『グランツーリスモ』 (original) (raw)

ニール・ブロムカンプ監督、アーチー・マデクウィ(ヤン)、デヴィッド・ハーバー、オーランド・ブルーム、ヨシャ・ストラドフスキー(ニコラス・キャパ)、ジャイモン・フンスー、メイヴ・コーティエ=リリー(オードリー)、ジェリ・ハリウェル=ホーナー(ヤンの母)、ダニエル・プイグ(ヤンの弟・コビー)、ダレン・バーネット(マティ)、ペペ・バロッソ(アントニオ)、エメリア・ハートフォード(リア)、ニクヒル・パーマー(ヤンの友人・パーソル)、平岳大、トーマス・クレッチマンほか出演の『グランツーリスモ』。

ドライビングゲーム「グランツーリスモ」に熱中する青年ヤン・マーデンボロー(アーチー・マデクウィ)は、同ゲームのトッププレイヤーたちを本物のプロレーサーとして育成するため競いあわせて選抜するプログラム「GTアカデミー」の存在を知る。そこには、プレイヤーの才能と可能性を信じてアカデミーを発足した男ダニー(オーランド・ブルーム)と、ゲーマーが活躍できるような甘い世界ではないと考えながらも指導を引き受けた元レーサーのジャック(デヴィッド・ハーバー)、そして世界中から集められたトッププレイヤーたちがいた。想像を絶するトレーニングや数々のアクシデントを乗り越え、ついにデビュー戦を迎える彼らだったが──。(映画.comより転載)

『**第9地区』『エリジウム**』などのニール・ブロムカンプ監督の最新作。

2015年の『**チャッピー**』からずいぶんと間が空いたなぁと思ってたら、21年に撮った作品『デモニック』が日本でも去年公開されていたんですね。一部映画館のみの上映だったのかな?まったく話題にならなかったし、失礼ながら作品の存在すら知らなかった。

それで僕は久しぶりに観るブロムカンプ監督作品なんだけど、まず彼がこういうタイプの映画を撮ること自体が意外でしたね。

だって、これまでエイリアンとかロボットなどSF的な話ばかりやってきた人だから。

その監督が「実話」をもとにしたカーレーシング映画を撮ったのか、と。

「グランツーリスモ」というのはプレイステーションのゲームなのだそうで、だから実話がらみではあるけれど、これはそのゲームを原作にしたアクション映画なんだな。

すみません、予告篇を観て単純に迫力あって面白そうだと思って観ただけで、僕はカーレースにもゲームにもまったく興味がなくてそのへんの知識が皆無なので、そういう人間が書く感想ですからいろいろ無知も晒すでしょうがご容赦ください。

ちょうど同じ日にケネス・ブラナー監督・主演の**「名探偵ポアロ」シリーズの最新作**が公開されていたりして新作ラッシュということもあるのか、あるいは上映時間が134分と微妙に長めなのが理由なのかわかりませんが、僕の住んでるところではどこのシネコンでも字幕版、吹替版ともに上映回数が一日1~2回ずつと少なくて、しかも字幕版は早朝とかレイトショーだったりして時間を合わせるのがちょっとめんどくさかった。

この手のエンタメ作品って、公開直後はもっと上映回数が多いもんじゃないのかなぁ。邦画の新作に比べて扱いがずいぶん雑な気がする。

アメリカでは先月公開されたけど作品が特に高く評価されている様子もなくて、だからか日本ではわりとさらっと流されてる感がある。いや、TVでも予告はよく見かけるんだけど、何しろ上映回数が少な過ぎ(おっさんの愚痴ですが、最近の若いモンは洋画をあまり観ないのだろうか。嘆かわしい)。

なんとか観られる時間帯でやってる映画館をみつけて鑑賞してきました。

カーレースを描いた映画、というと、日本では2014年に公開された『**ラッシュ/プライドと友情』や、最近でも『フォードvsフェラーリ**』(それでももう3年前なんだなぁ…)がありますが、僕は2000年代初め頃に観たシルヴェスター・スタローン主演の『ドリヴン』を思い出しました。

…いや、もうどんな内容だったのかまったく覚えていませんが^_^; ド派手なクラッシュが連続するCGを駆使したレースシーンがどこか似てた気がして。

今回の『グランツーリスモ』では当然ながら20年前の『ドリヴン』よりもはるかに進歩したVFXによってどこが実写で撮影した部分でどこがCGなのかシロウトの僕にはわからないぐらいでしたが、でもたとえドローンを使ったとしても実際のレースでは不可能だろうキャメラワークもあるから、映像にはずいぶんと手が加えられているんだろうなぁ、と思いながら観ていました。

そのへんの技術的な勝手をよく知ってるからこそ、この企画にブロムカンプ監督が抜擢されたんだろうし。

率直に面白かったですよ(^o^)

映画館のスクリーンでこそ観るべき作品でしたし。まだ暑い中、冷房が効いた涼しい映画館でド迫力な映像を堪能してみてはいかがでしょうか。

もっとも、先に挙げた『ドリヴン』を除く2作品も「実話の映画化」だったけれど、映画の中に含まれるフィクションの割合はこの『グランツーリスモ』はかなり多めのようだし、だから実在のレーシングドライヴァーの伝記映画や史実に忠実なレースの模様を期待すると肩すかしを食らうかも。

「子ども向け映画」と斬って捨ててる感想も目にしましたし。

若者が途中で挫折を味わいながらも最後には勝利を手にする、というオーソドックスというか、この時代にちょっと単純過ぎなのでは?ってぐらいかなりベタな内容のエンタメ作品なので、それにノれれば楽しいけれど、途中で冷めちゃうと退屈かもしれませんね。

僕は最初に申し上げたようにもともとカーレースにもゲームにも思い入れがないので、予告篇で描かれていたような迫力あるレースシーンが観られればそれでよかったから抵抗はなかった。

映画が始まってしばらく続く、ゲーム小僧だった主人公がプロのレーシングドライヴァー候補に選ばれるまでは驚くほど凡庸な筋運びだったんで(女の子とのやりとりとか父親との軋轢、家族の描写など、これいつの時代の映画なの?と)少々不安を感じたんですが、レースが始まってからはサーキットでのレーシングカーの運転を疑似体験してるような感覚で映画に身を任せていた。

ライヴァル選手は金持ちのボンボンの嫌な奴で案の定レースの妨害をしてくるし、主人公はトントン拍子に順位を上げていってあっという間に上位に。そこに障害が立ちはだかって…と、もうこの手のサクセス・ストーリーのテンプレみたいな要素だらけで、正直なところ、これはニール・ブロムカンプがどうしても手がけるべき題材だったのか疑問だったし(来月公開予定の『**ザ・クリエイター/創造者**』あたりが向いてそうだけど、あちらの監督はギャレス・エドワーズ)、すべてを単純化して記号的に描き過ぎだろう、とは思った。少年向けの週刊連載漫画のようで。

主人公をはじめ登場人物全員が、生きてる人間じゃなくて“キャラ”っぽい。

ヤンの、最初は他の選手たちや味方のスタッフにさえ「ゲーマー上がり」として見下されてたのが、その実力を発揮しだすと無敵モードと化すところとか、僕はその「最近の若者にウケがちなチートな主人公キャラ」があまり好きになれなくて、映画の前半ぐらいまではわりと引いた目で観ていたんですが、そこは主演のアーチー・マデクウィの好演と、助演で彼と絡むデヴィッド・ハーバーのおかげもあって、だんだん応援するような気持ちになっていきました。

ってゆーか、これは観客がプレイヤーになったような気持ちになってヤンと一体化して、その無双ぶりを仮想体感するアトラクションなんだよな。だから主人公に都合のいい展開になっていくのは当然で、人間ドラマを観るというよりもまるで『**トータル・リコール**』みたいな“夢”なんだと思ってればいい。ゲームが原作なんだし。

カーレースの怖さは自分の命を失うことだけでなく、他の人の命を奪う危険もあることだというのは、なるほど、そういうリスクも負いながらの競走、競争なのだなぁ、と思わされましたが。

狂気に取り憑かれた人々、というのはこのジャンルの映画を観るたびに痛感することだし、そういう、現実に自分にはできない体験を映像と音とで味わわせてくれる、これも「映画」の醍醐味ではある。

ゲームの「グランツーリスモ」を開発した山内一典氏とヤン・マーデンボロー氏は実在の人物だし「実話をもとにしている」というのは嘘ではないけれど、じゃあそれ以外の周囲の人々──ヤンを支える元レーサーのジャック・ソルターや、GTアカデミーの設立者ダニー・ムーアたちの存在──はどの程度現実を反映しているんでしょうね。

お父さんは本当にプロのサッカー選手だったそうだし、エンドクレジットで弟さんもほんとにいるっぽかったけど、ヤンが憧れていた女性・オードリー(ヤンがGTアカデミーで競い合う女性・リアと顔がよく似ているので、僕は途中まで彼女たちが同一人物だと勘違いしてました。少々紛らわしかった)にしても、仲間たちやライヴァルのレーサーなど、史実との違いは劇場パンフレットに書かれているのかもしれませんが僕は買ってないし、「こんなわかりやすいハリウッド的なサクセス・ストーリーを堂々と“実話”などと言い張っていいんだろうか」と引っかかるところはある。

レースの合間にちょっと身体鍛えてるだけでどんどん上達していくのも、そんなもんなの?と。

本作品は「ゲーマーがプロのレーシングドライヴァーになった」という非現実っぽさを売りにしてるわけだけど、そのわりには映画を観ていても「ゲーマーだからこそのテクニック」で勝つ、という部分がよくわからなかったし、そもそもヤンがゲームに興じている場面がほとんどなかったから、「ゲーマーがプロのレーシングドライヴァーに~」という前提自体が疑わしいというか、本当はプロサッカー選手の父の血を受け継いで、もともと運動能力に秀でていてポテンシャルのあった人物がレーシングゲームでの選考で勝利してチャンスを掴んだということなんじゃないのか。

…いや、だから僕はヤン・マーデンボローさんご本人の詳しい経歴は知りませんが、Wikipediaでもレーサーになる以前のことについては触れていないし、彼が「ゲーマー」だったとは書いてない。

なので、この映画は「実話の映画化」なんじゃなくて、実在のレーシングドライヴァーを“キャラ”として用いたヴァーチャルリアリティ映画、と僕は解釈しました。

そのうえで面白かった。

童顔なんだけど声は結構野太い主演のアーチー・マデクウィ(『**ミッドサマー**』に出てたそうだけど、覚えてない)と“レッド・ガーディアン”でおなじみのデヴィッド・ハーバーの師弟コンビのケミストリーはなかなかよかったし、そこにオーランド・ブルームも加わっての少年漫画的な王道の展開は、現実の諸々のしんどさに疲れている者にとってはまるでマッサージを受けているような心地よさがあったし、たまにはこういう映画があったっていい。

デヴィッド・ハーバーはとてもおいしい役だったし、この映画での彼は僕はかなり好きでした。頼れるヒゲオヤジ、といった感じで(^o^)

音楽に疎いのでケニー・Gもブラック・サバスもよくわかりませんでしたが、エンヤの歌の使われ方には「またか」と笑ってしまった。

あちらの映画で「オリノコ・フロウ」が流れると、必ず何かが起こる(笑)

予告を観た時は、髪型などからもダニー役はてっきりジャスティン・ティンバーレイクだと思ってたら、「パイレーツ・オブ・カリビアン」の人だったw その場の展開次第で手のひらをコロッと変えそうになったり、でも悪役でもない、そのあたりの信用できなさも含めてオーランド・ブルームはデヴィッド・ハーバー演じるジャックとは対照的な人物をイイ塩梅で演じてましたね。

平岳大さんは時代劇もよく似合う俳優さんだし、この映画でも存在感はあったんだけど、彼に限りませんが、日本の俳優が海外、とりわけアメリカのメジャー映画の中に登場して日本語の台詞を喋ると、どうもあまりにセリフセリフして聴こえて急に冷めてしまうことが多い。

演出の問題もあってなかなか大変なのかもしれませんが(監督は日本語を理解していないのだから)、もうちょっと頑張って「自然に」台詞を喋ってもらえないだろうか。

ヤンがオードリーに行きたい場所を尋ねられて「東京」を選ぶのは、彼は日産のチームだったわけで、しかもプレステのゲームの映画化作品なので日本がフィーチャーされてるのもわかるんだけど、もっと他のところはないのかい、と思ったし、クラブで踊ってスシ食ってただけで劇中の日本描写にはあまり魅力を感じなかったな。無理して日本を出さなくていいのに。

まぁ、ハリウッド映画の「トンデモ日本」が極力抑えられていたのは好感持てましたが。

ここんとこ史実寄りのシリアスなミニシアター系映画が続いてたんで、エンタメ寄りのアクション物が気持ちよかったし、ニール・ブロムカンプ監督が映画を撮り続けてることもわかってひと安心♪

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