40歳。欲しいのは遊び心と、シャネルの5番。 (original) (raw)
好みは移ろうものだから、「生涯愛せる一生モノ」なんて存在はあまり信用していません。
このほど40歳の節目を迎えた記念に何か思い出に残る買い物をしたいなあと思っていて、だけど「記念日買い」で思い浮かびがちな時計やバッグやアクセサリーといった装飾品の所有欲があまりありません。
いろいろ考えて、香水を買うことに決めました。
人生初の「シャネルの5番」です。
誕生日は先月(10月)だったのですが、ちょうどそのタイミングで、音声メディア「Voicy」で元シャネルのエグゼクティブメイクアップアーティスト・東風上尚江(こちがみ・たかえ)さんの配信を聴くようになりました。
東風上さんが今月初めの配信で紹介されていたのが、「シャネルの5番」でした▽
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10月下旬の「VOGUE JAPAN」に掲載された、シャネルの調香師オリヴィエ・ボルジュのインタビュー記事を紹介しながら、「シャネルの5番」の魅力とイメージ戦略、香水を纏う愉しみ、東風上さんがシャネルで働いていた頃の思い出について紹介されています。
東風上さんが紹介されている「VOGUE JAPAN」の記事はこちら▽
「世界で最も有名な香水」ともいわれ、1921年の発売から100年以上愛される名品中の名品です。「自立した女性像」を体現した、個性的で豊かで複雑な香り。いつかは…と思いつつ、あまりにも有名すぎて、これまで自分用に購入することはありませんでした。
ですが、40歳の節目を迎えた直後にたまたま東風上さんの配信を知ったり、そこで紹介されていたVOGUEのインタビュー記事を読んだりしたことも「モノと出会うタイミング」だったのかもしれません。シャネルのカウンターで、いくつか他の香水も試してみて、やっぱり直感的に「これがいいな」と感じた5番を購入することに決めました。
VOGUEのインタビューで、調香師のオリヴィエ・ボルジュさんは「香水を纏うときに大切なのは〝遊び心〟」だと話されています。若い人が少し背伸びして大人な香りを纏うこと、逆に大人が軽やかに楽しむのも素敵なこと。そして、「これこそが香水との〝遊び〟であり、その多様な楽しみ方がシャネルN゜5の本質的な魅力でもある」とも。
これを受けて、東風上さんが配信で発した「一日の彩りの中に、メイクやフレグランスを楽しむ時間に、ちょっとした遊びのエッセンスを入れてみるのはいかがでしょうか」という言葉がとても印象的でした。
そして、この「シャネルと遊び心」のフレーズで思い出したのが、作家の山田詠美さんと、先日逝去された服飾評論家のピーコさんによる対談集「ファッション ファッショ」(講談社文庫)です▽
女性誌「Style」に2001年から2003年まで連載された対談をまとめた本。「流行に踊らされない、ブランドに頼らない」を主眼に、センスのない装いを切り捨てるお二人の「愛ある毒舌」が冴えています。
詠美さんが「シャネル・パーティー」なる催しに招かれた際のエピソードが、まさに粋。
ホームパーティなんだけど、何でもいいからシャネルをひとつ身につけてきてくださいというのね。当時私はシャネルを何も持ってなくて、でもまあいいやと19番の香水をつけて行ったんだけど、その時一緒に行った黒人のボーイフレンドは、そのパッケージのマークを切り取って、タキシードの胸ポケットにクリップしたの。「なんて格好いいんだコイツ!」って感動しちゃった。
「ファッション ファッショ」(講談社文庫)収録「パーティの作法」14頁より引用
誰もがシャネルを着てパーティに参加する中で、最高COOOOOLな詠美さんに「いちばんスノッブだったのは、彼だと思う」と言わしめた、ボーイフレンドのお茶目なセンス。
箱に印刷されたシャネルマークを、ベルマークを切り取るみたいにハサミでちょきちょきやって、針金クリップで胸ポケットに留めて颯爽とパーティへ。
クールな「遊び心」は余裕の象徴といえるかもしれません。
ちょうど限定のホリデーコフレ(5番の香水と、同じ香りのボディオイルのセット)が出ていたので、そちらを購入しました▽
パッケージが超絶に可愛い。
四十にして惑わず。余裕をもって「遊びを楽しめる40代」になりたいという願いと決意を込めての、不惑記念の「シャネルの5番」です。