Slot_1とは - わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

Slot 1

ソケット形式 Slot
チップ形状 SECC (Pentium II)SECC2 (Pentium III)SEPP (Celeron)
接点数(ピン数) 242
FSBプロトコル GTL+
FSB周波数 66, 100, 133 MHz
電圧範囲 1.65 - 2.80 V
採用プロセッサ <#採用製品>を参照
前世代 Socket 7Socket 8
次世代 Socket 370
この記事はCPUソケットシリーズの一部です

マザーボード上のPentium II SECCパッケージ

Slot 1(スロット1)は、いくつかのインテルのマイクロプロセッサで使われたスロットの、物理的・電気的仕様のことである。Slot 1は接点が242本あることからSC242とも呼ばれ[1]CeleronPentium IIPentium IIIで使用された。

概要

Slot 1はPentium以前のプロセッサで使われていた正方形のZIF PGA/SPGAソケットを使用せず、代わりにAGPスロットやPCIスロットに似た形状の242ピンのエッジ・コネクタを持つ、シングル・エッジ・コンタクト・カートリッジ(SECC)シングル・エッジ・プロセッサ・パッケージ(SEPP)シングル・エッジ・コンタクト・カートリッジ 2(SECC2)にCPUを搭載した。このCPUカートリッジを固定するためのリテンションキットも用意された[2]。このような形状になったのは、Pentium IIの設計において、先代のPentium Proのように2次キャッシュメモリをCPUコアと一緒にパッケージの中に組み込む事を諦め、メモリチップをパッケージの外の基板上に出したためである[3]。集積技術の発達で大量の2次キャッシュがコアに組み込めるようになると、このような設計をする必要がなくなり、CPUは再びソケット形状(Socket 370)に回帰していくことになった。

Slot 1を使用した一部のマザーボードは、デュアル構成でのインテルのプロセッサをサポートした[4]。また、一部のマザーボードではSocket 370とSlot 1の両方を備え、どちらのソケットおよびスロットでも利用することが出来たが、同時に使用することは出来なかった[5]

Slot 1の仕様は、Socket 7よりも高いバスレートを可能としており、Slot 1のマザーボードは、GTL+バスプロトコルを使用していた[6]。Slot 1以後はCPUバスプロトコルに対してインテルが特許を取ったため、インテルに無断で互換CPUを作る事は不可能になってしまった[6][注 1]

一部の350MHz及び450MHzのPentium IIと、ほとんどのSlot 1のPentium IIIは、CPUカートリッジの形状が変更されたSECC2で提供された。CPUカートリッジを固定するためのリテンションキットは、SECC/SEPP用とSECC2用では互換性がないので注意を要する[注 2][2]。また、マザーボードによっては、リテンションキットが付属しない状態で発売されていたものもあった。リテンションキットが付属しない場合や、付属のリテンションキットが手持ちのCPUカートリッジに適合しない場合は、別売のリテンションキット[7][8]を購入し、自身で取り付けしなければいけなかった。リテンションキットなしでCPUカートリッジを装着するのは、CPUカートリッジが緩んだり抜けたりする可能性があるので推奨されない。

AMDが使用した Slot Aは、形状は同一のものであったが電気的な互換性はなく[9]、誤挿入を避けるために取り付け向きも逆になっていた。Slot A用のCPU(Athlon)も当初はキャッシュメモリがコアと分離されており、Slot Aが採用された経緯はSlot 1のそれと同じである。こちらも後にソケット形状(Socket A)に移行した。

互換性

Slot 1はSocket 370と電気的な互換性があるので、Slot 1をSocket 370に変換するゲタが利用でき、主にマザーボードメーカーから多数の商品がリリースされた[10]。このタイプのゲタはマザーボードと同一メーカーの商品を使用する事が推奨され、同社製のマザーボードとセットで使用することにより、変換先のCPUの動作保証をしていた事も多くあった[10]。ただし、チップセットが対応しないCPU[注 3]には単純な変換では対応できないので、後述する電圧やFSBを変換するゲタが必要であった。

Slot 1を搭載したマザーボードはSlot 1の普及時期がIntel 440系の普及時期と被っていたためIntel 440系が多く[注 4]、Tualatin/Tualatin-256KやFSB 133MHzには対応できないものが多かったが、電圧やFSBを変換するゲタを利用すれば、対応できないCPUでも対応できる場合があった。

このタイプのゲタは主にPowerLeapから発売され、Katmai/Mendocino/Coppermine/Coppermine-128Kにしか対応しないマザーボードをTualatin/Tualatin-256Kに対応できたり[11]した。ただしTualatinを利用する場合は、前述の単純にSlot 1をSocket 370に変換するだけのゲタや、Mendocinoコア以前のCeleronやPentium IIしか想定されていないSlot 1マザーにSocket 370版Coppermineを載せるようなゲタよりも低電圧に変換するため、大容量の電解コンデンサを搭載しており、その分だけ相性も厳しかったようである[11]。もともとSlot 1版の存在するCoppermineはBIOSのアップデートで対応するケースも少なくなかったが、Tualatinには本来Slot 1版が存在せず、BIOSが対応していない状態でCPUを動作させても該当CPUのマイクロコードがない状態で動作させる形になるという危険もある。

技術仕様

採用製品

CPU

チップセット

脚注

注釈

  1. ^ インテルとライセンス契約を結んだ上で互換CPUを作ることは可能。事例としてSocket 370向けのVIA Cyrix IIIやVIA C3がある。
  2. ^ ただし、両方に対応するユニバーサルタイプのリテンションキットも存在した[7][2]
  3. ^ 主にコードネームやFSBで対応可否が決まる。
  4. ^ 逆にSocket 370はIntel 440系より発売時期が遅かったIntel 810系やIntel 815系やIntel 820系のマザーボードに搭載されることが多かった。
  5. ^ SECC版Pentium IIIはOEM向け[12]
  6. ^ 1133MHz版は流通直後に回収され販売中止となった。後に出荷されたものはSocket 370版であるため、実質的には1000MHzが最高となる[13]

出典

  1. ^ 鈴木直美 (1999年8月19日). “■鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」■ 第88回:8月2日~8月11日”. PC Watch. 株式会社インプレス. 2022年9月4日閲覧。
  2. ^ a b c 鈴木直美 (1999年4月1日). “■鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」■ 第71回:3月23日~3月26日”. PC Watch. 株式会社インプレス. 2022年9月4日閲覧。
  3. ^ 鈴木直美 (1998年2月2日). “■鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」■ 第16回:1月26日~1月30日”. PC Watch. 株式会社インプレス. 2022年9月4日閲覧。
  4. ^フリーウェイ、デュアルプロセッサ対応のSlot 1マザーボード”. PC Watch. 株式会社インプレス (1999年4月15日). 2022年9月4日閲覧。
  5. ^世界初のSlot 1とSocket 370両用のマザーボードが登場 16通りのベースクロック設定が用意されたDCS製”. AKIBA PC Hotline!. 株式会社インプレス (1999年2月20日). 2022年9月4日閲覧。
  6. ^ a b 元麻布春男 (1998年8月26日). “■元麻布春男の週刊PCホットライン■ AMD、Motorola提携の真の意味は?”. PC Watch. 株式会社インプレス. 2022年9月4日閲覧。
  7. ^ a bTK-P18【リテンションキット】PentiumII・III用リテンションキット”. サンワサプライ製品情報. 株式会社サンワサプライ. 2022年9月4日閲覧。
  8. ^PA-085”. AINEX. 株式会社アイネックス. 2022年9月4日閲覧。
  9. ^ 鈴木直美 (1999年9月9日). “■鈴木直美の「PC Watch先週のキーワード」■ 第90回:8月23日~9月2日”. PC Watch. 株式会社インプレス. 2022年9月4日閲覧。
  10. ^ a b 元麻布春男 (2001年4月18日). “■元麻布春男の週刊PCホットライン■ Slot変換用のゲタ6機種をテスト”. PC Watch. 株式会社インプレス. 2022年9月4日閲覧。
  11. ^ a b 小磯 (2001年11月8日). “Tualatinコア版CPUをSlot1で利用可能になるゲタが来週にも発売予定”. ASCII.jp×ゲーム・ホビー. 株式会社角川アスキー総合研究所. 2022年9月4日閲覧。
  12. ^SECC2ではなくSECCのPentium IIIはOEM向け”. AKIBA PC Hotline!. 株式会社インプレス (1999年7月10日). 2022年9月4日閲覧。
  13. ^インテル、Pentium III 1.13GHzをリコール”. PC Watch. 株式会社インプレス (2000年8月29日). 2022年9月4日閲覧。

関連項目