「OST」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)
別表記:
「OST 」とは・「OST 」の意味
「OST」とはゲームや映画、ドラマなどの主題歌や音楽を集めたサウンドトラックのことである。
英語の「original soundtrack(オリジナルサウンドトラック)」の略称だ。OSTはかつてレコードやカセットテープで発売されるのが普通だった。やがて、80年代ごろからCDでのリリースが広がり、2010年代以降はデジタル配信もなされている。かつて、OSTは一部の映画ファンや音楽ファンが楽しむためのものだった。それでも、1950~60年代にかけて「サウンド・オブ・ミュージック」や「ウエスト・サイド物語」といったミュージカル映画のOSTは世界的にヒットしている。
この頃のOSTではエンニオ・モリコーネ、ニーノ・ロータ、ピエロ・ピッチオーニなどのイタリア人作曲家が脚光を浴びていた。彼らは民族音楽の旋律をスコアに盛り込み、壮大で叙情的な楽曲を得意とした。特に、「夕陽のガンマン」「道」「ゴッドファーザー」などのOSTは名作として知られている。彼らの音楽性は、後世のポップミュージックにも大きな影響を与えた。
さらに、70年代に入ると「燃えよドラゴン」「ロッキー」「スターウォーズ」といった人気映画のOSTも高い売上を記録した。これらの作品が大ヒットしただけでなく、使用されている音楽も印象的だったからである。映画の感動を自宅でも再現したいというファンたちが、こぞってOSTを買い求めた。ビデオやDVDのない時代で、OSTは自宅で映画の感動を再確認する役割を担っていたといえる。一方、当時の日本ではアニメブームが起こり、OSTはファングッズとしての価値を高めていく。70年代以降では「機動戦士ガンダム」「宇宙戦艦ヤマト」「銀河鉄道999」などのOSTが有名だ。
OSTの人気に拍車をかけたのは、70年代以降のロック市場とディスコブームだった。ロックミュージックは世界中を席巻し、巨大なビジネスになっていく。そのような中で、ラモーンズの「ロックンロール・ハイスクール」、プリンスの「パープル・レイン」、U2の「魂の叫び」など、ロック・ミュージシャンを取り上げた映画が大量生産されていった。これらのOSTは実質上のオリジナル・アルバムといえる内容であり、アーティストのファンから高く評価された。
ザ・バンドの「ラスト・ワルツ」のように、特別な意味を持つOSTも登場する。この映画は名匠、マーティン・スコセッシがザ・バンドの解散ツアーを追ったドキュメンタリー映画だった。映画にはニール・ヤング、ヴァン・モリソン、ボブ・ディランといった大物歌手がゲスト出演しており、OSTでは豪華な演奏を楽しむことができる。「ラスト・ワルツ」は映画もOSTも名作とされ、ロックの歴史に大きな爪痕を残した。
さらに、70年代に巻き起こったディスコブームに便乗し、「サタデー・ナイト・フィーバー」のOSTが24週連続で1位を獲得するという、快挙を成し遂げた。この作品以降、「フットルース」「ダーティー・ダンシング」「フラッシュダンス」などの音楽映画がOSTと一緒に売り出されるという、ビジネスモデルが確立していく。そして、80年代にハリウッドが対策路線に振り切れると、派手でキャッチーな楽曲中心のOSTも世界的ヒットを記録した。
80~90年代のOSTでは「トップガン」「ボディガード」「バック・トゥ・ザ・フューチャー」などが知られている。また、映画作家の中にはOSTの内容も監修する人物も現れた。クエンティン・タランティーノは自身にとって思い入れの強い楽曲を、OSTに収録することで知られている。「レザボア・ドッグス」や「パルプ・フィクション」といった監督作のOSTには、決して大ヒット曲ばかりが入っているわけではない。しかし、監督自身のオマージュ精神が高く評価され、以降のOST制作に多大な影響を与えた。「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」がミックステープというコンセプトでOSTを制作しているのも、タランティーノ的だといえる。
90年代のアメリカ映画で、もっとも知名度が高いOSTは「タイタニック」だろう。セリーヌ・ディオンによる主題歌が収録されたOSTは、世界中のヒットチャートで上位にランクインした。「タイタニック」の音楽はアカデミー賞とグラミー賞の両方で高く評価され、OSTはアメリカのチャートで16週連続の1位に輝いている。
90年代以降の日本では、第三次アニメブームの中でOSTの注目度が高まっていく。95年にテレビ放送が開始された「新世紀エヴァンゲリオン」は、劇中スコアの完成度もアニメファンに衝撃を与えた。劇場版のOSTもあわせて、「エヴァンゲリオン」関連のCDは次々と爆発的な売上を記録していく。90年代後半には「もののけ姫」「ポケットモンスター」といったアニメ映画のヒット作も生まれ、OSTは社会現象を呼ぶほどの人気となった。
やがて、深夜帯でコアなアニメファンに向けた作品が量産されていくと、OSTはファングッズとしての側面を強くしていく。OSTは単にスコアや主題歌を収録するだけのCDではなくなり、オリジナル楽曲や声優によるドラマ目当てで購入する消費者も多くなった。人気作品になると、OSTが何枚もリリースされることも珍しくなくなっていく。
21世紀に入り、アメリカではミュージカルドラマのブームが起こった。「ハイスクール・ミュージカル」「glee/グリー」といった作品はオリジナル楽曲にこだわらず、過去のヒット曲を高いパフォーマンスで表現することに力を注いだ。その結果、昔のヒット曲が若者層に、新鮮に受け入れられていくという現象が起こる。特に、「glee/グリー」ではマイケル・ジャクソンやビートルズ、ジャーニーなどの楽曲が次々と人気になり、OSTも大ヒットした。3枚目のOST「Volume 3 ショウストッパーズ」はビルボードチャートで1位を記録している。
「glee/グリー」以降、アメリカ映画では過去の楽曲を現代の若者たちに歌わせるパターンが増えていった。「ピッチパーフェクト」は2010年代で、もっとも商業的に成功したミュージカル映画のシリーズである。本シリーズでは、80年代の映画主題歌「ドント・ユー」が重要な場面でサンプリングされており、選曲の良さが強烈なインパクトを残した。サブスクリプションの隆盛が顕著になってくると、OSTの形態も変わっていく。2019年の映画「WAVES/ウェイブス」にはさまざまなジャンルの膨大な楽曲が使用されている。CDではなく、配信で音楽を聴く層を意識した演出の斬新さは評論家と観客の両方に受け入れられた。
2010~2020年代の日本におけるOSTの人気では、韓国ドラマ(韓ドラ)を無視できない。「梨泰院クラス」「愛の不時着」といった韓ドラは日本でも話題を呼び、OSTもヒットしている。韓ドラは日本のドラマよりも、1話の中で使われる楽曲数が多い。そのうえで、同曲のバージョン違いも頻繁に制作されているので、まとめて楽しめるOSTの需要は大きいといえる。
なお、OSTの中での変わり種といえば、ジョン・カーペンターやクリント・イーストウッド、岩井俊二などの監督作品が挙げられるだろう。彼らは映画監督でありながら、音楽家としての一面も持っている。一部の作品ではOSTに楽曲を提供してきた。監督自らが音楽も担当することによって、映画には作家性が深く刻まれる。ちなみに、カーペンターはミュージシャンとしてのツアーにも出ており、OSTに提供してきた楽曲も演奏してきた。
注意点として、OSTはオフラインoutlookのデータファイルの形式でもある。ビジネスシーンやIT関係のOSTといえば、ほとんどの場合、ファイル形式を意味するだろう。その場合、正確には「.OST」と表記される。
「OST 」の読み方
基本的に「OST」は「オリジナルサウンドトラック」と読む。ただし、データ形式を意味する場合はアルファベット読みでの「オーエスティー」を使う。