『羅生門・鼻(新潮社)』 芥川龍之介 (original) (raw)

内容(amazonより引用)

京の都が、天災や飢饉でさびれすさんでいた頃。荒れはてた羅生門に運びこまれた死人の髪の毛を、一本一本とひきぬいている老婆を目撃した男が、生きのびる道を見つける『羅生門』。
あごの下までぶらさがる、見苦しいほど立派な鼻をもつ僧侶が、何とか短くしようと悪戦苦闘する姿をユーモラスに描いて夏目漱石に絶賛された『鼻』。
ほかに『芋粥』『好色』など、“王朝もの"全8編を収録する。

羅生門・鼻 (新潮文庫)

感想(ネタバレなし)

文春から出ている短編集が傑作揃いだったので、芥川は定期的に読んでいこうと思い立ち、まずはと新潮の本書に手を伸ばした。

羅生門」「鼻」「芋粥」は既に読んでいるし、その人間描写の精緻さについて僕みたいな門外漢が語るのも野暮なので省略するとして、他の作品も素晴らしい出来だった。

前述の三作がお堅い印象なのに対し、他の五作は結構エンタメ重視なので娯楽的に読める。

袈裟と盛遠」は痴情のもつれが招く悲劇を描いた一篇で、男女の心の機微が生々しく写されているのもさることながら、読み進めると構図が反転する良質なミステリとしても読めてしまうから凄い。
幕切れもこれ以上ない程美しい。傑作。

邪宗門」は若殿様の食えない性格を楽しむ、キャラ小説の趣きがある。
邪宗の法師が無双し、誰も太刀打ちできなくなったところに......!とめちゃくちゃ気になるところで”未完”の文字が来て目を疑った。
続きはどうなるんだよォ!!!

他の作品も描写の細かさや構成の巧さが光る作品で良かった。
こんなこと言うのも阿保の極みだが、本当に小説書くの上手いなぁこの人。

評価:なし(文学作品のため)

2024/6/31 読了