『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』 映画の守護天使 (original) (raw)

クリストファー・マッカリー監督、トム・クルーズ、レベッカ・ファーガソン、ショーン・ハリス、ヴィング・レイムス、サイモン・ペグ、ヘンリー・カヴィル、ヴァネッサ・カービー、フレデリック・シュミット、ウェス・ベントリー、ミシェル・モナハン、アンジェラ・バセット、アレック・ボールドウィン出演の『ミッション:インポッシブル/フォールアウト』。

盗まれた3つのプルトニウムを回収する取り引き現場でIMF(Impossible Mission Force)のイーサン・ハント(トム・クルーズ)は仲間のルーサー(ヴィング・レイムス)やベンジー(サイモン・ペグ)とともに何者かに襲われ、プルトニウムを奪われてしまう。2年前にIMFによって捕らえられたソロモン・レイン(ショーン・ハリス)の国際犯罪組織「シンジケート」の残党「アポストル(神の使徒)」は、それらのプルトニウムを使って複数の都市で同時に核爆発を起こそうとしていた。鍵を握るラークという謎の男と接触するホワイト・ウィドウ(ヴァネッサ・カービー)に会うために、イーサンは監視役のCIA捜査官ウォーカー(ヘンリー・カヴィル)とともに空からパリに向かう。

ネタバレがありますので、これからご覧になるかたはご注意ください。

「ミッション:インポッシブル」シリーズ第6弾。

監督は前作『ローグ・ネイション』のクリストファー・マッカリーで、物語は前作の直接的な続篇。

現在も上映中の『ジュラシック・ワールド』の新作とは仲良く3年ぶりに揃って公開。

撮影中に主演のトム・クルーズが足を骨折したというニュースを聞いていたし、お馴染み映画評論家の町山智浩さんの作品紹介によれば「ストーリーが結構アバウト」ということだったので、ともかくトムさんのスタントアクションを楽しもうと劇場へ。

朝イチの回だったにもかかわらず満席に近い入り(年配のかたがやたらと多かったんだけど、なんでだ)でしたが、ちょうどいい位置の席を確保できました。

確かに内容は相も変わらず「核爆発の危機を回避する」みたいな代わり映えのしないもので、いつもの奴って感じですが、このシリーズの最近の売りである「主演俳優が極力自分でスタントを行なう」という面白さはハリウッドの他のアクションシリーズにはないから、それだけでも劇場で観ておく価値はある。

テロリストの男を騙すアヴァン・タイトルはアガりましたね。オープニングが一番気分が盛り上がったかも。ラロ・シフリンのオリジナル曲のテイストを活かした編曲がいい。

そして、やはり今回も登場人物たちはイイ年した大人ばかりでティーンが一人もいない。平均年齢が結構高めのシリーズなんですよね。もうこれは意地で「若造は入れない」という方針を貫いてるとしか思えない。

今回新たに加わるのは、CIA長官のスローン(アンジェラ・バセット)とその部下ウォーカー。

IMF側では前作、前々作と登場していたブラント(ジェレミー・レナー)がなぜか欠席で、そのことについて特に劇中で説明もなかった。

前作もその前の『ゴースト・プロトコル』で活躍したポーラ・パットン演じる女性エージェントがミッションに参加せずにそのままいなくなったし、どんな事情があるのか知らないけど(※ジェレミー・レナーは『ウインド・リバー』の撮影で忙しかったようで)ブラントには次回作にはまた出てほしいなぁ。

その一方で前作のヒロインだったレベッカ・ファーガソン演じるイルサは続投で、また(予告篇に映ってるからバラしていいと思いますが)イーサンの元妻のジュリア(ミシェル・モナハン)も『ゴースト・プロトコル』以来7年ぶりに再登場する。

前作の敵ソロモン・レインとも再度対決することに。

安易に元妻を殺さずに、またどっかの走り屋シリーズみたいにすぐに敵の人質にされちゃう(それはもう以前やってるし)こともなく、それでも主人公イーサンにとってもっとも大切な存在としてちゃんと描き続けているのはいいなぁ、と思いますね。

でも今回、別の人生を歩んでいるジュリアには新しい夫(ウェス・ベントリー)がいることが判明して、またイーサンがイルサに同業者や仲間以上の感情を持っていることもわかったので、今後は二人の間に前作では敢えて入れなかった恋愛的な要素が絡んでくるのかも。

これから先もジュリアとイルサの間で宙ぶらりんなまま物語が続いていくのか、それともジュリアとは完全にお別れとなるのか。

個人的にはできればあまりそっち(恋愛)の方には向かわないでほしいんだけど。男女のことにはストイックだからこそ戦いに集中できたところはあるし、もしもイーサンとイルサが互いに恋人同士のようになったら、それはかつてのジュリアとの関係の繰り返しみたいになってしまうから。ジュリアをこれ以上危険な目に遭わせないためにイーサンは彼女と別れたんでしょ?だったらイルサに対してもそれを貫くべきだ。

イーサンには恋愛よりも仲間たちとの友情の方を優先してほしいなぁ。それでこそ我らがトム・クルーズ=イーサン・ハントだと思うし。

イーサンとイルサには、ちょうどルパン三世と峰不二子のように「つかず離れず」な関係でいてほしい。

さて、これも予告篇観たらなんとなくわかるように、今回は悪役として“マン・オブ・スティール”ことヘンリー・カヴィルが登場。

スーパーマンに敢えて悪役を演らせる、というのがなかなか意地悪な配役だけど、個人的にはアメコミ映画での正義の味方よりもこの作品での彼の方が役柄にハマってたと思う。

まぁ、でもあのスーパーマン演じてた人が悪役、という意外性でより彼のキャラクターが立ってたというのはあるだろうけど。さすが、やっぱりガタイがいいのがよくわかるし。

ただ、彼がスーパーマンだったことを知ってるといろいろツッコミも入れたくなるけど^_^;

悪天候の中をイキってヘイロージャンプしたら落雷で気絶してイーサンに助けられるとか、もうしょっぱなから使えない男なのがわかってしまう。

スーパーマンなんだから自分で飛べよ、とw

この人、トイレでの乱闘でもラークにかなわないし(わざと負けたんだろうけど)、エージェントとしてはほんとに役立たずで、結局、イーサンと終盤に直接対決するのは彼なわけだけど、あくまでもアクション映画における筋肉男のポジションでラスボスという風格はない。

やはり最後の敵はソロモン・レインということに。

前作はラストで捕らえられたレインにイーサンが「悔しいだろ」という台詞をキメていたんだけど、シリーズ中、物語が前作から直接繋がる続篇は今回が初めてで、しかも同じ悪役が引き続き登場する異例の展開。

レインは捕らえたものの、「アポストル」と呼ばれるシンジケートの残党が依然テロ活動を続けており、盗まれたプルトニウムで大都市が核爆発の危機に晒される。

ラークという男に成りすましたイーサンは仲介人のホワイト・ウィドウとコンタクトを取るが、彼女はアポストルからの指示で手付けにプルトニウムを1つだけイーサンに渡し、残りの2つと引き換えに移送中のレインの身柄を要求してくる。

ちょっとこのホワイト・ウィドウさんが何者なのか最後までよくわからなくてモヤモヤが残りましたが、彼女は次回作にも出てくるんだろうか。クリストファー・マッカリー監督がさらに続投するかどうかはわかりませんが。

中盤はソロモン・レインをイーサンたちがいかに確保するか、というのが見どころになっている。

このあたりではレインは髭が伸びたおじいちゃんみたいな風体でどこか弱々しくてとても肉体派には見えないんだけど、終盤では一転して格闘技でイルサを追いつめる意外と動けるおっさんだったことが判明する。

この辺もウォーカーと同様に強いのか弱いのかよくわかんないところがある。

お話がトム・クルーズのアクションシーンの都合で二転三転するから、登場キャラクターたちの立場や強さもそのたびにコロコロ変わるんだよね。

イルサの立ち位置もブレブレで、イーサンから再三「足を洗え」と言われても拒否して、理由を聞かれても「言えない」と繰り返すばかり。敵なのか味方なのか無駄に気を持たせ続ける。

でも彼女の事情もなんだかよくわかんないもので、所属していたMI6への忠誠を証明するためにレインを殺さなければならない、というもの。

そこは普通にイーサンに相談せぇよ、と^_^;

それから、前作のラストでIMFの長官になったハンリー(アレック・ボールドウィン)に代わって新しくCIA長官になったスローンも、最後はなんだか「してやったり」みたいな顔してたけど、この人のせいでウォーカーが暗躍していたんだし、ハンリーがウォーカーに刺し殺されたのも不用意に特殊部隊を突入させた彼女のせいでもある。完全に無能じゃん。

スローンはこれからハンリーに代わってIMFの指揮を執ることになるのかもしれないけど、この強引極まる交代劇はちょっとどうなんだろう、と思った。

どう考えてもハンリーがここで死ななきゃならない物語的な必然性がないんだよな。もう作り手がハンリーを退場させるために無理やりぶっこんだ場面としか思えない。せっかく前作で初登場してこれからもいろいろとイーサンたちと絡むだろうと思ってたのに。

アレック・ボールドウィン本人の都合なのか、それともなんか他の理由があるのかわかりませんが、ここはせめてあと何作か出演してもらいたかった。

だからって、次回作で「実は死んでなかった」とかいってシレッと再登場されても困るけど。「ワイル○・スピー○」じゃないんだから。

思えばこのシリーズの最古参は1作目からイーサンの仲間だったヴィング・レイムス演じるルーサーで(彼もずっと出ずっぱりじゃなくて途中でお休みがあったけど)、前作ではイーサンと仲良くドライヴしたりしてて今では主要メンバーの1人のベンジーだって初登場は3作目。ジュリア役のミシェル・モナハンも同じく。

メンバーはひっきりなしに代わっている。

あまり出演者が固定されるとかえって劇中で動かすのが難しくなる、というのはわからなくもないんだけど、邪魔になったらすぐ殺しちゃうのはいかがなものだろう。

僕はこの「ミッション:インポッシブル」シリーズには「ワイスピ」とは違う、作劇面においてももうちょっと丁寧な仕上がりを期待したいので。

そんなわけでシリーズの今後に不安がなくもないんだけれど、それでもそういうストーリーの粗を補って余りある魅力がこの映画にはある。

それが最初に書いたように、トム・クルーズ自身が務めるスタントアクションという、誰にも真似できない無謀な試み。

これまでにもスタントマンが危険なアクロバット撮影を行なったアクション映画は数多くあるけれど、ここまで作品をコントロールして自ら演じ続ける主演俳優というのも稀有な存在ではないかと。

文字通り彼は命を懸けて映画を作っている。バスター・キートンやジャッキー・チェンに連なる「映画」への原初的な驚きと興奮。「本当にやっている」というのは凄いことなんだ、とあらためて思う。

メイキング映像を観ると、もちろん命綱であるワイヤーはつけているんだけど、予告でも流れていたビルからビルに飛び移るシーンでは普通に勢いよく飛んでいるので壁に身体を強打する危険があるし、実際それでトム・クルーズは足を骨折している。その瞬間が思いっきり映っている。

また、バイクチェイスでも自分で(しかもノーヘル)運転していて、車にぶつかって吹っ飛ぶところも彼自身が演じている。高高度からのヘイロージャンプも、ヘリコプターからの落下も、ヘリの操縦さえもほんとに彼がやっている。どうかしている(;^_^A

頭がおかしいアクションシーンの数々

プルトニウムから核爆弾を作り出せるハナウェイ博士(トレヴァー・ホロウェイ)やソロモン・レインによる「平和は苦しみのあとにやってくる」という思わせぶりな台詞があったけど、その“苦しみ”というのがトム・クルーズが大怪我をしてまでも映画を完成させる過程のことを言ってるんなら、なかなか気持ちがこもってるな、とw

くれぐれも今後、撮影中の事故で死なないでほしいですが。冗談じゃなくてほんとに心配してます。

これだけやってくれてると、もうストーリーの破綻とかあまり気にならなくなるw

ただ、上映時間は147分あって、アクションシーンは面白いんだけどそのアクションとアクションの間のこれからの計画を説明する場面などがどうも退屈で。

説明のための説明になっちゃっててその部分は映画としての醍醐味がまるでないんですよね。ただの説明なので、俳優たちの演技を堪能することもできない。

イーサンがパリの街なかでイルサを静かに追うシーンのちょっとアートな雰囲気はロケ撮影が効いててよかったけど、説明シーンをもっと大幅に減らせたら上映時間もだいぶ抑えられたんではないか。

クライマックスのウォーカーとの断崖での戦いは、ちょっとレニー・ハーリン監督、シルヴェスター・スタローン主演の『クリフハンガー』を思い出しました。

ヘリが引っかかるところなんかもかなり似てると思ったんだけど、オマージュだったりするのかな(ちなみに、スタローンが演じた主人公の名前は“ウォーカー”)。

最後にはジュリアも加わって全員が協力し合って、核爆弾の爆発は無事食い止められる。

レインは再び捕まり、めでたしめでたし。

イーサンはジュリアの守護天使であり、トム・クルーズはもはや映画の守護天使。

今や彼が撮る1本1本が貴重な作品になっている。

次回作も楽しみにしています(^ε^)♪

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