乗算作用素とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/06 08:28 UTC 版)
「スペクトル分解 (関数解析学)」の記事における「乗算作用素」の解説
ある σ-有限測度空間 (S, Σ, μ) が与えられたとき、バナッハ空間Lp(μ)を考える。ある関数 h: S → C が本質的に有界であるとは、h が μ に関してほとんど至る所で有界であることを言う。本質的に有界な h は、Lp(μ) 上の次の有界な乗算作用素 Th を導く: ( T h f ) ( s ) = h ( s ) ⋅ f ( s ) . {\displaystyle (T_{h}f)(s)=h(s)\cdot f(s).} T の作用素ノルムは h の本質的上限である。h の本質的値域は、次の方法で定義される:ある複素数 λ が h の本質的値域に含まれるとは、すべての ε > 0 に対して開球 Bε(λ) の h の下での原像が、厳密に正の測度を持つときを言う。はじめに σ(Th) が h の本質的値域に一致することを示し、その後その様々な部分について調べる。 λ が h の本質的値域に含まれないなら、h−1(Bε(λ)) が測度ゼロを持つように ε > 0 を選ぶことが出来る。このとき函数 g(s) = 1/(h(s) − λ) はほとんど至る所で 1/ε によって評価されている。このとき乗算作用素 Tg は Tg · Th − λ = Th − λ · Tg = I を満たす。したがって、λ は Th のスペクトルには含まれない。一方、λ が h の本質的値域に含まれるなら、集合の列 {Sn = h−1(B1/n(λ))} を考える。この各 Sn は正の測度を持つ。fn を Sn の特性函数とすれば、直接的な計算により ‖ ( T h − λ ) f n ‖ p p = ‖ ( h − λ ) f n ‖ p p = ∫ S n | h − λ | p d μ ≤ 1 n p μ ( S n ) = 1 n p ‖ f n ‖ p p {\displaystyle \|(T_{h}-\lambda )f_{n}\|_{p}^{p}=\|(h-\lambda )f_{n}\|_{p}^{p}=\int _{S_{n}}|h-\lambda \;|^{p}d\mu \leq {\frac {1}{n^{p}}}\;\mu (S_{n})={\frac {1}{n^{p}}}\|f_{n}\|_{p}^{p}} が得られる。このことから、Th − λ は下に有界ではなく、したがって可逆でないことが分かる。 λ を μ( h−1({λ})) > 0 が成立するようなものとするなら、λ は Th の点スペクトルに含まれる。すなわち、その本質的値域から λ だけを含むようなある開球 Bε(λ) を選ぶことが出来る。f を h−1(Bε(λ)) の特性函数とすると、 ∀ s ∈ S , ( T h f ) ( s ) = λ f ( s ) {\displaystyle \forall s\in S,\;(T_{h}f)(s)=\lambda f(s)} が成立する。正の測度の原像を持たないような h の本質的値域に含まれる任意の λ は、Th の連続スペクトルに含まれる。このことを示すことは、Th − λ がそのような全ての λ に対して稠密な値域を持つことを示すことに等しい。与えられた f ∈ Lp(μ) に対して、再び集合の列 {Sn = h−1(B1/n(λ))} を考える。gn を S − Sn の特性函数とする。次を定義する。 f n ( s ) = 1 h ( s ) − λ ⋅ g n ( s ) ⋅ f ( s ) . {\displaystyle f_{n}(s)={\frac {1}{h(s)-\lambda }}\cdot g_{n}(s)\cdot f(s).} 直接的な計算により fn ∈ Lp(μ) が分かり、優収束定理から、 ( T h − λ ) f n → f {\displaystyle (T_{h}-\lambda )f_{n}\rightarrow f} が Lp(μ) ノルムにおいて成立することが分かる。 したがって、乗算作用素は剰余スペクトルを持たない。特に、スペクトル定理より、ヒルベルト空間上の正規作用素は剰余スペクトルを持たないことが分かる。
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