「位相偏移変調」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
位相偏移変調(いそうへんいへんちょう)もしくは位相シフトキーイング(英語: phase-shift keying, PSK)は、基準信号(搬送波)の位相を変調することによって、データを伝送する、デジタル変調方式である。
概要
PSKでは、基本波の位相を不連続に変化させることにより、デジタルデータを表現する。例えば、4種の位相を用いて表現する時(QPSK)、一つの位相には2ビット(00、01、10、11)が割り当てられる。 位相に割り当てられる各々のビットパターンをシンボルと呼ぶ。復調器は、変調において使用されたシンボルと位相の組み合わせに基づいて設計される。まず、受信信号の位相を明らかにし、次に、各位相が表現しているシンボルを基に、ビット列を組み立てることで元のデータを復元する。
受信信号と基準信号の位相差により、デジタルデータを表現する方式を、coherent phase-shift keying (CPSK)と呼ぶ。この場合、復調器は、基準信号と同期していなければならない。
受信信号における、位相の相対的な変化の量によってデジタルデータを表現する方式を、差動(差分)位相偏移変調(DPSK)と呼ぶ。この場合、復調器は基準信号と同期する必要がないため、比較的実装が容易となるが、復調時の誤りが生じやすくなるため、誤り訂正などによる補正が重要である。
序論
デジタル信号の伝送で使用される、主なデジタル変調技術は、次の三種類である。
全て、データ信号に応じて、基準信号、搬送波(通常シヌソイド)の一部の特性を変化させることによってデータを伝送する。 PSKの場合、データ信号を表すために位相を変化させる。 この様にPSKで信号の位相を利用するためには、以下の二つの方法がある。
- 情報を伝達する信号の位相自体を見る方法。この場合、復調器は受信信号の位相を比較する基準信号を持たなければならない。
- 情報を伝達する信号の位相の「変化」を見る方法。すなわち、位相の差を判断する。この方式の一部の構成では、基準搬送波を必要としない。
PSKを表現する便利な方法に、信号空間ダイヤグラムがある。 これは、同相の信号を実数軸に、直角位相の信号を虚数軸にとったガウス平面上に信号点を示す方法である。 垂直な軸におけるそのような表現は、簡単な実現に適している。 同相軸に沿ったそれぞれの信号点の振幅はコサイン(またはサイン)波を変調し、さらに直角位相軸に沿った振幅はサイン(またはコサイン)波を変調する。
PSKでは、選ばれる信号点は、通常円のまわりに、均一の角度間隔で配置される。 これにより、隣接点間の位相距離を最大にし、干渉に対する耐性を最大にする。 それらの点は全て同一のエネルギーで送信が可能であるように、円上に配置される。 この方法によって、それらが表す複素数のノルムは等しくなり、コサインとサイン波に必要となる振幅も同じになる。 いくつの位相を用いても良いが、一般的な例として、二つの位相を使用する、二位相偏移変調や、4つの位相を使用する四位相偏移変調が存在する。 伝達されるデータは通常バイナリであるので、PSKは通常、2の累乗である信号点の数で設計される。
定義
誤り率を数学的に計算するためには、いくつかの定義が必要となる。
- E b {\displaystyle E_{b}}
BPSK(英語: binary phase-shift keying)はPSKで最も単純な形式である。 これは180°分離された2つの位相を使い、「2-PSK」とも呼ばれる。 信号点がどこに置かれるかは必ずしも特に重要ではなく、そしてこの形ではそれらは実軸において0°と180°に示される。 この方式は、誤った内容に復号されるには、致命的なほどの妨害波が必要であるため、全てのPSKの中で最も強力なものである。しかし、図にあるように1シンボルあたり1ビットのみの変調が可能であるため、帯域幅が限定されている場合高速のデータ転送には不適切である。