【🌊10分で聴く平家物語42】🪷園城寺入御🗡️競①②〈きおう〉〜宗盛殿が頼政殿の子息 仲綱殿の名馬「木の下」を欲しがらなかったら、侮辱するようなことをしなければ‥驕り高ぶったらダメだよね🐎 by 🐈 (original) (raw)

平家物語90 第4巻 園城寺へ入御】

一方、女房装束に身をやつし、

市女笠《いちめがさ》で顔をかくして

三井寺へ落ち行く高倉宮は、高倉小路を北にとり、

更に近衛大路を東にすすんだ。

月を映してさわやかに流れる賀茂川を渡れば、

もう如意《にょい》山である。

追われる身の宮は踏みなれぬ夜の山路をひたすら急いだ。

御殿育ちの身である、宮の足は何時しか血にまみれ、

立ち止まって一息つけば、足下の砂は紅に染まった。

夏草の露は宮の裾《すそ》をぬらした。

疲労にもつれる足は一層重くなったが、

心をはげましては山路をひたすら急いだ。

宮が目指す三井寺へ到着したのは、

暁方、東の空すでに白み、

高い樹木の梢には朝陽がさしていた。

夜を徹しての山路歩きで、宮の顔はやつれ果てていた。

「この寺の衆徒を頼みに、参ったぞ」

という宮の言葉は、多くの寺の中から、

この寺だけがえらばれたという感動を三井寺の衆徒に与えた。

喜んだ寺側はただちに法輪院に御所をしつらえ、

心身ともに疲れた宮に食事を差しあげたのであった。

🌌🎼星が落ちる written by のる

平家物語91 第4巻 競①〈きおう〉】

高倉宮が法輪院で休まれている頃、

京の街は宮の謀叛《むほん》の噂でもちきっていた。

戦乱はもはや免れまい、

あわてて逃げ仕度にかかる者さえいた。

と共に一体何が宮を

謀叛に走らせたのかというせんさくが囁き交された。

黒幕とも目される源三位頼政の名が、

人々の口に上ったのもこの時である。

高倉宮謀叛の知らせは京都に大きな衝撃を与えた。

騒動はいつ終るとも知れなかった。

宮を打倒平家へ走らせた源三位入道頼政は、

どんな動機を持っていたのだろうか、

今迄都にあって誰と衝突するでもなく穏かに過して来た侍である。

何故、今年になって急に平家滅亡を心に誓ったのか。

つらつら案ずるに、これは入道頼政が、

勝手気ままな仕打を続けてきた

平家の次男宗盛を憎んだためと思われる。

三位入道の嫡子 伊豆守仲綱《いずのかみなかつな》は

木《こ》の下《した》と名づけられた

鹿毛《かげ》の名馬を持っていた。

宮中にまでその名が知られた逸物で、

乗り心地といい、走り具合といい抜群の鹿毛で、

恐らく世に二匹はいまいといわれたほどである。

これを知って欲しがったのが宗盛である。

早速、仲綱のところへ使者が立てられた。

「世に聞えた名馬「木の下」を所望いたしたいが」

という。

仲綱は使者に答えた。

「お名指しの馬は確かに所有しておりましたが、

近頃あまり乗りつかれさせたので、

しばらく休ませようと田舎に送っている次第です」

使者の報告を受けた宗盛は、

それでは仕方ないとあきらめた。

ところが、平家の侍どもは口々に宗盛に告げた。

「あの馬なら一昨日《おととい》も昨日も私は見ております。

現に今朝も庭で調教しているのをこの目でしかと見ました」

怒ったのは宗盛である。

何というけちな奴、惜しい余りに嘘をつきおったな、

それならそれで、こちらも断じて貰いうけてやる、

とばかりに使者を再び立てての矢の催促である。

断わられても引き下がる男ではない。

二度三度が、七度八度となって仲綱をせめ立てた。

これを耳にした三位入道頼政は息子を呼んでいい聞かせた。

「たとえ黄金《こがね》作りの馬であっても、

人がそれほど欲しがるのを、断わるのはよろしくない。

侍たるものが物惜しみすると人にいわれてはならぬ。

馬はやるがよい」

父に説かれて愛馬を手離す気にはなったものの、

いざとなるとその決心もにぶりがちである。

漸く一首の歌を記して、馬とともに宗盛の所へおくった。

歌にいう。

こいしくば来ても見よかし身に添うる

かげをばいかが放ちやるべき

もちろん宗盛は返歌などという礼儀は守らなかった。

もっぱら愛憎二つながらまじる目つきで

「木の下」をねめ廻していた。

🐴🎼The Lampe written by Addpico

平家物語92 第4巻 競②〈きおう〉】

「噂にたがわぬ名馬じゃ。馬は良い、

だが持主の惜しみ方が憎い。

それならば仲綱めが心を慰めてくれよう、

やつの名を馬に印《しる》せよ」

仲綱の焼印を押された「木の下」は

こうして宗盛の厩に収まったが、

伝え聞いた客たちが訪れて、一目名馬をと所望すると、

薄笑いを浮べた宗盛は馬をひかせると怒鳴った。

「仲綱めに鞍をおけ、引き出せい。

仲綱めに乗れい、打て、なぐれい」

無念の涙にくれたのは仲綱である。

掌中の珠《たま》を奪われたばかりか、

ことごとわが身を嘲弄される。

父の前に現れた仲綱は、

父への恨みもまじるまなざしを投げながら訴えた。

「わが身にも代えたいあの馬を、

あたら権力で奪われたのは無念に存じまする。

そのうえ、天下の笑い者になっておりますこの身、

父上、あきらめられぬ恨事にござります」

「わしも人を見る明がなかった。

お前の胸のうちは察してやる。

それにしても侍の道を知らぬ奴輩《やから》じゃ。

われらに何もできまいと思うて、

平家はかかる仕打ちも平気で行なっておるのじゃ。

これほど馬鹿にされては源氏の名もすたる。

生きながらえても、所詮《しょせん》命の無駄使いじゃ。

わしも決意した、

機会をうかがって奴らに思い知らせてやる所存じゃ。

仲綱、今はこらえてくれい」

こうして、頼政は機会を狙っていたが、

遂に高倉宮を動かして、このたびの挙に出たものである。

これは、世間の人が噂していることであったが、

信ずべきものと思われる。

🫏🎼Rainy city by H.Lang

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