1000TCとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/15 08:30 UTC 版)
当時、GTカーのカテゴリーは、700 cc以下、850 cc以下、1,000 cc以下に分類されていた。850 cc以下のカテゴリーを850TCで席巻したアバルトは、1,000 ccクラスに挑むモデルの開発を進めていた。 こうして1962年に登場したのが「アバルト・1000ベルリーナ」である。車名は先に登場した850TCに倣って1000TCとはならず「1000ベルリーナ」と命名されたが、愛好家の間では「1000TC」という通称で呼ばれることが多い。 850TCと同様に600をベースとし、排気量は600D用ブロックをベースに982 ccまで拡大。最高出力はロードバージョンが61 PS / 6,000 rpmで、レーシングバージョンの「コルサ」では69 PS / 6,800 rpmにまで高められた。最高速はロードバージョンの150 km/hに対し、コルサは170 km/hに達した。 外観は基本的には850TCと変わらないが、フロントフェンダーに「FIAT ABARTH 1000」の切り抜き文字が取り付けられた。このほかホイールはそれまでのアマドーリのスチール製に代えて、カンパニョーロ製エレクトロン(軽合金)、いわゆる「アバルトパターン」のホイールを採用した。エンジンフードは付属のステーで水平まで上げることができ、エンジンルームの放熱に貢献した。 こうして戦闘力が高められた1000TCコルサは、すぐさまイタリアを始めとするヨーロッパのツーリングカーレースで活躍を始めた。1,000 cc以下のクラスで圧倒的な強さを見せつけ、1964年には早くもイタリアツーリングカー選手権のチャンピオンを獲得した。 1965年モデルでは効率と耐久性を高めるために、冷却システムが大きく変更された。大型のラジエーターがノーズに配されると共に、ラジエーターをカバーするフェアリングが取り付けられた。この変更により、パワーロスを生んでいたリアラジエーターの冷却ファンを廃し、エンジンのパフォーマンスを向上させることに成功した。このほか足回りにも手が加えられ、フロントサスペンションは横置きリーフスプリングをロワーアームとして機能させつつ、新設計のコイルスプリングと同軸のダンパーを組み込むことで、コースに合わせた細かなセッティングを可能とした。 1965年はシーズン開幕から優勝を飾り、同年のヨーロッパツーリングカー選手権のディビジョン1(1,000 cc以下のクラス)でチャンピオンを獲得。イタリアツーリングカー選手権の1,000 cc以下クラスのタイトルも手にした。 1966年モデルではエンジンの圧縮比を13:1まで高めることで、最高出力が86 PS / 7,600 rpmに向上。一方で車重は583 kgまでシェイプアップされ、最高速度は195 km/hに達した。外観では、ノーズのラジエーターをカバーするフェアリングを大型化し、空力性能を向上させるとともに、デザイン面でもボディラインにマッチするものとした。ボディカラーもそれまでのアイボリーからグレーに変更され、ボディサイドのウェストラインに赤いストライプを配するカラーリングとなった。また、ワークスマシンには識別用としてルーフにチェッカー模様のマーキングが施され、850TCはイエロー、1000TCはレッドでペイントされた。このルーフに施されるチェッカー模様はアバルトの定番モチーフとなり、現在販売されているアバルト・595にもオプションで設定されている。 このような改良の結果、1966年のヨーロッパツ-リングカー選手権ではディビジョン1クラスのチャンピオンを前年に続き勝ち取った。その後も戦闘力を高める改良を重ね、ツ-リングカーレースの1,000 ccクラスの王座を守り抜き、後継モデルの1000TCRが導入されるまでレース界に君臨し続けた。
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