『MEN 同じ顔の男たち』(2022)/つまらないとは言わないが大体観る前に想像した通りの内容でしたわ👩🏻 (original) (raw)


原題:Men 監督&脚本:アレックス・ガーランド 製作:アンドリュー・マクドナルドアロン・ライヒ 撮影:ロブ・ハーディ 編集:ジェイク・ロバーツ 音楽:ベン・ソールズベリー、ジェフ・バーロウ 製作&配給会社:A24 製作国:アメリカ、イギリス 上映時間:100分 公開日:公開 アメリカは2022.05/20、イギリスは2022.06/01(日本は2022.12/09)

『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)が面白かったので、この監督の観てない作品が映画とドラマ1本づつなのでついでに観ようと思って観た。
主演の人はチャーリー・カウフマンのかなり良かったネトフリ映画、**『もう終わりにしよう。』(2020)**の主演の人。他の出演作を観ると「社会における女性」的なものを扱う映画によく出てる印象。
”同じ顔の男たち”役のロリー・キニアは、どっかで観たことあるなと思ったらダニエル・クレイグジェームズ・ボンドシリーズのMの参謀長ビル・タナー役の人だった。
この監督の作品常連のソノヤ・ミズノは出てないな……と思ったら電話した受話器の向こうの婦人警官の声を担当してたらしい。

ネタバレあり。結末のネタバレあり

👩🏻👨🏾‍🦲🧑🏻

ロンドンハーパー・マーロウ(演:ジェシー・バックリー)は、不仲だった(演:パーパ・エッシードゥ)が死んでしまい静養のため田舎の豪邸を借りる。
森を散策したハーパーは全裸の不審者(演:ロリー・キニア)を見かけ、夜に豪邸の庭に不審者が侵入してるのを見かけて警察を呼ぶが――

そんな話。
まず、冒頭や回想でハーパーと亡き夫の事が語られるが、夫婦仲は既に一年くらい険悪になっており、険悪なカップルによくあることだが夫婦はもう会話が通じない別の惑星の人間同士みたいな感じになっており、ハーパーが離婚を切り出すと揉めて夫に手を出されてしまう。激昂した彼女は夫を締め出す。すると夫は上階に上がり自殺なのか事故なのかは謎だが落下する。その際にハーパーは「落下する夫と目が合った」と感じる。落下死した夫は左手が柵で裂け右足は折れて死んでいた。

邦題にもなってるがハーパーが田舎町で出会う”同じ男たち”というのは、レンタル豪邸の管理人、全裸の不審者、町の司祭、その息子、警官、バーテンダー……など田舎町の”男たち”を全てロニー・キニアが演じていて同じ顔をしている(子供も不自然なCGで同じ顔)。
だけどハーパーはその事に驚いたり指摘したりは一切しない。だから「全部、同じ顔の生物」だとか、そういうった超自然的な現象ではない事がわかる。……というか予告の時点で「そ-いうホラー映画じゃなくて内省的な映画」の雰囲気がバンバン出てるので「同じ顔の男たちばかりいる異常な村」というわけではない事がわかる。
そして村の”同じ男たち”は、ほぼ全員ハーパーに嫌な態度を取る。
意識が曖昧な感じの”全裸の不審者”は勿論だし、教会の司祭の息子はハーパーを罵るし、ハーパーが司祭に「夫の死」のことを話すと何と司祭は「男は女を殴るものだが死ぬほどの罪じゃない。君のせいで死んだんだ」とハーパーを責める……司祭は凄く物静かに喋るのだがここがこの映画で一番胸糞悪いところだった。警官も不審者を捕まえるが何もしていないとすぐ釈放してしまいハーパーの危機感を鼻で笑う。豪邸の管理人だけは田舎のおじさん特有のうっとうしい冗談を言うくらいで嫌な態度は取らない。と、そういう感じで町の”同じ男たち”は基本、全員うっとうしい。
そんな感じで不愉快に過ごしているとクライマックス、”同じ男たち”が攻めてきて……という流れ。
あと、この監督作には顕著だが映像や美術はめちゃくちゃ美しい。

ハーパーは、”同じ男たち”に不愉快な思いをさせられたり、死んだ夫の悪夢を見たりする。
観てると、単純にハーパーは加害的な夫が当てつけで自殺したばかりなので、”男”そのものにウンザリしており「男は皆同じように見える」とか「男性自体をまともに見る気がしない」とか、そーいう感じだろ。多分。
そして”同じ男たち”が徐々にハーパーに加害的になる、しかしハーパーが少し反撃すると”同じ男たち”は左手が裂け右足が折れる、死んだ夫と同じだ。
そして敵がどんどん脅威になっていく普通のホラー映画とは逆で、”同じ男たち”はどんどん弱くなっていく。最終的には全裸で左手と右足が壊れたまま脱皮を繰り返す蛇のように、泣きながら次々と自分自身を出産し続ける憐れな存在になり、最初は怯えていたハーパーは怯えるのをやめ真顔になる。
最終的には死んだ夫が出産される。夫は死んだ直前と同じように自分を愛して欲しいと惨めったらしいことを言いハーパーは呆れる。
翌朝、「不快な男ばかりいる」と通話で聞かされていた親友が駆けつけるとハーパーは庭に座っていた。
村に来てからの”同じ男たち”は、ハーパーの「自分が夫を死に追いやってしまったのではないだろうか」という罪悪感や「自分の死を盾にして要望を通そうとする夫の害悪さはどうかと思う」という夫への呆れ、それらを田舎町でぐるぐる考えてたが吹っ切れました、それをホラーっぽく描写した……という映画だと思った。
というか観る前から多分そんな内容なんだろうなと思ってたが実際そのままだった。
最後に駆けつけた親友が、クライマックスの”同じ男たち”同様に”妊娠”していた……という思わせぶりな要素があったのだが、これは正直よくわからない(そして別にどうでもいいのであまり気にならない)。
途中で教会の”グリーンマン”の像と”女性器を強調した女性の像”が何度も思わせぶりに出てくる。これは”同じ男たち”の本体っぽい扱いの”全裸の不審者”が顔に植物が生えてきてグリーンマンっぽくなるので「グリーンマン=死んだ夫=害悪な男」「女性器を強調した女性の像=女性=ハーパー」という感じで、本作における害悪な男と主人公の女を表現しただけのものだろうと思った。
町の豪邸に着いたばかりの時「わっ!ハーパーの背後、窓から男が覗いてる!」と思ったら

次のカットで背後にピントが合うと壺だった。

という壺を一瞬、不審者だと思わせようとするシーンが面白かった……次のカットの時、ハーパーの頭部で壺を隠して、ハーパーが頭を動かすと背後にピントが合って壺だとはっきりわかる、その後のシーンでハーパーの背後に不審者が出現するシーンが何度かあるし、だから意図的だとわかった。
あとは予告にもあった、トンネルでハーパーが自分の名を叫んで反響させて遊ぶシーンが良かった。
そーいう感じで、別につまらないわけではないのだが観る前に「きっとこういう内容だろうな」と想像した通りの内容だったし、『シビル・ウォー アメリカ最後の日』(2024)以外のこの監督作と同じように、まぁまぁ……といった感じだった。

👩🏻👨🏾‍🦲🧑🏻

そんな感じでした

アレックス・ガーランド監督作〉
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インタビュー|映画『MEN 同じ顔の男たち』オフィシャルサイト

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