ドンキ流、売れまくる「販促6大奥義」 衝動買い生む棚づくりの秘訣 (original) (raw)
スペースの限界まで商品を積み上げる「圧縮陳列」や、店員の本音のメッセージを手書きでつづった大型POP――。独自の世界観による売り場づくりで買い物客がつい楽しい気分でいろいろ買ってしまう、ディスカウント店「ドン・キホーテ」。トライアル購入比率が比較的高い一般消費財において、その店頭販促手法はお手本の一つと言っていいかもしれない。同社が例年行っている陳列の社内大会で2023年に部門優勝したバイヤーが、6つの奥義を披露する。
「驚安の殿堂」で知られるディスカウントストア最大手の「ドン・キホーテ」。運営会社パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)が35期連続増収・増益を達成した一因として、同社が販促にたけていることが挙げられる(画像/yu_photo/stock.adobe.com)
世の中に流通しているであろう、わさび関連のありとあらゆる商品をメーカーや卸会社からかき集めて、上から下まで棚にぎっしりと詰め込んで陳列。他店ではまず見ない迫力のある展示だけに、店内を歩いていると「くせになるからみ!!わさび」と書かれた派手な巨大POPとともに、いやが応でも商品が目に飛び込んでくる。
ここは、2024年3月にオープンした「MEGAドン・キホーテ成増店」の食品売り場だ。しばらく眺めていると、思わず足を止めて見入る買い物客が相次ぎ、そのうちの何人かは買い物かごに商品を入れていた。
“ドンキ流”棚づくりの奥義の例。わさび関連商品をかき集めた棚や、塩関連の菓子ばかりを並べた棚など、他のチェーンではまず見かけない陳列方法で、来店客の足を思わず止めさせる(写真提供/パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)
その様子を満足そうに眺めているのは、同店で食品部門リーダーを務める木村悦寛氏だ。木村氏は、ドン・キホーテが年に1回開催する陳列技術を競う社内大会「ディスプレイの鉄人」で、23年の食品部門で優勝したつわものとして社内でも一目置かれている。
「MEGAドン・キホーテ成増店」食品部門リーダーの木村悦寛氏は、社内陳列大会で優勝した経験の持ち主だ(撮影/山田愼二)
ディスプレイの鉄人とは、全国のドン・キホーテで働くバイヤーが一堂に会し、制限時間内(35分)で指定の商品を陳列し、その出来栄えを競うもの。23年大会では「食品」「雑貨」「消耗品」といったカテゴリー別に審査され、書類選考による1次審査を通過した105人が、実地による2次審査に進むことができた。
ドン・キホーテでは店舗ごとに、仕入れから棚割りに至るまで一気通貫で作業を任される裁量権が各コーナー担当のバイヤーに与えられている。それだけに出場者たちは、日々磨き上げた陳列テクニックを大会で存分に披露。編み出す陳列はいずれもハイレベルで、他のバイヤーがまねすることも多く、結果として全国各店の売り場づくりの底上げに寄与している。
激戦を勝ち抜いたすご腕バイヤーの木村氏は、いったいどのような着想で大胆な売り場づくりのアイデアを編み出しているのか。
その答えを知ることは、小売店はもちろん、メーカーの営業担当者や販促担当者などプロモーション全体を采配するマーケティングにとっても重要な気づきをもたらす。手間のかかる売り場づくりに労力を割けない小売店が多い中で、売り上げアップ効果が期待できる売り場をメーカー側から提案すれば、“救いの一手”になるからだ。
圧縮陳列で、「耐久性」「収益性」「視認性」「技巧性」を工夫
個人的なテクニックの前に、そもそもドン・キホーテが企業として考える売り場づくりの理想の姿を知っておく必要がある。
それは、ディスプレイの鉄人における審査ポイントを見れば一目瞭然だ。具体的には、陳列数の多さを評価する基礎技術点、そして「耐久性」「収益性」「視認性」「技巧性」などといった応用技術点に分けられる。
基礎技術点は、限られたスペースにいかに多くの在庫をインパクトのある形で並べるか、だ。同社がうずたかく商品を積み上げる「圧縮陳列」と呼ぶ手法を得意とするところはよく知られており、その重要度は今も変わらない。
一方、応用技術点は、例えば収益性なら、粗利率の高い商品ほど手に取りやすい形で陳列されているかをチェックする。
木村氏が優勝を決めた大会で行った陳列例。陳列の中央右にある、「ぬって焼いたらまるで焼き芋スプレッド」が粗利率の高い商品だ(写真提供/パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス)
こうしたドンキの流儀を、各バイヤーや個人的なアイデアで引き出すオリジナリティーを競うわけだが、優勝した木村氏の場合、次の大きく6つの視点に立ち、買い物客が足を思わず止めてしまうような陳列を編み出すという。
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