読み方:いんぷろびぜーしょん即興のこと。Weblio国語辞典では「improvisation」の意味や使い方、用例、類似表現などを解説しています。">

「improvisation」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 (original) (raw)

即興(そっきょう、: Improvisation)は、型にとらわれず自由に思うままに作り上げる、作り上げていく動きや演奏、またその手法のこと。インプロヴィゼーション/インプロヴァイゼーション、**アドリブ**ともいう。ただしインプロヴァイゼーションとアドリブを厳密に区別する者もいる。一般には、音楽ダンス演劇の世界において使用される語。

形式による制約よりも、演奏時・演舞時の知覚を優先とする。音楽ダンスなどにおける創造の源流でもあり、作品制作時においても深く関係する。即興は芸術の埒外にも存在する。エンジニアリングにおける即興とは、道具や材料の問題をすぐに解決することである。 即興武器(英語版)は、ゲリラや反政府勢力が使用する。

音楽における即興

演劇・舞台芸術

即興劇 も参照。

ヴィオラ・スポリンは即興の演技を訓練する方法として、演劇ゲームを作成した。[1]

即興は多くの俳優にとって一般的なツールであり、実際の舞台劇と、高校大学における演劇教育の現場を繋ぎとめる役割を果たしている。近代演劇の基礎を築いた コンスタンチン・スタニスラフスキーの演劇理論によれば、俳優があるシーンを即興で演じるためには、自身の直感を信頼することが不可欠とされる。俳優は、キャラクターが受ける内面的、あるいは外的な刺激に対する反応を、自らの直感によって決定しなければならない。即興を通じて、俳優は mugging(過度な顔芸)や indicating(記号的・説明的な演技)といった技巧に頼るのではなく、真に直感を信じる技術を習得することが可能となる(メソッド演技法 参照)。

また、即興は役への集中力維持にも極めて有用である。あらゆる反応が許容される環境下では、困難で緊張を強いる状況であっても、俳優は一貫した集中を保ちやすくなる。この「集中」こそが演劇の授業や共同研究(ワークショップ)の核心であり、俳優がシーンやアクションに没入するための鍵となる。なお、即興の流れを止めてしまう行為や、維持に失敗した俳優の状態は blocking(ブロッキング)と定義される。

映画・テレビドラマ

映画制作において、即興は脚本の補完やキャラクターのリアリティ向上を目的に広く活用されている。

映画監督 マイク・リー は、キャラクター造形やストーリーラインの構築に際し、数週間にわたる長期的な即興セッションを用いる手法で知られる。[2] 撮影開始時点では断片的なアイデアのスケッチを用意するにとどめ、物語の展開や各キャラクターへの意図をすぐには明かさない。俳優たちは即興を通じて、キャラクター自身の宿命や、スクリーンには直接映し出されない背景(バックストーリー)を含めた人生の諸側面を模索し、運命に対してどう振る舞っていくかが次第に具体化されていく。最終的な作品は、こうした即興の過程から抽出された対話やアクションを構成することで完成に至る。

また、テレビドラマや映画の現場では、偶発的に発生したNGテイクに近い動作や、俳優が役になりきって発した台本にない言葉が、作品に生命力を吹き込む要素としてそのまま採用されるケースも多い。[3]

例えば、映画『ミッドナイト・カウボーイ』でダスティン・ホフマンがタクシーに轢かれそうになりながら放った「俺はここで歩いてるんだ!(I'm walking here!)」というセリフは、撮影中の本物のハプニングに対する即興の反応であったが、キャラクターの個性を象徴する名シーンとしてそのまま本編に使用された。このような「意図しない真実味」の採用は、観客に強い実実感を与える効果を持つとされる。[4]

アドリブの分類と生成プロセス

映画やドラマにおけるアドリブは、その発生の経緯によって以下のように分類される。

偶発的・突発的アドリブ 撮影中に予期せぬアクシデントが発生した際、俳優が役を維持したまま反応し、それが監督によって採用されるケースである。これらは「真実味(Authenticity)」を画面に与える。代表例として、映画『ジャンゴ 繋がれざる者』にて、レオナルド・ディカプリオが演技中に誤ってグラスで手を切り、実際に出血しながらも演技を続行したシーンなどが挙げられる。[5]

監督との協働による即興 脚本の枠組みを維持しつつ、特定のシーンにおいて監督が俳優に自由な対話や動作を許可、あるいは奨励する手法である。マーティン・スコセッシ監督などは、リハーサル段階で俳優たちに即興を演じさせ、そこで生まれた最良のフレーズを最終的な脚本に取り入れる手法を多用する。[6] また、現場で監督から「ここは自由に動いてみてくれ」という指示(ディレクション)が出ることもある。

キャラクターの深化を目的とした提案 俳優が役の解釈に基づき、特定の動作や小道具の使い方を現場で提案し、採用される形態である。映画『ダークナイト』において、ヒース・レジャーが演じるジョーカーが牢屋の中で嫌味な拍手をする動作は、台本には記述がなく、俳優本人の発案による即興であったとされる。[7]

ダンス

ヨーロッパの古典ダンスであるクラシック・バレエでは、全ての動きは計算されており即興の余地はほとんどなかった。即興を明示的に取り込むようになったのは、19世期末から始まったモダンダンスにおいてである。[8]ロイ・フラーマリー・ヴィグマンen:Rudolf von Labanなどが代表的である。Contact Improvisation の形式が作られたのは1972年頃になり、今では世界中で練習されている。Contact Improvisation は、もともとは1970年代スティーヴ・パクストンen:movement studiesから生まれたもので、 ジャドソン・ダンス・シアター によって続けられた探求によって開発された。重量、パートナー、演技を分かち合う、ことに基づくもので、予期しない成果を生む。

日本の即興舞踊

は元来はすべて即興で演じられるものであり、舞は囃子とともに創出されてきた経緯がある。世阿弥の時代には型は重視されていなかったといわれている。歌舞伎においても、流派によっては日本舞踊においても即興感覚は創造性ある舞台に必要とされる。近年では前衛舞踊家土方巽を中心としたいわゆる舞踏において、即興は重要な技法のひとつとされ、即興をスタイルとする代表的な舞踏家に大野一雄笠井叡伊藤ミカ田中泯らがいる。 現代ではコンテンポラリーを含む独自の技法で踊る現代舞踊手たちによって即興舞踊の公演が増えている。その場合、楽曲を流して背景音とすることの多い舞踏と違って即興演奏家と共演することも多い。また背景曲なしの無音で即興に踊る舞踏家やダンサーもいる。

コメディ

即興はまた、世界中の劇場で演じられている。ドラマチックな意図で演じられることもあるが、多くの場合、コメディの要素として演じられる。最も有名なものは、シカゴセカンド・シティThe Second City)である。セカンド・シティには、Viola SpolinPaul SillsDel CloseKeith Johnstone のような、即席に演じる演じ方のメソッドを作ったパイオニア達がいた。彼らはしばしば、驚くべきキャラクターと態度で、おかしなシーンを大胆に即興で演じた。

お笑い・演芸

大喜利」および「フリートーク」も参照。

お笑いや演芸において、即興は観客との一体感を生み出し、その場限りの笑いを作るための核心的な技術である。

落語家は、高座に上がった際の客席の雰囲気や反応(客層、年齢層、集中度)を瞬時に判断し、本題に入る前の導入である「枕」の内容を即興で切り替える。特に笑福亭鶴瓶の「スジナシ」のように、台本を一切持たず、ゲストとの即興の掛け合いのみで物語を構成する試みも広く知られている。[9]

お題に対して即座に回答を返す大喜利は、即興的知性の典型とされる。長寿番組『笑点』においても、回答の瞬発力とその場の流れを汲み取る能力が演者の技術として評価される。近年では「IPPONグランプリ」などの番組を通じ、純粋な発想の速度と即興性を競う競技的な側面も強まっている。[10]

フリートーク・バラエティ 明石家さんまに代表されるように、バラエティ番組における進行の多くは、共演者の予期せぬ発言を拾い、即興で笑いに変える対応力に基づいている。[11] 構成作家が用意した台本(プロット)を逸脱した瞬間にこそ真の笑いが生まれるという認識が、多くの演出家や芸人の間で共有されている。

科学技術/工学

エンジニアリングにおける即興とは、道具や材料に関する問題を即座に解決することである。そのような即興の例は、アポロ13号宇宙ミッションの間、手持ちの材料で二酸化炭素スクラバーを再設計したこと、あるいはスクリュードライバーの代わりにナイフを使用してスクリューを回すなどである。

緊急事態、禁輸措置、製品の陳腐化、製造業者のサポートの喪失、あるいは単により良い解決策のための適切な資金が不足しているなどの理由により、エンジニアリングの即興が必要になることがある。アフリカの一部地域で自動車を使用する人たちは、製造業者の認可を受けたスペア部品を入手することが不可能な場合に、即席の解決策を開発する。

MacGyverという人気テレビ番組は、日常の材料やスイス製アーミーナイフ、ダクトテープなどのジュリー・リギング(英語版)のデバイスを操作することで、ほぼすべての問題を解決できるヒーローをギミックとして使った。

テレビ

1990年代、「Whose Line Is It Anyway?」というテレビ番組は、 ショートフォーム(en:Improvisational theatre#Improvisational comedy)というコメディの即興形式を普及させた。オリジナルはイギリスのものだが、後にアメリカDrew Carey をホストに迎えた番組でリバイバルし、人気が出た。最近では、HBO の「Curb Your Enthusiasm」(ジェリー・サインフェルド 主演、共同制作 Larry David)や Bravo シリーズの「Significant Others」などが、即興を使って、ドラマチックな味わいを強めながら、長時間番組を作りだしている。即興に基づくまた別の番組には i の「World Cup Comedy」がある。カナダには、オーストラリアのテレビ番組シリーズ Going Home を基にした Global TelevisionメロドラマTrain 48」が、即興の形式を使い、プロットに書かれたアウトラインを元に、対話劇で俳優が即興を演じている。

ロールプレイングゲーム

いくつかの ロールプレイングゲームテーブルトークRPGコンピュータRPG)は、しばしばうわべだけの即興を含む。プレイヤーが演じるキャラクターは予め決められているが、他のプレイヤーやゲームの中で起こるイベントへの反応は、即興を含む。そのキャラクターの演技の深みに興味を示す人たちもいる。純粋に戦闘シーンや game mechanic を楽しむ人たちがいる一方で、それよりもキャラクターの情熱的で機知に富んだ当意即妙のやりとりに感情移入し、凝った筋書きを楽しむ人たちがいる。

脚注

  1. ^ Spolin, Viola (1963). Improvisation for the Theater. Evanston, Illinois: Northwestern University Press. ISBN 978-0-8101-4008-0. https://archive.org/details/improvisationfor0000spol_v7u4
  2. ^ FILM / Rehearsing for another life: Working on a Mike Leigh film can Independent(2025年8月2日閲覧)
  3. ^俳優が台本から外れた8つの瞬間”. 舞台裏 (2023年6月28日). 2026年2月7日閲覧。
  4. ^ Wexman, Virginia Wright (1980). “The Rhetoric of Cinematic Improvisation”. Cinema Journal (University of Texas Press) 20 (1): 29-41.
  5. ^Leonardo DiCaprio really bled for his Django Unchained part”. IMDb (2012年12月27日). 2026年2月7日閲覧。
  6. ^ Scorsese, Martin (2003). Scorsese on Scorsese. Faber & Faber. ISBN 978-0571211098
  7. ^Heath Ledger Improvised Joker Myth: What Really Happened In The Dark Knight” (2024年5月8日). 2026年2月7日閲覧。
  8. ^ Foulkes, Julia L. (2002). Modern Bodies Dance and American Modernism from Martha Graham to Alvin Ailey. University of North Carolina Press. ISBN 978-0807853672
  9. ^鶴瓶のスジナシ!”. CBCテレビ. 2026年2月7日閲覧。
  10. ^IPPONグランプリ公式サイト”. フジテレビ. 2026年2月7日閲覧。
  11. ^明石家さんま、驚異の即興力 「予定調和」を嫌うプロの哲学”. ORICON NEWS (2015年5月4日). 2026年2月7日閲覧。

関連項目

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