日本のヒーロー。前を向くか、後ろを向くか。 (original) (raw)

ではここで質問です。
特撮作品で相手を撃破した際に、ヒーローは敵側を向くでしょうか?それとも爆発に背を向けるでしょうか?

あなたはどちらを思い浮かべましたか?

ボクはふとこの構図を思い浮かべる時はやはりヒーローが爆発に対して背中を向けている印象がある。これは特撮に限らずロボットアニメなんかもそうだろう。
しかして、ここ最近YouTubeで『バトルフィーバーJ』や『電子戦隊デンジマン』、TOKYOMXで『マジンガーZ』を見ていると実は爆発の際にそんなに敵に背中を向けていないなと感じる。また、よく考えてみると『ウルトラシリーズ』においても、敵である怪獣を撃破する際にウルトラマンが背を向けている印象はそんなにない。

では一体いつ頃から、またどういう構図で「ヒーローが爆発に背を向けるのか」というのを『ウルトラマン』、『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』を筆頭とする特撮ヒーロー、そしてロボットアニメをメインに今回は考えていきたいと思う。

印象に残りやすい?背後爆発

上記でも書いたが、人の記憶に残りやすい爆発シーンと言えばやはり「人物を手前に背後で爆発する」という構図だろう。この構図は『ウルトラマン』では多用されないが『仮面ライダー』、『スーパー戦隊』で特に多用される構図となっている。


特に『スーパー戦隊』においては名乗りで爆発、等身大で敵を倒した時に爆発、ロボ戦で爆発と爆発三昧なため印象に残りやすいだろう。

背後爆破の歴史

というわけで上記を踏まえた上で背後で爆発する構図の歴史を探っていこうと思う。
ただ、ボク自身特撮にとても詳しいという人間ではないため、ザックリとした物になってしまい、もしかしたら間違っているかもしれないがそこは許してほしい。

まず『仮面ライダー』だが、こちらは恐らく恒常化していったのは『仮面ライダーBLACK RX』のリボルケインでの撃破時の決めポーズからだろう。

そして少し時間は流れ、『仮面ライダーアギト』のライダーキックを始まりに様々なシーンで敵を倒した際に使われる構図となっていってるだろう。

そして『スーパー戦隊』。
こちらはロボ戦において、『仮面ライダーBLACK RX』と同時期の『鳥獣戦隊ライブマン』のライブロボの必殺技、スーパーライブクラッシュでのシーンが恐らく最初だろう。

そしてそこから約20年の時が流れ、『特捜戦隊デカレンジャー』のデカレンジャーロボのジャスティスフラッシャーで恐らく久しぶりの復活。以後はシリーズのロボ戦でも度々使われるようになっただろう。

一方で等身大での必殺技においては『未来戦隊タイムレンジャー』のタイムファイヤーの必殺技であるDVリフレイザーでの決めポーズとして多用されており(本作では他にもベクターハーレーがあるがこちらは撃破はしていない)、その翌年の『百獣戦隊ガオレンジャー』の破邪百獣剣において合体攻撃などでのシーンで多用されるようになり、以降のシリーズにおいてもお決まりになってくという感じである。(無論例外はある)

また同じく東映の「メタルヒーローシリーズ」の『重甲ビーファイター』でも確認できる。

そしてあまり背後爆破が多用されない『ウルトラマン』では、恐らく一番古いのは『ウルトラマンガイア』にてウルトラマンアグルがΣズイグルを撃破した際に、アグルが歩く背後でΣズイグルが爆散していくというシーンだろう。

その後『ウルトラマンメビウス』のグドン戦において、メビウスがメビュームブレードを使用しグドンをすれ違いざまに斬り、撃破したシーンで確認できる。

ボク自身ニュージェネ作品には詳しくないため、ニュージェネで使われているかはここでは言及できないのだが、最新作の『ウルトラマンアーク』においても1話でこの様なカットを披露している。

そして気付いた人も多いかもしれないが、これらの作品は古くても昭和63年であり、特撮においてはほぼ平成になってから使用され始めたカットだと言えるだろう。

ヒーローと爆発は同時に映らない?

そして色々見ていくと意外と面白いことに気付く。
それは昭和作品においてヒーローと爆発はあまり同じ画面に映らないという事である。
いや正確に言うと敵からの攻撃での爆発なんかは当然あるのだが、それ以外ではあまりヒーローと爆発は同じ画面に収まらないことが多い。

ヒーローと爆発という部分では『仮面ライダーV3』のとにかくひたすら爆発していくOPが有名だろう。

また、『電子戦隊デンジマン』のEDにおいても爆発の中をかけていくデンジマンのシーンがある。

しかし本編となると意外と無い。
スーパー戦隊」と言えば名乗りで背景が爆発というイメージがあるが、これはシリーズ7作目の『科学戦隊ダイナマン』が最初である。

戦隊において爆発と言えばダイナマンと言うくらい爆発が多用される作品が最初なのは意外ではあるが納得のいく話でもある。
しかし、『鳥獣戦隊ライブマン』で久しぶりに使われたと思ったら、そこから暫くシリーズにおいての名乗りシーンはメンバー全員が名乗り終わると何かしらのエフェクトが出て光ったりするというのが主流となっていた。そしてダイナマンから20年経って『爆竜戦隊アバレンジャー』で久しぶりに名乗りでの爆発を披露。以降シリーズでは個別の名乗りで爆発したり、従来のエフェクト方式を踏まえた物をやったりと色々なバリエーションが生まれる。そう考えると意外にも名乗りで爆発は歴史が浅かったりもする。(全体名乗りでの爆発とCGエフェクトの2種類が両方存在するシリーズもあり、ここはその回の担当監督に左右される)

特撮は工夫の積み重ね

では、そうした敵の爆発とヒーローを同じ画面に映してない時代はどうしていたのかと言うと、これは「ウルトラマン」、「仮面ライダー」、「スーパー戦隊」のどれも同じ手法を取っている。
それは必殺技を打つ→敵を中心とした画面になり敵が被弾する→爆発という流れになる。

特に『バトルフィーバーJ』の後半や『電子戦隊デンジマン』では爆発シーンすらもバンクの場合があり、ロボ戦ともなるとほぼバンクで繋いでいたりもする。
また、90年代頃からの戦隊ロボは敵が爆発した後に一つ決めポーズを付けるというのも恒例の流れとなる。

ウルトラマン」や「仮面ライダー」においてもこれは変わらず、どの特撮においても「敵(その回の主役)の散り際は敵だけを画面に映す」というのがお決まりとなっている。

特撮作品は基本的に毎週放送され、それが1年も続き、しかも毎年新しい作品を作り続けている。バンクで工夫したりするのは限りある予算でどう魅せていくのかという課題もクリアするためのその時々に合わせた工夫が編み出された技と言えるだろう。

ヒーローと爆発の両立は意外と大変?

しかし、先述した通り平成、特に2000年代に入ってからはヒーローと爆発を同じ画面に映す手法が増えてきた。しかもその爆発は基本的にCGではなく火薬でだ。
もちろんCGでの爆発エフェクトをかけるものも見られる。(特に仮面ライダースーパー戦隊などロケ先を戦闘に使う場合は爆発の火薬を使わない手法を取るシーンも見られる)
しかしそれをすると一つ大変な問題が発生する。

そう、特撮が好きな人なら誰しも気にしたことがあるであろう「敵が爆発するとちょっと位置やポーズがズレる」アレである。

爆発したタイミングに位置やポーズが数ミリ程度だがズレる関係で映像がパカっとした感じに見えるアレ。
ボク自身はそれも味だと思い結構好きなのではあるが、撮影の大変さを感じさせるものだろう。

一度敵が地面に倒れるまでを撮ったらカットをかけ、その後敵を退避させ火薬を仕掛け、再度ヒーロー(スーツアクター)にズレなく同じポーズをしてもらい、爆発のカットを撮るというのは中々に大変な作業だろう。流石に映像のいろはも知らない素人でもそれくらいは感じられる。

それでもやる理由としてはやはり「カッコイイ」からだろう。

アニメにおいて

ではアニメではどうだろうか?
古い作品、特に『スーパーロボット大戦』で必殺技を見てきたロボの原作の技を見てみると意外と爆発シーンは違ったりする。
やはり必殺技のあとは必殺技を食らった敵に画面を切り替えて爆発、もしくは必殺技の後にそのまま爆発シーンが画面を占拠するというのがお決まりだろう。

そこで第一に印象に残るのが『機動戦士ガンダム』である。
機動戦士ガンダム』において最も有名である1話でガンダムがザクを切り裂き倒すシーン、こちらは恐らく当時としては珍しかった主役の後ろで敵が爆発するシーンとなっている。

そしてロボットアニメで敵が背後で爆発するといえばやはり勇者シリーズだろう。

敵を剣で斬り、背景で敵が爆散していく。この構図を強く印象付けているのはこのシリーズの存在も大きいのかもしれない。

こうしたものもあるからか、『スーパーロボット大戦』においてもそういった演出を取り入れたアニメも多く見られる。

では何故ヒーローは振り向くのか

ここからは映像のいろはも知らない素人の戯言だと思い、生暖かい目で読んでもらいたい。
何故ヒーローは振り向くのか。
これはもう偏に「カッコイイから」だろう。

歌舞伎の見え切りで主役が客席に向かってポーズを取る。
ルパン三世』で敵を斬った石川五右衛門が敵に背を向けながら「またつまらぬものを斬ってしまった」と言いながら斬鉄剣を納め、その後ろで敵が倒れる。
いやー、カッコイイ。
これはもう日本人が「歌舞伎」や「時代劇」で培ってきた一つの「美しい画」なのだろう。(多分)

また爆発をヒーローの前に配置する場合、ヒーローに爆発が被らない様に画面を工夫しないといけない。そうなると画面の半分が爆発、もう半分がヒーローという画面作りになるだろう。
そして、日本においての画面作りは右から左の方向に作る方が多い。これは舞台の上座下座の造りからの流れであり、人間の視覚的にも左から右に流れるよりも右から左に流れた方が多分気持ちいいのだろう。だからかパースを効かせて奥行きのある画作りをする際は右側を奥とする画がよく見られるのだろう。
そうなると必然的に右側にヒーローを配置し、左側に爆発を奥配置となる。

(この画面作りは光線の奥行を見せるためなのかウルトラシリーズではよく使われている)

一方で、爆発を画面奥に配置する際は、あくまで爆発は背景なため被写体であるヒーローと被っても問題ないためどこに置いても画になるというメリットがあるだろう。


ヒーローという存在のカッコよさをより際立ててくれる。それが背景爆発の醍醐味だろう。

そこでじゃあヒーローにどこを向かせるかとなると、やはり視聴者に対する向きになるカメラへだろう。
爆発した際にヒーローをカッコよく見せたいのに、肝心のヒーローが見る側に背中を向けていたら画としてのインパクトが弱くなる。だからこそカッコよさを極めるためにも振り向くのである。

もちろん振り向かないこともあり、それはヒーローがちゃんと敵を倒せているのかに対して目を離さない、最後まで油断をしない緊張感を出す味となる。

(仮面ライダークウガではこの手法が見られる)

なので爆発シーンは、そのシーンをどう作りたいかの製作者の拘りが詰まっているシーンの象徴とも言えるだろう。

まとめ

いかがだっただろうか。

なんだか書いてて迷走したような言葉がまとまってない様な気がするがまあそこは気にしたら負けだろう。

今回このブログを書くにあたって特撮の爆発シーンを見てみると意外な発見があったため、より一層特撮を見る面白さが増えた気がする。
時代劇というジャンルが衰退していき、今や大河くらいしかない今のテレビドラマにおいて、やはり特撮と刑事ドラマというジャンルは画作りとしてかなり勉強になる物だろう。
特撮は特に、日常シーンに殺陣、フィクションのリアルと色々な物が詰まっているため、画作りの勉強として見るだけでも相当な発見があるのではないだろうか。
まあボクは絵が描けなければそう言った映像職に就くこともないため勉強しても活かす機会が訪れることがないわけだが。

といったことで今回のブログは終わりである。

次回は実は数ヶ月前にちょっと書いて放置していた戦隊関連のブログをそろそろ完成させて公開しようかなと思っている。
前回告知したガルクラのブログはまだ手も付けていないためもっと先になると思う。申し訳ない・・・。

ではまた次のブログで。

最後まで読んでいただきありがとうございます。

ノシ