『夜に生きるもの』『ベッドタウン』以降の高橋徹也の活動を振り返る (original) (raw)
1998年、『夜に生きるもの』『ベッドタウン』という2枚の傑作アルバムをリリースした高橋徹也。
現在もストリーミング配信で聴かれたり、『チャイナ・カフェ』がアナログでリリースされたり、その時代の作品に対する評価・再評価はあるように思います。
が、2000年以降も精力的に活動し、現在も活動していることはあまり知られていません。特に2012年以降は毎年のようにリリースがあり、ライブも精力的に行っています。
先の記事より引用します。
この「チャイナ・カフェ」のレコードで初めて高橋徹也を知る人、懐かしさからこのレコードを手に取った人、さまざまいるだろうけど、忘れてほしくないのは、高橋徹也が今なお作品を発表し続け、バンドや弾き語りで勢力的にライブを行っている、現役のミュージシャンであるということだ。24歳の若者が日本のポピュラーミュージック界に放ったこの「チャイナ・カフェ」という怪物を手にしたら、その次には現在の高橋徹也が生み出す音楽に向き合ってほしい、と心から願う。
全く同じことを思っています。その一助になるように、現在の高橋徹也にリーチするためのリンクを紹介、活動の振り返りをしたいと思います。
最初に、私が思う『現在の高橋徹也の素晴らしい点』を述べます。『ライブがいい』ということは大前提として。(こういう時に「ライブがいいんですよ!」って、それは当たり前じゃないかと思ってしまう)
2点です。
1.歌がべらぼうに上手い
どうしたって、ボーカルの衰えというのはベテランアーティストのあるあるの一つだと思います。「久々にライブを見に行ったらキーが出なくなっていた」「声量が下がった」…人間なので仕方ないのですが、やはり寂しい気分になることが少なくありません。
ところが高橋さんに関しては、こういったボーカルの衰えを感じる場面が全くありません。それどころか、どう考えても今が一番歌が上手いです。私は『夜に生きるもの』の当時からのリスナーですが、直近10年ほど「今が一番歌が上手いな…」と感じ続けているので要は右肩上がり、もしくはピークを維持している状態が続いています。
なので「昔聴いていたけど、今ライブを見たらがっかりするんじゃないかな…」という心配はまったく不要です。
2.ライブで新旧色んな時代の曲を演奏してくれる
これもベテランアーティストのあるあるなのですが「いざライブを見に行ったら聴きたかった曲を全然やらなかった」「楽しかったけど、昔の曲ばかりで現役感がなく何だか複雑な気分になった」といったことがあると思います。
現在の高橋さんは『夜に生きるもの』『ベッドタウン』の曲も惜しげなく披露しつつ、それらに勝るとも劣らない魅力を持つ近年の曲も演奏します。これはずっとそうだった訳ではなく、むしろ2000年代の頃は「ソニー時代の楽曲は殆どやらない」「それどころか2000年代に音源として出た曲もやらない、音源化されていない曲ばっかりやる」みたいなライブをしており、その頃を思うと隔世の感があります。
端的にこの2点で、「ライブを見てがっかりする可能性が非常に低い」ということが伝わると幸いです。
先に紹介しておきます。2024/9/21にオールタイムベストな選曲のライブがあります。
9月21日(土) 吉祥寺 Star Pine's Cafe
[SPC 27th Anniversary Event]
高橋徹也 28th Anniversary Live
『ALL-TIME FAVOURITE』
開演18:00 開場18:30
前売¥4,000 当日¥4,500 (+Drink)
出演:高橋徹也(vo,g) 鹿島達也(b) 脇山広介(dr) 宮下広輔(pedal steel)
https://eplus.jp/sf/detail/4149670001-P0030001
このテキストから現在の高橋徹也の音楽に触れて、ライブを見たいと思った方にはぜひ足を運んで頂きたいです。
ここからは2010年代を中心に来歴、作品を紹介していきます。残念ながら廃盤となっているものが多く、また各種ストリーミングサービスでも配信されていないため聴くためのハードルが多少高いのですが、SoundCloud、YouTubeにアップされている曲があるので紹介していきます。
以下、高橋さん本人がブログで書いていた「第●期」という分類を使います。
- 90年代(キューンソニー時代)が第1期
- 2000年代が第2期
- 『大統領夫人と棺』からが第3期
- 『怪物』からが第4期
となっています。
※なお、この記事にある「2000年代アルバム4タイトルのストリーミング配信」は現在されておりません。
2000年代
キューンソニーを離れてインディーズで活動。
2002年『NIGHT & DAY, DAY & NIGHT』
2004年『REFLECTIONS』
2005年『ある種の熱』
3枚のアルバムをリリース。この時期はソニー時代の楽曲はあまりやらず、インディーズ以降の楽曲を中心にライブを行っていました。時には半分以上が音源化されていない曲ばかりのライブも。当時は「こういう人だから」と慣れてしまっていたけど、今思えばかなり不親切なライブだったなと思います。(ライブ自体はもちろん良かったのですが)
この時期の曲で視聴できるものもありますが、いったん割愛します。
2010年~2011年
サポートメンバーに菅沼雄太を迎えます。EGO-WRAPPIN'のサポート、現在は坂本慎太郎バンドなどで知られる名ドラマーです。第2期 高橋徹也の礎を作ったのは菅沼さんのドラムだったのではないかと思っています。
2011年には下北沢leteでの弾き語りワンマンライブを開始。以降、定期的に開催され、現在もおよそ2か月に1回のペースで継続しています。このライブによって、弾き語りでの選曲に幅が出たり、パフォーマンスに変化が現れたと思っています。
2012年
ライブアルバム『THE ROYAL TEN DOLLAR GOLD PIECE INN AND EMPORIUM』をリリース。『ある種の熱』以来、実質的な7年ぶりの新作。上田禎、鹿島達也、菅沼雄太という鉄壁の布陣でのライブを収録。現在のライブの核となる『夜明けのフリーウェイ』が(ライブ音源ですが)初音源化されます。
THE ROYAL TEN DOLLAR GOLD PIECE INN AND EMPORIUM(VIVID SOUND)
https://www.vividsound.co.jp/item.php?lid=4540399313931
残念ながらメーカー在庫なし、音源試聴もありません。(非公式なものはYouTubeにあったり無かったりします)
そしてKi/oon Record在籍時のベストアルバム『夕暮れ 坂道 島国 惑星地球 高橋徹也 Ki/oon Records Years Best』をリリース。これは現在も入手可能です。
www.sonymusicshop.jp
完全未発表音源「愛の言葉 (long version)」、更にアルバム未収録のシングル&カップリング曲「真夜中のドライブイン(single version)」「人の噂」、「ナイトクラブ(jazz version)」を含む全13曲を予定。 全曲リマスタリング、Blu-spec仕様。
シングルのミュージック・ビデオ&TVスポットを初DVD化。
ベストアルバムのリリースを機に、ソニー時代の楽曲もライブで披露することが増えていきます。
2013年
ニューアルバム『大統領夫人と棺』をリリース。第3期 高橋徹也の幕開けと言える作品。
大統領夫人と棺(VIVID SOUND)
https://www.vividsound.co.jp/item.php?lid=4540399314600
こちらも残念ながらメーカー在庫はありませんが、数曲が視聴できます。ポエトリーリーディングからの大ファンクチューン『大統領夫人と棺』は是非聴いてほしい。モノトーンの映像に、妖艶に踊るMVも必見。
ハリケーン・ビューティ
大統領夫人と棺
大統領夫人と棺(MV)
Key West(MV)
先行販売を開始したQueワンマンライブは、ナタリーにライブレポが掲載されました。
2015年
9thアルバム『The Endless Summer』をリリース。個人的には『大統領夫人と棺』以降の作品の中では一番好きです。
THE ENDLESS SUMMER(VIVID SOUND)
https://www.vividsound.co.jp/item.php?lid=4540399316772
この作品以降はメーカーサイトで購入可能のようです。『夜明けのフリーウェイ』は『新しい世界』を彷彿とさせる、第3期から現在に至るまでの代表曲。是非聴いてほしい1曲です。
夜明けのフリーウェイ
The Orchestra
ネット番組『Oil in Life』での弾き語りライブ動画が見れます。弾き語りライブの感じがこれでわかると思います。
2016年
デビュー20周年のANNIVERSARY YEAR。山中さわお(the pillows)、so many tears、直枝政広(カーネーション)、小林建樹といった錚々たる面子とのツーマンライブを行いました。
正規のリリースはありませんでしたが、ソニー在籍時の音源がストリーミング配信開始されました。
そしてライブ会場限定ではありますが、弦楽ライブのライブ盤『a distant sea』をリリース。弦楽三重奏+鍵盤(ピアノ、キーボード)+本人の5人編成での弦楽ライブを2013年から行っていますが、初の音源化。
ライブ盤の音源はSoundCloudでもアップされていないのですが、YouTubeに1時間ほどの動画があります(これは初回の動画だったかな…?)これも本当に素晴らしいので是非。BGMとしてかけるも良し、ただ余りの美しさにいつの間にか耳を奪われるかもしれません。
高橋徹也 - 遠景の音楽 Live at Seed Ship
お時間の無い方は「美しい人」1曲だけでも。
高橋徹也 - 美しい人(LIVE)
そして20周年記念のワンマンライブ『夜に生きるもの2016』を開催しました。吉祥寺Star Pine's Cafeでスタンディング、沢山のファンが詰めかけました。
高橋徹也 20周年記念ライブ 『夜に生きるもの 2016』 感想まとめ
2017年
記念すべき10枚目のオリジナルアルバム『Style』をリリース。
STYLE(VIVID SOUND)
https://www.vividsound.co.jp/item.php?lid=4540399318011
紹介文にも書かれていますが「キャリア史上最もポップな作品」です。『夜に生きるもの』『ベッドタウン』のイメージが強い方にはある意味驚かれる作品かもしれませんが、デビューアルバム『POPULAR MUSIC ALBUM』を思い返せば原点回帰といえる一作です。第3期で最初に聞く1枚はこれでもいいかと思います。
SoundCloudで2曲試聴できます。『スタイル』は活動初期から存在した曲で、デビューシングルになる可能性もあった曲のようです。『夕暮れ星』も初出は(おそらく)2000年頃であり、17年経ってようやく音源化された1曲。そんなにも長い間音源化されなかったのが信じられないくらいの大名曲なので、これも是非聴いてほしいです。
スタイル
夕暮れ星
YouTubeにもアップされていますが、MVではなく音源のみです。(リリックも出ないのでリリックビデオでもなく…こういうの何て言うの?)
2017年は地方でのライブも数多く行いました。2013年以降交流を深めた山田稔明(GOMES THE HITMAN)との名古屋・京都、Small Circle of Friendsとの京都・山口・名古屋、再び山田稔明との大阪・宮城・福島。コロナ禍も収まり、今後また地方でのライブが増えることを願っています。
2018年
『夜に生きるもの』『ベッドタウン』の発売20周年を記念して、未発表曲を加えてリマスター&2枚組で再発されました。現在も購入可能です。
同作の発売を記念して、『夜に生きるもの/ベッドタウン 発売20周年記念再現ライブ』が開催されました。
2枚のアルバムの再現ライブではありますが、最初に主張した「過去の名曲に勝るとも劣らない魅力を持つ、近年の曲」であるところの『友よ、また会おう』で締めたのが非常に印象深いです。2020年リリース『怪物』で音源化されますが、ここで紹介しておきます。
友よ、また会おう / 高橋徹也
高橋徹也『夜に生きるもの/ベッドタウン』20th ANNIVERSARY EDITION発売&再現ライブ
2019年
ライブアルバム『AO VIVO』をリリース。ライブ会場限定販売で、正規に流通されていないのが非常に勿体ない、名演を収録した大名盤です。
2015年からの5人編成
高橋徹也:Vocal, Guitar
鹿島達也:Bass, Chorus
sugarbeans:keyboards, Chorus
脇山広介:Drums
宮下広輔:Pedal Steel Guitar
による集大成といえるライブかと思います。
2曲ではありますが、試聴できます。この2曲だけでも、このライブ盤の凄さは伝わると思います。
夜明けのフリーウェイ(LIVE)
5分前のダンス(LIVE)
~現在
改めて、2012年から2020年までは毎年何かしらのアイテムをリリースして、ライブ本数も右肩上がりに増えていたということを記しておきます。
2012 ライブ盤/ベスト盤
2013 大統領夫人と棺
2014 REST OF THE WORLD
2015 ENDLESS SUMMER
2016 (サブスク解禁)/弦楽ライブ盤
2017 スタイル
2018 夜に生きるもの&ベッドタウン再発
2019 ライブ盤(AO VIVO)
2020 怪物
コロナ禍に突入しライブ本数は減りましたが、最初に述べた通りライブパフォーマンスは全く衰えておらずその点は心配ありません。今がまさにキャリアハイであり、今見るべき、聴くべきミュージシャンだと思っています。
『夜に生きるもの』『ベッドタウン』は非常に素晴らしいアルバムだと思いますが、決してその2枚だけではない。その2枚に対する言及を見る度に嬉しくなる半面「今の作品も、ライブも、もっと凄いのに!」と悔しい気分にもなります。
このご時世でサブスク解禁されていないというのは、その時点でまるで活動していないかのような扱いを受け、最初のリーチまでのハードルが非常に高いのは事実なのですが…ひとまず上に紹介した音源などから現在の高橋徹也を感じてほしいと思っています。
SoundCloud(本文中で紹介した楽曲以外もあります)
Man of Words/Man of Music
Tetsuya Takahashi
tokyo, Japan
最後に2005年『ある種の熱』より。
5分前のダンス(MV)