「直積集合」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
数学において、集合のデカルト積(デカルトせき、英: _Cartesian product_)または直積(ちょくせき、英: _direct product_)、直積集合、または単に積(せき、英: _product_)、積集合は、集合の集まり(集合族)に対して各集合から一つずつ元をとりだして組にしたもの(元の族)を元として持つ新たな集合である。
具体的に二つの集合 A, B に対し、それらの直積とはそれらの任意の元 a ∈ A, b ∈ B の順序対 (a, b) 全てからなる集合をいう[1]。集合の組立記法(英語版) では
A × B = { ( a , b ) ∣ a ∈ A ∧ b ∈ B } {\displaystyle A\times B=\{(a,b)\mid a\in A\land b\in B\}}
標準的なトランプの52枚のデッキ
直積集合の視覚的にわかりやすい例としては、標準的な52枚一組のトランプのデッキがある。トランプのランクは {A, K, Q, J, 10, 9, 8, 7, 6, 5, 4, 3, 2} という 13 の元からなる集合である。スーツは {♠, ♥, ♦, ♣} という 4 の元からなる集合である。この2つの集合の直積集合は、52 の組の元からなる集合であり、それぞれの元は、52枚のトランプのカードと1対1に対応している。
たとえば、ランク × スーツ という直積集合は、
{(A, ♠), (A, ♥), (A, ♦), (A, ♣), (K, ♠), ..., (3, ♣), (2, ♠), (2, ♥), (2, ♦), (2, ♣)}
という集合であり、スーツ × ランク という直積集合は、
{(♠, A), (♠, K), (♠, Q), (♠, J), (♠, 10), ..., (♣, 6), (♣, 5), (♣, 4), (♣, 3), (♣, 2)}
という集合である。
直積集合の元は順序対なので、同じ元はひとつも含まれていない。
2次元直交座標系
点の直交座標の例
有名な歴史的な例としては、解析幾何学における直交座標系がある。ルネ・デカルトは、数を用いて幾何学的な図形を表現したり、図形から数の情報を得たりするために、平面のそれぞれの点に実数の組を対応させ、その点の座標と名付けた。ふつう、このような組の1番目および2番目の要素は、それぞれ x および y 座標と呼ばれる。したがって、実数の組のすべての集合、すなわち ℝ×ℝ(ℝ は実数)という直積集合は、平面上のすべての点の集合に対応する。
定義
有限直積
n 個の集合 _A_1, …, A n に対する直積集合を、 ∏ i = 1 n A i = A 1 × A 2 × ⋯ × A n := { ( a 1 , … , a n ) ∣ a 1 ∈ A 1 ∧ … ∧ a n ∈ A n } {\displaystyle \prod _{i=1}^{n}A_{i}=A_{1}\times A_{2}\times \dotsb \times A_{n}:=\{(a_{1},\dots ,a_{n})\mid a_{1}\in A_{1}\wedge \ldots \wedge a_{n}\in A_{n}\}}
例として A = {y ∈ ℝ : 1 ≤ y ≤ 4}, B = {x ∈ ℝ : 2 ≤ x ≤ 5}, C = {x ∈ ℝ : 4≤x_≤7}} のとき、_A ×(B ∩ C) = (A × B)∩(A × C), A ×(B ∪ C) = (A × B)∪(A × C), A ×(B ∖ C) = (A × B)∖(A × C) などが読み取れる。
上と同じ例で (A ∪ B)×(C ∪ D) ≠ (A × C)∪(B × D) もわかる。
集合 A = {x ∈ ℝ : 2 ≤ x ≤ 5}, B = {x ∈ ℝ : 3 ≤ x ≤ 7}, C = {y ∈ ℝ : 1 ≤ y ≤ 3}, D = {y ∈ ℝ : 2 ≤ y ≤ 4} に対して (A ∩ B)×(C ∩ D) = (A × C)∩(B × D) が成り立つ。
性質
A λ = ∅ であるような λ ∈ Λ が少なくとも一つ存在すれば、∏
_λ_∈Λ A λ = ∅ であることは、直ちに示される一方、その逆にあたる命題は選択公理 (と同値)である。[3]
集合算
集合のデカルト積は交叉に関してよく振る舞う。すなわち
( A ∩ B ) × ( C ∩ D ) = ( A × C ) ∩ ( B × D ) {\displaystyle (A\cap B)\times (C\cap D)=(A\times C)\cap (B\times D)}
直積の普遍性: この図式は可換である
普遍性
直積は次のような普遍性を持つものとして特徴付けることができる:
直積の普遍性
任意の集合 Y と任意の写像の族 (f i: Y → X i)i_∈_I が与えられたとき、写像 f: Y → X ≔ ∏
i_∈_I X i で f i = π_i_ ∘ f を満たすものがただ一つ存在する。
写像の直積
ふたつの写像 f: A → X, g: B → Y が与えられたとき、直積集合 A × B から直積集合 X × Y への写像を
( f × g ) ( a , b ) := ( f ( a ) , g ( b ) ) ( a ∈ A , b ∈ B ) {\displaystyle (f\times g)(a,b):=(f(a),\,g(b))\quad (a\in A,\,b\in B)} カテゴリ