推しと結婚した話、というより - 『ニジンスキーは銀橋で踊らない』感想 (original) (raw)

最近ポッドキャストTBSラジオ「アフター6ジャンクション」をよく聴いている。

TBSラジオ「アフター6ジャンクション」 - 「ニジンスキーは銀橋でおどらない」について by かげはら史帆

少し前、この番組で紹介されていた『ニジンスキーは銀橋で踊らない』が面白そうだったので読んだ。

ニジンスキーは銀橋で踊らない

ストーリー

ニジンスキーの妻であるロモラ・ド・プルスキーを主人公にした歴史小説。ロモラはバレエの公演でニジンスキーに一目惚れして、「彼と結婚したい」と思うようになり、あの手この手で彼に近づいてついに彼と結婚する。そんなロモラは晩年、宝塚歌劇団の男役トップスターの明石照子を贔屓にして、はては彼女に養子縁組の申し出をする。

感想(ネタバレにはしていないつもり)

ニジンスキーの妻(ハンガリー貴族の娘)が日本の宝塚の男役トップスターに熱を上げていた」

これ史実なのがすごく面白いよね〜!これは当時、報道もされていたことのようなので、現代でも知る人ぞ知る歴史ではあるんだろうけど、わたしはこの小説がなければ知らなかった。勉強として歴史に触れるだけじゃあまり出会えないような歴史に出会えるから、わたしは歴史小説という存在がとても好き!

ニジンスキーについても、これまで名前は聞いたことがあっても詳しくは知らなかったから、この小説でちょっと詳しく知ることができて良かった。フィギュアスケートを見てると、彼の名前に絶対出会うんだよね。プルシェンコの「ニジンスキーに捧ぐ」というプログラムもあるし。でも、今まで「ニジンスキー」という名前をGoogleで検索したことすらなかった。この小説を読んだおかげでなんとなくニジンスキーに親近感(?)が湧くようになったのが嬉しい!

余談だけど、町田樹の著書『アーティスティックスポーツ研究序説 - フィギュアスケートを基軸とした想像と享受の文化論』は数年前に買ったまま、途中まで読んで挫折してる。でもそういえばアダム・リッポンのプログラム「牧神の午後」について書いた章があったなあ…と思い出し、これを機に久々に本を取り出して該当箇所を読んでみた。結局やっぱり難しくてちんぷんかんぷんだったけど笑、こんなふうに思い入れのあるものが一つ増えるのって楽しいよね!

話が逸れかけたけど、そういえばアダム・リッポンはゲイであることをオープンにしている。――これは物語の根幹に関わる部分だから詳細は伏せるけれど、この小説の中にもセクシャル・マイノリティが登場する。

その人物とわたしのセクシュアリティは一致するわけじゃないけれど、その人の「”普通の人”と違っている」ところには自分にも重なるものがあって、きゅっと胸が苦しくなった。

自分の恋愛対象やジェンダーアイデンティティって、必ずしも幼い頃からハッキリしてるものではないんだよね。子どもの頃や若いうちは「生きづらさ」としか表現できなかったものを、大人になってからようやく自覚するようになったり、言葉を得られたりする。

そういうのって全然珍しくないことなんだよね。

この物語に出てくる「その人」は、時間がかかっても、自分自身を見つけてあげることができて良かったなーと思いました。

※以下は軽くネタバレめの感想(メモ程度の箇条書き)

あんまり関係ないけどこの漫画も好きです

推しが武道館いってくれたら死ぬ(1) (RYU COMICS)

町田樹の本はこれ

アーティスティックスポーツ研究序説:フィギュアスケートを基軸とした創造と享受の文化論