日本初のKubestronaut取得者にインタビュー!広く深い知識とノウハウでNRIとKubernetesの発展に貢献したい (original) (raw)

atlax 編集部

こんにちは、atlax編集部中の人です!

仮想化技術において、アプリケーションの開発や稼働に必要な環境を1つのパッケージとして運用するのがコンテナと呼ばれる技術です。複数のコンテナを運用・管理するオープンソースソフトウェア・Kubernetesについては以前atalx ブログでもご紹介しました*1。そのKubernetes に関する5つの認定資格*2を全て保有している方に対して、クラウドネイティブ技術を推進する非営利団体CNCF(Cloud Native Computing Foundation)から贈られる「Kubestronaut」という称号があります。現在日本でこの称号を認められているのは十数名で、そのうち2名はNRIに在籍しています。

今回は、そんなKubestronautの称号を持つ高棹大樹と勝村友博にインタビューを行い、国内でもいち早くこの称号を得るために重ねた努力や、資格取得の過程で得た知識と技術をNRI全体の技術向上に活かすための今後のビジョンについて、深堀りしていきます!

Q1:これまでのキャリア、現在のご担当業務を教えてください。

高棹:私はエンジニアとしてNRIに新卒で入社しシステム基盤の構築を担当してきました。オンプレミスはもちろんAWS(Amazon Web Service)といったパブリッククラウドを利用して、通信業界のお客様を中心にさまざまな業界・企業様向けの案件に従事してきました。この経験をいかして現在は金融機関向けのサービスを動かすためのKubernetesを使った基盤構築やシステムの導入など、幅広く支援をしています。

勝村:私はミドルレイヤーのエンジニアを担当してきました。これまではアプリケーションで使われるライブラリの開発が主な業務で、認証や認可に関わる案件が多く、証券、銀行、保険などの金融業界のお客様が中心でした。現在はオープンソースでAPI Gatewayの開発プロジェクトに携わっています。新規のプロダクト開発なので、開発からプロモーションまで幅広い業務を担当しています。

高棹:現在担当している金融機関向けのプラットフォーム開発で利用するまで、実はあまりKubernetesのことは知りませんでした。案件で利用するためまずは勉強しようと思い、いろいろと調べていく中で認定資格があるということを知り、せっかく勉強するならと受けることにしました。

Kubernetesの資格はもともと5つありましたが、それを全て取得することによって授与されるKubestronautの認定プログラムは今年の3月に開始がアナウンスされたばかりです。その時点で私は3つの資格を既に取得していたので、せっかくならと残り2つも取得したところ、私の知る限りでは日本初の全冠取得者となりました。

勝村:私はもともとKubestronautのプログラムが無くても全部取るつもりで、順番に取得しているところでした。発表された時点で資格は4つ持っていて、発表後に残りの1つを取得しました。

コンテナ技術に興味があり入社してから少しずつ勉強はしていたのですが、Kubernetesはコンテナ技術の延長線上にあるので、コンテナについて学ぶ流れで一緒に勉強しはじめました。勉強すればするほどKubernetesのアーキテクチャの面白さに気づき、現在も高いモチベーションで学び続けています。試験に対応するには知識の深さだけでなく、幅広さも重要です。Linux、ネットワーキング、ストレージ、その上で動かすアプリケーションなど、Kubernetesでは非常に幅広い知識が求められます。いくら勉強しても終わりが無いので、自分がKubernetesに十分にキャッチアップできているという実感がなかなか持てませんでしたが、資格を取得することが知識とスキルの証明になると捉えています。

Kubestronautに贈られるジャケット

高棹:Kubestronautを取得したことで社内からも反応はありました。特にSNSで取得を報告すると反響が大きかったです。Kubestronaut関連の投稿はSNSでの反応がいいので、注目されているのを感じます。

勝村:私はSNSをやっていないので、周りからの反応はあまり…上司に報告したくらいです(笑)

高棹:私は嬉しくていろいろな場で報告しました(笑) 先日のNRIとKDDI/KAGのAWSコラボイベントでも全冠取得についてお話したところ、多くの方からコメントいただきました。AWSの資格の全冠取得者は日本にも1000人以上いますが、それに比べると圧倒的に人数が少ないのでインパクトがあると感じました。

勝村:CNCF公式ブログでも取り上げてくださるのがありがたいですね。

高棹:そうですね。Kubernetesを紹介するインタビュー記事があり、私もコメントを出しています*3
8月27日にKubernetesの大きなカンファレンスが日本で開催されたので行ってきました。現在Kubestronaut認定者は日本に十数名しかいませんが、そのうちの何名かとも交流できました。このように社外コミュニティが広がることも取得したことによるメリットだと思います。

Q3:CNCFの全てのKubernetes認定資格を同時に保有するために努力したことを教えてください。

高棹:資格試験にはハンズオン形式のものもあり、問題に対して答えを選択したり文章で回答したりするのではなく、「クラスターをアップデートしてください」「システムを作ってください」というお題が出されます。実際にコマンドを打って作業するので、ただ覚えるだけではなく手が動かなければいけません。

勝村さんは業務でも使われていますが、私自身は基盤の担当なので、Kubernetesには触れていてもそれ以外のコンテナ部分をいじることが業務上あまり無く、独力での勉強とトレーニングが中心でした。空いた時間を見つけたらPCを開いてコマンドを叩くという努力を続けてきました(笑)試験中でもドキュメントを見てもいいことにはなっているのですが、ドキュメントを見ながら進めていると時間が足りないので、何も見なくてもコマンドを打てるぐらいにならないといけません。大変ですが、ただ暗記するだけではないのが面白いところでもあります。

特に難しかったのはCKSの試験です。CKSはセキュリティに関する資格で、勝村さんが話していたように幅広い知識が求められるのですが、Kubernetes以外のセキュリティの知識も含まれます。コンテナのスキャンやシステムコールの制御、コンテナ自体をどうセキュアに作るかというような試験も出ていて、5つの認定資格の中でも特に試験範囲が広く、勉強するのが大変でした。

勝村:CKSはセキュリティのハンズオンの試験で、Kubernetes、Linux、周辺プロダクトと範囲が非常に広く難しいのですが、私は業務上ミドルレイヤーを扱ってきたので、自分の担当領域と近しいというアドバンテージはあったかもしれません。

私は日頃からCNCFのブログをチェックしたり、どのような技術やプロダクトがあるのかをとにかく調べてインプットするようにしています。ただ、5つの資格のうち3つはハンズオンの試験なので、情報のインプットだけではなく手でも覚える必要があります。高棹さんが話していたように問題を見たらすぐに手が動くぐらいにしないと時間内に回答しきれないので、繰り返しの訓練が大事です。コマンドを実際に打って練習できる学習サイトがあるので、それを試験前に何度も解いたりもしました。

高棹:Kubestronautの認定を継続するには、資格を更新し続ける必要があります。もともと有効期限は3年でしたが最近2年に変更され、問われる内容も高い頻度で変わるようなので、これから継続していくのが大変だと思っています。Kubernetesを提供するCNCFの技術は日進月歩でKubernetes自体もアップデートが激しく、それに追従する形で資格も新しくなるので短期間での更新が求められるのでしょう。今後も認定資格を保有し続けるために、激しいアップデートをキャッチアップしていき、常に情報を追いかけていきたいです。

高棹 大樹

Q4:資格取得で学んだ知識をどのように業務に活かしていきたいですか?

高棹:実際に業務でのトラブルシューティングに活かせた経験は既にあります。勝村さんと一緒に障害対応をした際、調査のためにコマンドを打ったのですが、一分一秒を争う状況でコマンドがすらすらと打てたのは資格取得の成果だと思います。手でコマンドを打つ作業は少なくなってきていますが、いざという時に自分でコマンドを打てるのは、安心感と自信に繋がります。

勝村:Kubernetesにはストレージの知識もネットワークの知識も総合的に含まれるので、勉強すればクラウドはもちろん他のジャンルにも役立つ知識が身につきます。例えば、クラウドのネットワーキングの作業となると画面を操作するだけでネットワークを繋げられますが、実はその下のレイヤーには基盤が存在していて、Kubernetesを触っているとその基盤まで意識しないといけません。Kubernetesを学べばより深くシステムを理解し基盤の知識も取得できます。

高棹:今後の業務として大切にしたいのは、まずKubernetesのアップデートをしっかりキャッチアップしていくことです。Kubernetesは4ヶ月ごとという高頻度でバージョンアップするので、しっかり追従していかないといけません。常にアンテナを高く情報をキャッチアップし、学習していく必要があります。そうして得たノウハウを、担当している共通プラットフォームの機能拡張にも繋いでいきたいですし、新規のお客様にもKubernetesのシステムを提案していきたいです。

社外の勉強会やCNCF団体が主催しているカンファレンスにも参加していて、いずれは対外的に発表することも考えていますが、今のところは私たち二人で運営を担当している社内勉強会に力を入れたいです。そこで知識を共有できれば、NRI全体としてのクラウドネイティブへの理解度や技術の底上げに繋がると思うので、最終的にはNRIが提供するシステムのモダナイズに貢献していきたいです。

勝村:NRIでKubernetesを活用するということは、単にKubernetesを使うだけではなく、アプリケーションの設計や連携など、周辺を考えなければいけません。ミドルレイヤーを扱ってきた立場からすると、その点について社内ではまだ技術向上の余地があると思うので、Kubernetesを活用した上でうまくアプリケーションも設計してシステム開発できるように、私たちがナレッジを共有していきたいと考えています。勉強会をアピールするなど、効果的に情報発信していきたいです。

Q5:Kubestronautとして挑戦したい夢や目標を教えてください。

高棹:資格取得や業務を通じてKubernetesの知識とノウハウが貯まってきたので、NRIからお客様に提供するシステムのモダナイゼーションに貢献していきたいです。既存のシステムをクラウドに移行するという流れが一巡したら、次はシステム自体をクラウドネイティブにしていく流れが来るだろうと考えています。柔軟性・弾力性・耐障害性の高さをシステム構築に活かせれば、システムの付加価値が向上し、最終的には企業の価値も向上します。クラウドネイティブなシステムを提供することで、お客様の企業価値向上に貢献したいと常々思っていますし、それが私の一番やりたいことであり今後の夢です。

勝村:アプリケーション設計を含めたKubernetesの活用に関して、NRIとしてまだ技術向上の余地があると思います。今後も調査と検証を続け、社内に向け情報も発信し、より良いシステム構築を目指していきたいです。

社外での活動で言えば、Kubernetesの開発に貢献したいという思いがあります。Kubernetesはオープンソースなので誰でも開発に参加できるのですが、そのエコシステムは巨大でLinuxに次ぐ世界第2位の規模だと言われています。これまではユーザとして利用するのが主でしたが、今後は開発にも携わりKubernetesを通じて世の中に貢献できればいいなと思っています。

勝村 友博

Q6:atlaxブログの読者やNRIのお客様にメッセージがあれば、最後にお願いします。

高棹: NRIはAWS、Azure(Microsoft Azure)、Google Cloud、OCI(Oracle Cloud Infrastructure)といったクラウドを扱っていますが、どのクラウドにもKubernetesによるマネージドサービスがあります。私は特にAWSをよく使っていますが、AWSでKubernetesを使った知識と経験は他のクラウドでも流用しやすいのです。ポータブルでマルチクラウドな知識をつけられるのは、エンジニアとしてKubernetesを学ぶ大きなメリットだと思います。資格取得によって得た知識とノウハウを活かし、今後もお客様のビジネスに貢献していきます。

勝村:昨今Kubernetesはクラウド上でシステムを構築する際に広く使われる一般的な技術となりました。アジリティの高いシステムが構築でき、可用性を意識して作ればシステムの品質を更に高めることができるでしょう。Kubernetesは今や非常に重要な知識になってきていると思います。今後は勉強会などの情報発信の場を通してナレッジを共有し、NRI 全体としてより品質の高いシステムを実現していく一翼を担っていきたいです。

取材を終えて

日本にまだ十数名しかいない認定資格全冠取得者のうち2名はNRIに在籍していて日本初の取得者でもあると知った時は驚きましたが、実際に話を聞くと、Kubernetesに限らず幅広いITの知識とノウハウを得た、その称号にふさわしいスペシャリストであることがわかりました。高棹も勝村も資格取得や業務に役立てるため努力していることはもちろん、根本には「Kubernetesが好きでキャッチアップしたい」という思いがあることが話の端々から感じられ、エンジニアの知識と技術力の源はこうした高い興味と関心なのだろうと感じました。

今後は、資格取得を経て自らが培ってきたKubernetesの知識をNRI全体の技術向上のためにフィードバックしていきたいというビジョンも掲げているので、二人の今後の活躍と、NRIの提供するサービスの品質向上にご期待いただければと思います。

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