ヴィヴィアン・リーと【哀愁】おすすめ映画 (original) (raw)

映画「風と共に去りぬ」では情熱的で激しい性格のスカーレットの役を見事に演じたヴィヴィアンリーでしたが、ロバート・テイラーと共演の「哀愁」は、繊細な女性を演じていました。

どちらも好きな作品ですが、どんなに厳しい世界でも強く生き抜く事が出来るスカーレットの様な強い女性に私は憧れてしまいます。

マービン・ルロイ監督

1900年10月15日サンフランシスコで生まれる。

8年間ボードビルの軽演劇の舞台にたった後映画界に入った。

27年ファースト・ナショナルで監督となり、駆け出しの頃は軽い喜劇が多かったが、次第に頭をもたげ、グロリア・スワンソン主演の「仮面の米国」などで一流監督の仲間入りをした。だがなんといっても、彼の力を十分に発揮するようになったのは、1939年にMGMに転じたからでその年ジュディ・ガーランド主演の野心作「オズの魔法使い」の製作に当たった。その後はこの「哀愁」を皮切りに「塵に咲く花」「心の旅路」「キュリー夫人」などグリア・ガースン主演で一連の美しい作品を監督した。

【哀愁】主な登場人物

マイラ(ヴィヴィアン・リー)

オルガ・キロワ・バレー団の踊り子

ロンドン空襲の時ロイに助けてもらう

ロイ(ローバート・テイラー)

現在:ロイ・クローニン大佐48歳

マイラと知り合った時は25歳の大尉

キティ(バージニア・フィールド)

マイラの親友 バレー団の踊り子

【哀愁】舞台イギリスウォータールー橋

ウォータールー橋は、イギリス、ロンドンのテムズ川に架かる橋。

この橋中央から見るテムズ川の景色は西にビッグベンやロンドンアイ、東はセントポール寺院などロンドンの名所があります。

【哀愁】のあらすじとネタバレ感想

第2次世界大戦が起こって、ロイ・クローニン大佐(ロバート・テイラー)は、フランス戦線に赴任のため、夕霧が立ちこめるロンドンの街を、ウォータールー駅に向かって車を走らせていました。

大佐は、48歳独身。

ハンサムで気品溢れた感じですが、どこかさみしげな感じがします。

大佐は途中ウォータールー橋のたまとに車をとめ、ひとり橋の欄干にもたれます。

彼の手には、ビリケンの幸運のお守りが握りしめられていました。

ここから、回想シーンとなります。

マイラとの出会い

第1次世界大戦の最中、ウォータールー橋を散歩する若い士官。

彼は当時25歳の青年大尉ロイ。

フランス戦線から休暇で帰国中でしたが、前線帰任を翌日に控え、ロンドンに別れを惜しんでいるのでした。

空襲警報が鳴り響き、通りがかった一団の少女たちが地下鉄へと走り、ロイも逃げおくれた1人の少女を助け、そのあとを追います。

少女の名前はマイラ(ヴィヴィアン・リー)。

オリンピック劇場に公演中のオルガ・キロワ・バレー団の踊り子でした。

空襲が終わり地上に出ると、マイラはロイの武運を祈り、ビリケンの幸運のお守りを彼に手渡すと急いで劇場へと向かいます。

この時すでに2人は惹かれ合っていたのですね。

いつの時代であろうと恋は芽生えるものです。

永遠の愛を誓う2人

その夜、舞台で踊るマイラは上官の宴席に行ったはずのロイが、客席から微笑みかける姿を見て嬉しさでいっぱいになります。

楽屋で、彼女はロイから夜食の誘いの手紙を貰うのですが、厳格なキロワ女史(マリア・オースペンスカヤ)に見つかり、断りの返事を書かなければなりませんでした。

女史に対しては厳しすぎるやろ~そんな食事くらいいいやんかと思いながら当時映画を観た記憶があります。

けれども、親友のキティ(バージニア・フィールド)のおかげでキャンドル・クラブで再会する事が出来ました。キティは本当にマイラ思いの頼りになる存在です。

このクラブでは「蛍の光」のメロディとともにキャンドルが次々に消されていき、ついには窓からの夜明けの光だけになっていきます。

物悲しい曲の中で恋人たちは踊り続ける幸せなひととき。

2人は夢のような時間を過ごし、「いつまでも」と愛情を誓い合うのでした。

出発の延期

翌朝、マイラはキロワ女史に厳しくしかられます。

女史は兵隊の気まぐれな情に教え子が傷つく事を恐れ、2度とこのような事をすれば解雇するとマイラに言い渡します。

ロイへの想いと悲しみでいっぱいのマイラ。

キティにロイへの想いを話し、降りしきる雨と同じ思いでふと窓の外を見ると、今朝ロンドンを去ったはずの彼が雨の中、たっているではありませんか!?

彼の出発がドーバー海峡の機雷のため、2日間延びたためでした。

彼女は我を忘れて雨の中に飛び出します。

雨の中での軍服姿のロバート・テイラーはかっこいい。

あの飛び出していくヴィヴィアン・リーの姿もとても可愛い。

運命のいたずら

ロイは隊長の結婚許可をもらい、明日午前に式を挙げる手筈をととのえていました。

マイラもまた結婚を発表し、キティをはじめ同僚の祝福を受け幸せに酔っていました。

ところが突然ロイから電話がかかってきて、「今晩急に出発する」と知らされるのでした。

マイラは舞台を捨て、ウォータールー駅に駆け付けますが、もう2度と会えないかもしれないロイの姿をようやく一目見ることが出来ただけでした。

無情な解雇

傷心のマイラを待っていたのは、解雇でした。

女史の無情な仕打ちに腹を立てたキティも女史にはむかい、解雇されてしまいます。

彼女たちは、働く口も見つからず生活していくことの厳しさを目の当たりにするのでした。

ロイの母親と

そんなある日、マイラはロイの母親マーガレット(ルシル・ワトソン)から上京するので会いたいという手紙を貰います。

約束のレストランで待っている間マイラは新聞でロイの死を知ってしまいます。

あまりのショックに気を失ってしまうマイラ。

店員に気付けのアルコールを貰い目を覚ますマイラ。

思わず残りのアルコールを飲み干します。

その姿を目の前で驚きの顔をしながらみていたのがロイの母親でした。

つい取り乱してしまったところを、ロイの母親に不快感を残してしまうマイラ。

マイラは思わず手にした新聞を隠します。

そして「話す事は何もありません」と母親に伝え店を後にするのでした。

生きていくために

それ以来マイラは病で病床にいました。

2~3か月が経ちようやく起き上がれるようになったある日、舞台に出ていると思っていたキティが、夜の女となって自分の世話をしてくれていた事を知ります。

絶望のあまり自暴自棄となったマイラはキティと同じ道を歩むようになるのでした。

街娼に身をおとしたマイラですが、駅のあたりを行きかう男たちに流し目をくれながら歩くシーンは無理に娼婦らしいポーズを取っているといった感じではなくて、上品だけれど、男性の視線をあびることが快楽なのですという表情を見せながら歩いていく姿はヴィヴィアン・リーだから出来る演技なのではと思いました。

ヴィヴィアン・リーの美しすぎる顔を見ているだけでうっとりしてしまいます。

ロイとの再会

1年ほど経ったある日、いつものようにウォータールー駅で客を引いていたマイラは、元気で帰還したロイにバッタリ出くわします。

ロイは彼女がこうして自分を待っていてくれたものと思い喜びでいっぱいになります。

固く抱きしめた腕のなかで、嬉しさと困惑に戸惑っているマイラを昔のままの彼女だと信じて疑わなかったロイ。

いやいや、分かるやろ~。マイラの恰好を見たら気づくで~と思うのですが。

鈍感すぎるやろ~。

すぐ結婚式を挙げようと、彼女をつれ、喜び勇んでスコットランドの母の許へ帰ります。

ロイの家族

マイラは、ロイの家族はじめ誰からも愛され、祝福されます。

なかでもロイの母親マーガレットの信頼と美しい心にふれ、このまま黙って結婚する気になれず、事実を夫人に打ち明けもう2度とロイに会わない決心をし、出奔するのでした。

マイラを追って

彼女を追ってロンドンにきたロイ。

キティと一緒に、安酒場やカフェと心当たりを探しまわります。

そこで初めてロイはマイラ達のどん底に落ち込んだ生活を知るのでした。

(え?気づいたの今?)遅いって…イチイチ映画にツッコミを入れたくなる当時の私は

映画ですが鈍感なロイにイライラしていました。

当時は分かるやろ~とツッコミを入れたくなるような気持ちで観ていましたが、この歳になって思うのは、実際になってみないと分からないものや気づく事、思う事は意外とあるものだと思います。

大切なのはその瞬間に気付くこと。

出来ないからすれ違いや思い込みがあるんですよね。

それが出来ると後悔なんてないのかもしれません。

この映画のスゴイ所はキティやマイラがどん底生活に落ち込んでいても汚い言葉は一切使われず、「白鳥の湖」の悲し気なメロディーとともに美しいイメージを保ったまま流れていきます。

探しまわったところで、彼女の行方は分かりませんでした。

もっと早く気づいてと思いましたがどうすることも出来ないんですよね。

その頃、マイラはウォータールー橋に立って深い物思いに沈んでいました。

将来に生きる希望を見いだせず、折から疾走してくる軍用トラックの前に身を投げて死んでしまいます。

霧に濡れた歩道には、スコットランドの家で、ロイが返してくれた幸運のお守りが転がっているのでした…

どんなに科学が進歩しても生活が便利になったとしても、人間の愛情は割り切れないものなのだと思います。

愛するがゆえに、その人のしあわせを願い、美しい愛情とイメージをそのまま恋人の胸に残して去ったマイラ…ただひとつの愛をつらぬきたかったマイラ。

純粋で繊細で心優しいマイラを思うと今でも胸がぎゅっと苦しくなるのでした。