映画)らしく楽しめるコメディ映画。コロナ期の大変だった時期を懐かしく思い出させてくれる。

闔家辣

www.youtube.com 《闔家辣》(Chilli Laugh Story) 7月14日上映

【スタッフ & キャスト】

2022年 香港 92分
監督:鄭晉軒(コバ・チャン)
主演:鄭中基(ロナルド・チェン)梁詠琪(ジジ・リョン)呂爵安(イーダン・ルイ)吳君如(サンドラ・ン)

【あらすじ】

2020年。張國倫【Alan、鄭中基(ロナルド・チェン)】と陳美貞【Rita、梁詠琪(ジジ・リョン)】夫婦の息子、張柏軒【Coba、呂爵安(イーダン・ルイ)】は、同級生たちに母親が作った麻辣醤(辣椒醬)の味を称賛され、これをネットで売り出すことを思いつく。
折しも香港は新型コロナの感染拡大から香港でもステイホームが呼びかけられ、ネット通販で麻辣醤は飛ぶように売れ、商売は大成功かと思ったのだが…

【感想】

92分と短い事もありテンポよく見れる、まさに賀歲片(春節映画)らしく楽しめるコメディ映画。コロナ期の大変だった時期を懐かしく思い出させてくれる。

今や映画俳優としても認知できる程に出演本数も演技力も確かな、でも大人気アイドルグループMIRRORのメンバー・呂爵安(イーダン・ルイ)の映画初出演の主演作だが、きっちりいい演技を自然体で見せてくれていて、映画としてしっかり仕上がっている。特にコミカルにハイテンションなシーンは最高に魅力が爆発してて、正にぴったりな役に当たっているのがわかる。

闔家辣

ストーリーはコロナ禍のステイホームだった頃、監督の実体験から出来上がったもので、どこにも行けず窮屈だったあの頃のように、登場人物も家族と友人、それに恋人くらい。せいぜい家の近所という狭い世界での出来事だ。

でも様々な知った顔がたくさん顔を出し、まさにコロナによって夏に延期になったとはいえ本来は春節映画として作られた通り、こんな状況でもみんな明るく元気にやっていた事を感じてすごく楽しく元気づけられる映画だ。

最後には、彩蛋(ルースター)という賀歲片(春節映画)お約束の特典かと思うような映像が2つもくっついていて、制作会社のひとつ・天下一電影のオーナーである古天樂(ルイス・クー)まで出てきて、短い上映時間でも充分に満足なお祭り映画になっていた。

闔家辣

【トピック】

◯ 当初2022年2月1日からの春節公開予定だったが、コロナ禍の為に延期となり、7月14日から香港とシンガポール・マレーシアなどで一般公開。中国大陸では公開されなかった。公開初週と2週目に、劉青雲(ラウ・チンワン)主演「神探大戦」やマーベル映画「ソー:ラブ&サンダー」などを抑えて興収ランキングで1位を獲得。
興行収入は3270万香港ドル(6.1億円)というヒット作となった。

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◯ 監督の鄭晉軒(コバ・チャン、画像左)は、DBC數碼電台ラジオやユニバーサル・レコードで企画制作などを手掛けた後、2019年から香港最大の音楽フェスティバルClockenflapの制作に携わる。だがコロナの蔓延が始まり2020年開催分のイベントが最終的にキャンセル。そうした期間に親の麻辣醤(辣椒醬)の販売を手伝ったという実話が、プロデューサーとなった吳君如(サンドラ・ン)らに気に入られ、映画化へと話が進んでいった。今作が映画監督デビュー作。

闔家辣

◯ プロデューサーに本作で叔母役で出演している吳君如(サンドラ・ン)が就任し、夫の名匠・陳可辛(ピーター・チャン)監督と夫妻の制作会社・我們製作有限公司ごと制作・撮影に参加している。

呂爵安(イーダン・ルイ)

◯ ひとり息子の高校生、張柏軒(Coba)。役の英名はそのまま監督の名前になっている。母親の辣椒醬を売り出すことを思いつく。

◯ 本作が映画初出演となる。アイドルグループMIRRORのメンバーとして2018年にデビュー。名門・香港大学卒の優等生だ。
俳優デビューで主演ドラマの香港版おっさんずラブ「大叔的愛(2021)」、映画2作めとしてシリアスな良作「香港ファミリー(2022)」、3作目で「四十四にして死屍死す(2023)」に出演している。
今年は春節映画として「盜月者(2024)」、翌月には「12怪盜(2024)」とMIRRORメンバー全員が出演する映画が立て続けに公開されヒットした。

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※上の画像で呂爵安(イーダン・ルイ)が着用しているTシャツの「音樂使人貧窮」は、坂本龍一の自伝「音楽は自由にする」の香港版タイトル「音樂使人自由」をもじった言葉で、香港の独立系音楽ブランドOC2Sが、コロナ禍で人々が困窮している状況をサポートする目的で制作したTシャツの第二弾。なお前半では同じくOC2Sが第一弾として制作した「音樂使人自由」Tシャツを着用している。

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鄭中基(ロナルド・チェン)

◯ 父親・張國倫(Alan)

◯ 有名歌手だが俳優もしており、「低俗喜劇(2012)」で金像獎助演男優賞を受賞、「大樂師 為愛配樂(2017)」でも金像獎主演男優賞にノミネート。最近では「四十四にして死屍死す(2023)」に出演、良作「年少日記(2023)」では主演した他、「ドラゴン・フォー(2012)」や、「スペシャルID 特殊身分(2013)」などでも知られている。

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梁詠琪(ジジ・リョン)

◯ 妻・陳美貞(Rita)。自身の故郷・潮州の味である辣椒酱を作っていた。

◯ 歌手としても特に2000年頃の多数のヒット曲で知られている。2000年頃にファンケル香港のCMにも出演していた。
俳優としては劉徳華(アンディ・ラウ)主演「フル・スロットル/烈火戦車(1995)」で香港金像奨・新人賞を受賞。中国映画「再見 また逢う日まで(2001)」でも映画賞を受賞している。その他、張艾嘉(シルビア・チャン)監督「君のいた永遠(とき)(1999)」や金城武との共演作「ターンレフト ターンライト(2002)」「アンディ・ラウの 麻雀大将(2002)」、香港マカオの中国への返還や台湾などを描いた「姉妹関係(2016)」など。

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吳君如(サンドラ・ン)

◯ 父親の母、張惠儀(Wendy)

◯ 吳君如(サンドラ・ン)は今作のプロデューサーも務めている。1980年代後半から数多くの黄金期香港映画に出演してきた名女優。「ポートランド・ストリート・ブルース(1998)」「金雞(2002)」で香港金像奨・主演女優賞を受賞。
主な出演作は「ゴッド・ギャンブラー/賭聖外伝(1991)」「チャウ・シンチーのロイヤル・トランプ(1992)」「ジュリエット・イン・ラブ(2000)」「歳月神偸(2010)」「ゼロからのヒーロー(2021)」などなど。

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その他の俳優

◯ 張柏軒(Coba)の彼女・李家慧(Sam)を演じる袁澧林(アンジェラ・ユン)は、1993年生のモデル、俳優。アーティストMVで銀杏BOYZの2017年の3枚のシングル「エンジェルベイビー」「骨」「恋は永遠」、そしてアルバム「ねえみんな大好きだよ(2020)」のジャケット、Vaundy「Tokimeki(2023)」などに出演。
映画の主な出演作は、東京国際映画祭出品作「離れていても(2023)」、呂爵安(イーダン・ルイ)の2作目「香港ファミリー(2022)」、そして良作「星くずの片隅で(2022)」などがある。

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◯ 同級生役の何啟華(ホ・カイ・ワ、画像左)&林家熙(ロッカー・ラム、画像右)

阿Deeこと何啟華(ホ・カイ・ワ)は、呂爵安(イーダン・ルイ)のグループMIRRORの弟分、ERRORのメンバーで、メンバーになるより前から芸能活動をしており、映画にも「香港ウェスト・サイド・ストーリー(2018)」「ファストフード店の住人たち(2019)」「散った後(2020)」などに既に出演していた。今作の後も、黃子華(ダヨ・ウォン)主演の大ヒット作「毒舌弁護人(2023)」の他にも、「金手指(2023)」「飯戲攻心2(2024)」など今やヒット作の常連となっている。

林家熙(ロッカー・ラム)は映画「最初の半歩(2016)」で俳優デビュー。その時の役名からロッカーと呼ばれるようになった。今作にも出演の吳君如(サンドラ・ン)が主演した「ゼロからのヒーロー(2021)」「レイジング・ファイア(2021)」「神探大戦(2022)」などに出演している。

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◯ 楊偉倫(ヨン・ワイルン)

宅配スタッフを演じた楊偉倫(ヨン・ワイルン)は、ヒット作「正義迴廊(2022)」での鬼気迫る演技によって一気に知られる事となった。以来「全世界どこでも電話(2023)」「作詞家志望(2023)」「12怪盜(2024)」「談判專家(2024)」といまや引っ張りだこの人気俳優となっている。

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◯ 古天樂(ルイス・クー)

今作の制作会社のひとつ・天下一電影のオーナーでもある。

1990年代から数多くのドラマ・アクション映画などで活躍してきた香港を代表する俳優・歌手。無数の映画に出演しているが「エレクション 死の報復(2006)」「ドラッグ・ウォー 毒戦(2012)」「ドラゴン×マッハ!(2015)」「SPL 狼たちの処刑台(2017)」「未来戦記(2022)」「アニタ 梅艷芳(2021)」「ホワイト・ストーム 世界の涯て(2023)」などに出演。今年は大ヒットカンフーアクション「トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦(2024)」で主演。

2013年には「天下一電影」という制作会社を設立。映画「6人の食卓(2022)」「四十四にして死屍死す(2023)」などの数多くの映画に出資している。

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