儚い羊たちの祝宴/米澤穂信 ※ネタバレ要素あり (original) (raw)
今回はブログ「読子の本棚」の本田読子さん、ブログ「郵便局のおじさんは9時40分ごろやってくる」のニードルとの読書会
”第2回 本の虫たちの読書会”
の回でございます👏
今回の選書係は本田読子さんで、米澤穂信さんの『儚い羊たちの祝宴』です。
書店でよく見かけていたし、米澤穂信作品デビューをいつかしたいと思っていたのに手が回らず。
いい機会を得ました! ありがとうございます!!
目次
あらすじ
上流階級の人たちによる読書サークル「バベルの会」。
そのバベルの会に属する人たちの一族に起きた事件の連作短編集。
感想
帯にあらゆる予想は、最後の最後で覆される—―。とありますが、そんな情報を得てして読んでも、まんまと騙され、覆されました。
この人が絶対に怪しい。これは絶対こういう展開じゃん。
と自信満々に読み進めていたら、考えもつかないところへ着地してびっくり。
いや、びっくりどころではない。鳥肌が立つ。
これは暗黒ミステリーなのです。
最後の最後にむごいほどのホラーのスイッチが入るのです。
先が読めたように錯覚させられて、最後に意外過ぎる予想外な方向転換。
そしてガツンと来る暗黒な真実。
この最後の一撃が刺激的で楽しかったです。
個人的に雰囲気も大好きです。
上流階級、屋敷、甘美だけれど不気味な雰囲気。
そして語り口は上品で、美しい日本語と、明治あたりを連想させる言葉や表記。
それがより一層、お話に重厚感を生み出していて、世界に浸らせてくれます。
なんと麗しゅう。なんとおぞましい。
そんな言葉が毎話、浮かんできました。
どのお話がお気に入りかな~と考えてみたけれど、全部良かったので悩ましいです。
一番印象に残っているのは、強いて言うならば『玉野五十鈴の誉れ』かな。
どれもホラーだけれど、その中でも唯一救いのあるお話は『山荘秘聞』かしら。
※ネタバレ区域※
ここからは衝撃の真相を盛大にネタバレしていますので、未読の方は読んでから、是非またいらしてください!
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『身内に不幸がありまして』
お嬢さまの吹子がバベルの会の会員です。
この事件、きっと大方の人が犯人を宗太→夕日と思ったのではないでしょか。
私ももちろん、そう思ったさ。
なんておそろしいこと……。
あんなに仲良かったのに、慕ってくれていたのに、そんなことを平気でしてしまえるなんて。
動機がまた、そんなことのために……と言いたくなるものですが、現実に起きる事件でも同じようなことってあるから、人間の心理って怖いなとつくづく思いました。
身内に不幸がありまして。
それを言うために犠牲になった3人が哀れでなりません。
ちなみにこのお話では、たくさんの実在する小説が登場します。
それも読んでみたいけれど、積読山積みの身としては途方もないことです笑
『北の館の罪人』
妹の詠子がバベルの会の会員です。
主人公こそが誰よりも早太郎を邪魔に思って、毛嫌っていただなんて、思いもしなかった。
お互いに唯一の味方って感じだったじゃんか!
でも早太郎が彼女の殺意に気づいていたのも驚きです。
それを自分の作品に閉じ込めて、まるで時限爆弾みたい。
『山荘秘聞』
助っ人に来たゆき子がバベルの会の会員です。
越智さん、亡き者にされたのかと思ったわ焦ったわ……笑
サイコパスな雰囲気ムンムンな主人公、ずっと怖かったです。
私の頭が鈍くて、二人につきつけた物が、最初はナイフとか鈍器とかの凶器かと思っていたのですが、口止め料……。そうか大金か!
越智さんを隠していた理由が、みんなからしたら迷惑で怒れることだけれど、なんだか可愛いと思ってしまいました。
毎日頑張っていたんだもん。お客様、来てほしいよね。
それにしても越智さんは生きていたし、ちらつかれたのはお金だし。
『玉野五十鈴の誉れ』
主人公の純香がバベルの会の会員でした。
どれもゾッとするラストですが、このお話が一番むごくてゾッとしました。
始めちょろちょろ、中ぱっぱ。赤子泣いても蓋取るな
最後のこの一文が真相の全てを物語っていて、思わず悲鳴。
けれどこれが、純香への五十鈴の本心の表れであると考えると、二人の絆は固くて、お祖母さまには断ち切れないものだったということですよね。それは感動。
でも複雑です。
『儚い羊たちの晩餐』
バベルの会を除名されてしまった鞠絵の日記で発覚する、バベルの会の消滅の真相。
これも終盤にアミルスタン羊を指す存在がはっきりして、悲鳴ものです。
結局どうなったかは、日記が途切れて明白にはなっていませんが、バベルの会が消滅したということは、きっと彼女たちは料理されてしまったのでしょう。
わたしの夢想に捧げられた、夢見る儚い羊たち。
本文P250より
鞠絵は、今は自分も夢想家で、バベルの会の会員の資格があると訴えたかったのでしょう。結果的に全員いなくなってしまい、バベルの会も消滅してしまったのですが。
ちなみにアミルスタン羊というのは、スタンリィ・エリンの『特別料理』に元ネタがあるらしく、つまり人肉で、それを遠回しに表現した造語だそうです。
ついでに「バベル」の意味も調べたところ、**旧約聖書で混乱を意味する**そうです。
夢想家の彼女たちにぴったりな言葉というわけですね。
最後に
どんなに騙されないぞ精神をむき出しにしても敵わず、衝撃をたんまりくらわされました◎
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