94年の歴史に幕を下ろす「としまえん」の知られざる歴史 地元出身の記者が愛を込めて (original) (raw)
「94年の歴史展」の会場の壁に貼られたメッセージ=いずれも練馬区で
ひいおじいちゃん、ひいおばあちゃんの代から今の子どもたちにまで愛されてきた、練馬区の遊園地としまえん。31日で94年の歴史に幕を下ろす。同区出身の記者としては名残惜しまずにはいられない。時に自虐しながらも、新たな挑戦をしてきた愛すべき地元の宝。知られざる歴史を記念に残そう。地元で生まれ育った記者が、愛を込めてお伝えします。
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八月下旬の猛暑日。事前予約制のチケットは完売だ。隣の板橋区から家族三人で訪れ、回転木馬のカルーセルエルドラドに並んでいた主婦阿部舞さん(43)は「遊園地はディズニーランドに行っちゃってたけど…ここはカルーセルがすごかったと思って」。
ドイツで一九〇七年に製作され、米国を経て七一年に登場したエルドラド。としまえんの至宝だ。二〇一〇年には日本の機械遺産に認定。気になる閉園後は解体、保管され、目下、次の設置場所が検討されている。
としまえんのシンボル「カルーセルエルドラド」
実はもう一つ、エルドラドと一緒にやって来た物が、四十九年間倉庫に眠っているという。幅八メートル、高さ三メートルほどの大きな自動オルガン。多くの部品が失われ、修復は断念したまま。「いつかどこかで、エルドラドと並べたい」と、開催中の歴史展でガイドを務める内田弘事業運営部長(65)は夢を語る。
内田さんが入社したのは八一年。二年後に東京ディズニーランド開園を控え、社内は「激震」に見舞われていた。客離れ防止の秘策は「招待券の大量配布」。券入りの段ボール一箱が道に落ちている、と警察から連絡が入ったこともあるとか。「おかげで、お金を払っていくところじゃないというイメージが…後遺症が残りました」
完成間もないころの「流れるプール」(としまえん提供)
夏はプールも名物。一九二九年に大小二つのプールができた際、小さなほうは「婦人用」だった。六五年、世界初の流れるプールの誕生は手探り。秋川渓谷で若手社員が川に入り、心地良い速さを調べ、落ち葉の流れで「秒速一メートル」に決めた。水が冷たいと評判だったのは、長らく井戸水を使っていたためらしい。
八八年導入の三十一本のスライダー「ハイドロポリス」も世界最大級。「二万人が二十分で滑るには」を考え作った本数という。
ガイドツアーに参加した練馬区の会社員河野晃子さんは「としまえんは練馬の誇り。アフリカ館が好きだったなあ」と寂しがる。六九年に三億円かけてできたアフリカ館は、当時では珍しく屋内を乗り物で巡るライド型アトラクション。九八年に姿を消す時は、ゾウの耳はちぎれ、...
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