園芸品種とは何? わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

この項目では、栽培品種・園芸品種について説明しています。その他の品種については「品種」をご覧ください。

栽培品種(さいばいひんしゅ、英語: cultivar)とは、一般的には望ましい性質を選抜した増殖可能な植物の集合である。
選択・交雑・突然変異等により人為的(育種品種改良)あるいは自然に生じ、他の栽培品種や原種と識別される特性を安定して有し、かつ、その特性を保持したまま殖やすことができる。遺伝的に均一か否かは問わない。
栽培品種は主に農業園芸の分野で古くから利用され、園芸分野においては園芸品種(えんげいひんしゅ)の語が使われることがある。また、誤解の恐れがなければ単に品種と表記されることも多い。

尚、栽培品種は植物の分類の仕方の一つではあるが、**国際藻類・菌類・植物命名規約(ICN)による分類階級タクソンではない**[注釈 1]。すなわち、栽培品種名学名と混同されることがあるが、それ自体は[注釈 2]学名ではない

国際栽培植物命名規約

栽培品種(cultivar 園芸品種とも。以下、栽培品種で統一)の命名に関する国際的な取り決めが国際栽培植物命名規約(英語版)(ICNCP)であり、第9版(2016年)が現行である。

以下は、第9版の栽培品種に関係する内容の抜粋である。

栽培品種の定義

栽培品種名

小名のルール

ICNCPに則った栽培品種名の例

国際栽培品種登録機関

国際栽培品種登録機関(英語版)(ICRA、複数形:ICRAs)は、栽培品種名などの名称を登録し、管理する責任を負う機関である。栽培品種名や植物を法的に保護する機関ではない。国際園芸学会(英語版)(ISHS)の委員会[注釈 9]により、管轄する分類群ごとに複数の機関が指定されている[23]

日本の組織としては、日本ハオルシア協会がハオルシア属・_Astroloba_属・_Chortolirion_属のICRAとして指定されている[24]

法的な定義による植物の「品種」

植物の新品種の保護に関する国際条約(UPOV条約)における植物の品種(フランス語: variété)や、それに基づく各国の法令(日本においては種苗法など)における品種は、栽培品種(cultivar)の語句を使用せずに定義されていることがあるが、栽培品種を法的に定義した正確な同義語である[25]。また、UPOV条約における品種の名称(dénomination de la variété)等の語句と栽培品種小名(cultivar epithet)もまた同等である[26](以下品種の語で統一)。
育成者権の点から品種を登録し全般について管理しているのは各国の行政機関(日本においては農林水産省)である[注釈 10]
尚、それらの法定の品種登録を行う機関にて正式に登録された品種名は国際栽培植物命名規約の品種名のルールに則っていない場合でも有効である[27]

脚注

注釈

  1. ^ 生物学・分類学における分類階級としての品種(form)と混同してはならない
  2. ^ 分類群を特定するための構成要素として学名が含まれることはあるが
  3. ^ 栽培品種を形容する語句
  4. ^ 小名だけを指して栽培品種名と呼ばれることがあるが、小名だけでは何の栽培品種か特定できない。
  5. ^ 学名または明確な一般名。交雑属含む。
  6. ^ 学名または明確な一般名。交雑種含む。
  7. ^ 1996年1月1日より前では、「cv.」に続いて記す表記法も許されていた。
  8. ^ スペースと小名前後の単一引用符はカウントしない
  9. ^ Special Commission for Cultivar Registration
  10. ^ 国際栽培品種登録機関は名称についてのみ管理している

出典

  1. ^ Brickell 2016, Art. 2.3.
  2. ^ Brickell 2016, Art. 8.1.
  3. ^ Brickell 2016, Art. 21.1.
  4. ^ Brickell 2016, Art. 21.2.
  5. ^ Brickell 2016, Art. 21 Note 1.
  6. ^ Brickell 2016, Art. 14.1.
  7. ^ Brickell 2016, Art. 1.4.
  8. ^ Brickell 2016, Art. 2.11.
  9. ^ Brickell 2016, Art. 6.1,6.2.
  10. ^ Brickell 2016, Art. 21.3.
  11. ^ Brickell 2016, Recommendation 8A.1.
  12. ^ Brickell 2016, Art. 21.5-21.7.
  13. ^ Brickell 2016, Art. 21.11,21.12.
  14. ^ Brickell 2016, Art. 21.16.
  15. ^ Brickell 2016, Art. 21.22.
  16. ^ Brickell 2016, Art. 21.24.
  17. ^ Brickell 2016, Art. 21.13.
  18. ^ Brickell 2016, Art. 21.18,21.19.
  19. ^ Brickell 2016, Art. 21.17.
  20. ^ Brickell 2016, Art. 21.20.
  21. ^ Brickell 2016, Art. 21.23.
  22. ^ Brickell 2016, Art. 21.15.
  23. ^ICRA” (英語). International Society for Horticultural Science. 2019年1月23日閲覧。
  24. ^ICRA - HAWORTHIA SOCIETY OF JAPAN” (英語). International Society for Horticultural Science. 2019年1月23日閲覧。
  25. ^ Brickell 2016, Art. 2 Note 4.
  26. ^ Brickell 2016, Art. 27 Note 1.
  27. ^ Brickell 2016, Art. 27.5.

参考文献

関連項目