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今年のカンヌ国際映画祭では、スタジオジブリが名誉賞を受賞しました。そしてスタジオで受賞するのは初だということでした。海外で、日本といえば?と尋ねると、sushi!、ramen!、 tempura!、anime!....Ghibli!!という人も少なくはないでしょう。特にフランスは、日本のアニメの視聴者、漫画の読者数が日本を余裕で超えて一位を占めているということです。2000 年代初期から、ビートたけしのバラエティ番組もテレビで放映するようになり、彼の知名度が高い理由はそれがきっかけということもあるそうです。では、話をジブリに戻りますが。日本は残念ながらも環境問題に対しての姿勢は世界から批判されがちなのが現状であります。数年前には、コンビニなどでのビニール袋の廃止など取り入れられましたが、海外ではもうかなり前から行われてきているものでもあり、時代遅れな感じもしました。

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しかしそんな中、日本の環境問題、動物愛護などを大うこのスタジオジブリ。例えば、宮崎駿監督の「風の谷のナウシカ」、「もののけ姫」、それから宮崎氏の仲間、そして親友でもあった高畑勲監督の「平成狸合戦ぽんぽこ」など、日本ではあまり主要な話題として取り上げられていない、ある意味世界的問題を彼らはファンタジー要素を加えて、どの世界の老若男女も楽しめるような映画をおよそ 40 年作り出してきているのです。そのほか、今では珍しくともなった手描きもかなり新鮮。キャラクターもかわいく描写され、世界で共通の “神”もジブリ映画の大事なテーマの1つです。日本らしいアニメーション映画ですが、国、人種、年、性別を問わないのがやはりジブリなのです。

長年数々の日本作品が長年カンヌ国際映画祭では評価されてきました。最近では、ウィム・ヴェンダース監督の映画「パーフェクト・デイズ」(2023)で役所広司氏が、日本人俳優で初の主演男優賞を獲得しました。さらに、2018 年にパルム・ドール賞を受賞した映画「万引き家族」、去年は「怪物」でノミネートもされた、現代の日本映画には欠かせない映画監督是枝裕和氏など、日本のシネマが昔とは違った新たな視点から評価されてきています。

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一方で、およそ 70 年前、1953 年度のカンヌ国際映画パルム・ドール賞を日本映画初受賞した、衣笠貞之助監督の「地獄門」。衣笠監督は、まだサイレント時代の頃に制作した映画「狂った一頁」(1926)でわざと中間字幕を入れないという実験的制作をし、後に世界中から評価をされた人物でもあります。そしてこの作品で特に評価されたのは、 “色”。1950 年代の大半の日本映画は、まだまだ白黒であった時代。すでに映画で欠かせない人物となっていた小津安二郎監督でさえ、1958 年に「彼岸花」を作るまで白黒で撮影。そんな中、背景、衣装、肌の色、口紅、全てのもの、すべてのシーンが1つの絵画になるかのように色彩が使用され、この映画の舞台となっている平安時代の雰囲気を “色”で巧妙に出しているのです。さらに、ストーリー的要素:登場人物の関係性、結末がよーく考えてみると、約 10 年後に映画界を変えたフランスの映画人による革命運動 “ヌーヴェルヴァーグ(Nouvelle Vague)”の要素でもあるのです。簡単に言うと、純粋な気持ちから出た愛情が、人妻という現実によりさらに気持ちが高ぶり、人間性を崩壊してしまう愛となる、ある意味フェチ的要素満載の作品を好む大衆が勢揃いしている国、フランスである。

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さらに、1980 年に「影武者」でパルムドールを受賞した黒澤明監督がなぜ初期の頃から国際的に人気であったのか?それは、「影武者」にも共通する要素:馬、日本刀絡みの莫大なスケールのアクションがてんこ盛りだったから。ハリウッド黄金時代の映画達を見てみると、まるで2倍速にしたかのように話し、叫び合い、時には喧嘩に発展するといった、一切息継ぎのない展開で映画が進んでいきます。それと同様、日本映画であり、しかも多くは時代劇でもある黒澤作品はどれだけ尺が長くても、欧米人が好むスピードで物語が進んでいくためであります。

最初カンヌでかなりの評価を得た「影武者」も内容的には、武田家崩壊を防ぐために実際は死去した武田信玄になりすます影武者が、敵サイドにいる織田信長豊臣秀吉を前にどれだけ影武者としていられるか、というザ・時代劇でありしかも 180分の長編作品にも関わらず、「七人の侍」(1954)、「用心棒」(1961)などでも見せた黒澤監督の得意な大スケールの戦いのシーン、大スケールなセット、衣装達が、息継ぎという場面もなく淡々と進んでいく。最後の “長篠の戦い”のシーンは文句なしであろう。
だが、今では世界的に有名である小津安二郎監督作品:「晩春」(1949)、「東京物語」(1953)、「お早う」(1959)他や成瀬巳喜男作品:「浮雲」(1955)、「女が階段を上る時」(1960)他は、動きが少なく、セリフの抑揚もあまりないといったザ・日本映画だったために、当時の海外市場には合わなかったのです。

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時代が少し変わり1997 年には、以前「楢山節考今村昌平監督による「うなぎ」が受賞。このあたりから、アクションシーンなどを含まない邦画達が世界的に評価を受け始めます。主演は、去年(2023 年度)「パー
フェクト・デイズ」で主演男優賞を日本人初として勝ち取った役所広司と、「シコふんじゃった。」で相撲部のマネージャー役としてお馴染みの清水美沙。不倫をしていた妻を殺し、8 年の刑を経た男(役所広司)が床屋を経営するという話。 “殺人”、“床屋”といったありそうでなさそうな組み合わせを使い、 “人間性 - ヒューマニズム”をその狭い空間にてんこ盛りに入れ込むのが今村監督の技。どろどろした情勢をこの映画のタイトルでもある “うなぎ”にうまーく繋げているのも日本映画らしいですね。うなぎは雄達が撒き散らした精子により雌達が子を授かる。しかし、生まれたうなぎの子は親が誰なのかはわからない…うなぎがこの映画の一番の主人公なのかもしれないです。ちなみに、その 4 年後に公開された今村監督作品「赤い橋の下のぬるい水」(2001)で、役所広司と清水美沙は再度タグを組んでいます。

私が数年前にフランスのカンヌに足を運んだ時にとても驚いたのが、「うなぎ」からの役所広司倍賞美津子がカンヌ駅近にある大きな壁画に描かれていたことでした。黒澤明の手形も凄かったけれど、壁画は予想外でした。機会があったら、是非見つけてみてください。