「身分」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
『アルト・ハイデルベルク』(フェルスター) カールスブルク公国の皇太子カール・ハインリヒは、1年間の予定でハイデルベルクの大学に遊学する。彼は青春を謳歌し、町娘ケーティと恋をするが、大公の病気のため4ヵ月で宮廷に呼び返される。2年を経て、大公となり妃も決まった彼は、ハイデルベルクを訪れてケーティと再会し、永遠の別れを告げる。
『ジゼル』(アダン)第1幕 アルブレヒト伯爵が狩りに出て、村娘ジゼルに目をとめる。アルブレヒトはジゼルに近づくために身分を隠し、村人の装いをしてロイスと名乗り、2人は恋仲になる。しかし恋敵の森番ヒラリオンがアルブレヒトの正体を暴き、「アルブレヒトには、クールランド公爵の娘バティルダという婚約者がいる」と教える。ジゼルは、胸がはりさけて死ぬ。
『セヴィラの理髪師』(ボーマルシェ) アルマヴィヴァ伯爵は身分を隠し、学士や騎兵に変装してロジーヌに求愛する。後見人の老医師バルトローのもとからロジーヌを救い出し、結婚の約束をする時になってから、伯爵は自分の身分を明かす。
『ルイザ・ミラー』(ヴェルディ) ワルター伯爵の息子ロドルフォは、身分を隠して、領内の村娘ルイザと恋仲になる→〔愛想づかし〕4。
『大津順吉』(志賀直哉) 「私(大津順吉)」は、文科大学の学生である。父は鉄道会社の取締役で、「私」の家には何人かの女中がおり、書生もいた。「私」は、「私」付きの女中である17~18歳の千代を恋し、求婚する。「私」が千代に接吻すると、千代は気を失う。「私」と千代は、事実上の夫婦になる。しかし父は「私」たちの結婚を認めず、千代を実家へ帰してしまう。「私」は激しく怒り、鉄亜鈴を自室の床にたたきつける〔*「私」と千代のその後については、→〔予言〕5の『過去』〕。
『海士(あま)』(能) 藤原淡海大臣が身分をやつして讃岐志度の浦へ下り、賤しい海士(=海女)と契って男児をもうける。海士は、男児を淡海大臣の世継ぎとすることを条件に、海底の龍宮へ面向不背の玉を取りに行く。海士は命を捨てて玉をもたらし、男児は房前の大臣となる。
『狭衣物語』巻1 狭衣は、大臣の息子・天皇の甥という、高貴な生まれの青年だった。ある時彼は、悪法師に誘拐された飛鳥井の女君を救う。女君は中納言の娘だったが、両親と死別し、今は乳母を頼りに暮らしていた。狭衣は女君と契りを結びつつも、自分の身分を隠し、「検非違使別当の子の少将」と思わせようとする。しかし女君は狭衣の正体を察し、身分の差を嘆く〔*女君は不幸な境遇のまま死に、狭衣は後に即位して帝となる〕。
★2a.上流階級の男と、労働者階級の女との、身分違いの恋・結婚。
『ステラ・ダラス』(ヴィダー) 紡績工場で働くステラは、上流階級の青年スティーブン・ダラスにあこがれ、彼に近づき、結婚する。しかし、育ちの違いゆえ、2人の行動様式や趣味嗜好は大いに異なり、結婚生活はうまく行かない。やがて彼らは別居し、2人の間に生まれた娘ローラは、ステラのもとで育つ→〔愛想づかし〕5。
『釣りそこねた恋人』(O・ヘンリー) 画家で百万長者で旅行家で詩人のカーターが、デパートの売り子メイシイをデートに誘う。メイシイは、カーターを「食料品店の店員などであろう」と考える。カーターは「結婚したら船に乗って、美しい絵や彫刻、宮殿や塔のある町に行こう。ヨーロッパを見終えたら、インドの寺院や日本の庭園を訪れよう」とプロポーズする。メイシイは「新婚旅行にコニーアイランドの遊園地へ連れて行くつもりなのだ」と思い、別れる。
★2b.逆に、良い家柄の・身分ある男だと思ったら、そうではなかった。
『食道楽』(三島由紀夫) 戦後間もない頃。歌子は戦前は裕福に暮らしていたが、今は未亡人となり、闇商売で生計を立てている。歌子は会社社長の宮島と知り合い、交際を始める。2人は、戦前の良き時代の軽井沢の高級ホテルの思い出や、料理の数々についての話題で、意気投合する。実は、宮島は戦後の成り上がり者で、前身はホテルのコックなのだった。そのことを知って歌子は呆然とするが、それでも宮島の求婚を受け入れた。
★2c.斜陽貴族の青年と、新興ブルジョアジーである村長の娘が、身分差を越えて結婚する。
『山猫』(ヴィスコンティ) 1860年のシチリア島。山猫の紋章で知られる名門の当主サリーナ公爵は、革命騒ぎにも動ずることなく、大貴族としての生活を貫いていた。しかしすでに貴族の時代が去ったことを、彼は実感していた。彼がかわいがる甥タンクレディは、成金である村長の娘アンジェリカを気に入り、結婚したいと望む。平民の娘との縁組みには反対者が多かったが、政界・官界での出世を目指すタンクレディには資産家の娘との結婚が必要だ、とサリーナ公爵は考え、積極的に縁組みを進めるのだった。
**『ローマの休日』**(ワイラー) ローマ滞在中の某国王女アンは公式行事の連続に飽き、ひそかに街に出る。彼女は通信社のアメリカ人記者ジョーと出会い、ローマ市内観光の楽しい1日を経験するが、その日が終われば2人は別れねばならず、アンは再び王女としての、ジョーは記者としての、日常にそれぞれ戻る。
★3b.伯爵未亡人とセールスマンの結婚。彼らの飼い犬どうしの結婚。
『皇帝円舞曲』(ワイルダー) 20世紀初め。アメリカ人セールスマンのヴァージルが、オーストリアの伯爵未亡人ジョアンナと恋仲になる。オーストリア皇帝は、「貴族の女が、貧しい庶民の家へ嫁いでも幸せになれまい」と言って、2人の結婚を許さない。ところがジョアンナの愛犬シェヘラザードが、ヴァージルの飼犬バトンズの子供を3匹産んでしまう。子犬たちを見た皇帝は、ヴァージルとジョアンナの結婚を許可する。
『無法松の一生』(稲垣浩) 日露戦争(1904~05)頃の九州小倉。虚弱な少年敏男が竹馬遊び中に堀に落ちて泣いているのを、人力車夫の無法松が助ける。それが縁で無法松は、敏男の父吉岡大尉やその妻よし子の知遇を得る。まもなく吉岡大尉は急病で死に、以後、無法松は、未亡人となったよし子と1人息子敏男に、献身的に尽くしてあれこれと世話をする。敏男が成長して熊本の高等学校へ入学した後に、無法松は病死する。遺品の中には、彼が敏男のために貯めた5百円の預金通帳があった〔*無法松が未亡人に恋心を打ち明ける場面があったが、映画封切り前の検閲でカットされた〕。
『古都』(川端康成) 苗子と千重子は双子だったが、苗子は北山杉の村で育ち、千重子は京都の呉服問屋の娘として育った。2人は20歳の時に偶然めぐり合い、千重子の家では、苗子を引き取ろうとまで考えた。しかし苗子は、ただ一晩、千重子の家へ泊まりに来て、千重子と一緒に寝ただけで、「これがあたしの一生のしあわせどしたやろ」と言って、北山杉の村へ帰って行った。
『町人貴族』(モリエール) 成金の町人ジュールダンは、自らが貴族であるかのごとくよそおって暮らしている。彼は、娘リュシールと恋人クレオントの結婚を、「クレオントが貴族でない」との理由で、許さない。クレオントの従僕が「ジュールダンの亡父の友人」と称して訪れ、「あなたの父上は商人ではなく、貴族でした」と言ってジュールダンを嬉しがらせ、クレオントはトルコの王子に変装してリュシールに求婚する。ジュールダンは大喜びで、2人の結婚を認める。
*貴族が、自分の娘と平民の青年の恋を許さない→〔教え子〕4の『新エロイーズ』(ルソー)。
『水天宮利生深川(すいてんぐうめぐみのふかがわ)』(河竹黙阿弥) 徳川幕府の瓦解により、幕臣・船津幸兵衛は武士の身分を失った。明治維新後、彼は商売を始めるが、「士族の商法」の例にもれず、失敗した。今は裏長屋に住み、手内職で筆を作って売り歩き、かろうじて日々の暮らしを立てている。家族は2人の娘、お雪・お霜と、乳飲み子の幸太郎。妻は幸太郎を産んでまもなく死に、お雪は泣き悲しんだ余り、盲目になった→〔心中〕5。
*太平洋戦争に負けて、日本の華族(貴族)制度は廃止された→〔舞踏会〕1の『安城家の舞踏会』(吉村公三郎)、〔麻薬〕1の『斜陽』(太宰治)。