That Means A Lot (original) (raw)
ひと夏と呼ぶにはいささか短いが、ポルノグラフィティに満ちた夏が終わる。
8月20日のCDTVでポルノグラフィティと再会し、ロマンスポルノの横浜公演のチケットを取り、因島にも行き、久々にCD(ブルーレイとブックレットが目的だけど)を買い、いよいよ10年越しのワンマン現場。"あなたにとってポルノグラフィティとは"という公式テーマに踊り踊らされ、過剰に期待し心待ちにする自分を敢えて楽しんだ。それは心に響かなかったときに、一度離れた身として”ひと夏の思い出”とラベルをつけた開けない箱にしまいこむこともできるようにと、決意に見せかけた逃げ道の用意でもあった。
ライブが終わった今、まず言えるのは、25年もポルノグラフィティがポルノグラフィティをやり続けてくれたことが本当に有難いということ。出戻りがそろ〜りと帰ってこれる環境とタイミングがあったことを針小棒大に運命とか啓示だとか偉そうに語りたくなるが、まずに跪いて感謝することが先。
またその姿が最後に見た時よりも大きく力強くなっていたことが嬉しい。古い曲ももちろん、最新の曲だって、なんなら忘れかけた曲だって、魂にゴンゴン響かせ、心をゆっさゆっさと揺さぶってくる。彼らがポルノグラフィティをやり続けるという決断をしたときには、サウダージのMVのごとく老け込んだ姿で、すっかり老け込んだファンたちと懐古のために懐メロを届けるわけではないぞ。と、ポルノグラフィティで"居続ける"という決断もあったはずで、その決断の裏に様々な努力があり、それはポルノがポルノのためにしてくれたモノ。それを考えるだけでも幸せになれるのだ。
今も昔もポルノグラフィティを見るということは、僕の約20個上の先輩であり師である2人を見上げること。力強く大きなエネルギーのおかげで、自信を持ち胸を張ってがんばろうと決意できるし、その存在の大きさについてまた答え合わせしようと思う。
今年の夏はそんな夏だった。とはいえまだまだ残暑だし、あまりにも巨大なエネルギーを浴び、 余韻に浸りながら封じた逃げ道をぼうっと眺めながら、いまだに”解放区”から出られずにいる。
あともうひとつ。ポルノグラフィティである2人が、ポルノグラフィティを愛していることがよくわかった。言うまでもなく素晴らしいこと。思い浮かぶは優しい眼差しで客先を見渡す2人の姿。昭仁さんは前からあんなに僕らに感謝を伝えていたっけ?晴一さんは前からあんなに楽しそうに観客を見渡していたっけ?
そしてこれが大きな問題。それはそんなにかわいいものだったっけ?
ミーハーで出戻りの端くれの分際がポルノグラフィティの巨大なエネルギーの中身を勝手に分析すると、4割は勇敢さとカッコよさ。残りは3割は示唆と逆張りとギャップ(逆張りも反骨と捉えると総じてロックといえばそうだが)。2割は優しさや愛のたぐい。最後の1割はエロだと思っていた。しかし久々に見たらエロがかわいさに変わってるような。昔からかわいいという声がチラホラあがっていたのは知っていたけれど男子としてはわからなかった。でも今はわかる。いやわかってしまってはおかしいのだが。50にもなるおっさんを、30越えた男がかわいいと思っていいのか?多様性も流石にびっくりしそうだが。
それもまた答え合わせかな。
始まる前にコンコースを一周したのに載せるような写真がない。もっと写真を撮っておけばよかった
以下雑感。
残暑の横浜スタジアム。西日の厳しいウイング席。因島公演のうちひとつは台風で流れてしまったが、本当に良い天気。半分外に出ている席なので届く音のデカさとステージセットの全貌は期待できないが、ステージまではそれほど遠くもない。恒例の客いじりが終わり、花火を幕開けの合図大歓声。久々の黄色い歓声は圧巻。
オープニングナンバーが半インストのc/wとは予想外。こんな曲もあったなぁ…というかここはサンタモニカではなく横浜じゃないかと呆気に取られたのち「ネオメロドラマティック」、今回のライブのテーマである”解放区”の背景を表していたのだろう。
久々に耳にする黄色い歓声と揃う手の振り。「こんな感じだったなあ」と出戻りは懐かしむ。手の振りは初めて見た時からなぜ揃える必要がと思ってはいたが、頭の中のイメージと実際の振りが合う時が楽しかったりもする。
自己新記録の更新をうたう「メジャー」と、ひと旗あげるの意をこめた「FLAG」の2曲は、大学に入学したとに毎日聴いた思い入れのあるアルバムだけに聴けて嬉しかった。
次第に暮れてゆく空に彩られ「カメレオンレンズ」の不穏と「シスター」の哀愁が助長される。「THE DAY」は最初はアコースティックのちノーマルバージョン。助走付きの攻撃的な突き抜けるサウンドが夕闇を切り裂いたがの如く会場が暗転。
「Zombies are〜」「今宵〜」と夜道をアクセルをベタ踏みでかっ飛ばしたあと、スクリーンに浮かぶは『あの頃と変わらないものが ひとつくらい残ってないかと』の詞。思い出す間に始まるは「ひとひら」、あの頃はわからなかった残業の孤独。刺さらなかった久々に聴く曲が深く沁みるのもライブの醍醐味。視界がぼやけるが目に焼き付けるが先。
続くは怒涛のアップテンポナンバー。聴けると嬉しい「ヒトリノ夜」。歌えと煽っておいて歌詞を間違える昭仁さん。全然大丈夫です我々はアウトロだって歌えますから。ノバディーノーズワッミーラブソーン!ほらぁ!かかってこいやー!と鼻息荒くしたところで「Jazz up」でひっくり返る。しかも昨日は「幸せについて本気出して考えてみた」のセトリ変更の結果が"これ"らしく尚更。夜空に叫ぶダーイビンザマザーズスカイ!は健康に良いが、道徳には悪い。銀テープの発射は…どういう意味なんでしょうかねえ。
「ミュージック・アワー」で一糸乱れぬ変な踊りのあとに聴こえるはラテン調のリズム。手拍子で即応戦。「アゲハ蝶」のお出まし。この曲は僕らも演奏する側、イントロ、Bメロの拍手も完璧にこなす。あとはコーラスだけなのに目の前が曇って声が裏返る。本人たちもそんなに優しい顔で客先を見ないでほしい。僕も目の前に広がる素晴らしい光景を見たいのに余計に見えない。ハンディカメラで撮っていた映像に外れた声が入っていないことを祈る。
締め括りは「解放区」。優しさと熱と愛を持つ巨大なエネルギーがこの曲にはある。25周年の曲がこれで本当に良かった。
アンコールは新曲「ヴィヴァーチェ」から。”ヴ”なのがポルノらしい。ここ最近のシングル同様、また救われる者が出そうな曲だ。昭仁さんがハーモニカ吹くのを忘れたことに笑いながら花火を見ながらタオルを回し、「ジレンマ」で大団円。
終わったあとも、ひとりひとりを見るかのようにずっと手を振る姿がまた印象的だった。
- おいでよサンタモニカ -Welcome 横浜 ver.-
- ネオメロドラマティック
- メジャー
- アポロ
- 狼
- OLD VILLAGER
- FLAG
- カメレオン・レンズ
- シスター
- 愛が呼ぶほうへ
- むかいあわせ
- ギフト
- THE DAY
- 螺旋
- Zombies are standing out
- 今宵、月が見えずとも
- ひとひら
- ヒトリノ夜
- Jazz up
- ミュージック・アワー
- アゲハ蝶
- 解放区
(encore)
終わったあとに思ったのは、ハネウマもサウダージもメリッサもMugenもやっていない。やっていないのにこの満足感。選手層の厚いこと。ここで敢えてやった曲、やらなかった曲についての考察をXで見るのが楽しいこと。今ってポルノファンはこんな感じでつながっているのか…。
果たして、昭仁さんに泡ビールを渡した売り子は本職だったのだろうか。