『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』 (original) (raw)

クリストファー・マッカリー監督、トム・クルーズ、ヘイリー・アトウェル、イーサイ・モラレス(ガブリエル)、ポム・クレメンティエフ、レベッカ・ファーガソン、サイモン・ペグ、ヴィング・レイムス、ヴァネッサ・カービー、フレデリック・シュミット(ゾラ)、シェー・ウィガム(「コミュニティ」捜査官・ブリッグス)、グレッグ・ターザン・デイヴィス(「コミュニティ」捜査官・ディガス)、ケイリー・エルウィス(アメリカ合衆国国家情報長官・デンリンジャー)、ヘンリー・ツェニー(キトリッジ)ほか出演の『ミッション:インポッシブル/デッドレコニング PART ONE』。

IMF(インポッシブル・ミッション・フォース)のイーサン・ハント(トム・クルーズ)は、独自に活動を始めた“それ”と呼ばれる情報兵器のAI(人工知能)にかかわる2つの鍵のうちの一つを入手したイルサ・ファウスト(レベッカ・ファーガソン)の危機を知らされ、彼女の救出に向かうが、世界の権力の構図を大きく変える力を有するその情報兵器をめぐってさまざまな勢力から追われることになる。

2018年の『**フォールアウト**』から5年ぶりの最新作。シリーズ7作目にして初の前後篇の第1弾。

監督は、2015年の『**ローグ・ネイション**』から3作連続でクリストファー・マッカリーが担当。

字幕翻訳は、モチのロンな戸田奈津子、なので?

今年の「夏休み映画」の大本命で、予告篇でも映し出されているトム・クルーズ自ら行なう崖からのバイクでのジャンプのスタントシーンのメイキング映像もすでに何ヵ月も前に公開されていて、実物大の機関車の落下シーンと合わせてその迫力に否が応でも期待が高まりました。

それにしても、去年の『**トップガン マーヴェリック**』に続いてトム・クルーズのアクション大作の新作を毎年観られるなんてなんとも贅沢ですよね。

『トップガン マーヴェリック』の2022年の公開はコロナ禍で延々遅れた結果だし、今回の『デッドレコニング PART ONE』もまたコロナ禍で撮影が中断したりして、ようやく完成したわけですが、劇場に足を運びたくなる映画を作り続けて奮闘しているトム・クルーズさんには頭が下がります。

さて、さっそくですが、以降はネタバレがありますので、これからご覧になる予定のかたはどうぞ鑑賞後にお読みください。

163分の上映時間を退屈することなくトム・クルーズが披露する「スゴいアクション」の数々を楽しみました。その大作感はまさしく「夏休み映画」と呼ぶに相応しかった。

一方では、ここ何作かで顕著になってきている、まずトム・クルーズがやりたいスタントアクションを先に決めてからあとでそれらを繋げてお話を作る、という方法論が極限にまで達したところはあって、スパイ物の騙し騙され、というドラマの面白さは影を潜めてもっぱらスタントシーンの迫力で見せきる作品となりつつある。

アクション映画として楽しければそれでいいんだけど、たとえば『ローグ・ネイション』にあったような敵と味方の知恵比べ、最後の大逆転のカタルシスがないのはやはり少々寂しい。

もっとも今回はまだ“パート1”なんだから、次回作のラストでAI相手にトム・クルーズがカマしてくれることを期待してますが。

ちょっともったいないな、と思ったのは、あの崖からバイクでジャンプ→パラシュート降下の場面は予告篇でほとんど見せているのと、そのメイキング映像も公開されているために、映画本篇を観てもそれ以上の驚きや興奮がなかったこと。機関車の落下シーンも同様。

いやまぁ、映画館の大画面であれらのシーンを観る価値はあったし、他にも見せ場はあるからまだご覧になっていなければぜひ劇場へ足を運んでいただきたいですが。「夏休み大作映画」を観ている、という気分は充分に味わえると思いますので。

あのバイクで崖をジャンプのメイキング映像は、映画のエンドクレジットで見せると効果的だったんじゃないかなぁ。ジャッキー・チェンの映画のNGシーンみたいに(^o^) 本篇のあとで観てこそ、その凄さがさらに何倍も実感できるんじゃないだろうか。

「ミッション:インポッシブル」シリーズはジャッキー映画と違って最後に舞台裏を見せちゃうようなスタイルじゃないからそれは無理なのはわかるし、まずメイキングで目を惹いて劇場に観客を呼び込もうという狙いも理解できるんだけど、でもさすがにあれは見せ過ぎだった。

映画館までわざわざやってきた人々をこそ満足させてほしいので、それ以前に目玉となる映像やその裏側を全部開陳してしまっては観る前に映画の魔法が解けてしまう。

ジブリの新作ほど何もかも隠しまくる必要はないけれど、切り札は最後まで取っておくものでしょう。

ストーリーに関して言えば、世界の命運を握る対となる2本の鍵の争奪戦という、この手のアクション映画に昔からあるもので特筆すべき内容ではないけれど、敵があたかも自我を持ったかのように人間たちに挑戦してくるAI、というのはちょうどタイムリーな題材で、現実社会での問題を重ねて観ることであたかもリアルであるように感じられてくるあたりは面白かったです。

ただ、クリストファー・マッカリーがシリーズ初監督した『ローグ・ネイション』で初めて登場して以来、主人公・イーサンと協力し合ってきたレベッカ・ファーガソン演じるイルサが今回退場するのは残念だった。

これまでもポーラ・パットンやジェレミー・レナーらが演じてきた仲間たちが急にいなくなってそのままなんの説明もなかったのに比べると、イルサはこの3本でレギュラーキャラとして扱われ、その最期も映画の中でちゃんと描かれたことは評価したいけど、でも新しい女性キャラクターの参入のために入れ替わりでお払い箱、みたいなのはどーなんだろ。

レベッカ・ファーガソンは3本で契約満了ってことですかね。

このシリーズは定期的に「新しい血」を入れることでマンネリを回避してきたし、新キャラで最後にIMFのメンバー入りするグレース役のヘイリー・アトウェルはマーヴェル映画のエージェント・カーター役でおなじみで、彼女が「ミッション:インポッシブル」に参加するというのはいかにもといった感じで違和感もなく、続篇でのさらなる活躍も楽しみですが。

そういえば前作でCIA長官役だったアンジェラ・バセットも出てこなかったな。ワカンダ王国が忙しかったんだろうか(渾身のおやじギャグ)。今作でのCIA長官は1作目以来27年ぶりにヘンリー・ツェニーが演じたキトリッジなので、アンジェラ・バセットさんもあの1作きりだったのかな。

シェー・ウィガム演じるブリッグスとともにイーサンを追うエージェントのディガスを演じているグレッグ・ターザン・デイヴィスは、『マーヴェリック』の“コヨーテ”役だった人ですね。劇中で戦闘機の訓練中に壮絶に気絶してた、あの人w 人脈が繋がってるなぁ。

今後はイーサンと協力関係を築いていきそうなブリッグス役のシェー・ウィガムは「ワイスピ」シリーズではしょっちゅうブライアン(ポール・ウォーカー)に殴られて鼻を折られてたから、だんだんどっちの映画のキャラクターだったか判別できなくなってきそうだけど^_^;

ちょっと不思議だったのが、アクション場面は自然だったんだけど、登場人物たちが揃って会話している場面で、しばしば人物の寄りの画の切り返しのモンタージュが延々続いたりするところ。

その編集が妙に不自然で気になった。会話シーンで登場人物たちの全身が映ってるマスターショットが少ないんだよね。

ただああいう演出にしただけ、ってことかもしれないけど、ワンシーンだけじゃなくて、キトリッジの会話シーンもそうだったし、やたらとああいう編集が続くのでなんか意味があるのかと思っちゃって。

それともコロナ禍での撮影で出演者たちをそれぞれ別撮りした素材を繋げたんだろうか。でも、同じ場面でちゃんと出演者たちが揃ってる画も一応あるから、余計にあの顔のアップだらけのモンタージュが不自然に感じられてならなかった(追加撮影でしょうかね)。

この映画のストーリーの組み立てを巧みだと褒めてる映画評論家の記事も読んだけど、そして、ブライアン・デ・パルマ監督による第1作目へのオマージュの数々についてなど(ヴァネッサ・カービー演じる“ホワイト・ウィドウ”ことアラナが1作目でヴァネッサ・レッドグレイヴが演じたマックスの娘、という設定だったのを今回初めて知った)、なるほど、トム・クルーズのスタントシーンがまずありきの作品としてはいろいろ工夫のあとが見られることもわかりましたが、それでも観てる最中や鑑賞後の僕の印象は、かなり無理くりアクションとアクションの間を繋いでなんとかお話をでっち上げた、というものでした。

それは大昔のアクション映画やコメディ映画の手法でもあるから、「ミッション:インポッシブル」シリーズは今、映画の歴史の原点に回帰している、ってことでしょう。

「動き」こそが見どころだから、逆にそれ以外の部分が犠牲になっているのは致し方ないのかもしれない。

とにかくトム・クルーズが走る走る。そんで乗る、飛ぶ、ぶら下がる。

一緒に実際に列車の上で闘わされる俳優さん(イーサイ・モラレス)も、ほんと大変だ(;^ω^A

イーサイ・モラレス演じる悪役・ガブリエルは今回シリーズ初登場だけど、IMFに入る以前のイーサンと因縁があるキャラクターらしいことがわずかな回想シーンでわかる。

でも、このパート1の時点では彼の正体や“それ”との直接的な関係などはまったく語られないのでその真の狙いも不明で、後篇でイーサンの元恋人の死とガブリエルのかかわり、そして再び2つの鍵を奪いにくるだろう彼との決着がどうつけられるのか見ものですね。

「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズでデイヴ・バウティスタ(ドラックス役)と漫才していたポム・クレメンティエフ(マンティス役)が今回はガブリエルの下でイーサンたちを追う殺し屋・パリスとして出てきますが、ガブリエルの予言通り終盤で寝返って、重傷を負ったものの続篇でも再登場する模様。

パリスはほとんど台詞がないため、ガブリエルと組むようになったいきさつも彼女の背景すらも不明で、終盤でようやく口を開くとフランス語を喋るので、どうやらフランス人らしいことがわかる。

演じるクレメンティエフ自身がフランス出身で、「ミッション:インポッシブル」の第1作目で同じフランス人俳優のジャン・レノやエマニュエル・ベアールが出演しているのを観て、フランス人でもハリウッド映画に出られるんだ、ということを知って、その後ハリウッドに進出したことを語っていて、海外からアメリカ映画界に飛び込んでいく人々の熱い思いが伝わってくるようなエピソードだなぁ、と。

ラストでイーサンを救ったパリスは、続篇ではどのような立ち位置で、どんな立ち廻りを見せてくれるんでしょうか。

正直なところ、彼女だけでなくガブリエルが披露するナイフ捌きにもイマイチ迫力が感じられなかったので、パリスにはぜひ次回作でもっともっと派手な肉体アクションを期待したいところ。

人間の思考・行動パターンを読むAI、というのはインターネットマーケティングをはじめ、ニュース音声、フェイク動画や画像など今や身近なイメージがあるし、そして人間の仕事を奪っていく脅威として受け止められている部分もある。

全米映画俳優組合(米国テレビ・ラジオ芸能人組合 SAG-AFTRA)と全米脚本家組合(WGA)が現在行なっているストライキでは人工知能(AI)の規制を求めてもいて、映画で描かれていることと現実が見事なまでにリンクしている。

トム・クルーズやクリストファー・マッカリーがこの映画を企画した時にどれだけ現実との関連性を意識していたのか知らないけど、生身の俳優の本当のアクションにこだわる、という姿勢がこういう形で映画の中で表明されているのは面白い。

ただし、この映画にだってVFX(視覚効果)は使われてるわけで、撮影現場に築かれていたジャンプ台は完成作品からは消されて岩肌が剥き出しになった崖の風景に置き換えられているし、イーサンとグレースが次々と落下する列車から脱出する場面も、僕はちゃんと確認してないからどこを本当にやっててどこにVFXを使ったのかはわかりませんが、すべてが本物というわけじゃないでしょう。

それは出演者たちが実際に戦闘機に乗って撮影した『トップガン マーヴェリック』も同様だったんだし。

AIや映像加工を一切拒否するんじゃなくて、生身の人間との共存、あくまでも人間の補助という役割にとどめることを求めているんだな。法的に規定しなければAIは野放図に使いまくられて、逆に手間や時間、お金がかかる人間はどんどん排除されていってしまう。

実は問題はAIの存在そのものではなくて、それを使う「人間」なんだけど。

SAGやWGAが争っているのもAIそれ自体じゃなくて人間なんだし。

今回のストでアメリカの映画やドラマの制作はストップして、今後公開を予定されていた作品の撮影もどんどんずれ込んでいってて先行きも不透明だし、来年公開予定だった『デッドレコニング PART TWO』も完成は遅れるでしょうが、現場で働く人々の権利や生活を守るためなのだから、よい結果に収まってくれるといいなと思います。

前作『フォールアウト』で初登場した闇市場の武器の仲買人“ホワイト・ウィドウ”/アラナが今回も出てきて、グレースがシリーズ名物の本物ソックリな顔面のマスクをかぶってアラナに化けるんだけど、ここで楽しいのは合成技術で2人のホワイト・ウィドウが同一画面に登場することではなくて、実際にはヴァネッサ・カービーがホワイト・ウィドウと変装したグレースの2人を演じているということ。

1人の俳優が顔はそのままで2人のキャラクターを演じるという、「映画」の登場以前からある古典的な演出と、同じ顔をした人物が2人同時に映っている映像のマジックが融合して、現実にはありえない現象に説得力を持たせている。このあたりも1作目へのオマージュなんでしょうね。列車でのアクション自体が1作目のクライマックスをなぞっている。

2部構成なのは、これでシリーズを締めくくるつもりだからだと思っていたんだけど、どうやらトム・クルーズは「ミッション:インポッシブル」をまだやめる気はないようだし、こうなったら「インディ・ジョーンズ」のハリソン・フォードを超える高年齢ヒーローを目指してもらいたいな(^o^)

シリーズ中で一番好きかというとそうではないし(個人的には、やはり『ローグ・ネイション』か、その前の『**ゴースト・プロトコル』に軍配を上げたい)、ここ最近、『ワイルド・スピード/ファイヤーブースト』でも同じような場所でカーアクションを撮ってたし、『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル**』も確かイタリアでロケしていて、ちょっとカブりまくりだったんで、もうちょっとヴァラエティに富んだロケ地選びをしてほしいなぁ。まぁ、贅沢な要求ではありますが。

最近のあちらのアクション物って夜のアクション場面が結構あってしかも暗くて画面がよく見えなかったりして地味にイラッとさせられるんですが、この『デッドレコニング PART ONE』のアクションシーンはどれも映像がしっかりと見える日中で、そこんとこもトムさんの「俺は誤魔化さない」という強い意志の表われなんじゃないかと。

グリーンバックの前での撮影じゃなくてちゃんと現地で撮ってるのも嬉しいし、それこそが作り手たちの強いこだわりなのだから支持していきたい。続篇も楽しみにしています♪

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