読み方:ろうどうしゃ 自己の労働力を提供し、その対価としての賃金や給料によって生活する者のこと。Weblio国語辞典では「労働者」の意味や使い方、用例、類似表現などを解説しています。">

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19世紀の労働者

労働者(ろうどうしゃ)とは、自己の労働力を提供し、その対価としての賃金給料によって生活する者をいう[1]

どの範囲の者を「労働者」として扱うか、大きく分けると「労働者」の概念を統一的に扱う国(ドイツフランスなど)と個々の法令ごとに異ならせる国(アメリカイギリスなど)とがある[2][3]

国際労働機関

国際労働機関(ILO)の2006年の雇用関係勧告(第198号勧告)においては、「いかなる者が雇用関係にある労働者と見なされるのか、労働者はいかなる権利を有するのか、及びいかなる者が使用者であるのかを確定することが重要である」との意見を表明し、以下の勧告を発行している[4]

9 雇用関係にある労働者を保護するための国内政策を実施する上で、当該雇用関係の存在についての決定は、当該雇用関係が関係当事者間で合意された契約その他の方法による事実に反した取決めにおいてどのように特徴付けられている場合であっても、業務の遂行及び労働者の報酬に関する事実に第一義的に従うべきである

13 加盟国は、雇用関係が存在することについての明確な指標を国内法令又は他の方法によって定義する可能性を考慮すべきである。これらの指標には、次の事実が含まれ得る。

(a) 仕事が他の当事者の指示及び管理の下で行われていること、仕事が事業体組織への労働者の統合を含むものであること、仕事が他の者の利益のために専ら若しくは主として遂行されていること、仕事が労働者自身で行われなければならないものであること、仕事がこれを依頼する当事者が指定若しくは同意した具体的な労働時間内若しくは職場で行われていること、仕事が特定の存続期間及び一定の継続性を有したものであること、仕事が労働者に対して就労可能な状況にあることを要求するものであること、又は仕事がこれを依頼する当事者による道具、材料及び機械の提供を含むものであること。

(b) 労働者に対する定期的な報酬の支払があること、当該報酬が労働者の唯一若しくは主な収入源となっていること、食糧、宿泊及び輸送等の現物による供与があること、週休及び年次休暇等についての権利が認められていること、労働者が仕事を遂行するために行う出張に対して当該仕事を依頼する当事者による支払があること、又は労働者にとって金銭上の危険がないこと。

2006年の雇用関係勧告(第198号)

日本法による労働者

日本の法制では、個々の法令ごとに労働者の定義を定める方法をとっている。

個別的労働関係における労働者概念については、労働基準法第9条に定められていて、また多くの個別的労働関係法では、労働基準法と密接な関係を持って制定された経緯や、労働基準法から分離独立した経緯等から、労働基準法の労働者概念を用いている。他方、集団的労働関係法上の労働者概念は、労働組合法第3条に定めている。大別するとこの二法に分けられる。

労働基準法

第9条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。

職場における労働条件の最低基準を定めることを目的とする労働基準法上の労働者は、 同法が定める労働条件による保護を受ける対象を確定するための概念である[5]

「労働者」であるか否か、すなわち「労働者性」の有無は「使用される=指揮監督下の労働」という労務提供の形態及び「賃金支払」という「報酬の労務に対する対償性」、すなわち報酬が提供された労務に対するものであるかどうかということによって判断されることとなる[6]契約の形や名称にかかわらず実態としての雇用契約民法623条)が締結されていると認められるかどうかが基準となる。

(厚生労働省は2025年5月2日、ネットを介して働くプラットフォーム(PF)ワーカー、ギグワーカーが増える中、「労働者」の判断基準見直しが必要かどうかを40年ぶりに検討するために学識者による研究会を設置した。[10]。)

「労働者」として認められた例

「労働者」として認められなかった例

以下の法令では、「労働者」を「労働基準法第9条に規定する労働者(同居の親族のみを使用する事業又は事務所に使用される者及び家事使用人を除く。)」と定義し、労働基準法と同一の解釈となる。

また「労働者」の定義規定を置いていない法令においても、

労働契約法第2条では「使用者に使用されて労働し、賃金を支払われる者」と定義される。ほぼ同じ内容であるので、労働基準法上の労働者の判断基準は労働契約法の労働者性判断においても一般的に妥当すると考えられる[15]

勤労者財産形成促進法第2条では「勤労者」の定義を「職業の種類を問わず、事業主に雇用される者」としている。同法施行時の通達において「本法の「勤労者」は、労働基準法等の「労働者」と異なる概念ではないが、本法は、公務員船員も適用対象としているものであるため、「勤労者」の語を用いたものであること。」(昭和47年1月22日発基3号)としていて、「労働者性」の判断については労働基準法と同様になる。

労働組合法

(労働者)

第3条

この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、賃金、給料その他これに準ずる収入によつて生活する者をいう。

労働組合法上の労働者は、主体となって労働組合を結成する構成員として、使用者との間で団体行動権の行使を担保とした団体交渉法制による保護が保障されるべき者を指す[16]。労働基準法上の「労働者」との大きな違いは、労働組合法上の「労働者」には「使用される者」という要件が課されていないことにある。したがって失業者も含まれるものとされ(昭和23年6月5日労発262号)、また勤務時間の管理を受けず時間的・内容的に自由に業務遂行を行う者も含まれうる。近年の実務では特に、労働基準法では「労働者」として認められなくても労働組合法では「労働者」として認められる者(一人親方フリーランス等)の扱いが問題となっている[17][18]

具体的に労働組合法上の「労働者」かを判断するには、以下の6つの要素を総合的に判断する[19]

  1. 業務組織への組み入れ - 労務供給者が相手方の業務の遂行に不可欠ないし枢要な労働力として組織内に確保されているか。
  2. 契約内容の一方的・定型的決定 - 契約の締結の態様から、労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか。
  3. 報酬の労務対価性 - 労務供給者の報酬が労務供給に対する対価又はそれに類するものとしての性格を有するか。
  4. 業務の依頼に応ずべき関係 - 労務供給者が相手方からの個々の業務の依頼に対して、基本的に応ずべき関係にあるか。
  5. 広い意味での指揮監督下の労務提供、一定の時間的場所的拘束 - 労務供給者が、相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか、労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか。
  6. 顕著な事業者性 - 労務供給者が、恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者とみられるか。

仮に1.-3.(基本的判断要素)の一部が充たされない場合であっても直ちに同法上の労働者性が否定されるものではない。また、各要素を単独に見た場合にそれ自体で直ちに労働者性を肯定されるとまではいえなくとも、4.及び5.(補充的判断要素)を含む他の要素と合わせて総合判断することにより労働者性を肯定される場合もありうる。さらに、各判断要素の具体的検討にあたっては、契約の形式のみにとらわれるのではなく、当事者の認識(契約の形式に関する認識ではなく、当該契約の下でいかに行動すべきかという行為規範に関する認識)や契約の実際の運用を重視して判断すべきである。もっとも、6.(消極的判断要素)が認められる場合は、総合判断において、労働者性を消極的に解し得る判断要素として勘案される。

「労働者」として認められた例

「労働者」として認められなかった例

労働金庫法第2条は、「労働者」の定義を労働組合法と同一にしている。

その他の法令

以下の法令では、いずれも労働基準法では基本的には「労働者」に含めていない求職者を各法の対象に含めている点で異なっている。

脚注

[脚注の使い方]

出典

  1. ^ コトバンク - 労働者
  2. ^ 労働組合法上の労働者性の判断基準について、p.3 から
  3. ^ 「労働者」について (PDF)
  4. ^ 皆川宏之「「労働者」概念の現在」(PDF)『日本労働研究雑誌』第54巻第7号、労働政策研究・研修機構、2012年7月、16-26頁、CRID 1520854805412500224ISSN 09163808NAID 40019371268国立国会図書館書誌ID:023866238
  5. ^ a b 労働組合法上の労働者性の判断基準について、p.5
  6. ^ 労働基準法の「労働者」の判断基準について、p.1
  7. ^ 労働基準法の「労働者」の判断基準について、p.1-3
  8. ^ 労働基準法の「労働者」の判断基準について、p.3
  9. ^ 労働基準法の「労働者」の判断基準について、p.3-4
  10. ^ 『「労働者」基準、40年ぶり見直し ギグワーカー増で厚労省が研究会 賃金や健康、保護手厚く』 2025/05/03 日本経済新聞 朝刊 5面
  11. ^ 船橋労基署長事件(東京地判平成23年5月19日)では、退職後、理事・取締役を経て執行役員になった者が、一般従業員であったときと業務の内容・場所が同一であったことから、「労働者」性を認めた。
  12. ^ 三菱自動車工業事件(最判平成19年11月16日)では、いったん退職して執行役員になった者と会社との関係を委任契約として、「労働者」性を否定した。
  13. ^ 藤沢労基署長事件(最判平成19年6月28日)では、一人親方たる大工について、「指揮監督下」「報酬」「自己所有の道具の持込み使用状況」「専属性の程度」等に照らし「労働者」性を否定した。
  14. ^ 実正寺事件(松山地判今治支判平成8年3月14日)では僧侶の時間外・深夜勤務手当を請求しうるとし、妙應寺事件(東京地判平成22年3月29日)では破門解雇として扱われるとした。
  15. ^ 労働組合法上の労働者性の判断基準について、p.5。もっとも労働契約法では家事使用人が適用除外となっていない点で労働基準法とは異なる。
  16. ^ 労働組合法上の労働者性の判断基準について、p.5-6
  17. ^ フリーランス労組続々…コロナ禍背景、報酬や待遇改善読売新聞オンライン2022年4月4日付
  18. ^ 初の全国組織「フリーランスユニオン」発足へNHK、2022年05月24日付
  19. ^ 労働組合法上の労働者性の判断基準について、p.10-18
  20. ^ 日本放送協会(名古屋駅前センター)不当労働行為再審査事件 2016年 12月22日『中央労働委員会』 (PDF)
  21. ^ NHKの業務委託スタッフは「労働者」不当労働行為認定…裁判所の判断のポイント 2017年05月04日『弁護士ドットコム NEWS』
  22. ^ 公文教育研究会事件命令書交付について 東京都労働委員会 2019年7月31日
  23. ^ コンビニオーナー、「団交権」求めて控訴「裁判所はもっと実態見て」弁護士ドットコムニュース2022年6月17日付
  24. ^ 2審もコンビニ店主の団交権認めず セブンとのFC契約 東京高裁毎日新聞2022年12月21日付
  25. ^ 最高裁令和5年(行ヒ)第115号労働委員会裁判例データベース
  26. ^ 雇用保険に関する業務取扱要領(令和2年4月1日以降)厚生労働省

参考文献

関連項目

外部リンク

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