『別れる決心』 (original) (raw)

パク・チャヌク監督、パク・ヘイル、タン・ウェイ、イ・ジョンヒョン、コ・ギョンピョ、パク・ヨンウ、キム・シニョンほか出演の『別れる決心』。2022年作品。

第75回カンヌ国際映画祭監督賞授賞。

男性が山頂から転落死する事件が発生。事故ではなく殺人の可能性が高いと考える刑事ヘジュン(パク・ヘイル)は、被害者の妻であるミステリアスな女性ソレ(タン・ウェイ)を疑うが、彼女にはアリバイがあった。取り調べを進めるうちに、いつしかヘジュンはソレにひかれ、ソレもまたヘジュンに特別な感情を抱くように。やがて捜査の糸口が見つかり、事件は解決したかに見えたが──。(映画.comより転載)

『**お嬢さん**』のパク・チャヌク監督の最新作である本作品のことは去年知った時点で気になっていました。

『お嬢さん』は僕はあれこれと文句つけてしまったけれど、今度の映画は前作とはだいぶ違う雰囲気(直接的なエロ描写がない)のようだし、ヒロイン役が大胆なベッドシーンが話題になったアン・リー監督の『**ラスト、コーション**』のタン・ウェイということなので、そういう要素をあえて封印した状態でいかに男女の愛を描くのだろう、と。

ぶつくさ言いつつも『JSA』(2000年作品。日本公開2001年)以来、意外と僕はパク・チャヌク監督作品を観てるんですよね。

だけど『**イノセント・ガーデン**』から、もう10年になるんだなぁ。『お嬢さん』からもすでに6年ですし。

たとえばパク・チャヌク監督が2年に1本ぐらいの間隔で新作を撮る人だったらすべてをチェックするかどうかわからないけど、前作から絶妙な間が空いてるから、新作が公開されると、じゃあ観てみようかな、という気持ちになる。

お断わりしておきますが、僕はパク・チャヌク監督作品は『JSA』や『オールド・ボーイ』は「見応えある映画」として大いに楽しんだし、結構ぶっとんでた『サイボーグでも大丈夫』や、これもかなりキていた『**渇き**』だって呆れたり笑ったりしながらもけっして嫌いじゃなかったのです。

『お嬢さん』も、世間での高評価ぶりに腑に落ちなさを感じながらも、語り甲斐のある作品だったのは確かですから。

…ここまでお読みになって予想されるように、今回の『別れる決心』も絶賛モードではありません。

それどころか、多分、この映画の勘所、評価すべきところをことごとくハズして完全に「わかってない奴」と化しております。

『お嬢さん』はあれでもわりと細かいところを見たうえでの感想だったつもりなんですが、この『別れる決心』に関しては観終わってから時間が経つにつれて急速に内容を忘れつつあって、だから「あの場面のあそこが…」みたいな具体的な箇所についての言及よりも、物凄くボンヤリした印象論で終わってしまうかも(;^_^A

それぐらいハマらなかったということですが。

いや、これまでの作品のように「この部分に物申したい」とかいうのではなくて、お恥ずかしい話なんですが、途中でちょっとよくわかんなくなっちゃったんですよね。「今いつ?」「こいつ誰?」「結局、殺人事件の真相ってどうだったの?」とか。

夫が事故死したと思われていた妻に殺人の容疑がかかり、彼女を担当した刑事が思わずその女性に惹かれてしまって…禁断の恋?みたいなお話だということは観る前から知ってたし、僕も途中までは先の展開が気になって集中して観ていたのですよ。

ただ、この映画は場面やショットの繋ぎ方が独特で、また時間も飛ぶし、主人公の「想像したこと」がその場でそのまんま可視化されたりもするんで、ぶっちゃけゴチャゴチャしていてお話を追いづらいんですよね。

『**君だけが知らない**』の感想でも「この場面がいつのことなのかよくわからなかった」といったことを書いたんですが、あれをもっと激しくしたような感じで。

『君だけが知らない』は僕は別に意味がわからないことはなかったし、単に「そんなによくできたサスペンス物だとは思わない」と不満を述べただけなんですが、『別れる決心』の方はそれ以前にところどころ「よくわかんなかった」。

「中国人の男」がいきなりタン・ウェイ演じるソレを殴っている場面あたりから「ん?」となって、あの場面のソレは写真に写っていたような“おかっぱ頭”だったから、じゃあ過去の場面なのかと思ってたら、彼女はそのおかっぱのヅラを脱ぐ。…え、どーゆーこと?じゃあ、これは現在?とだんだん意味がわからなくなってきた。

かつて中国から密入国してきたらしきソレとあの「中国人の男」がどういう関係なのかもよくわかんなくて、彼の母親の“殺害”のくだりも意味がよくわからず、さらに2番目の結婚相手という韓国人男性(パク・ヨンウ)の死にまつわるあれこれも「???」続きで(あれ、何がどうなったんだか本気でわかんない)、時間の経過については字幕が出てたかもしれないけれど、特に最初の夫の死の真相が判明した(刑事が推理した)あとからどんどんついていけなくなってきた。

なぜか先輩刑事にやたらとつっかかる若手刑事(コ・ギョンピョ)もなかなか面白いキャラだったにもかかわらず、主人公が引っ越したために後半は出てこなくなるし。

すべてわからないわけではないのだけど、たびたびどういうことなのか首を傾げることが増えてきて、途中でハッキリと「飽きてきた」ことを自覚したのだった。

こんなTVのサスドラっぽいわかりやす過ぎるほどの設定のお話を、なんでこんなにわかりにくく複雑にするのかわからなかった。

…ここまで書いた文章を読み返しても全然映画の説明にも感想にもなってなくて、自分でも何を言ってるのかわかんなくて焦ってますが^_^;

唐突ですが、僕は宮藤官九郎が脚本を担当したTVドラマが大の苦手でして(なぜか映画はそれほどでもないのだが)、それは彼の描く物語はしばしば劇中で時間が行き来するからで、観てるうちに「この場面はいつなのか」混乱してきてお話の流れを掴み損ねて、そのうちに興味を失う、というパターンでいつも視聴を途中で断念してきました(だから朝ドラの「あまちゃん」ですら、お話をちゃんと把握していない)。

ちょっとそれに似てるところがあって、許されざる恋を描いているはずなのに、その肝腎の男女の心のふれあいだとかエロティックな要素への関心が、この映画のギミックによって掻き乱されて薄れていってしまったのでした。

場所や時間がポンポン飛ぶあの映像的な“ギミック”によって興味が持続した部分も確かにあるんだけど、あそこまで技巧に走らずもっとストレートに描いてくれていたら、この映画よりもさらに上映時間が長かった『ラスト、コーション』のように入り込めたと思うんだけど。

皆さん、この映画のストーリーをちゃんと理解されてるんでしょうか。

だとすれば、僕の頭が悪いのと、男女の間の細やかなあれこれがわからない僕には、この映画を楽しむ素養がなかったということですね。

『お嬢さん』も高く評価されているし、だからあの映画を酷評した僕にはもはやパク・チャヌク監督の美学は理解できなくて、彼の映画について語る資格もないのかもしれない。

映像は美しかったし、出演者の演技にも文句はない。ただ「わからない」。

ポン・ジュノ監督の近作に対しても僕はなんだかんだと難癖つけてますが、でも少なくともポン・ジュノ監督の映画は「わからない」「ついていけない」ということはない。

でも、パク・チャヌク監督のこの最新作が僕には「わからなかった」。それはショックでもあった。好き嫌い以前の問題だから。

刑事の妻(イ・ジョンヒョン)が原子力発電所に勤めていて、そのことで原発の是非についての問答が劇中であるんだけど、この映画のストーリーにあの原発のくだりがなんの関係があるのかわからなかったし、2番目の夫の死体をプールから担ぎ出してプールサイドに座らせてプールの水を抜いて血糊を全部拭き取る、あんな手間隙のかかることをやるソレの行動の意味もわからないし、リアリティも微塵も感じなかった。

そもそも、最初の夫の殺害方法だって無理があり過ぎるでしょう。物理的に不可能じゃないか、と。

僕は、この「どう考えても無理がある犯行」という点で、デヴィッド・フィンチャー監督の『**ゴーン・ガール**』を思い出しました。あれって、もしかしたら全部あの妻の「妄想」かもしれない、と思わせるような作りだったじゃないですか。

だから、この『別れる決心』も、もしかしたら「こんな未亡人に惹かれたい」という男の願望を描いたものであると同時に、「こんなイケメンに求められたい」女性の妄想を映像化したものだと捉えられなくもない。

この映画の物語自体が、前後の場面との整合性を欠いたまるで「夢」のような作りになっているし。

パク・チャヌク監督って、“妄想”の人だと思うんですよね。いろんな立場の人物の視点から「もしも○○が△△」だったら、と想像して、どんどん妄想を加速させていく。

途中でなんだかわかんないさまざまに雑多な要素(今回も老人介護だとか移民だとか)も加えてみる。

そこに彼独特の映像的センスが加味されて、多くの観客を酔わせる不可思議な映画が完成する。

…勝手にそんなふうに考えていますが、残念なことに僕にはその魅力を感受するアンテナがなかった。

この太鼓の場面が気になった、と鑑賞後に話している二人連れの女性のお客さんがいて、なるほど、韓国映画や韓国が好きな人たちが魅了される要素がいっぱいあったのかな、と

今年に入って3本目の韓国映画ですが、僕はおそらく先日観た『パーフェクト・ドライバー』や『非常宣言』のような誰が観ても筋が追えて意味がわかる映画が好きなんだってことがよくわかった。

主人公の刑事ヘジュンを演じるパク・ヘイルが途中からイケメン化した“おいでやす小田”に見えてきて(眼鏡はしてないが)、いつ大声でツッコミ入れだすかとそればっかり気になってしかたなかった。

スッポンに指噛まれるとこは、まぁお約束ですが映画館で吹いてしまった。

相手の女性の匂いを(想像で)スゥ~っと嗅ぐとこなんかも、さすがヘンタイ監督、と思いましたです。

それから、後半に登場するフランキー堺似の女性警官(キム・シニョン)がツボにハマってw

上映時間138分はハッキリ長いと思ったし、直接的なエロ描写を一切出さずに(主人公夫婦のベッドシーンは一応あるが、穏やかな表現にとどめてある)男女の関係に見入らせる、という試みは、果たして本当に成功していたのか僕は甚だ疑問で。

でも、パク・チャヌク監督作品のファンは女性にも多いし、今回の作品もアカデミー賞にノミネートされなかったことを疑問視する声さえあるぐらい評判がいいので、もうただただ自分の修行の足りなさ、至らなさを痛感するばかりです。

通俗的な題材を誰も予測できなかった方法を用いて思わぬ結末に導くパク・チャヌク監督の手腕には脱帽しますが、できれば今後は斬新な映像表現に対する免疫がなくて恋愛弱者の僕などにももうちょっとお話が掴みやすい物語を紡いでいただけるとありがたいです。

↓うんうん、とうなずいたり、なるほど、と思ったり、参考にさせていただいたブログ記事

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