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ラオスにいったい何があるというんですか?』

今回は、村上春樹著『ラオスにいったい何があるというんですか?』を紹介します。

世界各地を巡った紀行文集です。

ラオスにいったい何があるというんですか?』あらすじ

ラオスにいったい何があるというんですか?』は、村上さんが世界各地を旅したときに書いた文章を1冊にまとめた本です。

ラオスにいったい何があるというんですか?」という問いは、実は村上春樹さんから発せられたものではなく、ラオスに向かう村上さんにベトナムの人が発した問い。

世界各地で村上さんは何を見て、何を感じたのでしょうか?

ラオスにいったい何があるというんですか?』感想・レビュー

長いし、結構挑戦的なタイトルだったので思わず手に取って、迷わず購入したのを覚えています。

アメリカのボストンやニューヨークだけでなく、過去に数年間暮らしていたギリシャやイタリアまで、世界各地を訪れた村上さんが見たこと、感じたことを言葉にしてくれています。

アイスランドフィンランドにまで足を伸ばしていたとは驚きのような、でも村上さんならどこにいてもおかしくないような……。

アイスランドかぁ、どんなところなんだろうと想像がいまいちつかなかったので、村上さんの紀行文を楽しく読むことができました。

行く先にも、人々の生活があり、土地の力のようなものが働いて文化が作られています。

旅とは何だろう、何を目にすることができるのだろう、と考えさせられました。

こんな人におすすめ

まとめ

村上春樹著『ラオスにいったい何があるというんですか?』を紹介しました。

旅をしなければ分からない、それが異国の文化であり生活です。

それらに触れて、村上さんが思ったことや思い出を率直に語ってくれている1冊なので、何だか旅に出たくなります。

夜にソファでのんびりお茶を飲みながら読むのにぴったり。

村上さんはお酒も飲めるので、合わせて一緒にお酒を少し楽しんでもいいかもしれませんね。

『のっけから失礼します』

今回は、三浦しをん『のっけから失礼します』を紹介します。

ありふれた日常を綴っているのに、なぜか抱腹絶倒エピソードになってしまうしをんさんの世界はすごい!

そう感じさせられる1冊です。

『のっけから失礼します』あらすじ

しをんさんの『のっけから失礼します』は、女性向け雑誌『BAILA』の巻頭に連載されたエッセイをまとめた書籍です。

しをんさんはご自身のエッセイを「アホエッセイ」と書いていて、『BAILA』に日常の生活感丸出しのエッセイを掲載して大丈夫か、と気を揉んでいたが、連載が続いたということは、きっと『BAILA』の読者にもウケたのでしょう。

しをんさんが書いているのは、しをんさんの日常やご家族のこと。

要するに、ありふれた日常を綴っている。

なのに、どうしてしをんさんが書くと、こんなに爆笑エッセイになるのだろう。

公共交通機関や図書館で読むと、笑ってしまって他の人から怪しまれるので注意が必要です。

『のっけから失礼します』感想・レビュー

日常がこんなに爆笑に溢れることってあるんだ、というのが感想です。

それはきっと、しをんさんが特別なのではなく、しをんさんが物事の面白い側面や、明るい側面を見るのが得意な人だからなのだと思います。

日常に潜む面白いことを発見するだけでなく、それを、思わず笑ってしまうような言葉で綴るしをんさんの手腕に、「え?」と思いながらもどんどん引き込まれていきます。

ただ「感動した」という言葉で表現が済んでしまいそうなところを、「「きらめき貯蔵袋」が破ける」という、一瞬読者が「ん?」となる言葉で表現。

確かに、いわゆる「推し」のまばゆいばかりの笑顔やオーラを浴びたら、それはきらめきを大量に浴びているし、それに対する「きらめき貯蔵袋」は破裂してしまう。

しをんさんにしか書けないユニークな言葉で読者を立ち止まらせ、笑いの渦に巻き込むのです。

好きなものにまっすぐ正直なエピソードは輝くしをんさんの表情を想像すると、微笑ましくなるし、仕事が遅れたり自堕落なエピソードは「分かる」と共感したくなるし、そのどちらにも明るい笑いがあって、あっけらかんとしているのが最大の魅力。

この1冊でひとしきり笑った後は、何だか「よし、頑張るか」と思えて日常に戻れるからこれまた不思議。

元気の出る1冊です。

こんな人におすすめ

まとめ

三浦しをん著『のっけから失礼します』は、日常を楽しく生きるヒントがあるような気がしてくるエッセイです。

書かれていることは確かに何だか「アホエッセイ」なのですが、そこには日常を笑顔に変える、しをんさんの人柄がちりばめられています。

元気が出てきそうな明るい黄色い装丁が目印。

面白さゆえに、読む場所には注意が必要ですが、三浦しをんさんの世界に飛び込むにはぴったりのエッセイです。

『走ることについて語るときに僕の語ること』

今回は、村上春樹『走ることについて語るときに僕の語ること』を紹介します。

「一に足腰、二に文体」と語る村上さんの生活の一部となっているランニング。

村上さんが走るときに何を考えているのか、「走る」ということは村上さんにとってどういう意味を持っているのかを知ることができます。

『走ることについて語るときに僕の語ること』のあらすじ

「走る」こと、それも、長距離を「走る」ことについて、村上春樹さんが率直に綴った文章を集めたエッセイ。

記録という側面もあり、エッセイというよりは、メモワールに近い1冊です。

2005年夏~2006年秋の書き下ろし。

一部、雑誌に掲載されたエッセイを収録していますが、半分以上は書き下ろしという豪華な本です。

村上春樹が一ランナーとして、全世界のランナーに捧げる珠玉のメモワールです。

『走ることについて語るときに僕の語ること』の感想・レビュー

村上さんにとって走ることは、生活していくことであり、生きていくこと。

職業的小説家を長く充実したものとして続けていくために、健康の維持は欠かせません。

小説を書くための方法をランニングから教わったと語る村上さんは、(才能は前提として、)集中力と持続力を大切にしています。

確かに、日々走り込み、レースのために調整をして、実際にレースを組み立てて走るという一連のサイクルには集中力と持続力は欠かせないものでしょう。

アテネからマラトンまで、実際のマラソンコースを走ったり、北海道での100kmマラソン(ウルトラ・マラソン)を走ったり、トライアスロンに挑戦してみたり。

村上さんの人生と「走る」という行為は切っても切れないものだとひしひしと感じました。

日々、体の声を聞きながら走り続けることが、村上さんにしか書けない、あの骨が太い唯一無二の物語を生み出していると分かります。

深く深く潜っていくような物語は、確かに体力や集中力がないと書けないと感じます。

実際に走ると、脚は痛くなるし、息は苦しくなるし、ランニングは決して楽な行為ではありません。

しかし、人生の中盤から走ることに向き合い続ける村上さんのエッセイを読むと、走ることが何だかとても楽しくこころよいもののように思えてくるのです。

充足感だったり、達成感だったり、そういったものを全身で感じとることができそうな気がしてくるのです。

走ってみたいな、ジョギングをしてみたいな、という気持ちになりました。

こんな人におすすめ

まとめ

ラソンレースには走るために参加しているのであって、歩きに来ているわけではない、というポリシーを掲げ、完走を続ける村上さん。

年を重ねて、周りが「やめた方がいい」と忠告したとしても、自分の身体が許す限りは、フル・マラソンを完走するという目標に向かい、走り続けるだろう、と綴っています。

少なくとも最後まで歩かなかった

そう墓碑銘を刻んでもらいたいという村上さんは、日本を代表する作家として、ランナーとして、今でも走り続けているのです。

『村上ラヂオ』

今回は、村上春樹『村上ラヂオ』を紹介します。

日常の小さなあれこれも、村上春樹の手にかかれば、ほら、何だか洒脱なエッセイに。

小説とはまた違う、村上ワールドへようこそ。

『村上ラヂオ』のあらすじ

『村上ラヂオ』は、雑誌『anan』に1年間にわたって連載された短い文章を書籍にしたもの。

村上春樹が『anan』かぁ……、と不思議な気持ちになったりもします。

村上さん自身も、「なぜ自分が」「(ananの)読者層に合っていないのでは」と戸惑ったようです。

しかし、さすが、村上春樹

ひとたび言葉を紡げば、そこは一瞬にして村上春樹のフィールドに。

何でもない日常の一コマが、ちょっとしたエッセイになっています。

『村上ラヂオ』の感想・レビュー

『村上ラヂオ』は気合を入れて読む本というよりは、リラックスした服に着替えて、ベッドやソファーでゴロゴロしながら読む本、という感じです。

どのエッセイも、日常にある風景を切り取ったもので、「よくこのありふれた題材を美味しく料理できるなぁ」と、相手はあの村上春樹なのだから感心することも変なのですが、びっくり驚嘆してしまうのです。

書かれていることは特別な何か、スペシャルな何かではないはずなのに、楽しく村上ワールドという非日常に飛ばされてしまいます。

言うなれば、スーパー銭湯といった感じ。

本質はお風呂なんだけれど、そこのお風呂は家のお風呂とは違う非日常。

そして、この本も、不思議とスーパー銭湯の休憩所によく似合う。

『村上ラヂオ』の持つゆるい雰囲気がそう思わせるのかもしれません。

50篇ありますが、どれも短い文章なので空いた時間にサクッと読めてしまいます。

1冊もとても薄い本なので、飽きずにサッと読み終えることができるでしょう。

その点、読書に不慣れな人も安心な1冊。

こんな人におすすめ

まとめ

スーパー銭湯がなぜかよく似合う、村上春樹のエッセイ、『村上ラヂオ』。

電車での移動中や、ちょっと時間が空いた時にサクッと読めるのが魅力のエッセイです。

日常の一コマを物語に変える、村上マジックをご覧あれ。

『あかるい花束』

今回は、岡本真帆著『あかるい花束』を紹介します。

岡本さんの穏やかな人柄溢れる歌集です。

『あかるい花束』とは

2022年に第一歌集『水上バス浅草行き』を刊行した、今注目されている歌人、岡本真帆さん。

彼女の第二歌集が、ナナロク社から刊行された『あかるい花束』です。

東京と、ふるさとである高知との二拠点生活を始めた岡本さんの心の動きや、あった出来事などが短歌になっています。

エピソードをそのまま生絞りのように短歌にしたものも、エピソード生絞りではなく、岡本さんの心のフィルターを通したものも、どれも珠玉。

2年間で作った短歌のうち、266首を収めた『あかるい花束』は、軽い読み心地ですが、満足感の大きな歌集です。

『あかるい花束』感想・レビュー

まさに、「あかるい」本。

それもキラキラまばゆいのではなく、優しい陽だまりの明るさ。

目が痛くなる明るさというより、何だか心も晴れやかになって、スキップしたくなる明るさ。

そこに、岡本真帆さんの人柄が表れているように感じました。

犬が好き、スピッツが好き、自然が好き、ビールもたぶん好き……。

そんな岡本さんのたくさんの「好き」が、岡本さんの頭の中、心の中の短歌ファクトリーを通して、優しい短歌に仕上がります。

人生では様々なシーンで花束を誰かにプレゼントする機会があります。

そんな時、花束として、優しくあかるい言葉が束ねられたこの『あかるい花束』をプレゼントできたら、と思ったりもしました。

連作の間に花の挿絵が入っていて、読み進めていくうちに自分の心の中に花束が出来上がるような装丁も、心があたたかくなりました。

言葉も普段私たちが使っている言葉が使われていて、生活に密着した短歌が266首も収録されているので、短歌は難しいものではないか、と思っている人にもおすすめ。

読んで、「分かる……」としみじみ共感したり、「こんなことが短歌に?」とびっくりしたり、お気に入りの短歌を見つけるのも楽しいでしょう。

新しく短歌の世界を知って、その楽しさ、奥深さに引き込まれること間違いなし。

こんな人におすすめ

まとめ

岡本真帆さんの第二歌集、『あかるい花束』を紹介しました。

キラキラゴージャスではないけれど、優しい明るさが心に沁みわたる歌集です。

ぜひ、自分へのご褒美に、大切な人へのプレゼントにどうぞ。

短歌は初めてという人にも、短歌が大好きだという人にもおすすめできる1冊でした。

『桃を煮るひと』

今回は、くどうれいん著『桃を煮るひと』を紹介します。

くどうさんの、心の機微を描写する力を実感するエッセイ。

読んでいて、幸せになれる1冊です。

『桃を煮るひと』とは

作家として多方面に活躍する、くどうれいん。

くどうれいんさんの5年ぶり、2冊目の食エッセイ集が『桃を煮るひと』です。

日本経済新聞の連載に、書き下ろしも豪華に加えた41篇が並びます。

表紙に大きく描かれた柔らかそうな桃が愛らしい1冊。

『桃を煮るひと』あらすじ

作家、くどうれいんさんの周りで起こる食べ物にまつわるあれこれ。

それらを、あたたかい眼差しで描写した食エッセイ。

食べ物、食べることは、人を幸せにすると伝わるエピソードがたくさんです。

『桃を煮るひと』感想・レビュー

まず思ったのは、これは「食」にまつわるエッセイだけど、食べ物の紹介ではないということ。

食べ物の細密な描写が光るエッセイとはまた違って、食べ物を巡る人々の心の機微がみずみずしく描き出されているのです。

健やかに、そして、まっすぐに食べることと向き合う、くどうさんの人柄がじんわりと心をあたためてくれます。

なんだか幸せな気持ちになって、微笑みながらうとうとしてしまいそう。

表題の「桃を煮るひと」では、本当に桃の香りが漂ってきそう。

桃も柿もトマトも、『桃を煮るひと』に出てくる食べ物はすべて美味しそうだし、それらを巡る家族、人々との交流が「食べること」の愉しさを倍増させてくれるのだと教えてくれます。

「食べる」って楽しいことなんだ。

大切な人と美味しさを共有できるのはとてもありがたいことなんだ。

そう、まっすぐに伝えてくれるエッセイです。

表紙に惹かれて買いましたが、「買ってよかった」と大満足でした。

こんな人におすすめ

まとめ

文章から美味しい、文章から幸せ。

そんな食エッセイです。

ゆったりした気持ちになりたい時、ソファに寝っ転がりながら読むのがおすすめな1冊でした。

表紙の大きな桃が目印。

ぜひ手に取ってみてください。

『おやつが好き お土産つき』

今回は、坂木司『おやつが好き お土産つき』を紹介します。

日常に身近な「おやつ」。

そんなおやつについて、真剣に向き合い、美味しいおやつを紹介したエッセイです。

「今日のおやつは何にしようかな?」と気分がうきうきしてくる1冊。

『おやつが好き お土産つき』とは

『おやつが好き お土産つき』は、2022年に文藝春秋から出版された、坂木司さんのエッセイ。

『銀座百点』というタウン誌に連載したおやつについての紹介エッセイを中心におやつに関連したエッセイを収録し、文庫化したものです。

『おやつが好き お土産つき』のあらすじ

『和菓子のアン』など、美味しそうなタイトルでほっこりあたたかい小説を書く坂木司さんの、おやつにまつわるエッセイ。

『銀座百点』というタウン誌の連載ということもあって、銀座のお店を中心にお菓子を紹介しています。

もちろん、甘いものもしょっぱいものも分け隔てなく、坂木さんのおやつ愛をもって誠実に、丁寧に紹介されています。

週末に食べるおやつを探すもよし、おやつを食べながら読むもよし。

テーブルにあたたかいお茶を用意しながら読みたい1冊。

『おやつが好き お土産つき』の感想・レビュー

数ある食にまつわるエッセイでも、坂木さんの『おやつが好き お土産つき』をおすすめする理由は、おやつを紹介する文章が誠実で、丁寧だから。

装飾が過剰で、とにかくキラキラした言葉を並べて、おやつをお世辞もおべっかもなんでもありで褒めたたえる……そんなエッセイでは途中で胃もたれして飽きてしまうでしょう。

しかし、坂木さんの『おやつが好き お土産つき』は、誠実な言葉で、おやつの良さを丁寧に紹介しています。

そこに派手さやキラキラしたまぶしさはありません。

その分、滋味に溢れていて、1編読むごとに心の中に幸せが満ちていくのです。

おやつ、特に和菓子に詳しいのかと勝手に想像していましたが、そうではないようで、知らないことは素直に「知らなかった」と書けるまっすぐさにも心惹かれました。

あまり本を読まない人にも分かりやすく、親しみやすい言葉で書かれてるので、肩ひじ張らずに、リラックスして読むことができます。

なのに、紹介されているお菓子の美味しさや手触り、香りまで目の前に立ち上ってきそう。

銀座にお菓子を買いに出掛けたくなる本です。

お土産に悩んでいる人にも、「こんなお菓子があったのか!」とハッとアイデアを与えてくれそうです。

こんな人におすすめ

まとめ

読んでいると、思わず「早くおやつの時間が来ないかな」と楽しみになってしまう本、『おやつが好き お土産つき』を紹介しました。

読んでいて、お菓子への好奇心を搔きたてられると同時に、幸せな気持ちになる、素敵なエッセイです。

文庫本なので、持ち歩きにも便利。

ちょっとした時間に1編読むだけで、誠実で丁寧な言葉に、何だか優しい気持ちになれること請け合いです。