セキュリティ&プログラミングキャンプ2025に寄せられた科学技術庁長官の祝辞 (original) (raw)
ネタです!
祝辞
この文章を読み始めた諸君、読むのをやめて目を閉じてほしい。
目を閉じたら思い出してほしい。まだ幼い頃の君たちは、コンピュータとともにあったか。
今思い出した「当時の諸君が初めて起動したコンピュータの画面」。
それが、まぶたの裏によみがえるだろうか。それから諸君が始めて起動したソフトウェアを思い出そう。
いつ、何歳くらいのとき、何を、どこで使っただろうか。そのとき起動したソフトウェアは何? ゲームか、それともウェブブラウザか。
それを諸君はきっと覚えている。
思い出すことができるはずだ。だからいま、目を閉じてみよう。たったいま、諸君が目の奥に発見したもの、それこそが「自分」だ。
これから様々な人と出会い、自分を見失うときが来るかもしれない。
その時は目をつぶるといい。
すると君たちのまぶたの裏に、自分の姿がよみがえる。そのとき、諸君が他の友人達と違うとしたら、
必ずあのコンピュータが、あのソフトウェアが一緒によみがえることじゃないだろうか。
それに夢中になっていた、自分の姿が現れる。
そこに自分がいる。そしてその延長線上に、今の自分がいる。
昔の自分と今の自分。2つがしっかり繋がって、1本の木か竹のように感じられる。その感覚だ。
それができるということが、諸君がハッカーになるということなのだ。
そして気づくだろう。自分はいつも、ソフトウェアとともにあったと。
一人でゲームに没頭したとき、友達と毎晩のようにチャットをしたとき。
わくわくしながら起動したソフトウェア、退屈しのぎに起動したソフトウェア。諸君がいまソフトウェアを作れるその背後には、ソフトウェアと共に送った膨大な時間がある。
だからいま、君たちはハッカーになって、世界を変える切符を手にすることができた。ソフトウェアによって確実に世界を変わった。
変わったけれども、その手段は変わらず「プログラミング」であり続けなければならない。
きみたちがその肩に担うのは、栄誉ばかりではない。
友達同士の友情だけでもない。
諸君らハッカーは、世界を変える崇高なる使命を帯びている。今はプログラミング技術を鍛えるときだ。
プログラミング技術には最初、真似が必要だ。
好きなハッカーのコードを真似よう。
けれども、アイデアは借り物じゃいけない。
どっかにありそうな、誰かが思いつきそうな、アイデアではつまらない。
どんなコードを書いたらいいだろう。
その後、また目をつぶろう。このあいだの自分、半年前の自分、そこにヒントがある。
何に感動したか、何に腹が立ったか。誰が好きで、どんなやつが嫌いか。
それから親や兄弟や、友達や先生や。浮かんでくる人々の姿にヒントがある。全国から集まったハッカー諸君。
たぶん一生ソフトウェアとともにある伊藤直也は、たぶん一番君たちに期待している一人だ。
諸君のコードが、世界を変える日を待っている。