MT-LBとは - わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
MT-LB
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基礎データ | |
全長 | 6.454m[1] |
全幅 | 2.86m[1] |
全高 | 1.865m[1] |
重量 | 11.900t(戦闘重量)[1] |
装甲・武装 | |
装甲 | 最大14mm |
主武装 | PKT 7.62mm機関銃×1[1] |
機動力 | |
速度 | 61.5km/h(路上)[1]31km/h(不整地)6km/h(水上) |
エンジン | YaMZ-2384ストロークV型8気筒液冷ディーゼルエンジン[1]240馬力/2,100rpm[1] |
行動距離 | 500km(路上)[1] |
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MT-LB(Mnogotselevoy Tyagach -Lekhko Bronirovannyi、ロシア語: МТ-ЛБ(Многоцелевой Тягач -Легкий Бронированный:「汎用軽装甲牽引車」の意)は、ソビエト連邦(ソ連)で開発された汎用装軌式の装甲車両である。
概要
放射能兵器や化学兵器、生物兵器などで汚染された環境下(CBRNE)で砲員および弾薬の輸送する砲兵トラクターとして、ハリコフトラクター工場で設計された[2]。
開発にあたり、PT-76水陸両用戦車およびその派生型であるBTR-50装軌装甲兵員輸送車のコンポーネントを流用しているが、共通するのは走行装置などだけであり、車体は別個の新設計である。PT-76系列が車体後部にエンジンを置いて後輪駆動だったのに対し、本車は車体前部にエンジンを置いて前輪駆動となっている。またエンジンも別系統の新型エンジンである。車体は避弾経始を意図した傾斜装甲で、小銃弾や砲弾片への防御となっている。車体前面に装甲シャッター付きの視察窓を有する操縦席と車長席があり、その後方に機関室、さらに後方の車体後部に兵員室と収容庫を兼ねたスペースを有する。変速機はマニュアルトランスミッションで[1]、水上浮行は履帯を回転させて航行する[2]。
固有の兵装として、車長席の上の砲塔にPKT 7.62mm機関銃を1丁装備する。銃弾は2,500発を搭載する[2]。
6,500kgまでの火砲または車両を牽引できる他、車内後部区画には11名の兵士もしくは2,000kgまでの貨物を積載可能[2]で、火砲牽引車としての他に装甲兵員輸送車としても用いられ、車体を流用した各種の派生型が多数開発されている[1]。本車が牽引対象としていた火砲の例として、BS-3 100mm野砲・T-12 100mm対戦車砲・D-30 122mm榴弾砲・120mm迫撃砲PM-43等が存在する[3]。
実戦
アフガニスタン侵攻では2B9 82mm自動迫撃砲、グルジア内戦(英語版)ではZU-23-2を車体後部に搭載して運用された[1]。
2022年ロシアのウクライナ侵攻の前線には、当初から多数のMT-LBが投入された。オランダの調査会社によれば、2023年10月の段階で400台以上が喪失している。ウクライナの前線で戦うロシア軍兵士は、兵器枯渇の解消の為に盛んにMT-LBの改装を行っており[4]、艦載砲である25mm2M-3艦載機関砲(ロシア語版)を上部に載せた改造例[注釈 1]も見られる[5]。
派生型
ソ連・ロシア
MT-LBの車体を元に、D-30 122mm榴弾砲を備える砲塔を搭載した自走砲[6]。
9K35ストレーラ10(SA-13)
MT-LBの車体に9M37地対空ミサイルの4連装発射機を搭載した近距離防空ミサイル・システム[1]。
9P149(ロシア語版)シュトルムS
車体後部に9K114シュトルム(AT-6スパイラル)対戦車ミサイルの発射機を搭載し、砲塔に誘導サイトに換装した戦車駆逐車[1]。
MT-LBM 6MB
MT-LBの車体を拡大、強力なエンジンを採用した発展型。
その他の国
MT-LB TRI HORS
ポーランドによる装甲工兵偵察車両。砲塔をNSW12.7mm重機関銃(NSV重機関銃のライセンス生産型)と視察装置付のキューポラに換装し、門型アンテナや発煙弾発射機、偵察機材を搭載した。乗員は操縦手、車長、偵察要員6人の計8人。ポーランド陸軍が採用した[7]。
BMP-23A
BMP-23の改良型。車体に発煙弾発射器を追加し、対戦車ミサイルを9M111(AT-4)に換装[8]。
BMP-30
BMP-23の改良型。主砲を2A42 30mm機関砲に、対戦車ミサイルを9M111(AT-4)または9M113(AT-5)に改良[9]。
BRM-23
BMP-23を元にした装甲偵察車両。偵察・航法用の機材を搭載[8]。
2B9M 自走迫撃砲
ハンガリーで1990年に開発された自走迫撃砲。車体後部に2B9 82mm自動迫撃砲を搭載する[10]。
Pv 401
スウェーデン陸軍が導入したMT-LB。砲塔の機関銃をKsp 58に換装。
MT-LBP6(ロシア語版、ウクライナ語版)「マングース2」
ウクライナのハルキウ機械製造設計局による歩兵戦闘車。2A42 30mm機関砲とPKMT 7.62mm機関銃を搭載した砲塔を搭載。
2A42 30mm機関砲とPKMT 7.62mm機関銃を搭載したKBA-105(ロシア語版、ウクライナ語版)RWSを搭載した歩兵戦闘車。ミャンマー陸軍が採用。
採用国
MT-LBの運用国(青)と退役国(赤)
退役国
登場作品
映画
物語後半の、主人公バーニー・ロス率いる傭兵部隊「エクスペンダブルズ」と交戦する、アズメニスタン(架空の国家)の軍の増援部隊を構成する装甲戦闘車両として登場。車体上部の機銃手用のハッチを開放した状態で、機銃手2名が身を乗り出しているが、同じく装甲戦闘車両として登場するT-72戦車とは異なり、発砲シーンは無く、戦闘で撃破される事も無い。
脚注
出典
- ^ a b c d e f g h i j k l m n <#日本兵器研究会>P.139
- ^ a b c d <#日本兵器研究会>P.138
- ^ <#ソ連地上軍> P.174、P.199、P.201
- ^ “ロシア軍が戦場に乗り捨てた軍用車の「異形」...後ろ半分は「まるで日曜大工」のお粗末さで、地雷原に沈む”. ニューズウィーク日本語版 (2023年10月13日). 2025年1月24日閲覧。
- ^ David Axe (2023年9月8日). “牽引車に艦載砲つけたロシア軍改造兵器、弾を撃つとぶるぶる震える”. フォーブス ジャパン. https://forbesjapan.com/articles/detail/65782 2025年1月24日閲覧。
- ^ <#日本兵器研究会>P.152-153
- ^ <#日本兵器研究会>P.165
- ^ a b c <#日本兵器研究会>P.182
- ^ <#日本兵器研究会>P.180
- ^ <#日本兵器研究会>P.177
- ^ The Military Balance 2017, p. 199.
- ^ IISS 2024, p. 180.
- ^ International Institute for Strategic Studies (2021). The Military Balance. Taylor & Francis. p. 448. ISBN 9781032012278
- ^ The Military Balance 2017, p. 274.
- ^ The Military Balance 2017, p. 97.
- ^ The Military Balance 2017, p. 203.
- ^ IISS 2022, pp. 77
- ^ IISS 2024, pp. 184–185.
- ^ The Military Balance 2017, p. 380.
- ^ “shex ja3far puk”. YouTube. 2015年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年12月9日閲覧。
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 179. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ IISS 2024, p. 113.
- ^ The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2023-02-15) (英語). The Military Balance 2023. Routledge. p. 182. ISBN 978-1-032-50895-5
- ^ The Military Balance 2017, p. 528.
- ^ The Military Balance 2017, p. 136.
- ^ “Kurdish Armour: Inventorising YPG Equipment In Northern Syria”. Oryx Blog (2021年10月29日). 2025年10月6日閲覧。
- ^ IISS 2024, pp. 208–209.
- ^ IISS 2024, p. 452.
参考文献
- The International Institute for Strategic Studies (IISS) (2024) (英語). The Military Balance 2024. Routledge. ISBN 978-1-032-78004-7
- デービッド・C・イスビー著、林憲三訳『ソ連地上軍 兵器と戦術のすべて (元題:WEAPONS AND TACTICS OF THE SOVIET ARMY)』原書房、1987年。ISBN 4-562-01841-0。
- 『グランドパワー10月号別冊 世界の軍用車輌(3) 装軌/半装軌式戦闘車両:1918~2000』 デルタ出版 2000年
- 田中義夫 編『戦車名鑑1946-2002現用編』光栄、2002年。ISBN 978-4877199272。
- 日本兵器研究会 編『世界の装軌装甲車カタログ』三修社、2001年。ISBN 4-384-02660-9。
関連項目
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