沈黙 遠藤周作 (original) (raw)

今回紹介するのは、遠藤周作の沈黙です。

島原天草一揆後の日本が舞台で、日本に残されたキリシタンを救いに行こうとポルトガルから渡航する司祭が主人公の物語です。

ある程度の時代背景を理解している私たち日本人からすると、どうやったってこの司祭の結末がよいものではないことは想像に難くないのですが、キリスト教の教義と主人公が直面する現実に揺れ動く心情の描写が見事でとても読みごたえがあります。

また、信仰の話であるにもかかわらず、とても読みやすいので、この書籍を通して信仰とは何なのか?ということや、教義すらない神道を信仰する日本人の極めて異質な特性(他の特定の宗教が根付かない)を考える良いきっかけになると思います。

決して特定の宗教を信仰しているわけでもない私が、このように信仰について考える理由といたしましては、単純に面白いからというのもありますが、現代社会の人々は思考能力が低下していて、まともな価値判断基準を持ち合わせている人が少ないように思えるからです。「~が言ってたから」で物事を判断するのも結構ですが、全てを他人の判断に委ねた何かを私は人間とは思えないのです。そのようなものよりは、大昔の賢者の教えをそのまま実践している方が、玉石混交の現代の陳腐な意見を鵜呑みにするよりもましだと思えるのです。

沈黙(新潮文庫)