思い出を紡ぐことができるのは瓦だけ。 (original) (raw)
2017年7月。常滑市内の方からFacebook経由でメッセージをもらいました。
「おじいちゃんが住んでいた家を相続し、かなり傷んでいるのですが、おじいちゃんとの思い出の家を壊すのは忍びなく思っています。できることならゲストハウスとしてリノベーションしたいのですが、瓦屋根の修理はお願いできますか?」
こんな感じの内容でした。伺ってみると、想像以上に傷んでいて(そのときの模様は以下のブログで)、
しかも予算が無いということで、危険な香りしかしなかったのですが、お話ししてみると「他の業者にも当たったけどピンと来なくて、誰かいないだろうかと探していたら竹内さんのブログを見つけたんです。で、この人は瓦が好きだから、なんとかしてくれるかもしれないと思ったんです。瓦屋根を残したいけど、もし竹内さんに断られたら諦めます」と言われました。そんなことを言われたら職人としては断るわけにはいかず、なんとか雨漏りを止め、その後もちょいちょい関わるようになりました。
「おじいちゃん、おばあちゃんとの思い出の家」はいずれなくなる。
「おじいちゃんとの思い出の家」という言葉は、誰にでもイメージできることかもしれませんが、この先、数十年後にはなくなっている感覚かもしれません。なぜなら瓦のように長持ちする屋根材を使った家が激減しているからです。代わりに30年も経ったら屋根がダメになり、建て替えるような家が激増しているのが現実です。
思い出を紡げるのは瓦だけ。
僕たちは遠い遠い昔から、ご先祖さまから命を繋いできて、現在を生きています。仮に数代前だとしてもご先祖さまがいて、それぞれが思い出を紡いで生きています。そんな思い出を紡ぐことができるのは瓦だけなんです。