【エデンの東】ネタバレあらすじ感想と映画の舞台【アメリカ・カリフォルニア】 (original) (raw)

ジェームズ・ディーンの映画初主演作で代表作のひとつ【エデンの東】。

旧約聖書のカインとアベルをモチーフにしているジョン・スタインベックの小説です。

30年前に一度観た事があるこの映画を久しぶりに観てみたら、当時と違って主人公の気持ちがよく分かりました。

家族を愛するが故に起きた悲劇が心に沁みます。

【エデンの東】の簡単なあらすじ

父親に可愛がられる優等生の兄に嫉妬し、不器用に親の愛情を求める青年の苦悩と成長を描いた物語です。

【エデンの東】の登場人物

ケイレブ(キャル)・トラスク/ ジェームズ・ディーン

主人公。アダムの息子でアーロンの双子の弟。
アダムより聖書にちなんでケイレブと名付けられるが、映画ではキャルと呼ばれている。
生き方に不器用で孤独。
父アダムから愛されていないことで悩んでいる。

エイブラ/ ジュリー・ハリス

アーロンの恋人。
キャルやアダムへの気配りを忘れない優しい娘。
キャルの抱える悩みと同じ思いをしたことがある。
今は親との仲は良好。

アダム・トラスク/ レイモンド・マッセイ

キャルとアーロンの父。
かつては東部で農場を経営していたが、1年前に東部からサリナスへと移住。
レタスの栽培と冷蔵輸送を考え始める。
クリスチャンで、キャルが問題を起こしたときには聖書を取り出し、聖書の一節から教えを説く。
地元の徴兵委員会の委員長。

ケート/ ジョー・ヴァン・フリート

キャルとアーロンの母。
アダムの元妻。
モントレーでいかがわしい酒場を経営している。
激しい性格でアダムを撃ってケガを負わせた過去がある。

アーロン・トラスク/ リチャード・ダヴァロス

アダムの息子でキャルの双子の兄。
真面目で礼儀正しい性格からアダムの期待を一身に受けている。

ウィル・ハミルトン/アルバート・デッカー

サリナス在住の資産家。
商売における目の付け所においては抜け目の無い人物。
アメリカの第1次世界大戦参戦により穀物の値上がりを予想し一攫千金を狙う。
キャルにもそのことを教える。

グスタフ・アルブレヒト/ハロルド・ゴードン

サリナスで靴屋を経営しているドイツ系移民。
アダムのチェス仲間で、キャルやアーロンとも親しい。
アメリカの大戦参戦後はドイツの非道さが喧伝されるに対して「嘘だ、でたらめだ」と主張し、地元民との乱闘騒ぎを招く。
その収拾は、キャルとアーロンの間に亀裂が生じる切っ掛けとなってしまう。

ジョー/ ティモシー・ケイリー

ケートの用心棒。
映画の冒頭でケートを尾行していたキャルを追い払う。

アン/ロイス・スミス

ケートの家と酒場で働く女性。

サム・クーパー/バール・アイヴス

保安官。アダムとは古くからの友人。
アダムの過去を知る彼はキャルのことを心配しながら温かく見守る。
しかし最後にはキャルに旧約聖書の一節「エデンの東」を語って、サリナスから去るように忠告する。

【エデンの東】ネタバレあらすじと感想

尾行

1917年、アメリカ合衆国カリフォルニア州サリナス。

トラスク家アダムの息子キャルは、ある秘密を探っていました。

列車に飛び乗り、モントレーの港町でいかがわしい酒場を経営している中年女性ケートを尾行しています。

その理由は、死んだと聞かされていた自分の母が生きているかも知れないからでした。

彼女が自宅に入っても、声を掛けられず自宅に向けて石を投げています。

完全に怪しい人です。

理由を言わないキャルはケートの用心棒、ジョーにより、追い払われるのですがこの時点で、(あ~この子は不器用な子だなぁ)と思います。

反抗

キャルは、父アダムが事業として計画しているレタスの冷蔵保存に使用される氷をいきなり屋外に投げ出します。

そのことで父から聖書の一節を読ませられます。
キャルは反抗しつつも「自分のことを知りたい、そのためには母のことを知らなければ」と母のことをアダムに問います。

アダムは母との不和を話しますが、彼女が生きているとは言いません。
肩に受けた傷についてもごまかしています。

ほんまのこと言うたって

キャルはもう一度ケートの店に向かいます。

サリナスへは、サンフランシスコから車で約1時間45分。そこからモントレーへは車で30分で着きます。

彼女とは会えるのですが、話に応じて貰えずに追い返されてしまうのでした。

キャルはアダムの旧友の保安官サム・クーパーから誰にも見せなかったという両親が結婚した時の写真を見せられ、ケートが自分の母だと確信するのでした。

サムは、キャルに写真を見せる事でこれ以上詮索はしないと考えたのでしょう。

じれったいなぁと思いつつ、写真を見せたサムはキャルの父親はこの世で一番の聖人だからと言います。

キャルの悩み

ある日キャルは「自分は父から愛されていないのではないか」という悩みを、アーロンの恋人アブラに打ち明けます。
すると、彼女も同じ悩みを抱えていたことがあったことをキャルに打ち明け、2人の心が近づきます。

同じ悩みを共有できた時、グンと近づく事ってありますよね。

人間というものは、忙しすぎると身近な相手の気持ちが分からなくなるもので、心の目を見ず見た目だけで判断してしまいます。

それが積もり重なると取り返しのつかない事になってしまいます。

キャルはそんな父親が自分の理想通りのアーロンを可愛がり、反抗するキャルを避けると感じてしまうのです。

キャルはそれを問いただせないまま、モヤモヤした気持ちを内に秘めていったんだろうなぁと思います。

いつの時代も子育ては難しい

大損害

そんな中アダムは、氷で冷蔵保存したレタスを東海岸に運んで大儲けしようと貨物列車で東部の市場へ出荷しますが、その途中で峠が雪崩で通行不能となり、列車内で氷が溶けて野菜が腐ってしまい大損してしまいます。

ケートの元へ

キャルはアダムの損失額を取り戻そうと、商売上手なウィル・ハミルトンのもとを訪れ、彼に認められ、戦争で大豆が高騰するという話を聞きだしますが投資額は非常に高いものでした。

そこで彼は再びケートのもとへ向かい、資金を求めます。

一度は断られてしまうものの、ケートが家を出た理由を教えて貰う事ができました。

その理由は、彼女が自由を求めていたということ、アダムがインディアンとの戦いで負ったと言っていた肩の傷はケートが家を出るときに彼女に撃たれて負ったということ、ケートも息子キャルと同じようにアダムから聖書を引用した叱責や彼女を束縛することを嫌っていたことが語られます。

そうして話の後には資金の提供もしてくれたのでした。

アダムは支配しようとしてたんやな

アブラの気持ち

米国の戦争への参戦によってキャルは利益を上げます。

当時の世界情勢は、第一次世界大戦真っ只中で、アメリカは初めは中立の立場をとっていましたが、ドイツの潜水艦が中立国の艦船を無差別に攻撃するようになったため、1917年には新たに中国とアメリカも連合国に加わりました。

アーロンは自分は戦争に反対しているから兵役に志願しないとキャルに語るのでした。

そのころドイツ系移民である靴屋のグスタフはドイツ系差別を受け、店舗のガラスを割られてしまいます。

お祭りの日、キャルはアーロンと待ち合わせをしていたアブラと出会いますが、アーロンとの待ち合わせまでの時間、早く来ていたアブラと行動します。

2人は観覧車に乗り、キャルはアブラからアーロンとの間には何か違和感を覚えること、母のいないアーロンが自分に求める母親の像と自分とは違っているということを打ち明けられます。

そしてアブラはキャルと口づけを交わすのでした。

アブラはこのころからアーロンへの想いが薄れてたんやな

アーロンとの溝

その観覧車の下では、靴屋のグスタフが反ドイツ感情の強い人々に小突かれて、その中にアーロンが巻き込まれたことを目撃したキャル。

キャルはアーロンを助けようと騒ぎの中へと飛び込み乱闘騒ぎとなります。

保安官のサム・クーパーがその場を収め騒ぎは収まりましたが、、キャルは乱闘に巻き込まれたアーロンを助けに入ったのに、アブラが近くにいたので、アーロンはキャルがアブラの前で良い恰好をしたかっただけだと思ってしまい2人は殴り合いを始めてしまいます。

タイミング悪すぎ

壊れたアーロン

大豆の取引によってキャルが得た利益が父アダムの損失を補填出来る金額になり、喜ぶキャル。

アダムの誕生日にそれを渡そうとします。

部屋を飾り付けながら、父親の喜ぶ姿を想像しながら話すこの時のキャルは、父親に認めてもらえるかもしれないという喜びの気持ちが溢れ出ています。

しかしアーロンのアブラとの婚約発表のプレゼントを聞き、最高のプレゼントだと喜ぶアダム。

その後キャルが渡したそのプレゼントを手にした瞬間、戦争を利用して大金を得たことをアダムは叱責し受け取りませんでした。

加えてアーロンが婚約を伝えたように清らかなものが欲しかったと言います。

こんな仕打ちを受けると、心が痛みます。

あんなに一生懸命で、ひたむきなキャルを観ているので余計に胸が張り裂けそうになりました。

キャルは大声で泣き「父さんが憎い」と叫んで出て行きます。

ジェームズ・ディーンの演技が光りますね

嘆くキャルをアブラが慰めているのを目撃したアーロンは激昂。

アブラにキャルと話すな、キャルに近付くなと厳しい口調で言います。

自分の彼女と仲良くしてたら、腹がたちますよね。

しかも理由が分からずただの不良だと思っているアーロンにとってはキャルだけにはアブラを取られたくないと言う気持ちも分かります。

それに対してキャルは父への憎しみがいつしかアーロンへの憎しみに変わり、母であるケートの酒場にアーロンを連れて行き、初めて彼に母と対面させてしまいます。

「なんでこうなったんやろ」って言うくらいもうキャルの心はボロボロやったんですね。

愛憎とはまさにこういうことですね。

驚いたアーロンを母と2人きりにさせてキャルが帰宅します。

アダムにアーロンの行方を問われたキャルは「知らないね、僕はアーロンの子守りじゃないんだ」と言い返し、ケートが家を出た理由にも触れ、父との決別を告げます。

一方アーロンは、最も軽蔑する女が自分の母であったこと、また信じていたものが幻だった事に激しいショックを受け自暴自棄になり、その日のうちに兵役に志願するのでした。

もうメチャメチャや

許すということ

アダムは知らせを受けて駅に行きます。

兵役に志願する若者たちを乗せた列車の窓からアーロンは頭でガラスを破って父を笑い、列車は動き出します。

そのことがアダムにとってかなりのショックで、列車が出た直後脳出血で倒れ、身動きも出来ない重病人となってしまいます。

あんなに真面目でお気に入りだった我が子がいきなりそんな風になった姿を目の当たりにすると、かなりのショックですよね…親としてこの上ない辛さだと思います。

身体が麻痺し寝たきりになったアダムは、看護婦が付きっきりの状態になってしまいます。

キャルは自分がやったことで起きた事態に良心の呵責に苦しみます。

皆が見舞いに来る中で保安官のサムが、キャルに「アダムとイヴの子カインは、嫉妬の余りその弟アベルを殺す。やがてカインは立ち去りて、エデンの東ノドの地に住みにけり」と旧約聖書の一節を語ります。

そして取りあえずお前はこの家から出て行った方がいいと諭すのでした。

自分も去らねばならないと決意したキャルは病床にあるアダムに許しを乞いますが、アダムはもはや虚ろな目で何の反応も示せませんでした。

キャルは絶望の淵に立つことになってしまったのです。

なんでこうなってしまったんやろって思うよな

愛とは

アブラは自分の心の中にキャルがいることに気づきます。

病身のアダムのベッドの傍で1人必死に、キャルが父の愛を求めていたことを語り、キャルに何か頼み事をしてほしい、そうでないと彼は一生ダメになってしまうと訴えます。

そして、絶望して部屋に入りたがらないキャルを説得して父のベッドで再び許しを請うように促すのでした。

アダムの目が訴えるようになり、キャルがアダムの口元に耳を寄せると、アダムは、何かにつけて煩しい看護婦を辞めさせてくれとキャルに頼みます。

キャルが看護婦に「出て行け!」と叫び、看護婦が退出すると、アダムは微かな声で「代わりの看護婦は要らない。お前が付き添ってくれ」と告げます。

確かな言葉で父の愛を知ったキャルとアブラは涙を流し、キャルは父のベッドの枕元に座り続けるのでした。

愛というものは深すぎる

【エデンの東】とは

旧約聖書におけるノドの地の異称。

【エデンの東】の音楽

どこか物悲しげで、傷心に沁みるけれども悲しみを癒してくれる音楽です。

積もり積もった悲しみがいつしか憎しみにかわるけれども、やっぱり愛はそこにあると音楽を聞くたびに思うのでした。

サリナス

サリナスは作者ジョン・スタインベックの故郷

レタス栽培で有名。ダウンタウンにはナショナル・スタインベック・センターとジョン・スタインベック図書館がある。

サリナスまでの行き方

サリナスへはサンフランシスコから車で約1時間45分。

そこからモントレーへは車で約30分。

【エデンの東】の撮影場所

エデンの東の舞台は1917年の、のどかな農業の町サリナス。

撮影も現地で行われたようですが、もうひとつの舞台モントレー(母親が住む場所)は、小説当時と雰囲気が違っていたようで、メンドシノで撮影されたようです。

モントレー
メンドシノ

【ジェームズ・ディーン】の魅力

自身の孤独と苦悩に満ちた生い立ちを迫真の演技で表現し名声を得たが、デビュー半年後に自動車事故によって24歳の若さでこの世を去った伝説的俳優である。非常に短い活動期間ながら、彼の存在は映画界のみならず、ロックンロール、ティーンエイジャーのライフスタイル、カウンター・カルチャーなどにも影響を与えた。

ジェームズ・ディーン - Wikipedia

自身も父親に無視されるという心に深い傷を負う少年だったそうです。

その分母親の深い愛情を受けて育つも、その母親を9歳の時に亡くしています。

少し猫背でどこか寂し気な雰囲気のあるジェームズ・ディーン。

孤独を抱えながら生きてきたジェームスだからこそ、キャルを演じきれたのでしょうね。

どこか人を信じられなくて決して自分を裏切らない車を愛したのかなと思います。

ジョン・アーンスト・スタインベック/土屋政雄 早川書房 2008年01月