AD&Dとは何? わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

この項目では、かつて「アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ」(AD&D)のタイトルで発売された旧バージョンのD&Dについて説明しています。その他のD&Dのバージョンについては「ダンジョンズ&ドラゴンズ」をご覧ください。

アドバンスト・ダンジョンズ&ドラゴンズ(Advanced Dungeons & Dragons)とは、テーブルトークRPG(TRPG)「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以後、D&Dと略)シリーズのルールバージョンの1つである。略称はAD&D。アメリカ合衆国でTSR社により発売され、日本でも株式会社新和によって翻訳発売された。1st Editionの制作者はゲイリー・ガイギャックス

概要

1974年の最初のD&D(Original Dungeons & Dragons)の発売以降、D&Dは足りないルール部分をサプリメントで補ってきた。この結果、数年後には膨大な量の追加ルールがまとまりがない形で様々なサプリメントに散逸するという状態になってしまい、初心者が入りにくい状況に陥っていた。そんな中で、ダンジョンズ&ドラゴンズ#TSR時代(1973年 - 1997年)で記述しているように、D&Dシリーズは「上級者向けのD&D」と「入門者向けのD&D」の2つのルール体系に分かれて再出発することになった。このうち、「上級者向けのD&D」がAD&Dである。

Original Dungeons & Dragonsは基本セットが箱に入って売られたボックスタイプの製品だったが、AD&Dは基本ルールブックが書籍タイプで販売された。Original Dungeons & Dragonsの数多くの追加ルールを統合した結果、基本ルールブックで扱うルールやデータの量が膨大なものとなったため、基本ルールブックは「プレイヤー用のルールブック(Player's Handbook)」「ダンジョンマスター(DM)用のルールブック」「モンスターのデータ集」の三種類に分けられた。基本ルールブックを三分冊する形式は後にアドバンストとクラシックが統合されたD&D3版以降にも受け継がれた。

Advanced Dungeons & Dragons 1st Edition

1977年から1979年にかけて基本ルールブック3冊が発売された[1]。基本ルールブックは、それまでのOriginal Dungeons & Dragonsで追加されてきたいくつものデータ、ルールを統合し整理したものになっている。AD&DはそれまでのD&Dのルールの統合化が目的として生まれたシリーズでもあるので、サプリメントで追加されていくルールも基本のルールシステム大系と矛盾するようなものは避けられている(それでも現行の版の基準からすると、全くの別ゲームに変わるくらいのルール変化をもたらすものもあったが)。サプリメントにはプレイヤーキャラクター(PC)を強化するための新しい武器、新しい魔法、新しいクラスなどが載っているものも多く、全く同じレベルのキャラクターでも、基本ルールブックのデータだけで作られたPCと、サプリメントをいくつも参照して作られたPCでは、かなりの能力差があった。そのため、多くのヘビーゲーマーたちは自身のPCを強くするためにサプリメントを買いあさった。PCを強化するためのデータを現実の世界で"購入"するというスタイルはパワープレイを意識したTRPGならば多かれ少なかれあるが、AD&Dはこの要素が飛躍的に高く、魅力の一つとして語られていた。[_要出典_]

Advanced Dungeons & Dragons 2nd Edition

1989年発売。システム大系そのものは1版とほとんど変わっていないが、基本ルールブックから細かいルールが大幅に削られ、スリム化が図られている。

サプリメントによるPC強化という方向性は1版よりも強く押し出され「特定クラスの能力を強化するためのサプリメント」「新しい呪文だけ載ったサプリメント」など、より専門的なサプリメントが発売されていった。しかし、度重なるサプリメントによるデータの増量は序々にインフレを招き、初心者と経験者の格差につながっていった。TSR社は1995年あたりから過去の発表したデータを凝縮したサプリメントを頻繁に発売したりと解決を模索していたが、1998年のWotC社への買収を機に、新ルールの開発が開始。2000年に実質的なAD&Dの3rd Editionとして[2]D&D3版が発売され、AD&Dという名称は消滅した。

日本語版は株式会社新和より1991年に発売されたが、基本ルールブックと数冊のサプリメントが翻訳されただけで展開は休止したため、「大量のサプリメントで幅広い冒険が楽しめる」というAD&D最大の魅力が提供できていたとは言い難い。大量の関連製品を翻訳していた新和のクラシックD&Dとは対照的な展開となってしまった。

ルール面の特徴

D&Dシリーズ全体に共通する要素は、ダンジョンズ&ドラゴンズの項目を参照。ここではAD&Dに見られる特徴を記述する。基本的には日本語版が発売された第2版を基準に記載する。

キャラクター

行為判定

戦闘

ラインナップ

主要なもののみ。英語でのみ書かれているものは日本語版では未訳のもの。また、ここで書かれているのは世界設定を限定しないサプリメントが主であるが、特定のキャンペーンセッティングに特化したサプリメントも数多く存在する。

基本セット

モンスター・コンペンディウム

第2版専用製品。第2版では書籍タイプのMonstrous Manualとは別に、モンスターデータをバインダー形式で収録できるMonsterous Compendiumという製品が発売されていた。TSR社からは様々なモンスターのデータが書かれたルーズリーフ・セットがサプリメントとして発売され、ユーザーは好きなデータをバインダーにはさんで「自分だけのモンスターデータ集」を作っていた。なお、Monstrous ManualはこのCompendiumシリーズの中からもっとも基本的なモンスターのデータを抜粋して書籍化したものである。ただし、Monstrous ManualとCompendiumシリーズはレイアウトが大きく異なる。Compendiumシリーズはルーズリーフ形式という都合上、1体のモンスターデータの記述がページをまたがないようにしているため、Monstrous Manualより可読性が高い。日本語版では書籍タイプのMonstrous Manualではなく、Monsterous CompendiumのVol.1が翻訳された。

この他、各キャンペーンセッティング用に、その世界独自のモンスターデータ集がいくつも発売されている。

サプリメント

コンプリートブック

種族、クラス別の追加データ。第2版専用。

縮刷版

第2版の末期には、追加データの大容量化にともない、過去のサプリメントで追加されたデータを抜粋したものが発売された。

モジュール

記述しているのはごく一部[3]。AD&Dで最も大量に存在する関連製品はモジュール(シナリオ集)であり、TSR社以外からも出ていた。各シナリオはストーリー自体は独立しているものの、背景設定が裏でつながっているものが多く、キャンペーンとして接続しやすい。

道具類

脚注

  1. ^ 1977年に _Monster Manual_、1978年に _Players Handbook_、1979年に Dungeon Masters Guide が発売。
  2. ^ ダンジョンズ&ドラゴンズ#系譜
  3. ^ Dungeon誌で紹介された、30 Greatest D&D Adventures of All TimeからAD&D関連を抜粋したものを中心に記載している