「笑う森」荻原浩著 読んだ! (original) (raw)

「笑う森」

笑うはずのない森が笑う 何やら不穏なタイトル。

そう思って手に取りました。

オカルトめいたミステリーなのかと思ったのですが、違った!

荻原浩さんらしいハートウォーミングなミステリーでした。

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元々好きな作家さんです。おすすめは「明日の記憶」と「愛しの座敷わらし」かな。

明日の記憶」は確か、主人公がアルツハイマーになってしまい、徐々に病気が進行していく、その葛藤や苦悩が描かれた作品。重たいテーマですが読み応えもあり、とても暖かい眼差しのある小説でした。

かたや「愛しの座敷わらし」は田舎の古民家に引っ越してきた一家がその家に住み着く座敷わらしと遭遇する話なのですが、なんといってもその座敷わらしが愛おしくって…。

ということで、久しぶりの荻原浩さんの小説です。

簡単なあらすじを言うと、

発達障害の5歳の男の子真人が、神森で行方不明になった。1週間たち、生存が絶望視された頃、森で男の子は無事に発見された。だが、以前とはどこか違う。真人の叔父冬也は真人が1週間をどう過ごしていたのか謎を追っていく。

という感じです。

神隠し的な恐ろしい話では決してありません。

真人は、自分一人でもちろん生き抜いたわけではありません。なんといっても5歳の発達障害を持つ男の子です。そこには真人を助けてくれた人が存在していたのです。それも1人ではなく数人。

なぜ彼らは名乗り出ないのか、それにはそれぞれの訳がありました。難ありな人々ではあるものの、真人を助けてくれるくらいの憎めないキャラクターたちではあります。

とはいっても届け出ないのはやっぱりひどいな。

そして、最後助けてくれたのは、なんと…。

「愛しの座敷わらし」の座敷わらしも可愛かったのですが、こちらの真人君もただただ可愛い。それに彼自身、他人の手を借りながらも生き抜く強さを待ってたってこと。

最後、堰を切ったようように話をする真人のほんとかわいいこと。

森で1週間彷徨うなんて考えただけでもゾッとします。でも、彼の最後の一言に救われました。

面白かったです