読み方:ねつりょうけい熱量を測定する装置のこと。Weblio国語辞典では「熱量計」の意味や使い方、用例、類似表現などを解説しています。">

「熱量計」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

世界初の氷熱量計。1782年から83年にかけての冬、ラヴォアジェラプラスはこの装置を用い、ブラックが発見した潜熱にならって数々の化学変化にともなうを決定した。この研究が熱化学の基礎となった。

熱量計(ねつりょうけい)、カロリーメーター: calorimètre、: calorimeter、: Kalorimeter)とは、熱量測定、すなわち化学反応物理変化にともなって出入りする熱量熱容量の測定に用いられる器具である。一般に普及している方式には示差走査熱量計(DSC)、等温微少熱量計(IMC)、等温滴定型熱量計(ITC)、加速速度熱量計(ARC、暴走反応熱量計とも)などがある。金属容器に水を満たし、燃焼室の上に吊り下げて温度計を取り付けるだけでも簡単な熱量計となる。

物質AとBの間の反応においてA単位量当たりのエンタルピー変化を決定するには、まずそれらを熱量計にセットして反応前後の温度を記録する。温度の変化量に物質の質量および比熱をかけると反応で吸収されたエネルギー量となり、さらにそれをAの物質量で割れば反応のエンタルピー変化が得られる。この方法は主に大学教育において熱量測定の実習として用いられている。ただしここでは容器の壁を通した熱の損失と、温度計や容器そのものの熱容量は無視している。

歴史

「カロリーメーター」[1]ラヴォアジェの命名による。

私がつけたカロリーメーターという名は半分がギリシャ語由来、残る半分がラテン語由来だということで批判されてもやむを得まい。しかし、科学に関する限り、少しばかり語源学的な正統から外れたとしても、概念の弁別性という観点から必要であれば許されよう。用途の異なる既存の装置と似すぎない名前を純粋にギリシャ語だけから作ることが私にはできなかったのだ。[2]

1780年に彼は熱量計を使ってモルモットの体から出る熱を測定した。モルモットの呼吸によって発生する熱は熱量計のまわりの雪を溶かすのに十分で、呼吸によるガス交換はろうそくの火と同様に一種の燃焼であることを示した[3]

断熱熱量計

断熱熱量計は暴走反応を分析するのに用いられる。断熱環境で測定が行われるため、試験物質から発生した熱はすべて試料温度を上昇させるのに用いられ、反応は促進される。

完全に断熱的な熱量計は存在しない。試料から発生した熱の一部は試料ホルダーに奪われる。この熱損失の効果を熱量測定に取り入れるため、熱補正係数φと呼ばれる補正因子が用いられる。φは試料単独の熱容量に対する試料ホルダーを含めた熱容量の比であり、理想的な場合_φ_=1となる。

反応熱量計

反応熱量計とは閉鎖された断熱容器の中で化学反応を起こさせる方式の熱量計である。時間に対して熱流量を積分することで反応熱の測定と総熱量の算出を行う。産業用のプロセスは一定温度で設計されるため、等温で測定を行うこの方式が産業界で標準となっている。反応熱量計はまた、化学プロセス設計において最大熱発生率を決定するためや、大域的な反応の速度論的解析のためにも用いられる。

反応熱量計で熱を測定する方式は主に4種類ある。

熱流式

熱流熱量計(heat flow calorimeter)では、プロセス容器に熱伝導流体が流れる冷却(加熱)用ジャケットを取り付け、ジャケット温度を一定に保ちつつプロセス温度との差から熱流を測定する[4]。それに加え、正しい結果を得るには比熱、熱伝達面積、熱伝達係数を決定しなければならない。この方式の熱量計では還流中の反応も扱うことができるが、精度は落ちる。

熱収支式

熱収支熱量計(heat balance calorimeter)では、冷却(加熱)用ジャケットによってプロセス温度を一定に保ちつつ、熱伝導流体がジャケットを通る前後の温度差から熱流を測定する[4]

入力補償方式

入力補償方式では、一定温度環境に置かれた反応容器の中にヒーターを設置し、ヒーターからの熱によって容器温度を一定に保つ。必要なヒーター出力は反応熱の生成によって変わるので、この出力が単純に熱量信号となる。

定熱流束方式

定熱流束方式(constant flux、COFLUX)熱量計は熱収支方式から派生したもので、容器壁を通した熱流(熱流束)を一定に保つために特殊な制御機構を用いる。

ボンベ熱量計

ボンベ熱量計

ボンベ熱量計

ボンベ熱量計(bomb calorimeter、ボンブ熱量計とも)は定積熱量計の一種で、反応の燃焼熱を測定するために用いられる。ここでボンベとは燃焼中の内圧に耐える堅固な金属容器を指す。試料の燃焼で発生した熱は試料室をおさめた水槽の水に吸収される。燃焼によって膨張した空気が管を通して熱量計外部に逃がされる場合もあるが、その際も管を取り巻く水へと熱が受け渡される。水の温度変化から試料の熱量を測定することができる。

近年のモデルでは、鋼鉄製のボンベを純粋酸素で加圧(〜30気圧)し、計量された試料(1〜1.5 g)とわずかな所定量の水を入れる。この水が内部雰囲気を飽和するため、反応によって生成する水が気体となることはなく、蒸発エンタルピーを計算に入れなくて済む。ボンベはおよそ2000 mlの水の中に入れられる。ボンベは閉鎖系であり、反応中に気体が逃げることはない。またボンベが鋼鉄製であれば反応による体積変化は無視できる。点火用電極に電流を通じて反応物を燃焼させると、解放されたエネルギーは熱としてボンベ本体と内容物および水の温度を上げる。水の精密な温度変化、およびボンベの熱容量を表すボンベ係数から発生エネルギーを計算することができる。そのほか電気的なエネルギー入力、点火ワイヤの燃焼熱、酸の生成(残留液体の滴定によって測られる)に関する補正が行われる。測定終了後、ボンベの内圧は解放される。

熱量計と外部との間に熱のやり取りはなく(_Q_=0)、仕事も行われない(_W_=0)。よって全内部エネルギーの変化_ΔU_totalは0である。

Δ U total = Q + W = 0 {\displaystyle \Delta U_{\text{total}}=Q+W=0}

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