「deposition」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

一般的な物質の相図三重点以下の温度または圧力(赤線部分)で凝華が起こる。

凝華(ぎょうか、英語: deposition)とは、元素化合物液体を経ずに気体から固体へと相転移する現象[1][2]温度圧力の交点が三重点より下へ来た場合に起こる。

**昇華(しょうか)とも呼ばれるが、これは固体から気体への相転移のことも指す( § 用語の置き換えを参照)。稀に凝固**(ぎょうこ)と呼ぶこともあるが、この語は多くの場合、液体から固体への相転移を指す[3]

概要

標準圧では、ほとんどの化合物と元素が温度変化により固体、液体、気体の三態間を相転移する性質を持つ。この状態においては、気体から固体へと相転移する場合、中間の状態である液体を経る必要があるが、一部の化合物元素は一定の圧力下において、気体と固体間を直接に相転移する。

英語では主にdepositionと呼び、desublimationが使われることもある[4]。また、厳密には不正確とされるがsublimationが使われることもある[5]

用語の置き換え

日本語では、気体から固体への相転移を指す用語として「昇華」が使われてきた。高等学校用検定教科書では1950年代ごろから、『広辞苑』(岩波書店刊)では1955年以降の版で、この用法がみられるようになっている[4][6]。誤りとみなされるようになったこの用法が発生した背景には、昇華精製のことを指す「昇華」の用法が誤解された可能性が指摘されている[4]

一方、遡って明治時代から化学者の間では、固体から気体への相転移と、固体から気体を経て再び固体になる変化(昇華精製)の2通りの意味で「昇華」を用いていた。英語におけるsublimationの現在まで続く用法とほぼ同じである。そして、第二次世界大戦後も『理化学辞典』(岩波書店刊)[注釈 1]『化学大辞典』(共立出版刊)ではこの用法で記載が続いてきた[4][7][8]

その後定着した気体から固体への相転移を指す「昇華」の用法には、一部の化学者から疑問が呈されてきた。少なくとも1980年代には新谷光二[9]らによる指摘・議論があった。細矢治夫も指摘を行うとともに、先に山崎昶らも紹介していた、中国語圏(中国台湾)で使われている「凝華」の導入を提案した[4][6][5]

やがて教科書では、「昇華」を使うのは適当ではないとして気体から固体への相転移を指す用語を記載しない対応をとるようになった。また、日本化学会は2015年に「凝華」の使用を提案するに至った。これにより、その後教科書では補足の形で「凝華」を記載するようになり[4][6][5]、2022年施行の新課程では本文でも「凝華」と記載するようになった。

脚注

注釈

  1. ^ 『理化学辞典』では第5版で現状に追随するように気体から固体への変化が追記されたが、後に問題があると指摘がなされた。

出典

  1. ^ 日本化学会化学用語検討小委員会 2018.
  2. ^ 井口 2022.
  3. ^ 小野 嘉之「凝固」『改訂新版 世界大百科事典』平凡社。https://kotobank.jp/word/%E5%87%9D%E5%9B%BA#w-1159235コトバンクより2026年1月19日閲覧。
  4. ^ a b c d e f 細矢 2013.
  5. ^ a b c 細矢 2017.
  6. ^ a b c 日本化学会化学用語検討小委員会 2015.
  7. ^ 細矢 2000.
  8. ^ 佐藤 & 細矢 2001.
  9. ^ 新谷 1984.

参考文献

関連項目

外部リンク

物質の状態
物質の状態 固体 液体 気体 プラズマ
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融解熱 昇華熱 蒸発熱 潜熱 潜在内部エネルギー(英語版) トルートン比(英語版揮発性
概念 バイノーダル(英語版) 圧縮流体(英語版冷却曲線 状態方程式 長距離秩序 スピノーダル(英語版超伝導 過冷却 過熱蒸気 過熱 熱誘電体効果(英語版