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【1週間で分かるマーケ講座】今さら聞けないアドテク「超入門」 第6回

デジタル時代の「ブランディング広告」の基礎 主戦場は動画へ

かつてネット広告の大半は、手っ取り早く成果が期待できるダイレクトレスポンス広告が中心だった。通信環境が整備され、誰もが手軽に動画コンテンツを受信できるようになった現在では、ブランディング広告に取り組む広告主も増えている。どう使い分けるのか。先輩社員「ヒロセ」が、新人に解説する。

※2019年5~10月公開の連載をベースに一部を変更し、再掲載します。

ダイレクトレスポンス広告で狙い通りの成果が得られなくなった場合は、ターゲットを掘り起こすブランディング広告が効果的だ

ダイレクトレスポンス広告で狙い通りの成果が得られなくなった場合は、ターゲットを掘り起こすブランディング広告が効果的だ

ヒロセ

先輩社員「ヒロセ」
ネット広告やデジタルマーケティングに精通する先輩社員。新人ユカの教育係になった。見た目はクールだが、ネット広告の話になると熱くなって止まらなくなる。

ユカ

新人社員「ユカ」
ネット広告会社に新卒で入ったばかりの新人女性社員。元気とやる気は人一倍あるが、難しい用語は苦手。ヒロセのボケに対して絶妙なツッコミをする。

ヒロセ

前回に引き続き、ブランディング広告について説明していくよ。

ユカ

「商品を自発的に選んでもらうための広告」がブランディングで、「商品をすぐ買ってもらうための広告」がダイレクトレスポンス、ですね。

ヒロセ

おおっ、やるじゃないか。ところで、テレビはよく見るかな?

ユカ

私ってテレビ大好きなんです。でも最近は、周囲であんまりテレビを見ないという人が多くて、番組の話題で盛り上がれないんです。

ヒロセ

それもデジタル広告の今後に関連しているんだ。早速説明していこう。

デジタルマーケティングは、効果の可視化に優れているが故に、どうしてもブランディングよりもダイレクトレスポンスが重視される傾向にあります。これは100%悪というわけではありません。前回も紹介した購買ファネルの中で「興味・関心層」以降のユーザーボリュームが十分にあり、かつ高い商品力があればダイレクトレスポンス施策のみでもOKです。

ダイレクトレスポンス広告とブランディング広告では狙う領域が異なる

ダイレクトレスポンス広告とブランディング広告では狙う領域が異なる

ただ、ダイレクトレスポンスはファネルの後半、ユーザーボリュームが少ない層へのアプローチであるため、施策を始めた当初は順調にCPA(コスト・パー・アクイジジョン/アクション、顧客獲得単価)を改善できたとしても、興味や関心の高いユーザーが枯渇し、CPAの歩留まり率が停滞することがよく起こります。

市場自体がまだまだ形成されていない(商品に関連するワードが検索すらされない)、競合商品との差別化ポイントが分かりづらいという状況であれば、ダイレクトレスポンスよりもブランディングのほうが優先度が高いと言えるでしょう。

「いけす」の中の魚が少なくなっている時には、魚を釣り続けるのではなく、いけす自体を大きくして魚を増やすための施策が必要です。

マジョリティーに訴える有力な手段

ブランディング施策を考えるときに、筆者(ヒロセ)がイメージするのはイノベーター理論です。イノベーター理論とは、米スタンフォード大学などで教授を歴任した社会科学者、エベレット・ロジャース氏が著書「Diffusion of Innovation(邦題:イノベーションの普及)」で提唱した理論で、新しいアイデアや技術が社会に普及するまでの過程を説明したものです。ポイントはある商品がアーリーマジョリティーにまで届くと、市場が一気に広がるということです。

ダイレクトレスポンス広告で効果が出ないときには、イノベーター理論やキャズム理論を思い返すことで目指す方向性が見えてくることもある

ダイレクトレスポンス広告で効果が出ないときには、イノベーター理論やキャズム理論を思い返すことで目指す方向性が見えてくることもある

もう1つよく知られている理論が、コンサルタントのジェフリー・ムーア氏が著書「Crossing the Chasm(邦題:キャズム)」で提唱した「キャズム理論」です。

イノベーター理論のアーリーアダプターとアーリーマジョリティーの間には溝(キャズム)があり、商品やサービスがなかなか行き渡らないことを説明した理論です。それぞれに異なるニーズや価値観が存在し、これがキャズムを生む原因の1つと言われています。

筆者は、ダイレクトレスポンス施策で歩留まり率の悪化を感じた時、サイトの新規訪問者の伸びが鈍化した時などに、この理論を思い返します。

「この商品を購入する可能性があるマジョリティーとは、どんなニーズや価値観を持っている人だろうか?」「興味を持ってもらうには、どんなメッセージやコミュニケーションが必要か?」

ダイレクトレスポンス広告で、マジョリティーにいくら「買って買って」と訴えても、そもそもニーズや価値観が違うため、同じメッセージでは刺さらないことも多いのです。

マジョリティーとそれ以前のグループでは性質が異なることを前提に、商品を浸透させるためのメッセージやクリエイティブ(広告の成果物)を再考するのです。そんなときに、ダイレクトレスポンス広告よりも説明力の高いブランディング広告は有効な手段です。

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【1週間で分かるマーケ講座】今さら聞けないアドテク「超入門」

【1週間で分かるマーケ講座】今さら聞けないアドテク「超入門」

AI(人工知能)時代に突入し、広告を扱うための技術は日々進化し続けている。そんな変化の時代の中でも、本質を見極めるための基礎知識を身につけることが重要となる。アドテクノロジーの世界を見渡すために、ネット広告を扱うマーケターは何を知っておくべきなのか。インターネット広告の技術に精通する先輩社員「ヒロセ」が、新人社員「ユカ」にレクチャーする。