Unreal Engineを活用した迫力の戦車戦『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話メイキング(2)~戦車&キャラクター篇 (original) (raw)

戦車同士による模擬戦競技「戦車道」をテーマに、女子高生チームが奮闘する姿を描いた『ガルパン』こと、『ガールズ&パンツァー』シリーズの最新作『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話が昨年秋に劇場上映され、大好評を博している。

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『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話
10月6日(金)より、上映中
監督:水島 努/脚本:吉田玲子/アニメーション制作:アクタス/製作:ガールズ&パンツァー 最終章 製作委員会/配給:ショウゲート
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実機の動きを精察してつくり上げた戦車のリグ

左より、テクニカルディレクター・足立 真氏、3DCGI副監督・髙橋慎一郎氏、システムエンジニア・濱崎宏之氏、3DCGI監督・柳野啓一郎氏、CGIデザイナー・剣持真人氏、CGプロデューサー・花木海斗氏、プロダクションマネージャー・遠藤 司氏(以上、株式会社アクタス

本作シリーズの主役とも言える戦車群のリグは第1話から一貫して柳野氏が担当。実機の動きを観察し、考察を重ねてつくり込んでいるリグは、新作が制作されるたびに細かくアップデートを重ねているという。また、戦車のモデルには全て壊れた状態があり、そうした破損のバリエーションを含めるとモデル数は200を数える膨大な量となる。これらのモデルは3ds MaxUEをまたぐため、モデル管理には注意が必要だったとのことだ。

山を下りながらの戦車戦など、アニメ的な面白さを重要視しているところも『ガルパン』の特徴のひとつ。「何も考えずにバカなことをするのではなく、あらゆる方向性をしっかり検討した上で、バカなことをする」というのが柳野氏の方針だ。それはモデルだけでなく戦車群の演技についても同様で、戦車の重量感や質感、摩擦、加速などを意識しながらも、雪上をドリフトするといった、見た目に楽しい演出も忘れてはいない。なお、キャラクターは基本的に作画だが、中遠景とガイド用に3Dモデルも制作。新規で制作したキャラクターのほか、既存のキャラモデルを改造して簡易モデルを起こしたものもある。

スキー板を履いたBT-42のリグ

基本的なリグ操作は全戦車共通だが、このBT-42はスキー板を履いているため、特殊なリグが組んである。スキー板は地面への接地・乖離の切り替えが手動でもボタン操作でもスムーズにできるようになっており、別系統の車体揺れノイズも備えている。また、ハンドル操作で前輪とスキー板が向きを合わせて動き、接地機構とも同期するスクリプトを内蔵している。動力の伝わっていないタイヤは、車体の揺れノイズに合わせて自動で回転する。

モデルのプレビュー

ノイズの設定

特徴的な展望塔を備えるIII 号突撃砲G型のリグ

III号突撃砲G型のリグ。積載物や展望塔(ハッチ)など、細かなギミックを再現している。

プレビュー。戦車に載んでいる白樺やワイヤーなどは、走行に合わせて自動で揺れるように別途アニメーションを仕込んであり、車体ノイズヘルパーで制御する

キューポラハッチの開閉構造。それぞれ開閉用バー稼働、ハッチ開放、閉鎖。わかりにくい機構のものは、1スライダで多段階開閉できるように自動化してある

破壊を念頭に置いて構築したKV-1

脚本の段階で水島監督から「とにかく壊れる」と伝えられていたKV-1。追加で分割や部分破壊が必要になっても極端に操作系が増えないよう、あらかじめパーツを細かく取れるように分割しておいた。増加装甲の内部は資料を基に中空機構やボルトの留め方などを再現し、破壊時にどう取れるかを推測して分割。揺れものについては車体の揺れに合わせて自動でアニメーションするよう、スクリプトと物理シミュレーションで制御している。

プレビュー

壊れることを考慮したリグ

中遠景・ガイド用の3Dキャラクターモデル

本作のキャラクターは基本的に作画だが、中遠景用と作画用のガイドとして使うための3Dモデルも制作してある。島田愛里寿は『ガールズ&パンツァー 劇場版』(2015)で使っていたモデルを流用し、制服を聖グロリアーナ女学院のものに変更。ほかにも新規では逸見エリカを制作。ミッコ、園みどり子などは既存のモデルをベースにして制作し、髪がなびくアニメーションをつけ直すなど、微調整を行なっている。

島田愛里寿のプレビュー。ハッチから顔を出すポーズで固定されている

髪がなびくアニメーション。低速走行、高速走行、発砲の3種類を用意した

(3)に続く。

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TEXT_石井勇夫/Isao Ishii(ねぎデ
EDIT_海老原朱里/Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子/Momoko Yamada