『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 超人戦隊再集合 (original) (raw)

ジョス・ウェドン監督、ロバート・ダウニー・Jr.クリス・エヴァンススカーレット・ヨハンソンマーク・ラファロクリス・ヘムズワースジェレミー・レナーエリザベス・オルセンアーロン・テイラー=ジョンソンコビー・スマルダーズトーマス・クレッチマンポール・ベタニージェームズ・スペイダーサミュエル・L・ジャクソン出演の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』。

アベンジャーズの面々はソコヴィアにある施設から「ロキの杖」を奪還する。キャプテン・アメリカの宿敵「ヒドラ」の残党バロン・フォン・ストラッカーらが行なった人体実験で強化人間になった双子のワンダとピエトロは、アベンジャーズを翻弄し姿を消す。ワンダの特殊能力によって不吉な幻覚を見て危機感を募らせたトニー・スタークは、「ロキの杖」に収められた石から人類を守る人工知能「ウルトロン」を開発する。しかしウルトロンは自我に目覚めて、さらなる進化のために人類の抹殺を計画し始める。

2012年公開の『アベンジャーズ』の続篇。

まず、僕は原作コミックスの方はまったく読んでいないし興味もないです。以下は、映画について述べています。

なので、原作を持ち出してきてアメコミヲタクの人にあれこれ講釈垂れられても困るんで、ご遠慮ください。

ところで、前作の僕の感想を読んでくださったかたからは「お前、あんだけケナしまくってたじゃねーか」とお叱りを受けるかもしれません。しかも監督の悪口も散々言ってたし。

ハイ、前作はボロクソに書きました。居直りになっちゃいますが、最初に観た時(劇場で2回鑑賞)の自分の感想が間違っていたとは今でも思っていません。

今回の第2弾もまた、前作鑑賞直後の自分だったら酷評しまくっていたと思います。

1作目の時には公開初日に勇んで観にいって、本当にガッカリしたものですから。

自分がいかに『アベンジャーズ』に期待していたのか痛感した。

アメコミヒーロー物はもう観るのやめようかとさえ思った。

もっとも世間では前作は評判は良かったし今回の続篇同様に大ヒットしているので、僕のような不満を口にする人間はごく少数なのかもしれません。

つまり、他の多くの人たちが観たいアメコミヒーロー映画と僕のそれとがまったく違ってた、ってことだな。

今まで何度も言及してきたので軽くしか触れませんが、僕の一番好きなアメコミヒーロー映画は1981年公開の『スーパーマンII』です。

あの映画の最新版が観たかった。

だけどそれは叶わないのだと徐々に感じ始めました。

その翌年に観た『マン・オブ・スティール』でそれは確信に変わった。

自分が望むようなスーパーヒーロー映画にはこの先もけっして巡り逢えないのだ、と。

だったら観なければいいだけの話で、ぶつくさと文句言いながら映画館に足を運ぶのは無駄だしファンの人たちからすれば迷惑な行為ですらあるかもしれない。

だけどやっぱり僕はスーパーヒーローが活躍するような映画からは卒業できなくて、その後も『キャプテン・アメリカ/ウィンター・ソルジャー』や『アイアンマン3』『アメイジング・スパイダーマン2』『

X-MEN:フューチャー&パスト』『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』などを劇場で観たのです(「マイティ・ソー」の続篇はパスしてしまったが)。相変わらず文句を言いながら。

結局好きなんじゃねぇか^_^;

『アベンジャーズ』も2回目に

IMAXで観た時には、すでに内容を知ってるから派手なアクションシーンを単純に楽しみましたし。

よくこの手の映画を擁護する時に使われる「期待し過ぎなければ楽しめる」「難しいことは考えずに素直に楽しんでください」といった表現。

ここでいう「素直に」というのは、ようするに「疑問を持つな」「文句を言うな」ってこと。

事実、期待するのをやめたら憑き物がおちたように腹は立たなくなりました。

でもその代わり、期待通り、あるいは期待以上のものに出会う喜びや驚きもないんだよね(『アメスパ2』は結構よかったけど、またリブートするってどういうこと?3作目作らないの?)。

せいぜい、あのシーンはカッコ良かった、とか思う程度で。

どうも他の皆さんたちのように熱狂できないのだ。

先日観た『マッドマックス 怒りのデス・ロード』はまさしく期待以上のものに出会えた喜びを感じさせてくれる映画だったから、けっして僕の感覚が鈍ったんじゃないと思う。

残念ながらスーパーヒーロー映画にはもはやそういう興奮を望めないようだ。

たとえば僕が強く不満を感じるのが、これらのスーパーヒーロー物の多くが「続き物」で、1本の映画としては実に中途半端なこと。

前作や関連作品を観ていないとよくわからないことがかなりあったり(観てても忘れてる)、ストーリーもゴチャゴチャしていて(だからよく思い出せない)、しかもちゃんと完結しない。また次回に続く、という奴。

きりがない。

週刊連載漫画みたいなんだよね。「もうちっとだけ続くんじゃ」とか言いながらその後も延々続くというパターン。かと思えば、先ほどの「アメイジング・スパイダーマン」みたいにちゃんと物語を描ききらずにすぐリブートしちゃう、みたいな。

1本1本が単独の映画作品として成立していないのだ。祭りの終わりが延々引き延ばされる。

そんな映画は、以前は「スターウォーズ」シリーズや「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズのようなわずかな例外を除けばほとんどなかった(具体的には「ロード・オブ・ザ・リング」や「ハリポタ」以降に増加)。

ここ十数年の間に映画のシリーズ物のあり方自体が変容しているわけで、そういうタイプの漫画やゲーム、連続TVドラマなんかに慣れた人たちには映画で同じことやられても抵抗がないのかもしれないけれど、僕は非常に不満で。

マーヴェルが推し進めている、それぞれ世界観も異なる別個の作品たちがクロスオーヴァーする、というのは本来はとてもエキサイティングな試みのはずなんだけど、いたずらに設定とか人物関係が煩雑になって結果的に「お話がよくわからない」本末転倒なことになっている。

今回の『エイジ・オブ・ウルトロン』ももちろん例外ではなくて、前作や登場キャラそれぞれの単独主演作品を観ていないとストーリーを把握しづらいし、さらに次回作もあります。

僕の隣で観ていたカップルのカレシの方がカノジョに、キャプテン・アメリカが人体実験について語っている場面で「自分のこと言ってる」と説明していて、ちょっとほのぼのしたけど。

カレシの方がこの映画を観たくて、カノジョがそれに付き合ったご様子。

まぁ、カップルで観にいってどちらも満足できたなら結構なことですが。

あと、この「アベンジャーズ」シリーズの特徴として、悪役のボスが倒される場面がちゃんと描かれない、ってのがある。

前作のロキはアスガルドに送還されただけだし、今回のウルトロンも最後に死ぬ場面は省略されている。

僕は悪玉が退治されないスーパーヒーロー物はカタルシスを得られないので不完全燃焼を起こしてしまうんですよね。

最後に敵が思いっきり主人公たちに倒されるから気持ちイイのに。そこにこそスーパーヒーロー映画を観る快感があると思うんだけどな。

だから、この「祭り」にノれない奴は最初から観るな、ってことですね。

『マッドマックス』の祭りとはかなり違う、「いちげんさんおことわり」シリーズ。

で、僕はこの一連のアメコミヒーロー物に対しては「怒り」の感情をシャットアウトすることにしたので、『アベンジャーズ』1作目の時のような腹立たしさやストレスを感じることもなく、映画館のシートに埋もれながらスクリーンの中で繰り広げられる超人たちの宴を眺めていました。

ストーリーがよくわからなくても気にしない。登場キャラの行動が腑に落ちなくても気にしない。

彼らが派手にぶっ飛ばしあって町が破壊されていく映像をただ見つめていればいい。

だったら

ネタバレなんてどうでもいいような気もするんですが、心配なかたは以降はご注意ください。

ストーリーについて細かく追っていく必要をあまり感じないので、なんとなく思いついたことなどをとりとめもなく書いていきます。

感想を書こうとするとどうしてもほとんどが疑問や不満になってしまうんですが、それでもこのシリーズの魅力の一つを挙げると、それはリアリスティックな

VFX映像。

ザック・スナイダーがお得意の『300 <スリーハンドレッド>』式のグラフィック・ノヴェル風に灰色がかった絵画的なイメージで作り上げた『マン・オブ・スティール』は、バックの景色がCG丸出しの書き割りみたいな映像で僕は非常に不満があったんだけど(『エンジェル ウォーズ』では効果的だったけど、スーパーヒーロー物には合わないと思う)、この「アベンジャーズ」シリーズやマーヴェルの実写映画化作品は基本的に実写を見ているような写実的な映像に仕上げられていて、スーパーヒーローたちの飛翔や戦い、町が崩壊していく様が実に丁寧に描かれている。

それだけでも見る価値はある。

そして、今回予告篇でも使われているヒドラのアジトを急襲する冒頭のシーンは100点満点。

アベンジャーズの連係プレーが目に心地良い。

個人的にはあそこがこの映画のハイライト、ほんとのクライマックスだったと思っています。


ハルク、いい顔してるなぁw どーでもいいけど、ハルクの顔ってオリヴァー・ストーンに似てるよな。

ハルクバスターのくだりとか、ほんともう、ストーリー上必然性があるからとかじゃなくて、前作でハルクはソーとボコり合ったから今回はアイアンマンとやらせたい、ってだけだけど(今回はトニーとハルクことブルース・バナーがペアだから、というのもあるが)、豪快で楽しいからオッケー。


頭とったらアイアンマンが出てくるマトリョーシカ方式のハルクバスター

僕が1作目でお気に入りだったのは、エンドクレジットのあとにあった“おまけシーン”。

なんか戦いのあとに精根尽き果てた感じのメンバーたちがコスチューム着たまま散らかった店内で黙々とシャワルマ(ドネルケバブ)食ってる様子が可笑しくて、個人的にはこういうちょっと間が抜けた雰囲気のヒーロー物が観たかったんだよなぁ、って思った。

だってこの面子見たら、アメコミ版「奇面組」みたいじゃん。「変態」の集団w

今回の続篇では本篇のパーティシーンがそれに似ていてちょっとした息抜きになってるんだけど、酒飲んで気持ちよくなってみんなでソーのハンマーを持ち上げられるかどうか競ったり(余裕だったソーがキャップが手にするとハンマーがちょっと動くところで一瞬不安げな表情になるのがいいw)、バーのカウンターでキャップがハルクにナターシャについて「彼女の手は知ってる」とドヤ顔でアドヴァイスしたり(お前は童貞だろ!)、実は後半の戦いよりもこういうシーンの方が印象に残っている。

ウォーマシン(ドン・チードル)が最高につまらないジョークを繰り返し、ファルコン(アンソニー・マッキー)も顔を出す。

アイアンマンの彼女ペッパー(グウィネス・パルトロウ)やハンマー兄貴の彼女ジェーン(ナタリー・ポートマン)は忙しいので欠席。

そういえば、この「アベンジャーズ」シリーズにはナタリー・ポートマンは一度も顔を見せてないけど、契約上の問題かなんかだろうか。

僕はアベンジャーズのメンバーの中では、ソーが好きなんですよね(単体作品としてはアイアンマンやキャップが好きだが)。

ぶっとい腕に低い声、「俺はマイティ(万能)だ」と平然と言ってのける天真爛漫な性格(ゆえにツッコミどころも満載だが)、シンプルこの上ないキャラで。

原作者のスタン・リーおじいちゃんはそのハンマー兄貴に酒を注がせて「エクセルシオ~ル(更なる高みへ)!」とご満悦で退場。

スーパーヒーローたちのお父さん、どうぞ長生きしてくださいね。

今回、音楽はテーマ曲を前作と同様アラン・シルヴェストリ、そしてさらにダニー・エルフマンブライアン・タイラーが曲を提供。

贅沢な布陣だなぁ。

「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのゴラムやキング・コング、『猿の惑星』のシーザーやゴジラなど、今やモーションキャプチャー俳優のレジェンドとなったアンディ・サーキス(しかもスター・ウォーズの最新作にも出演!)が、ヴィブラニウムが産出されるワカンダでウルトロンに片腕を奪われてしまうユリシーズ・クロウを演じている。

素顔の彼を久しぶりに見た気がする。

アメコミヒーロー物でも作品によっては『ウィンター・ソルジャー』のように現実の政治の問題を反映させたものや、『アメスパ2』のように悪役が現実の世界の犯罪者たちの心理を連想させたりするような、単に

VFXだけを売りにしたものだけではないところに面白味を感じたりもするんだけど、「アベンジャーズ」シリーズというのはお馴染みのスーパーヒーローたちが一堂に会する「大甲子園」みたいな作品なので、そのアンサンブルをこそ楽しむシリーズでそれ以上の内容だとかテーマなんかは特に何もなくて、とりあえずみんなが一丸となって戦う理由がありさえすればいいという、かなりアバウトなものなんですよね。

ただ、そのわりにはストーリーが入り組んでて、観終わったあとも結構頭の中ゴチャゴチャしてました。

だって、人工知能が反乱を起こした、というシンプルこの上ない話をなんでこんなに複雑怪奇なものにする必要があるのだろう。

結局、さらなる続篇やスピンオフへの伏線…というか繋ぎのためとか、とりあえず主要キャラ全員に見せ場を作ってまんべんなく活躍させるためにいろんなエピソードを引っぱってきて絡ませてあるものだから、必要以上にお話がわかりづらくなっている。

複雑、というよりも、やっぱりこれは長篇連載漫画を強引に1本にまとめた感が強くて、だから矢継ぎ早にいろんなことが起きてアベンジャーズは世界のあちこちに飛び回り、ウルトロンの人類殲滅計画を阻止しようとする。

…んだけど、終盤になんか赤い顔したリアル・アンパンマンみたいなマントの人が出てきてさらに観客を困惑させる。

ポール・ベタニーが演じるこのアンパン…「ヴィジョン」はいつのまにかアベンジャーズの味方みたいなことになって、最後も彼がウルトロンにとどめを刺す。

そのヴィジュアルはちょうど『ウォッチメン』の青いフルチン入道みたいで、申し訳ないんだけど「なんの冗談だ」と思った。

コミックスなら違和感ないかもしれないけど、実写で俳優があの顔で大真面目に芝居しているのを見ると、なんだかちょっと気の毒にさえなってくる。

デザイン画かなんか見た時点で断われなかったのか、ポール・ベタニー。

この新造超人「ヴィジョン」については台詞で何か説明があったけど、よく覚えていない。

トニーを補佐する人工知能であるジャーヴィスはウルトロンに「殺された」が、実は死んでなくてそのジャーヴィスからヴィジョンが作られた、みたいなことを言ってたような気が。

彼がウルトロンの進化系みたいな存在なんだろう。そう理解した。

彼もアベンジャーズの一員になった、ということでいいのかな?

しかし、こんなとんでもなく強いヒーローが出てきちゃったら、無敵なんじゃないの?

あのハンマー“ムジョルニア”はソーにしか持てない(前作ではハルクでも持てなかった)、というのがあのキャラのアイデンティティでもあったのに、その設定をぶち壊しちゃうようなチート・キャラの登場は反則じゃないですかね。

パーティシーンでのハンマー持ち上げ大会は、明らかにこれの伏線なわけだし。

僕はちょっとシラケちゃったんですが。

もう今後の戦いは指先一つで惑星が吹き飛んでしまうようなレヴェルになっていくような気が。

まぁ、次の相手は空飛ぶ椅子にふんぞり返ったテリー・ギリアムにクリソツな“あのおっさん”らしいですからな。

でも、『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』でも感じたけど、「ドラゴンボール」的な強さのインフレは映画をどんどん虚しいものにしていく。

超人たちのスゴさを実感するには、やはりどこかで生身の人間の脆さとの対比がないと。

「ドラゴンボール」同様、超人同士の延々続くシバき合いにはもはや現実との接点がない。だから観ていて虚しい。

僕は、ヴィジョンなんていうキャラは必要なかったんじゃないかと思うんです。

だってあんな「進化」した者が存在できるなら、いよいよ人類は必要なくなってしまうじゃないですか。

そうじゃなくて、やっぱり生身の人間がいなければ真の「進化」というのは成し得ないのだ、という結論になってこそ、アベンジャーズが守るべきものがいよいよハッキリしてくるわけで。

そのあたりの詰めがほんとに甘いなぁ、という印象でした。

最後にヴィジョンと瀕死のウルトロンが対峙してなんだか知ったようなことを言い合って終わる、ってのも(ウルトロンの「吐きそうなほどウブだな」という台詞はよかったが)、いかにも厨二っぽいというか、『ウォッチメン』のラストもそうだったけど、そうやって屁理屈こね合って人間とか世界の仕組みをわかったような気になってるような話って、本当の説得力はないんですよ。

ウブなのはウルトロンも変わらないんだよね。

屁理屈など一切こねないけど映画の中に語るべきすべてが描かれていた『怒りのデス・ロード』がいかに洗練されていたかあらためて実感する。

とはいえ、今回の敵ウルトロンは僕はわりと好きでした。

前作の敵はトム・ヒドルストン演じるロキだったけど、ロキは女性にも人気のある悪役キャラみたいですが、ハッキリ言って僕は好きじゃなくて。

すでに『マイティ・ソー』の1作目でも悪役として登場していたけど、ロキってジャイアンの隣で一緒になって威張ってるスネ夫みたいな奴じゃないですか。そんなに強くもない(強そうに見えない)のに大物ぶってるとことかイラつくわけです。

1作目にノれなかった理由の一つでもある。

逆に彼を愛してやまない人たちは、そういう尊大で隙のある悪の王子様キャラだからこそ愛着が湧くんだろうけど。

主要キャラの関係性に萌えたり、いろいろ妄想をたくましくすることで作品により没入できるんでしょうね。

僕はカッコ良くて強い悪役が見たいんですが。

今回のウルトロンは見るからに強そうだし、外見も人間とは異なるから一層“悪者”感がある。

人工知能である彼はメタリックな外見のわりに、意外と人間臭い。

誰かと会話している時の目の微妙な動きとか、じっと相手の話を聴いている様子がなんだかカワイイ。

皆さんはロキのことを「ロキたんロキたん」と愛でてるけど、僕はむしろ「ウルたんウルたん」と愛でたい。腹を立てると怒り顔になるし、表情も豊かで。

個人的にはかなりの萌えキャラだったんですが。

ウルトロンの声を演じているのはジェームズ・スペイダー。

ぼくの美しい人だから』や『スターゲイト』などの美青年がいつのまにか貫禄たっぷりの声で悪役を吹き替えるようになったんですね。

ただしこのウルトロン、強いのか弱いのかどうも判然としない。ってゆーか、実際に戦ってみるとそんなに強くない。しょっちゅうハルクにぶっ飛ばされてるし。

アベンジャーズに身体を破壊されてはまた別の身体を新調するという具合で、これほど「見かけ倒し」も甚だしい悪役もそういないかもしれない。

あと、最後の1人がヴィジョンに倒されるわけだけど、なんで根絶やしにされるまで律儀に超人たちと戦ったんだろうね。

彼は理屈の上ではいくらでも自分を複製できるはずで、だったらどっかに隠れててまた自分を増やせばよかったじゃん。

それにキャプテン・アメリカの盾を作った超硬化金属ヴィブラニウムを手に入れたんなら、それで自分たちの身体を作ればいいのに。

人類滅亡を目論んでるわりには一箇所で超人戦隊と『ダークナイト ライジング』のベインばりに乱闘とか、やってることが田舎のヤンキーと同レヴェル。

頭の方も成長途中でまだ子どもだったのかしら。

萌えキャラといえば、このシリーズやマーヴェル・コミックスのスーパーヒーロー映画のファンの人たちに対して心底スゲェな、と思うのは、彼らがそれぞれの作品から登場キャラたちの心情や関係までをも汲み取り、あれこれと忖度(そんたく)して萌えたり共感したりしていること。

たとえばこのかたの感想など(無断でリンク張らせていただくので不都合があれば削除いたします)。

『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』 すきなものだけでいいです

…映画やキャラクターたちへの愛が溢れてるなぁ。

俺にはこの映画からこんなふうにキャラクターたちの想いを想像したり関係性を推し量ることなんかできない。

ほんと、スゲェとしか言い様がない。

これぐらいの上級者でなければこのシリーズは真に楽しめないのだろうか。

終盤の戦いはほとんど1作目のそれと同じ展開で、宇宙人だろうとヒドラだろうとウルトロン軍団だろうと、ボスが1人にスターウォーズのストームトルーパーやショッカーの戦闘員みたいな雑魚キャラがワラワラ出てきて大混戦…というのはいい加減飽きてくる。

クイックシルバーの死も、姉のスカーレット・ウィッチの能力を発動させるためのきっかけでしかなくて、なんだかなぁ、と。

『ウィンター・ソルジャー』のエンドクレジットで勿体つけて登場した悪役ストラッカーもさっさと殺されちゃうし、前作のエージェント・コールソンもそうだったけど、なんかほんとにキャラクターの使い捨てが激しい。

前半でホークアイがこれ見よがしに彼ら双子のことをガキ扱いしてたのが伏線ということなんだろうけど、とってつけた感じはどうしても否めない。

だってあんな高速で動ける奴なら(しかも量産型のウルトロンを素手で倒してたし)『

X-MEN』の時のようにほぼ無敵でしょうに。わざわざ弾に当たる必要ある?(;^_^A

ちなみに今回クイックシルバーを演じているのは『キック・アス』の主演だったアーロン・テイラー=ジョンソンだけど、『

X-MEN:フューチャー&パスト』ではやはり『キック・アス』で主人公の友人を演じていたエヴァン・ピーターズが同じ名前と特殊能力のキャラを演じていた。

高速小僧を演じるのはキック・アス出演者、というルールでもあるのかw

それから、双子を演じた二人は昨年の『GODZILLA ゴジラ』で主人公とその妻役でしたね。

『GODZILLA』でエリザベス・オルセン演じる主人公の妻は夫とイチャついてたり、緊急時にスマホを置きっぱにしてて電話が鳴ってるのに気づかなかったりと観ていてイラつかされたんだけど、今回の『エイジ・オブ・ウルトロン』でも最初はトニー・スタークを憎んでてウルトロンと手を組んでいたのに、途中で寝返ってホークアイから「外に出たら君もアベンジャーズだ」みたいなこと言われてヒーローチームの一員になっちゃってたりと、またしても「なんだかなぁ」なキャラ。

彼女もクイックシルバーもいかにも「ミュータント」って感じで、ほとんど

X-MENじゃねーか、と。そもそもX-MENのキャラですし。

まぁ「アベンジャーズ」の世界はなんでもありだから、そんなに違和感はないけど。

そして、さっきも書いたように“ヴィジョン”がスーパーマンばりにあまりにも万能なので、だったらコイツ一人いればアベンジャーズ必要ねぇじゃん、と思ってしまう。

もうヒーローチームの存在そのものが根底から否定されるというか。

次回作は2部作になる、というような話だけど、正直惑星や銀河規模の戦いにはまったく興味をそそられないので、もうちょっと地に足の着いたヒーローアクションをやってくれないかな。

前作ではブラック・ウィドウことナターシャとホークアイことクリント・バートンはこれからイイ仲になるのかと思ってたら、今回ホークアイには妻子がいることが判明。

おそらく彼の家族を出すことでアベンジャーズが守るべきものを劇中でハッキリ見せる狙いもあったんだろうけど、殺し屋家業をやってた男が普通に所帯持ちって、なんかピンとこない。

家族狙われ放題じゃないか。

そりゃ、アイアンマンやソーのカノジョたちだって同じ立場ではあるけれど。

しかもナターシャは普通にホークアイの妻や娘と顔馴染みだったりして、互いに暗い過去を持つ二人にしてはずいぶんと穏やかな関係だなぁ、と。

ナターシャの過去も描かれるけど、彼女の母親役で「ビフォア」シリーズのジュリー・デルピーがほんのワンシーンだけ出ていて、あ、この人こういう映画にも出るんだ、と思った。

彼女が出演してた『ティコ・ムーン』とか昔観たっけ。懐かしいな。

…なんかもう、とりとめがなさ過ぎて映画の感想というよりもただの独り言の羅列になってしまったのでそろそろ終わりにしようと思いますが、最後に一つ。

これはこの映画を絶賛している人たちでも苦笑しながら認めるところだと思うけど、この映画でウルトロンが誕生したのも彼が暴走したのもすべてはアイアンマンことトニー・スタークのせいで(あと手伝ったハルク、お前も同罪だ)、そのことを他のメンバーたちから責められたトニーはバカみたいに笑い声をあげて、お前たちにはわからない、と逆ギレする。

「ウルトロンは作ったが、人類を抹殺するようにプログラムしたわけじゃない」と。あいつが勝手に育ってやったことだから俺のせいじゃないという理屈。

なんかここで彼の責任はうやむやにされてしまうけど、トニーが言ってることはまったく筋が通っていないので、真面目に観てたら「コイツ頭どうかしてんだろ」と思ってしまう。

スカーレット・ウィッチことワンダとクイックシルバーことピエトロの双子の姉弟はかつてトニーが作った兵器によって両親を殺されて、それ以来彼を恨み続けている。

そのために彼らはウルトロンと手を組もうとさえする。

これって、アイアンマン=アメリカってことでしょ?

アベンジャーズの“A”はアメリカの“A”だ。

「正義」や「世界の平和」の名の下に作り出したものが結果的にテロ組織という平和を脅かす存在となる。滑稽で最凶最悪のマッチポンプ。

アメコミヒーローたちの戦いを借りて、これはそういう現実の世界を描いているんでしょう。

この映画が「壮大な自作自演」と揶揄される所以。

前作に続いてまたしてもわざとらしく「アベンジャーズの仲間割れ」が描かれるのも芸がなさ過ぎるけど、現実の世界でも各国はなかなか足並みがそろいませんしね。

トニー・スターク=アイアンマンが抱える闇、というのは、前作で宇宙人の侵略によって死にそうになったことなどではなく、かつて軍需産業で大量に売りさばいた武器(それで得た莫大な金で彼はアイアンマン・スーツを作ったわけで)によって多くの人々を死に至らしめ、今もなお憎しみの連鎖を生み出している、自分はその張本人なのだ、という事実だ。

『ウィンター・ソルジャー』の内容を思い起こせば、これがただのこじつけなんかじゃないことはわかるはず。

作り手が意図的にこういう作劇を行なったのでなければ、どう考えたって筋立てがおかしいから。

以上のことを踏まえると、いよいよこのシリーズを諸手をあげて支持できなくなる。

だって観客は地球規模の茶番に付き合わされてるわけだから。

自分たちで作り出した「敵」を倒して、「世界を救った」と言われてもね。

この映画の中で、トニー・スタークは完全にマッド・サイエンティストの役割を果たしている。

今一度、スーパーヒーローたちは「自分たちはなんのために戦うのか」よくよく考えてみる必要があるだろう。

新作が公開されると気になるから観てしまう。でも満足はできない。その繰り返し。

トニーの「まるで誰かの手の上で踊らされているようだ」という台詞。

これは映画の作り手たちによって日夜コマのように使われ戦わされて殺されて、都合によっては生き返り、次々と新たに生み出される強敵と永遠に戦わされ続ける、彼らスーパーヒーローたちのことであると同時に、彼らに延々付き合い続ける僕やあなたのような観客のことでもあるんじゃないのか。

僕はそろそろ彼らスーパーヒーローに休息を与えてやってもいいんじゃないかと思うんですけどね。そして僕たち観客にも。

シネコンのスクリーンからスーパーヒーローたちが完全に姿を消す、そんな光景を目にできたら僕はかえってちょっとホッとするかもしれない。

スーパーヒーローたちが消える日。

世界はどんな姿をしているだろう。

そして人々が再び本当に心から彼らを求めた時に、また帰ってきてほしい。

そんなことを考えました。

ちなみに、監督のジョス・ウェドンは2作目の本作品をもって降板するんだそうで。

詳しいことは知らないけれど、シリーズが人気のあるうちに手を引く、というのはうまいな、と思います。

最初に書いたように大満足というわけにはいかなかったのだけれど、それでもさすがにもう何年も関連作品にお付き合いしているとお馴染みのキャラクターたちにも愛着が湧いてきて、映画の中の彼らを見ると久しぶりに会う友人のような気持ちになってくる。

そういうタイプの映画があってもいいかな、と今は思っています。いつか未来に今を振り返って、かつて何年も観続けた長寿シリーズとしてこれはこれでいい想い出になるかもしれません。

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