<社説>永住資格厳格化 外国人共生と矛盾する (original) (raw)

参院法務委員会で審議が始まった入管難民法改正案には、永住資格を有する外国人が故意に納税などを怠った場合、永住資格を取り消す規定が盛り込まれている。

共生社会の理念と矛盾する内容であり、永住資格を厳格化する規定は削除すべきだ。転職制限など「育成就労制度」の問題点と併せて議論を尽くすよう求める。

改正案は問題が指摘されてきた「技能実習制度」を廃止し、即戦力とされる「特定技能制度」に移行するための人材を育成する「育成就労制度」の創設が柱。特定技能には1号と2号があり、熟練した技能が条件の2号では家族の帯同や永住も可能としている。

人手不足の深刻化を受け、政府は特定技能の受け入れ枠を今後5年間で82万人に広げる方針で、永住者は増える公算が大きい。

こうした内容は有識者会議の検討を経て法案化されたが、自民党の提言に基づいて、永住資格の厳格化が新たに加えられた。

在留外国人341万人のうち、在留期間の上限や就労分野に制限のない永住者は2023年末時点で89万人に上る。

永住資格の取得は、原則10年以上の在留や納税などの公的義務を果たしている人が対象となり、資格の喪失はこれまで1年超の実刑判決や不正な手段で資格を得た場合に限られていた。

しかし、法案には故意に税金や社会保険料を納めない場合や、住居侵入などの罪なら1年以下の懲役でも永住資格の取り消しを可能にする規定が盛り込まれた。在留カード不携帯など入管難民法違反のケースも対象になるという。

政府は過度な適用は想定していないと説明するが、法的に永住資格の取り消し対象が広がれば、将来への不安が広がり、生活設計が立てにくくなる。横浜中華街を地元とする横浜華僑総会も法案反対の声明文を発表した。

現行法でも税金などの未納には日本人同様、督促、差し押さえや行政罰、悪質な脱税には刑事罰が適用される。それ以上の締め付けは外国人差別ではないのか。

背景には移民受け入れに反対する保守派の動きがあるが、労働人口が急減する中、経済規模や暮らしの質の維持にも外国人との共生は避けられない。外国人の人権を無視し、単なる労働力としか見ないなら「選ばれる国」(岸田文雄首相)になれるはずがない。