2024年9月に読んだ新作おすすめ本 ライトノベル編 (original) (raw)

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9月の読了冊数は読書メーターによると最終的に108冊でした。

こちらでは9月に読んだライトノベルの新作18点、新文芸の新作3点の計21点を紹介しています。気になる本があったらこの機会にぜひ読んでみて下さい。

文芸単行本・文庫編はこちら↓

※紹介作品のタイトルリンクは該当書籍のBookWalkerページに飛びます。

女王陛下に婿入りしたカラス (富士見ファンタジア文庫)

逆巻 蝸牛/いちかわ はる KADOKAWA 2024年09月20日

国や領地をも家と見なし管理・経営する『家政学』専攻の学生ウィル。論文で略奪・戦争国家と批判した隣国オノグルの女王イロナから突然求婚されるファンタジー。外貨を得る手段がなく戦争・略奪しかないオノグルを、戦争以外の方法で飢餓から救いたいというイロナの真意を知り、彼女のために何とかしたいと決意するウィル。戦争の負の連鎖を積み重ねる敵国エースター出身故に、王宮の使用人たちにも敵視される状況から打開策を模索しなければいけない展開で、様々な思惑が入り乱れる中で周囲の意識を変えていきながら、いくつかの可能性を見出していった矢先の窮地でしたけど、それでも彼女の想いが無に帰さないよう、最後まで諦めなかったウィルが切り開いてみせたその結末はなかなか良かったです。

みみみみ -神手洗澪には未来が視える- (MF文庫J)

岬 鷺宮/イコモチ KADOKAWA 2024年09月25日

最終的に人類の勝利に終わった、地球に現れた外敵【IW禍】との戦い。『未来視』で人類を勝利に導いた『元』救世主・神手洗澪とのありふれた恋物語。世界に平和が戻ってきて復興が進められる中、戦いの中で後方支援として有能さを示して、澪の側近に選ばれた桃澤基雄。学校では正体を隠しつつ恋人同士として、放課後はお隣さんとして共同生活を送る日々。特別な力を当たり前のように使うことが日常的になっている澪でしたけど、一方で特別な存在であることを自覚する彼女だからこそ、ありふれた幸せを夢見る一人の女の子であることは変わらなくて、彼女に対する認識のズレから起きたすれ違いを乗り越えて、大切な関係を取り戻していく結末はなかなか良かったですね。

パルパネルは再び世界を救えるのか (MF文庫J)

十文字 青/しおん KADOKAWA 2024年09月25日

長い旅の末、魔王を倒した勇者パルパネル。たった一人で魔王討伐を果たした彼が、光を失いし天使、一匹の蛙とともに送るスローライフ。神の遣いの天使に魔王を倒した褒美として、冗談で言った不老不死をあっさり付与されてしまったパルパネル。なぜか天界に戻れなくなった天使、かつて蛙に変えて封印した不死の霊王アルダモートと人里離れた山奥で暮らし始める展開で、著者さんのことだからどんな殺伐とした物語になるのかと思いきや、そうそう死なないメンツだけに安心感は抜群で(苦笑)、時には世界の危機に立ち向かいながら、意外と普通に三人でわいわいとスローライフを楽しんでいて、何だかんだ言いながらもそんな中で育まれていく絆がなかなか良かったですね。

横溝碧の倫理なき遊戯の壊し方 (MF文庫J)

枢木 縁/こゆびた べる KADOKAWA 2024年09月25日

SNSで活動する名探偵のジェノサイド江戸川が、生活費を使い込まれて困窮してしまい、仕方なく大企業主催の脱出ゲームに参加するデスゲーム物語。社会の裏で開催されている命と大金を賭けた殺し合うデスゲームで、全ての殺し合いを秒で終わらせて、司会の少女・姫野心音を手錠で自分と繋いで人質に取る江戸川。さらにルールの穴を突いて、全プレイヤーが生存して上でのゲームクリアを目指す展開で、名探偵がデスゲームをどう突破していくのか、シンプルなゲームの裏を突いていく江戸川の発想がなかなか痛快でしたけど、相対する黒幕は手段を選ばず、問答無用で殺そうとしてくる勝つまでいつまでも諦めないような悪辣な存在で、すっかり黒幕を敵に回してしまった2人がどうなるか、未だ謎もいろいろ多くて続巻への期待が高まりますね。

人妻教師が教え子の女子高生にドはまりする話 (電撃文庫)

入間 人間/猫屋敷 ぷしお KADOKAWA 2024年09月10日

二十代後半既婚の女性高校教師・苺原樹が、10歳年下の教え子の女子高生・戸川凛にうっかり手を出してどっぷりハマってしまう恋愛小説。樹より背が高くて、温和でどこか幼くて人懐っこい凛との印象的な夜の街での出会い。家庭環境に問題があって、どこか危なっかしい彼女を気にかけているうちに凛の様々な面を知っていって、いつしかベッドの上で唇を重ねていた樹。放っておけない気持ちがいつしか意識するようになっていった樹は、一見そういうことをしそうにもないタイプに思えたましたけど、そんな彼女が夫もある身でありながらハマっていく様子がなかなかリアルでしたね…裏切りで不倫で犯罪で身の破滅に繋がりかねない関係がこれからどうなっていくのか続巻に期待です。

放課後の教室に、恋はつもる。 (富士見ファンタジア文庫)

日日 綴郎/雪子 KADOKAWA 2024年09月20日

地味で暗い国語教師の筧莉緒に、今日も告白してくるカーストトップの生徒上原メイサ。7歳も年下の教え子に振り回される生徒×教師の歳の差ガールズラブ。ぐいぐいと来るメイサをいなしながら、ついつい押され気味の莉緒。莉緒が女性を恋愛対象として意識するきっかけになった、学生時代の恩師・緋紗子先生との出会いと続いてきた友人関係。そしてこれまで恋というものにピンときていなかったメイサが、1対1の赤点補修をきっかけに芽生えた莉緒への想い。最初は生徒のために奔走していたはずが、クリスマスを共に過ごし一つのベッドで眠って、手首へのキスを受け入れ、彼女から連絡がないと不安になる、いつの間にか意識する関係へと少しずつ変わっていった2人がどんな関係を築くのか今後に期待。

嫉妬探偵の蛇谷さん(ガガガ文庫)

野中 春樹/pon 小学館 2024年09月18日頃

園芸部に所属する嫉妬まみれの女子高生・蛇谷カンナ。小森先生に引き合わされて園芸部に所属する後輩・野水が彼女に振り回される青春ミステリ。嫉妬深くて攻撃的すぎるがために、他人の嘘や悪意を見抜いてしまう蛇谷と、そんな彼女に巻き込まれがちな嘘がつけなくて本音が顔に出てしまう野水のコンビが謎の匂いと校舎裏で倒れていた女子高生、盗まれてボロボロのポーチ、突如原因不明の出火をした鞄といった2人の周囲に起きる謎に挑む展開で、偏狭で不器用ゆえになかなか面倒くさい蛇谷先輩には苦笑いでしたけど、人当たりが厳しい割には寂しがりやな一面が垣間見えていて、素直な野水や物怖じしない幼馴染の青山先輩の存在に救われている構図がなかなか効いていました。

雨のちギャル、ときどき恋。(ガガガ文庫)

落合 祐輔/バラ 小学館 2024年09月18日頃

仕事に追われる毎日を送る広告代理店勤務の南雲晃。一人暮らしの部屋の前にずぶ濡れで待っていた、疎遠だった血の繋がらない姪・美雨と再会する曖昧同棲ストーリー。姉の夫の連れ子で、姉夫婦が突然の交通事故死を迎えてからはは大学生になった今に至るまで親戚をたらい回しにされていた美雨の複雑な境遇。幼い頃慕ってくれていた彼女を放っておけずに、叔父として一緒に住むことを提案する晃。それで安心するわけでもなくどこか遠慮して無理を重ねる美雨の態度に、彼女のこれまでの境遇をつい考えずにいられませんでしたけど、思い詰めていく彼女としっかり向き合って、寄り添う覚悟を見せた2人の関係がこれからどう変わるのか、現時点ではまだこれからの感もありますが今後が楽しみな物語です。

隣に住んでる聖女様は俺がキャラデザを担当した大人気VTuberでした (ブレイブ文庫)

乃中カノン/ねいび 一二三書房 2024年09月25日頃

神絵師「かんきつ」として活動する影の薄い男子高校生・朱鷺坂庵が、これまで常に塩対応だった隣人の水瀬明澄から意外な問いを投げかけられるVtuber小説。美しい容姿や優等生ぶりから学校で「聖女様」と崇められていて、実は庵がキャラデザを担当している大人気VTuver京氷菓の中の人だった明澄。思わぬきっかけからママである「かんきつ」の正体を知ったことから、もともと配信上でいい感じのコンビだった2人は一緒に過ごす時間が増えていって、お世話したりされたりを積み重ねていくことで、相手の思わぬ一面を知ったりもして、お互いに少しずつ意識してゆく展開でしたけど、これからもっと甘い感じになっていきそうなこれからの展開が今から楽しみです。

異世界帰りの勇者先生の無双譚 1 (オーバーラップ文庫)

次佐駆人/竹花ノート オーバーラップ 2024年09月21日

異世界に勇者として召喚され、魔王と相打ちになった相羽走。気が付けば手にした力はそのままに召喚前の現代に戻され、私立の女子校に赴任するファンタジー。普通の日常を送れると思った矢先に、山奥で非現実的な謎の化け物と戦う教え子で裏の剣士・青奥寺に始まり、銀河連邦所属の独立判事・新良、秘密組織のエージェント双党、メスガキ魔法少女リーララと、裏の世界で戦う女の子たちが通う学校だと知っていく展開はなかなかカオスで、一見バラバラに見えたそれぞれのストーリーも、徐々に繋がりが見えてきましたね。要所で先生の勇者として圧倒的な力を見せるのに、正直に話している事情をなかなか信じてもらえなかったですけど(苦笑)たびたび窮地に陥る教え子たちを救って慕われるようになってゆく展開はなかなか良かったです。

クラス転移したけど性格がクズ過ぎて追放されました 1 (オーバーラップ文庫)

フーツラ/ウラシマ オーバーラップ 2024年09月21日

勇者召喚によりクラス丸ごと異世界転移させられた番藤茶太郎。しかし番藤は自分に勇者の紋様がなく、侵略者の称号を持っていることに気づくファンタジー。勇者の紋様を持っているか否かで格差が生まれる扱い。そんな中で自分の侵略者の称号は迫害の対象なのではないかと気づき離脱を図る番藤。固有スキルの「穴」で窮地を脱した彼が、地下組織リザーズと繋がりを作り、落ちこぼれ扱いの仲間たちを拾って仲間にしたりしながら勢力を拡大していく展開で、無邪気に慕ってくるS級冒険者の死霊遣いリリアナは何気にヤバくて苦笑いでしたけど、現状を変えたい隣国の帝国も上手く巻き込みながら、エミーリアが思い描いた盤面をひっくり返していく展開はなかなか面白かったです。

エイム・タップ・シンデレラ 未熟な天才ゲーマーと会社を追われた秀才コーチは世界を目指す (電撃文庫)

朝海 ゆうき/あさなや KADOKAWA 2024年09月10日

プロゲーマーだった父の失敗を反面教師に生きてきたのに、同僚の不正を庇って左遷された研究者の結衣が、有名ゲームのコーチにスカウトされる物語。有能な経営者・四条に誘われ新チームのコーチに就任して、不登校ゲーマーJKリンや癖のあるメンバーたちを上手く動かしてみせて力量を示した結衣。そして同じゲームに挑む上では避けて通れない、ゲーマーとして日本最強の魔王と呼ばれる両親の離婚を機に疎遠になっていた妹・凛との再会。不安定なリンが揺さぶられたり、親会社との方針のズレといったいくつもの困難に直面しながらも、捨てたはずの情熱を取り戻して奔走し大会出場にまでこぎつけて、リンとのコンビで日本最強『魔王』の妹に挑む熱い展開はなかなか良かったですね。

はばたけ魔術世界の師弟たち! (電撃文庫)

平成オワリ/Nagu KADOKAWA 2024年09月10日

魔界と人間界の境界に位置する魔導都市ヴィノス。大魔導師イシュタルが引退を表明して、10人いる弟子の中から次の大魔導師を選ぶことを表明する師弟成長ファンタジー。イシュタルの弟子の1人で堕落した日々を送るジルベルトが、師匠が連れてきた弟子志願者ラピスに対して、一撃を入れた弟子にするという約束を交わす展開で、同居する御主人様が大好きだけれど毒舌気味なメイドのアルトも絡めながら、頑張るラピスとの間に少しずつ育まれていく師弟の絆があって、脳筋気味なラピスの頑張りに刺激を受けたり、掘り下げられてゆくアルトと出会った過去もいい感じに効いていて、ジルベルト自身も大魔導師の後継者を目指す覚悟を決めてイシュタルに挑む熱い展開はなかなか良かったです。

人生二周目の鏑木先輩 (GCN文庫)

としぞう/Bcoca マイクロマガジン社 2024年09月20日頃

どこにでもいる普通の高校生・日宮友樹。ある日、誰もが認める天才美少女で人生二周目らしい鏑木美春から突然秘密を告白される青春ラブコメ。突然友樹を作家としての取材に付き合ってほしいと、自分だけが部員の文芸部に誘う鏑木先輩。入部届と称して婚姻届にサインさせようとしたり、自分が人生二周目で未来のお嫁さんだと明かしてぐいぐい迫る先輩にタジタジになる友樹。彼と一緒にいるのが嬉しくてイキイキとしている先輩が微笑ましくて、けれどそんな彼女が時折見せる暗い表情が何なのか、一周目から変わったこと、それでも変わらなかった想いがあって、彼女の葛藤ごと受け止めた友樹はカッコ良かったですし、一緒に乗り越えた2人のこれからをまた読んでみたいと思いました。

ギャルにも負ケズ (富士見ファンタジア文庫)

早月 やたか/magako KADOKAWA 2024年09月20日

宮沢賢治が生まれた岩手を舞台に、高校でひとり文芸部の部長を務めていた遠谷幸文の静かな日常が、東京から転校してきたギャル渋沢美鐘が入部してきたことで変わっていく青春小説。岩手にやってきて宮沢賢治に興味を持ったらしい美鐘と一緒に、宮沢賢治の足跡を追ったり「ほんとうのさいわい」を探してみたりと、少しずつ彼女のペースに巻き込まれてゆく幸文。これまで自分に自信がなく、美鐘のことも最初は自分と住む世界が違うと思い、どこか臆していた幸文でしたけど、美鐘と過ごしてその境遇を知ってゆく中で、自分がどうしたいのかだんだんと覚悟も定まってきた今後の展開が楽しみですね。可愛くてちょっと変わっていた幸文の妹・真央の存在も物語のいいアクセントになっていました。

けもみみ巫女の異世界神社再興記 神様がくれた奇跡の力のせいで祀られすぎて困ってます。 (富士見ファンタジア文庫)

いつきみずほ/risumi KADOKAWA 2024年09月20日

実家の神社を巫女として手伝う女子高生・御守涼香。ある日、異世界へと転移してしまった彼女は、再び信仰を集めて欲しいと神様から依頼されるスローライフ系ガールズファンタジー。集めた信仰をポイントに換算して《奇跡》を起こす不思議な力や、狐の耳と尻尾(神様の趣味)を与えられた涼香。行き倒れていた教会の聖女ソフィを救って仲間にした彼女たちが、村長の娘アンリを枯木病から救ったり、トレントの森を開拓して村人たちの信頼を得て、村を基点に信仰を広めていく一方、涼香を慕うソフィの溺愛っぷりはなかなか微笑ましかったですが、利害が対立する悪どい商売をする教会とも対立してゆく構図の中で、村が直面する危機を力を合わせて乗り越えた彼女たちのこれからが楽しみです。