読み方:さばんしょうこうぐん《savant syndrome;(フランス)savantは、賢人の意》自閉症や知的障害をもちながら、ある特定の分野で非常に卓越した才能を発揮する症状の総称のこと。Weblio国語辞典では「サヴァン症候群」の意味や使い方、用例、類似表現などを解説しています。">

サヴァン症候群とは何?わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

(サヴァンしょうこうぐん、: savant syndrome)は、極稀に知的障害自閉症などの発達障害等のある人の中で、ある特定の分野で非常に卓越した才能を発揮する症状の総称[1]。サヴァン症候群は、ある特定の分野の記憶力、芸術、計算などで、定型発達者よりも高い能力を有する人を示す[1]幼児自閉症の人の約 10%がサバン症候群であるとされる。女性よりも男性の方が多く、発達障害者でも稀だが知的障害者はそれよりも遥かに発症率が低い[2]

歴史

イギリスの医師ジョン・ランドン・ダウン1887年、厖大な量の書籍を1回読んだだけで全て記憶し、さらにそれを全て逆から読み上げるという、常軌を逸した記憶力を持った男性を報告した。その天才的な能力を持つにもかかわらず、通常の学習能力は普通である彼を「idiot savant」(イディオ・サヴァン=賢い白痴フランス語)と名付けた。ただし、彼が自閉症の診断基準を満たしている記述は論文には存在しない。論文上には「他の学習能力は通常である」と記載があるのみである。後に「idiot(白痴)」が差別的な意味を持つことから「サヴァン症候群」と改められた。

日本では、新渡戸稲造著の『修養』(明治44年、1911年刊行)「総説」の頁において、新渡戸がサヴァン症の米国の少年と会話をした記録が記述されている。それによると、新渡戸が米国の白痴院を訪れた際、「談話をした少年が普通人の遠く及ばぬ見識を懐いていて、専門家さえ舌を巻くがごときことをし、中でも驚いたのは、数学で非常に偉いものがあること」とし、「(彼は)算盤も一本の筆も用いないで正確な数字を答えた」と記し、例として、「79万3625に9万9673を乗ぜよと命じると、ただちに791億298万4625と答え、僕は3、4分かけて計算して答え合わせをした」と述べている。

原因

サヴァン症候群の原因は諸説あり、特定には至っていない。の器質因にその原因を求める論が有力だが、自閉症自閉症スペクトラム障害)のある者が持つ特異な認知をその原因に求める説もある。中枢神経疾患によって、後天的に能力を発現する場合もあり、これは獲得性サヴァン症候群と呼ばれる[3]。 なお、自閉症や発達障害、コミュニケーション障害のある者の全てが能力を持っているわけではなく、逆に健常者にも優れた能力・偉才、特定の分野の記憶力、芸術、計算などに、高い能力を有する人は存在する。

信州大学特別支援学校での調査によれば、ほとんどのサヴァン症候群児童は男性であり、これは自閉症児が男性に多いことに関係していると推察される[4]

また、いわゆる天才偉人の多くは円満な人格者ではなく、中には日常生活に支障が出る症状の人、時に自閉症やコミュニケーション障害に近い症状の人もおり、それがさらに極端になって「紙一重」を超えたのがサヴァン症候群だという見方もある。

能力の例

サヴァン症候群の能力として、主に記憶能力、カレンダ一計算、数学・数字能力、音楽、美術、機械的能力又は空間的能力がある[4]。サヴァン症候群の児童で最も多い能力は「記憶」に関する能力で、次に多い能力が「カレンダー計算」であった[4]

より具体的な例としては、以下のような例がある。

この他にも様々な能力(特に記憶に関するもの)がみられるが、対象物が変わると全く出来なくなってしまうケースがある(航空写真なら描き起こすことができるが、風景だとできない、など)。

以下の能力については信憑性への疑問が提示されている。[_要出典_]文献ではESPなどが挙がっていることさえある。[_疑問点 – ノート_]

映画『レインマン』での能力の描写

1988年に映画『レインマン』がヒットして、サヴァン症候群への関心が高まることとなった。原作を書いた作家バリー・モロー(英語: Barry Morrow)は、最初にテキサスのARC打ち合わせでサヴァン症患者キム・ピークと会ってインスピレーションを受けた。また、キム・ピークのもの以外のサヴァン症候群もレイモンドの役設定に盛り込まれた。

映画は、全体を通じて専門家の監修のもと、サヴァン症候群の様子が比較的忠実に描写されている。サヴァン症候群患者であるレイモンド役を演じたダスティン・ホフマンは、役作りの上でサヴァン症候群の患者何人かに会っている。ホフマンが会った患者の中でもレイモンドの能力や行動に最も近いのは、驚異的な速算力で有名だったジョゼフ・サリヴァンである。

著名人

以下に知的障害または自閉症障害、もしくはその両方があり、かつ優れた能力があるとされる人物を挙げる。

サヴァン症候群を扱った作品

小説

ドラマ・映画

漫画

アニメ

ゲーム

脚注

出典

  1. ^ a b 楊一凡,井澤信三「知的障害特別支援学校教員を対象としたサヴァン症候群に関する調査研究」『兵庫教育大学学校教育学研究』第30巻、兵庫教育大学、2017年11月、167-172頁。
  2. ^サバン症候群(サバンショウコウグン)とは? 意味や使い方”. コトバンク. 2025年2月24日閲覧。
  3. ^ 井元万紀子,刀坂公崇,北口響子,白川雅之,奥田志保「描画を通じて手段的日常生活動作の改善を認めた獲得性サヴァン症候群の1例」『臨床神経学雑誌』Advance Publication、日本神経学会、2020年、1-7頁、doi:10.5692/clinicalneurol.cn-001336
  4. ^ a b c 有路憲一,関口あさか「サヴァン症候群の実態調査とその実践的価値」『信州大学総合人間科学研究』第11巻、信州大学総合人間科学系、2017年3月、195-217頁。
  5. ^ オリバー・サックス『音楽嗜好症』(早川書房 2010年)。
  6. ^ Treffert, Darold. “Alonzo Clemons - Genius Among Us”. Wisconsin Medical Society. 2007年11月7日閲覧。
  7. ^ Treffert, Darold. “Tony DeBlois - A Prodigious Musical Savant”. Wisconsin Medical Society. 2007年11月7日閲覧。
  8. ^ a b c Treffert, Darold A. and Gregory L. Wallace (2003年). “Islands of Genius” (PDF). Scientific American, Inc. 2007年11月8日閲覧。
  9. ^ Jonathan Lerman:
  10. ^ Treffert, Darold. “Thristan "Tum-Tum" Mendoza - A Child Prodigy Marimbist With Autism from the Philippines”. Wisconsin Medical Society. 2007年11月7日閲覧。
  11. ^ Derek Paravicini:
  1. ^NASA Studying 'Rain Man's' Brain”. Space.com (2004年11月8日). 2007年9月14日閲覧。
  2. ^ Wulff, Jane (2006年11月). “Kim Peek and Fran Peek: 'I am important to know you'” (PDF). Multnomah Education Service District. 2007年9月18日閲覧。
  3. ^ James Henry Pullen:
  1. ^ Matt Savage:
  1. ^ Treffert, Darold. “Henriett Seth F. - Rain Girl”. Wisconsin Medical Society. 2007年11月7日閲覧。
  2. ^ Johnson, Richard (2005年2月12日). “A genius explains”. The Guardian. 2007年11月8日閲覧。
  3. ^Unlocking the brain's potential”. BBC News (2001年3月10日). 2007年11月8日閲覧。

参考文献

関連項目

外部リンク