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マルコフ数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/11/04 01:08 UTC 版)

マルコフ数(マルコフすう)は、マルコフのディオファントス方程式と呼ばれる以下の式

x 2 + y 2 + z 2 = 3 x y z {\displaystyle x^{2}+y^{2}+z^{2}=3xyz}

マルコフ数もマルコフの3つ組も無限個存在する。マルコフのディオファントス方程式が対称であることから、マルコフの3つ組は要素を並べ替えても再び方程式の解を与える。したがって、(上記の例のように) a ≤ b ≤ c {\displaystyle a\leq b\leq c} {\displaystyle a\leq b\leq c} を仮定して正規化することができる。最初の2つの3つ組を除いて、マルコフの3つ組 ( a , b , c ) {\displaystyle (a,b,c)} {\displaystyle (a,b,c)} は必ず3つの相異なる整数からなる。与えられたマルコフ数 c に対して、c が最大要素であるようなマルコフの3つ組が一意に定まるとする予想がある。

マルコフ数は二分木上に配置することが可能である(図参照)。あるレベルに置かれた整数の中で最大のものは、常にほぼ下から3番目にある。解の1つが2であるような3つ組に含まれるマルコフ数は、すべて奇数番目のペル数である(あるいは、 2 n 2 − 1 {\displaystyle 2n^{2}-1} {\displaystyle 2n^{2}-1} が平方数となるような n と言い換えてもよい)。また、解の1つが1であるような3つ組に含まれるマルコフ数は、奇数番目のフィボナッチ数である。したがって、以下のようなマルコフの3つ組は無限個存在する。

( 1 , F 2 n − 1 , F 2 n + 1 ) {\displaystyle (1,F_{2n-1},F_{2n+1})} {\displaystyle (1,F_{2n-1},F_{2n+1})}

ただし F x は_x_ 番目のフィボナッチ数とする。同様に、以下のようなマルコフの3つ組も無限個存在する。

( 2 , P 2 n − 1 , P 2 n + 1 ) {\displaystyle (2,P_{2n-1},P_{2n+1})} {\displaystyle (2,P_{2n-1},P_{2n+1})}

ここで P xx 番目のペル数とする。

奇数のマルコフ数は 4 n + 1 {\displaystyle 4n+1} {\displaystyle 4n+1}という形であり、偶数のマルコフ数は 32 n + 2 {\displaystyle 32n+2} {\displaystyle 32n+2} という形である。

あるマルコフの3つ組 (x, y, z) がわかっているとき、 ( x , y , 3 x y − z ) {\displaystyle (x,y,3xy-z)} {\displaystyle (x,y,3xy-z)} という形の3つ組もまたマルコフの3つ組である。マルコフ数は素数であるとは限らないが、マルコフの3つ組の要素は常に互いに素である。 ( x , y , 3 x y − z ) {\displaystyle (x,y,3xy-z)} {\displaystyle (x,y,3xy-z)} がマルコフの3つ組であるために、必ずしも x < y < z {\displaystyle x<y<z} {\displaystyle x<y<z} が常に成り立つ必要はない。実際、要素の順序を変えずに上記の変換を2回続ければ、元のマルコフの3つ組に戻る。そこで、(1, 1, 2) から初めて yz を入れ替えてから変換を行うという操作を続けると、フィボナッチ数からなるマルコフの3つ組が並ぶ。また_x_ と _z_を入れ替えてから変換を行うという操作を続ければ、ペル数からなるマルコフの3つ組を与える。

1979年に、Don B. Zagier は n 番目のマルコフ数が近似的に

m n = 1 3 e C n + o ( 1 ) with C = 2.3523418721 … {\displaystyle m_{n}={\tfrac {1}{3}}e^{C{\sqrt {n}}+o(1)}\quad {\text{with }}C=2.3523418721\ldots } {\displaystyle m_{n}={\tfrac {1}{3}}e^{C{\sqrt {n}}+o(1)}\quad {\text{with }}C=2.3523418721\ldots }

で与えられることを証明した。さらに彼は、(元のディオファントス方程式の非常に良い近似である) x 2 + y 2 + z 2 = 3 x y z + 4 / 9 {\displaystyle x^{2}+y^{2}+z^{2}=3xyz+4/9} {\displaystyle x^{2}+y^{2}+z^{2}=3xyz+4/9}が_f_(t) = arcosh(3_t_/2)に対して f ( x ) + f ( y ) = f ( z ) {\displaystyle f(x)+f(y)=f(z)} {\displaystyle f(x)+f(y)=f(z)} と書けることを示した。

n 番目のラグランジュ数(英語版)は、n 番目のマルコフ数から以下の公式によって求められる。

L n = 9 − 4 m n 2 {\displaystyle L_{n}={\sqrt {9-{4 \over {m_{n}}^{2}}}}} {\displaystyle L_{n}={\sqrt {9-{4 \over {m_{n}}^{2}}}}}

参考文献

  1. ^ Markoff, A. (1879). “First memory”. Mathematische Annalen 15 (3–4): 381–406. doi:10.1007/BF02086269. http://gdz.sub.uni-goettingen.de/index.php?id=11&PPN=PPN235181684_0015&DMDID=DMDLOG_0031&L=1.
  2. ^ Markoff, A. (1880). “Second memory”. Mathematische Annalen 17 (3): 379–399. doi:10.1007/BF01446234. http://gdz.sub.uni-goettingen.de/index.php?id=11&PPN=PPN235181684_0017&DMDID=DMDLOG_0045&L=1.

関連項目