むかごの誘惑 (original) (raw)

むかごってご存知ですよね。

スーパーなんかではあまり売られていない、各地の直売所や道の駅なんかで、時々みかけるかってもの。だから都会派の方がたのなかではご存じない方も多いかも。

長芋や自然薯などヤマイモの仲間は、根もとに芋をつくるのですが、長いつるを伸ばすのはご存知でしょう。都会にいても林のそばや、畑の縁、あるいは庭の垣根なんかにツルをまきつけているのを見ることができます。そしてこの時期、葉の付け根に肉芽といわれる、1センチもしない、じゃがいもをうんと小さくしたような小さな芋をつけます。

これがごぼれ落ちると翌年そこから芽をだし増えるのですが、それはあくまでも植物側の思惑で、我々としては、これを摘み取ってお腹にいれるわけです。

何と言ってもヤマイモさまです、不味いわけない。素朴なものですが、ちょっとの塩とともに乾煎りしてビールのおつまみにすると乙なもの。まとまった量があれば、よーく洗って、これも少量の塩とともにご飯に炊き込む、これ絶品です。毎年、秋になるとこの味がなつかしくなります。

郊外を散歩していると、垣根や空き地の柵や灌木なんかに目をこらしますと、あるある、ハート型の葉っぱをつけたつるが。多くはヘクソカズラだったりして、これは可愛い花と実をつけますが、名前の通り臭くてだめ。ヘクソカズラの葉脈が枝分かれているのに対して根本から放射線状に葉脈を走らせているのがヤマイモの仲間。で、ころころとした実(正しくは肉芽)がなっていたら、心が踊りだします。

でも、そこからが問題。里山の森なら喜んで採りにかかりますが、住宅地周辺では土地の持ち主が楽しみにしているかもしれない。住宅の庭や一坪農園の片隅ならいざ知らず、空き地や広い畑の片隅なんかでは9分9厘そんなことないとは思いますが、採ろうかとるまいか、悩みに悩みます。

ええーい雑草なんだ、誰も気にしない、今自分が採らなければ地面に落ちてしまうだけ、最後は誘惑に負けて隠し持っていたビニール袋にしまいこみます。

畑の隅にはえているやつ採っていたら地主がでてきて、こら、お前何盗っている。

あわや警察沙汰か、とったもの出せというので、すみませんとポケットからビニール袋を取り出し、差し出しました。

大笑いされました。でてきたのがむかごではね。地主さんの勘違いでした。仲良くなっておみやげに、そばに育ててあったオクラをいくつかいただきました。

これも軽く茹でて輪切りにし、カツブシと醤油をかけると絶品、今日もお酒がおいしい。