『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』 ヒット・ガールよ、永遠なれ (original) (raw)

ジェフ・ワドロウ監督、アーロン・テイラー=ジョンソンクロエ・グレース・モレッツクリストファー・ミンツ=プラッセジム・キャリー出演の『**キック・アス/ジャスティス・フォーエバー**』。2013年作品。R15+

2010年のマシュー・ヴォーン監督によるアメコミ映画『キック・アス』の続篇。

今回、マシュー・ヴォーンは製作に回っている(前作に引き続きブラッド・ピットも)。

また、クロエちゃんの長身でイケメンのお兄ちゃん、トレヴァー・デューク=モレッツが製作総指揮を務めている。

字幕監修は、これも前作に引き続き町山智浩が担当。

そのおかげか、クロエちゃんの台詞“Game on, cock suckers!”が予告篇では「いくわよ、おしゃぶり野郎!」だったのが、映画本篇では思いっきり「チンポ吸い野郎!」になってました(「オマタ蹴り上げるよ」が「ワレメ蹴り上げるよ」になってたし)(;^_^A

原作はマーク・ミラージョン・ロミータ・Jr.の同名コミックと、同じくコミック「Hit-Girl」。

僕はどちらも読んでないので、映画についてだけ述べます。

かつて小さな復讐者“ヒット・ガール”(クロエ・グレース・モレッツ)とともにギャングたちと戦いを繰り広げた“キック・アス”ことデイヴ(アーロン・テイラー=ジョンソン)はあれから普通の高校生に戻っていたが、今やちまたでは彼に影響された覆面ヒーローたちが溢れている。そんな自警団たちに刺激を受けたデイヴは、ヒーローに復帰するためヒット・ガール=ミンディ・マクレイディとトレーニングを始める。しかしミンディの親代わりのマーカス(モリス・チェストナット)は、彼女にヒーロー活動をやめさせて普通の学生生活を送らせようとしていた。一方、父親をキック・アスに殺されたレッド・ミストことクリス・ダミーコ(クリストファー・ミンツ=プラッセ)は復讐を誓い、“世界一の超悪人マザー・ファッカー”を自称して金で世界中から犯罪者たちを集め始める。

ついにこの日がキタ━━━(゚∀゚)━━━!!!

昨年の夏にアメリカで公開され、ようやく日本上陸というわけだが…。

思った以上に酷評が多く、非常に危惧していた。

ヒット・ガールの出番が少ない、ストーリーが散漫、キック・アスが邪魔、アクション映画として普通につまらんetc.なかなか手厳しい評価が続く。

好意的なものでも「前作には及ばないが」という断わりが付くことがほとんど。

どうやらこの映画は『スターウォーズ/帝国の逆襲』にはなれなかったようで。

すでに散々そういう感想は目にしてきたので、作品そのものには過度の期待はせずにクロエちゃんのヒット・ガールを見に行ってきました。

で、どうだったかというと。

うん、否定的な意見のほとんどには同意。ガッカリした、という人たちの気持ちはわかります。

その上で、それでもやっぱり僕は続篇を作ってくれたことに感謝したい。

だってまたスクリーンでヒット・ガールに会えたから!!

「ヒット・ガール役は別の年少の子役にやらせればよかった」という意見もあって、キャラクターのイメージを守るためにはそういう選択もあったと思うけど、映画の作り手たちは「成長していく」ヒット・ガールを描くことにしたようだし、何よりも前作のヒットはミンディを演じたクロエ・グレース・モレッツの功績が大きいのだから、彼女の続投は大正解だったと思います。

つーか、彼女が出てるから観に行く僕みたいな“病い”の人たちは大勢いるはずだし。


壁にかかった笑顔のニコラス・ケイジの遺影が哀しい

成長したクロエを見て「ヒット・ガールが劣化した」とか言ってる真性小児性愛者たちは、猛犬にタマ食いちぎられればいいんだ。そういう人は、コキザルみたいに1作目を何度も何度も死ぬまで繰り返し観てればいいじゃん。

僕はむしろ変化していくヒット・ガール=ミンディ・マクレイディ=クロエ・グレース・モレッツをこれからも見守っていきたい。

…ってなわけで、もう十分すぎるほど気持ち悪いおじさんが映画館に行ってまいりましたよ。

以降は『キック・アス』『キック・アス/ジャスティス・フォーエバー』の

ネタバレがありますのでご注意ください。

あと、ヒット・ガール関連の記述が多いので、その辺はご了承のほどを。

まず、主人公キック・アスを始め、ヒット・ガール、レッド・ミスト改めマザー・ファッカーという3人の主要キャラクターを演じる俳優たちが無事全員揃ったのはめでたいな、と。

続篇の話は1作目の公開直後からあって(当初は2012年公開予定、とか言われていた)、前作のスマッシュヒット以降クロエはもちろん、アーロンもクリスも忙しくなったので(そのわりにはクリストファー・ミンツ=プラッセの新作はアニメ以外ほとんど日本で公開されないが)なかなかスケジュールが合わず、監督交代やシナリオの遅れなど紆余曲折を経て続篇が完成するまで3年もかかった。

「早くしないとクロエちゃんが大きくなっちゃうよ~」という心配は的中、小学生だった彼女はすでに高校生に。

今回、劇中では警察の無線でヒット・ガールはなぜか「身長150cm以下」と言われてるけど、クロエさんは普通に160cm以上あります。


ジェフ・ワドロウ監督と

お兄ちゃんのトレヴァーは190cm以上あるテルマエ・ロマエの人並みの高身長だし、ママも娘よりデカいので、これからもさらに身長は伸びる可能性もあり。ビッグ・レディになる日も近い?

前作ではまだ12歳だったクロエ=ヒット・ガールにメロメロになった人が続出。

みんな(俺含む)当時はかなりキショいこと呟いてましたよ(

ヒット・ガールぺろぺろ~!ヘ(゚∀゚*)ノとか)。

どうやらヒット・ガールに夢中になった人ほど、主人公のはずのキック・アスには無関心、あるいは「あいつ、いらなくね?」みたいなこと言ってた。

「ぜひヒット・ガールが主役のスピンオフを」という要望さえあった。

クロエ自身、「ドゥカティに乗るヒット・ガールを演じたい」なんて言ってたけど、今回それが実現しましたね。

まぁ、撮影時彼女は15歳だったんでおそらく運転すらしてないし、フルフェイスで映ってるのはほとんどスタントダブルですが。

前作ではスタントシーンの多くをクロエ本人が演じた、みたいなこと言われてて、撮影前のトレーニングの映像もあったりして、まさにそれこそが「ををっ、こんな小さい子がこんなスゴいアクションを!」と観客を瞠目させたんだけど、今回はどう見てもスタントウーマンがやってるようにしか思えないつなぎが多いし、小さい身体でチョコマカと動き回っていた前作に比べると「普通のアクション」になってしまった、という感は否めない。

「ガッカリ」ポイントとしてはそこがデカいのではないかと。

逆にヘナチョコ・ヒーローだったキック・アスはどんどんマッチョになって、タイマンだったらその辺のチンピラには負けないぐらいになってる。

実は主演のアーロン・テイラー=ジョンソンは前作の時から普通にいいガタイしてたんだけど、この人の時々裏返る声が絶妙なヘタレ感を醸し出していて(あの髪型も)、それがいかにもオタクでひ弱な男子っぽくてナイスでした。

そんな彼は実際は20歳以上年上のかみさんがいて、すでに父親でもあるし、草食系の皮を被った猛獣系男子だったことが判明。もしくは映画監督の熟女に食われちゃったのかもしんないが。

なんだかんだいって彼が演じる主人公のデイヴって、前回も今回も美人のカノジョとエッチしまくってるし。

どこがヘタレ・ヒーローじゃ、死ねよ(by トッド)!!

今年の夏に公開される『

GODZILLA ゴジラ』(**えめりっひ**じゃないよ)の主演でもある。売れてますねー。

前作ではアメコミ好きでキック・アスに友情すら感じていたクリスは、彼に父親を殺されたことによって完全に黒マクラヴィンと化し、“世界初の超悪人(スーパーヴィラン)”を名乗って町のヒーローたちに宣戦布告する。

もうね、この人の最高にダメな感じが愛おしくて堪らないw

よーするに大金持ちの家のボンボンで、とことん幼稚な発想の持ち主。

前作でも金に物言わせて専用車“ミスト・モービル”とか作ってたし、バカに大金持たせたらろくなことに使わないという見本のようなボンクラ。

キック・アスはあんなにムキムキになってるのに、相変わらず緩んだ体型で無精ヒゲ生やしても貫禄もなく、なんかその辺のニートにしか見えない(その通りなんだが)。

すげぇ親近感が湧く顔なのよねwww

今回、前作の“ビッグ・ダディ”(ニコラス・ケイジ)に代わってジム・キャリーが参戦。

覆面ヒーロー自警団“ジャスティス・フォーエヴァー”のリーダーで、スターズ・アンド・ストライプス(星条旗)大佐を名乗る元ギャングの用心棒という設定。

しかしこのジム・キャリー、何を思ったか映画の完成後「こんなに暴力的な映画だと思わなかった。出演したことを後悔している。宣伝のための協力は一切しない」と謎のコメント。

これはワルだったが宗教に目覚めて人が汚い言葉を使うと怒るストライプス大佐のキャラクターから抜けきっていなかったせいなのか、あるいはあえてネガティヴな発言をして注目を浴びようとしたのか、それともマジで言ってたのかは不明。


ワルではっぱ隊だった頃のジム・キャリー

この大佐、飼い犬にギャングのタマを咬ませてこん棒振り回して暴れまくるステキなキャラだったのだが、残念ながら予想外に早々と退場してしまう。

前作の終盤で実に印象的な最期を遂げたニコラス・ケイジに比べると、かなりあっさり目の出演時間。

これは確かに不満が出ても致し方ない。

ほんとにもったいない。

あのキャラならもっと引っぱれたでしょうに。

クリスの父親の配下だったハヴィエル役のジョン・レグイザモ(元ルイージ)もそう。

あっというまに死んじゃう。

あまり予算がないからスターを長く拘束できなかった台所事情すら想像してしまって(レグイザモが“スター”かどうかはともかくとして)、なんとも残念な気分に。

つくづく、前作の監督マシュー・ヴォーンは巧かったんだな、と実感。

クリスの父親でギャングのボス、フランク・ダミーコ役のマーク・ストロングや前述のニコラス・ケイジの使い方は見事だったもの。

それと、ジェフ・ワドロウ監督みずから書いたシナリオ(原作をどの程度踏襲してるのかは知りませんが)が、やはりあまりうまくいってなかったと思う。

「本当の自分」云々、みたいなテーマらしきものは、スパイダーマンの「大いなる力には大いなる責任が伴う」というフレーズから取った前作の「大いなる力を持っていなければ責任は伴わないのか?」という問いかけのような、どこか日常と地続きの共感できるものにはなっていない。

そもそもこのシリーズは、主人公の高校生デイヴが日々カツアゲに遭ったり、車上狙い、麻薬の密売など現実にある犯罪に対して誰もが目をつぶる世の中に疑問を抱き、「なぜみんなヒーローにならないんだ?」とみずからコスチュームを着てヒーロー活動を始める、という話だった。

彼の冴えない学校生活も含めて、そこにはある種の“リアリティ”があった。

それらが今回はかなりヒーロー物の「お約束」化していて、ぶっちゃけ「どーでもいい話」に成り下がってしまっている。

ゲイであるためにイジメに遭っていたが「自分を偽りたくない」とマスクをつけずに活動する“インセクトマン”(ロバート・エムズ)や、幼い息子が行方不明になったままで夫婦でヒーロー活動を続ける“リメンバートミー”(スティーヴン・マッキントッシュモニカ・ドーラン)、彼らジャスティス・フォーエヴァーのメンバーたちが助けだす、売春させられていたアジア系の若い女性たちの場面など「現実」の社会問題を連想させる要素はあるのだが、どれもが突っ込んで描かれずに、キック・アスの新しいカノジョになるナイト・ビッチ(“夜の売女”って、凄まじいキャラ名ですが)もその家庭環境はよくわからなくて、すべてのキャラが描写不足。

キック・アスと意気投合するドクター・グラビティ(ドナルド・フェイソン)などなかなかナイスなキャラなのだが。

今回クローズアップされるのはヒット・ガールことミンディの学校生活なのだが、これがまたクロエ主演の『キャリー』とカブりまくりの絵に描いたような「イケてる女子軍団」のイジメ描写が展開される。

マーカスに命じられてデイヴとの訓練を途中で投げだし、ジャスティス・フォーエヴァーのヒーロー活動にも参加せずにイケてる女子たちの仲間入りをしようとするものの、観客の予想通り笑いものにされてデイヴの前で泣いて励まされるとか…こんなのヒット・ガールといえるのか?と。

ヒット・ガールさん、キャラがブレすぎじゃないですか?σ(^_^;)

いや、前作や今回の前半で一方的にデイヴを痛めつけて鍛えていたミンディが逆に彼に助けられる、というのは狙いなのかもしれないし、結局はイケてる女子3人組を亡き父の遺した“ゲロゲリ棒”(この場面は惨い^_^;)で成敗するのだが、ミンディが観客には最初から結果がわかりきった失敗を経験する過程でキック・アスの足を引っぱることになってしまっている。

「私がマーカスとの約束を破ると思うの?見損なわないで」という彼女の言葉も、まったく説得力がなかったわけで。

彼女がもっと早くヒット・ガールに戻っていれば、デイヴの父親も死なずに済んだかもしれないんだし。

これはキック・アスにもいえることで、ヒーロー活動を再開したと思ったら父親に反対されて「やめる」と断言したり、その直後に父親を殺されてマザー・ファッカーのアジトに殴り込んだり、とにかく二人とも言ってることとやってることがコロコロ変わる。

悩むのはけっこうだが、そのキャラの信念なり矜持といったものがまるで伝わらないのでは、彼らを心から応援できないし共感などできるはずもない。

悪役として完全に吹っ切れてしまったクリス・ダミーコ=マザー・ファッカーの方がよっぽど潔いぐらいで(前作の迷ってる彼もよかったが)。

だいたい、学校にいるセレブ気取りのアホ女たちなんてヒット・ガールがまともに戦うような相手じゃないでしょ。

ヒット・ガールって女性たちのアイコンでもあるんだから、ナイト・ビッチやジャスティス・フォーエヴァーのみんなが売春組織から女の子たちを助けだしてたように、彼女にはほんとに戦うべき敵が他にいくらでもいるはずで。

ヒット・ガールの学校生活のシーンは、キック・アスとジャスティス・フォーエヴァーの面々が自警団や地域のボランティア活動を続ける本筋とまるっきり関係ない。

このシリーズが背負っている「ヒーローとは何か」というテーマと、ヒット・ガールの自分探しのエピソードが噛み合ってないというか。

それと、スゲェ細かいことですが(でもヒット・ガール好きを公言する者ならないがしろにはできない)、今回のヒット・ガールは前作の時とデザインがいろいろ異なってて、クロエの成長に合わせてコスチュームも大きくなってるのはもちろんなんだけど、あの紫色のウィッグの形も違うんですね。

前作では全体的にカーヴを描くようなタマネギ型だったのが、今回はストレートでしかも長くなってる。

キョーミない人にはきわめてどーでもいいことですが、「ヒット・ガールが劣化した」などと言われる原因の一つは明らかにこのウィッグの形なんですよ!!

ヒット・ガールの「可愛らしさ」はあのウィッグにあったといっても過言ではない。

前作でも「ヒット・ガールは可愛かったけど、マスクとウィッグとったら普通」とホザいてる輩もいたように、あの扮装は実写でアニメのコスプレをやってるようなもので、今回だってウィッグ一つで印象もずいぶん変わったと思う。

まぁ、映画の中でヒット・ガールが暴れだしたらそんなこたぁどーでもよくなるけどな!

話を戻すと、前作でデイヴ=キック・アスは相手がギャングとはいえ、かなりの人数を殺している。

現実には存在し得ないファンタスティックなキャラであるヒット・ガールと違って、単なるどこにでもいる高校生にすぎないはずのデイヴは、この落とし前をどこかでつけなければならない。

それが今回の「父親の死」ということになるんだろうけど…なんだろう、前作で全身の骨が折れてウルヴァリンみたいに金属だらけの身体になった、みたいな悲惨な描写がないために、彼はそんなに痛い目に遭ってないのにまわりはどんどん死んでいく、ちょっと釈然としない展開が多すぎるのだ。

とにかく今回は大量に人が死にまくるが、クリスの母親の死にもハヴィエルの死にもストライプ大佐の死にもデイヴの父親の死にも、すべてに必然性というものが感じられない。

前作にはマシュー・ヴォーンのセンスなんだろうか、麻薬の密売人やギャングたちを冗談半分に惨殺するような、いい意味で作品全体に不真面目で不謹慎な空気が流れていて、暴力や人の死にどこかブラックな味わいがあった。

だからこそ、ビッグ・ダディの突然の死はショッキングだった。

このように笑いとシリアスの配分がうまくいっていたのだが、今回はその辺が巧くないので別に笑えもしないし、大切な人の死はただ単に物語の都合で殺されたようにしか見えないので不快なだけ。

お下品極まりない“”ゲロゲリ棒”のくだりは可笑しかったし(近くの席で観てたカップルの女性があっけにとられて声立てて笑ってた)、神取忍をさらにひと回り巨大にしたような鋼鉄の女“マザー・ロシア”(オルガ・カーカリナ)の大暴れは観てて痛快だったけど。

釈然としない、といえば今回最大の問題は、デイヴの友人トッド。

彼は“ジャスティス・フォーエヴァー”のメンバーになったデイヴと“バトル・ガイ”=マーティ(クラーク・デューク)に仲間外れにされたためにイジケて、マザー・ファッカー率いる毒々デカマン軍団(TOXIC MEGACUNTS)に入る。

デイヴの父の死はトッドが友人の正体をマザー・ファッカーにチクったからで(デイヴは自分がヒーロー活動をやめていたら父さんは死んでなかった、と言ってるけど違う)、こいつは親友の父親を殺したも同然の“クズ”なのだが、そのことはまったく不問にされてて、最後も平然と“ジャスティス・フォーエヴァー”の一員みたいな顔してる。

それはどう考えてもおかしいでしょ。

このことについては、僕以外でもけっこうツッコんでる人がいる。

僕は、トッドはマザー・ファッカーに次ぐ超悪人になるのでは、と思ってドキドキしながら観ていたんですよ。

前作で「あの子(ヒット・ガール)が成長するまで俺は童貞を守る」と言ってたバカが主人公と敵対する悪役になるなんて、なかなかスゴい展開じゃないですか。

ついにモテね男の逆襲か?と。

こいつは今回、もはや「バカだから」では済まされない罪を犯してるわけで。


前作でそれぞれカノジョと乳繰り合うダチ二人に殺意をつのらせるトッド

ちなみに、前作でトッドを演じたエヴァン・ピーターズはどうやらクロエちゃんが成長するまで待てなかったようで(笑)、別の映画への出演のため降板、オーガスタス・プリューに交代している。残念(その代わり、前作の監督マシュー・ヴォーンが撮った『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』の続篇『フューチャー&パスト』に出演。そしてジュリア・ロバーツの姪のエマ・ロバーツと婚約。お前もか!!追記:その後、婚約は解消した模様。何があった)。

前作のトッドのあの罪のないアホ面が好きだったんだけど、俳優も代わってさらにバカに磨きがかかってしまったトッドはこれから一体どこへ向かっていくのだろうか。

トッド以外でも、ミンディの父親代わりのマーカスも地味に役者さんは代わってたりしますが。

ところでリンジー・フォンセカ演じるデイヴのカノジョのケイティと吉高由里子似の友だちエリカ(ソフィー・ウー)は今回もちょこっとだけ出てくるけど、エリカは長い髪を切ってなんかおばさんみたいな感じになってて、「ヒット・ガールの劣化」よりもそっちの方がよっぽど気になったんですが(高校生役だけど、ソフィー・ウーは実は三十路)。

しかもケイティは今さらデイヴの前でラズール(1作目でヒット・ガールに刺し殺されてた麻薬の売人)のちんちんの大きさのことを持ちだしたりして、どんだけバカ女なんだよ、と。まぁ、前作でもデイヴのことゲイと決めつけて仲良くなろうとしたり、たいがいなキャラだったけど。

前作のラストでデブのマーティとくっついてたはずのエリカも、またケイティとつるんで一緒にデイヴのこと責めたりして、1作目でのあの出会いは一体なんだったの?と。

この辺の登場人物のテキトーな使い捨てっぷりもヒドいなぁ。

そのわりには新しく登場したクリスの叔父ラルフ(イアン・グレン)の描写の中途半端さとか、エンドクレジットのあとのオマケ映像など、さらなる続篇への目配せなんかがあったりして。

前作に思い入れがあればあるほど腹立ってくる理由は、こういうところでも如実に表われている。

だから「こんなんだったら1作目で潔く終わりにしてほしかった」と思った人たちの気持ちはお察しします。

これはちょうど『ロボコップ2』みたいな映画なんだよね。

変態監督ポール・ヴァーホーヴェンが撮ったヴァイオレンスSFアクションの傑作『ロボコップ』(リメイク版が近々公開されますが)が大好きな人ほど、2作目には心底ガッカリした、みたいな。

3作目でロボコップが空飛んだ時には、みんなあきらめの吐息を漏らしたけど^_^;

一番の残念ポイントは、前作のヒット・ガールの強襲場面「うちに帰ろう」みたいに、音楽とアクションのコラボで思わずアガったりグッと胸に迫る場面がまったくといっていいほどなかったこと。

せいぜいクライマックスの前にキック・アスの呼びかけで自称・ヒーローたちが集結する場面ぐらいだろうか。あとはふたりが別れるラストね。

劇中で新たに使われた曲にこれといって記憶に残るものがなかった、というのもある。

前作は「泣けた」のに、今回はそういう場面がなかった。

前作の名シーン【ネタバレ注意】

『キック・アス』1作目は奇跡的な1本だったんだな、とあらためて思い知らされましたよ。そして多分あの奇跡は二度と起きない。

でもTwitterでどなたかが仰ってたように、「ヒーローになるよりもヒーローであり続ける方が難しい」んだろうな。

トップアスリートのごとく。

不可能とわかってはいても、それでも再び起こる奇跡を信じて作品を作り続ける。

それはそれで素晴らしいことなんじゃないでしょうか。

観客もまた、どこかでそれを望んでいる。だからこうやって劇場まで足を運んで続篇を観るのです。

原作者によれば原作コミックは3部作になるそうだが、映画版の方はこの2作目で完結している。

マザー・ファッカーとの戦いに決着がつき(エンドクレジットのあとにオマケ映像があるけど)、ヒーロー集団ジャスティス・フォーエヴァーは解散。

誰もが日常生活の中でヒーローになれる。

1作目でキック・アスが呈した「大いなる力がなければ責任は伴わないのか?」という疑問は、ここにその答えが出された。

非現実的でファンタスティックな殺戮天使ヒット・ガールは、ファーストキスをデイヴに捧げて町を去っていく。

もう彼女の助けは必要なくなったデイヴは、新しいコスチュームを考えながら今日も体を鍛えている…。

おしまい。

作品についてはいろいろ文句を言ってきたし、もしもこれで終わりならちょっと寂しすぎるけど(テレビドラマでやってくれないかな)、俺たちはいつだって君が戻ってくるのを待ってるぜ。

ヒット・ガール フォーエヴァー!!!